「宇宙の未来を考えるとき、まず大きく二つに可能性が分けられる。」として、膨張を続ける宇宙と、収縮する宇宙が説明されている。
宇宙膨張を続け、すべての銀河は視界から消える。しかし、「天の川銀河と重力的に結合している近くの銀河は宇宙膨張の影響は受けず、飛び去ることはない。」
(1)重力的結合
「天の川銀河と重力的に結合している近くの銀河は」他の局所銀河群と重力的に結合して、銀河団を形成している。そして、他の銀河団でも、局所銀河群が結合しそれらを包む大きなハローを持っていて、重力的に結合しているのが観測されている。
このことから銀河団は膨張しないという考え方もある。膨張するのは、銀河団と銀河団の間という考え方だ。
(2)アンドロメダ銀河。局所銀河群。
(この本の主張のように、局所銀河群以外は膨張で離れていくというのが正しいとして考えてみる)
「アンドロメダ銀河と天の川銀河は今から20億年後に大接近してすれ違う。」
ということだ。すると、10億年前は、アンドロメダ銀河と、天の川銀河はもっと離れていたということが考えられる。もともと、「近くの銀河は宇宙膨張の影響は受けず」ということなので、それとも整合する。距離は300万光年くらいと見積もっていいだろうか。するとそれくらいの距離でも、空間斥力より、銀河間の引力のほうが強いということである。(注:ここでは、銀河間の引っ張り合う力という引力という表現のほうが、重いから落ちるという重力という表現より、適切に思えるので、引力を使う)
(3)50億年前を考える
アンドロメダと、銀河系(天の川銀河の別名)は、やはり今より遠いはず。引力のほうが斥力より強いので、離れることはなく接近を続けていたと考えられるから。
また、局所銀河団も、今と同じか離れていたと考えられる。未来には合体するのであるから、接近しているなら過去には遠く離れていたはず。
すると、斥力で離れ続けていたのは、局所銀河群の間と銀河団の間と考えられる。すると、50億年前は、局所銀河群や銀河団の間は今より接近していたと思われる。
(4)70億年前を考える
宇宙の大きさは、今のおよそ半分である。局所銀河群はやはり今と同じかもっと大きいだろう。小さければ引力で引き寄せあい今よりもっと小さくなっているだろうから。
反対に、膨張を続けてきた局所銀河群の間は今より約半分の距離であったろう。すると、局所銀河団どうしの距離は、銀河系とアンドロメダ銀河の距離より近くなっていて、引力が斥力を上回っていた可能性がある。
同じように、膨張を続けてきた銀河団の間も半分の距離であったろうことが想像がつく。すると、銀河団同士の引力が斥力を上回っていた可能性がある。銀河団は巨大な引力を持っているのだから。
(5)100億年前を考える
もし銀河系ができていたら、アンドロメダ銀河との距離は、今と同じくらいかもっと離れていたはずだ。近くなら、50億年前に合体していたはずだから。
宇宙にある局所銀河群は、どれもわれわれの局所銀河群と同じように、今と同じ大きさか、それより大きかっただろう。したがって、となりの局所銀河群と重なっていたろう。銀河団も、となりの銀河団と重なっていたろう。引力は完全に斥力を上回っていたはずだ。
したがって、局所銀河群も、銀河団も宇宙膨張の影響を受けず、膨張することはなかったとおもわれる。
このように、宇宙の一部が膨張を続け、一部が収縮を続けてきたとすると、さかのぼると変なことになる。
なぜこんなことになるのか。これも、観測の正確なところでは理論でいう現象は見られないが、遠くて観測が不正確なところでは理論どおりの現象が現れる、ということからであろう。
これ以下については、あまり重要なことではないようなので、ここまでにします。
これで、「宇宙論入門」(佐藤勝彦著・岩波新書)の感想を終わります。つたない感想にここまでお付き合いいただきましてありがとうございました。
平成21年3月21日 高田敞記
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