宇宙開闢のときを考える
著者 高田敞
(以下、{ }内は、「宇宙論の飽くなき野望」佐藤勝彦、技術評論社よりの引用)
問題
{創生された量子宇宙は、素粒子にも満たない、「プランク・サイズ」と呼ばれる10−33程度の超ミクロな宇宙だが、それが「インフレーション」と呼ばれるメカニズムによって、ただちに何十桁、何百桁と引き延ばされ、マクロな宇宙になった。}
同本には、宇宙誕生後10−44秒で重力が発生し、10−30秒で色の力が誕生し1万分の1秒で、弱い力、強い力、電磁気力が発生したと書いてある。
このことから、考えてみる。
考察
1 {宇宙は時間、空間、物質の全くない“無”の状態から}発生した。
{“無”の状態}とはどのような状態なのか不明である。真空とは違う。真空は、少なくとも時間や空間はある。それさえないというのである。“無”はどのような状態なのか定義してそれが存在したことを証明しなくてはならない。それがない。前提がまるっきり空想なのである。空想から出てくるものはおとぎ話に陥る可能性が非常に高い。あにはからんや、インフレーションビッグバンもその通りの展開になる。
インフレーションビッグバン論は、この“無”から、何でも無尽蔵に好きなだけ出てくるというのだ。まるでドラエモンのポケットのようなものだ。いやそれよりはるかに、指数関数的(?)に無数のものが出てくる。おとぎ話の典型である。
だが、この“無”なるものがどのような構造をし、どのように、物質や、光やエネルギーや、ダークマターや、ダークエネルギーや、ヒッグス粒子などを生み出す仕組みになっているのかは何一つ究明していない。もちろん時間や空間を生み出す仕組みも、究明していない。量子論など借用して、粒子が生まれるというのである。それを引き延ばすと、すべてになるというのである。魔法の無が、宇宙の種の粒子を生み、インフレーション、と呪文を唱えると、一瞬より短い間に種が芽を出し宇宙ができるというのである。
ほんとおとぎ話である。
2 {プランク・サイズ」と呼ばれる10−33程度の超ミクロな宇宙}という生まれたての粒子(?)あるいは宇宙の種(?)
この宇宙に、今ある宇宙の全物質と、ダークマターとが詰まっていたのだろうか。そのことには触れていないが、たぶんそうなのだろう。
地球は素粒子でできている。この素粒子も、ビッグバン宇宙論によると宇宙開闢のときに全てできたはずである。だからこの超ミクロな宇宙の中に地球もあったことになるはずだ。ところで、地球をそこまで縮めるとブラックホールになる。サイズ的にはそうだ。
ところが、地球だけではない。そこに、全宇宙の物質とダークマターが詰まっていたというのだ。完全にブラックホールになるはずだ。
3 {「インフレーション」と呼ばれるメカニズムによって、ただちに何十桁、何百桁と引き延ばされ、マクロな宇宙になった。}
この仕組みはどうなっているのだろう。相転移というのだが、相転移に、ブラックホールを引き延ばすエネルギーはあるのだろうか。その仕組みを解き明かさなくてはならない。
4 以上についての考察
量子論は、真空から、ミクロの粒子が生まれては消えるということを言っている。おそらくこのシステムを応用して、無からミクロな粒子が生まれると言いたいのだろう。
なぜかと言うと、無から直接、この宇宙が大きいまま、ボンと出るというわけにはいかないからだ。地球が何もないところからぽんと出た、などといったって誰も信じないからだ。そこで、{10−33程度の超ミクロな}粒子にしたのである。これなら量子論の応用で何とかなる。
このことに3つの問題がある。一つは、超ミクロな粒子に全宇宙の物質が入り込めるかということだ。地球1個だってはいりそうにないのに、その地球の、一兆個の一兆個倍の一兆個倍個ほど詰め込まなければならないのだ。入るわけがない。宇宙の全物質をどんなに潰しても、{10−33程度の超ミクロな}粒子にはなり得ない。もしなると言うならその証拠を提出しなければならない。
第2の問題は、その粒子を作るエネルギーだ。量子論でできる粒子は、非常に小さいから、エネルギーも非常に小さい。しかし、インフレーションビッグバンできる粒子は、小さいといっても、この全宇宙の物質である。巨大なエネルギーの塊であるはずだ。それがミクロの“無”のエネルギーからできるだろうか。インフレーションビッグバン論者はそのエネルギー構造を説明しなくてはならない。できないだろう。
第3は“無”である。無は真空ではない。真空は、時間と空間がある、量子論ではほんの少しだがエネルギーもあるということになっている。しかし“無”は違う。なにもない。量子論では真空から粒子が生まれては消えるという、しかし、“無”からではない。“無”から粒子が生まれるというのは新説である。まあ、よく似たもんだ、ですませるのだろうけど、それでは科学とはいえない。
5 宇宙創成の流れ
@“無”があった。
(“無”があるというのは非常に変な話だが、最初以前になにかないと困るのでそうしたのだろう。言葉遊びだ)
A量子が生成された。
(量子論を応用。問題は、量子論でできる量子は非常にエネルギーの低い量子である。しかし、ビッグバン論によってできる量子は、この全宇宙のエネルギーに等しい。すなわち宇宙最大のエネルギーである。これは宇宙最大のマクロであるから、量子論は適用できないはずである。このことは内緒にしてある)
Bインフレーション
(ミクロなままでは困るので、魔法を使う。その呪文が、インフレーションという言葉だ。生まれた量子は{10−33cm程度の超ミクロな宇宙だが、それが「インフレーション」と呼ばれるメカニズムによって、ただちに何十桁、何百桁と引き延ばされ、マクロな宇宙になった。}ということだ。
この全宇宙を、引き延ばすのである。そのエネルギーはどこから来たのか。不明である。真空の相転移だのと言っているが、10−44秒前には“無”だったものから生まれたばかりの超ミクロな真空はどこからそのエネルギーを手に入れたのか不明である。
例えば、スペースシャトルを考えてみよう。打ち上げのときのほとんどの重量は燃料である。地球から2,3百キロ上空に、宇宙からすると、バクテリアにもあたらない小さなものを秒速数十キロに加速するだけで、それだけの燃料がいる。全宇宙を、{ただちに何十桁、何百桁と引き延ば」すのである。天文学的エネルギーがいるはずだ。どこからそれがわいてきたのだろう。
{ただちに何十桁、何百桁と引き延ばす}ことについて
何十桁と何百桁ではまるで違う。一桁だってまるで違うのだ。秒速1kmと一桁違うと、秒速10kmになる。10ケタ違うと、秒速10000000000kmになる。100億kmである。光速の3億倍ほどになる。百桁ちがうと、10km×10100である。1の後に0が100個付くのである。200桁なら0が200個付く。もちろん900桁なら0が900個だ。
それを、あっさり同一視している。いかに適当かがわかる。そのくせ、平気で、10−33cmとか、10−44秒とか、人間では到底測れない小さな時間や物をさも確定したように大きな顔をして持ち出している。判断できない、測りようのない数を持ち出しておけば、みんなぶったまげるというのであろう。適当100倍である。まあインフレーション理論とはそんなもんだ。
ミクロの時代の真空
インフレーションビッグバン論では、できたての{10−33cm程度の超ミクロな宇宙}の中にはこの宇宙のすべての物質と、ダークマターと、おそらく、ヒッグス粒子が詰まっていたはずだ。その{超ミクロな宇宙}に、真空の入り込む余地はあるのだろうか。どこに隙間があるのだろう。もしあったとしても、{10−33cm程度}以下であるのは当然だし、その10−30倍ほどの小ささだっただろう。その小さな真空が相転移したとして、それがどれほどのエネルギーを持っているのだろう。全宇宙の物質を、{何十桁、何百桁}と引き延ばすエネルギーなどあるわけがない。ミクロの魔法というわけだ。
C{10−33cm程度}の宇宙の中身
{10−33cm程度}はプランク定数ということだから、それ以下の大きさはない大きさだ。だから、その、10−30倍はないということになる。もちろん最初からでたらめである。
では、それが最初の宇宙だとしたら、その中には、この宇宙のすべての物質と、すべてのダークマターと、すべての真空と、すべてのヒッグス粒子があったことになる。ところが、{10−33cm程度}の宇宙は中を分けることができないはずだ。中身はたった一つでなければならないはずだ。まだ、物質や、真空や、ダークマターや、ヒッグス粒子に分化していない謎のなにかでできていたのだろうか。
まあ、インフレーション屋さんもいい加減なところだらけだから、面倒なことは1021項目くらい後回しにしているのだろう。もちろん、その中を物質と真空に分けることはできないということでもある。
{「プランク・サイズ」と呼ばれる10−33程度の超ミクロな宇宙}は全宇宙を内包しているはずだけれど。「プランクサイズ」なのだから、それを分けることはできないのだから、均一のなにかであったはずだ。それが膨張していく過程で、全宇宙の、物質や、ダークマターや、ヒッグス粒子や、その他諸々に分かれていったのだろう。しかし、元は「プランク・サイズ」の粒子より小さい均一の何かが、どのようにして、いろいろなものに変化したのだろう。その仕組みを究明しなければならないはずだ。
{宇宙が始まって10−44秒という時刻に「ただ一つの力」から「重力」が、おそらく最初の力として枝分かれし、}
考察
{宇宙が始まって10−44秒}のときにはすでにこの宇宙のすべての物質は生成されていたということである。すごいことだ。
この時間は、光でさえ、3×10−33mmしか進むことができない時間だ。電子顕微鏡でも測れない距離だ。もし神様がいて、「光あれ」と言ってこの宇宙を作ったとしたら、その言葉が声帯(神様に声帯があるかしら?)から出て、1×10−40mm進んだところで、すでにこの宇宙ができあがっていることになる。その間に全宇宙の物質が“無”から生まれたというのである。生まれたのは、超ミクロな粒子だからいいというのだろうけど、それはごまかしにすぎない。超ミクロであっても、それは今ある全宇宙の全物質であることには変わりないのである。その後、インフレーションという魔法で、引き延ばしてみるとこの宇宙になるのだから、すでにその粒子の中身はこの宇宙のすべてであるはずである。
素晴らしい魔法だ。呪文を唱える方が、宇宙ができるより、10100倍も時間がかかるのだ。地球が1秒でできたというと誰も信じないけど、全宇宙が、10−44秒でできたと言うと信じるのが学者である。学者はやはり常人にはない素晴らしい感覚を持っている。常識では学者は務まらないということのようだ。
6 重力
{宇宙が始まって10−44秒}のときに重力ができたという。すると、そのとき、超ミクロな宇宙の全物質は、重力を獲得したということだから、超ビッグな重力が発生したということになる。
宇宙は一気につぶれただろう。超新星のようにその反動で宇宙は爆発したとかいうことではないみたいだ。
今観測されている何千億もの銀河の中心には巨大なブラックホールがあるという、その、何千億個ものブラックホールが、宇宙開闢のとき、超ミクロな宇宙に詰まっていたのだから、とても爆発などできないだろう。ブラックホール1個だって、詰め込むの大変なのに。
7 1万分の1秒で、弱い力、強い力、電磁気力が発生した。
1万分の1秒で、光が進む距離は、約30kmである。結構進む。だいたい隣町の中心まで行ける距離である。音だと、340÷1万だから、0.034mである。3cm4mmである。これだと、神様が「宇宙あれ」と言うと宇宙の「う」がのどの半ばくらいに達しているかもしれない。
それでも、まだ神様の声は口から外には出ていないから、命令を実行するのは難しいかもしれない。
このとき4つの力が完全にできたというのだから。全宇宙の物質は、質量を持った完全な素粒子になっていたということである。このときの宇宙の大きさは、明らかではないが(人によってさまざまである。10cmから、今観測されている宇宙より大きいという人まで様々である。この違い。まあ、要するにみんな適当なことを言っているということだ)。
光の速度で宇宙が膨張すると、1万分の1秒では宇宙の半径は30kmである。この中に全宇宙の素粒子が詰まっているとすると重力で完全にブラックホールになる。素粒子は素粒子でいられなくなる。光速の100倍で膨張しても高々半径3000kmの球である。とても、全宇宙の物質を詰め込める体積ではない。光速の1万倍で、やっと半径30万kmになる。まだまだ足りない。光速の31×106倍の速度で膨張したら、やっと1光年の距離になる。しかし、これでも宇宙の全物質を入れるのにはとても足りない。銀河系の星の見える領域だけでも10万光年もあるというのだから、銀河系1個入れるだけでも大変だ。
宇宙が光速の31×106倍もの速度で膨張するなどとてもあり得ない。すべての物質は粉々に砕け散るだろう。え!素粒子だから大丈夫もう究極の粉々だって。そうですね。加速器の中で、光速でぶつけた陽子が粉々になって、ヒッグス粒子まで生み出したのだから、光速の31×106倍もの速度で衝突したら、素粒子だって無事では済まない気がしますがね。でもその速度で宇宙が膨張したってとても全宇宙の物質だけでも入れるのは無理なんだから。その上、その数倍から数十倍イのダークマターやヒッグス粒子があるのだからとても入りきらない。
まあ、とにかく、ニュートンまでの物理学はなんの役にも立たないことだけで成り立っているのがインフレーションビッグバン宇宙論だから仕方がないか。どんな超光速でもありだし、どんなに小さくても全宇宙がその中に入るというのだし、無から何でも出てくると言うし。素晴らしい理論だ。この宇宙は、魔法の国×1023倍の宇宙だ。
8 結論
宇宙論なんだから空論なのは仕方ないか。言うのは何だって勝手である。でももう少し現実味があることを言ってほしいものだ。
まあ、大昔のことで、確かめようがないのをいいことに言いたい放題なのだろうけど、余りにもひどすぎるのじゃないだろうか。中世の錬金術師じゃなく、現代の科学者なんでしょ、と言いたい。
2013年11月14日 完