へいこく雑記帖


宇宙は、なぜ96%もの謎のものでできているのだろう

 

はじめに

宇宙は、「無」から突然生まれ膨張して現在に至っているという理論がビッグバン宇宙論です。

その宇宙論によると、現在の宇宙は、96パーセントの未知の物質と未知のエネルギーとでできているということです。残りのたった4パーセントが、私たちが観測できている物質、星や銀河や暗黒星雲などのガスと、星の光や星の運動エネルギーや星の持つ引力などのエネルギーでできているということになっています。96パーセントのものが、見えない、触れない、観測できない、正体がまるでわからない謎の物質や、謎のエネルギーであるというのです。わたしたちが知っているのは、太陽や惑星や、星や、銀河や、輝く太陽のエネルギーなどです。それらすべてが、宇宙の4パーセントしかなく、ほとんどが得体の知れないなにかだと云うのです。わたしたちと直接関係ないことや物がほとんどで、私たちはたった4パーセントで生きているということのようです。

 なぜそうなのでしょう。不可解です。そのことについて考えてみます。

 

T 96パーセントの謎のものを探す

 

1 ダークエネルギーとダークマター

 宇宙の96パーセントを占める謎のものは、ダークエネルギーと、ダークマターとよばれています。まるっきり正体が分からないからこう呼ばれています。

これらがどこにあるかを考えてみます。たった4パーセントしかない普通の物質(恒星、星雲、星間ガス)やエネルギー(星の熱、光、星の運動エネルギー、引力、等)が、星や、太陽や、地球や、そこらの石ころなど簡単に見つかるのですから。96パーセントもあるダークエネギーやダークマターもそこらに普通にあるはずです。普通のエネルギーや物質の24倍もあるのですからそこら中にごろごろなくてはならないはずです。ようするに、太陽系に太陽が24個、地球が24個、木星が24個、その他の惑星も24個分あるという具合です。太陽が24個もあったら地球など黒焦げになってしまいそうですが、今のところ大丈夫なようです。たぶん、謎のエネルギーは太陽のようには熱くはないのでしょう。実際非常に特殊なエネルギーのようです。

・ ダークエネルギー

ビッグバン宇宙論で言われている宇宙空間を膨張させている力です。そのことだけに働く特殊な力です。これが宇宙の76パーセントを占めているとビッグバン論者は云っています。ビッグバン論者には、使い勝手のいいとても便利なエネルギーです。

宇宙を1点から今の宇宙の状態まで膨張させ、今も膨張させているとても強い力です。ビッグバン宇宙の主役です。

・ ダークマター

重力を持ち、物質を引き付けているという謎のなにかです。これが宇宙の20パーセントを占めているということです。

ビッグバン宇宙論では、ダークエネルギーで膨張していくガスをダークマターの重力で引き寄せ、恒星や銀河を作った主役ということです。これがなければ星はできなかったということですから、非常に重要なものです。ビッグバン宇宙の名脇役です。星ができるには重力が足りないと困っていたビッグバン論者には、待望のものです。重力だけあるのですからこれほど素晴らしいものはありません。これまたビッグバン論にはうってつけのものです。

 ということで、この二つがなければ今の宇宙は存在していないことになります。ビッグバン宇宙論にとっては要のものです。ところが、宇宙の96パーセントも占め、なくてはならない重要な役割を果たしているものがなぜかダークなのです。影響は観測できても、直接そのものは観測できないのです。不思議なことです。天地創造の神様は一番肝心な手の内は見せないということなのでしょうか。

 直接見えないからといっても、その影響はあるということですから、その印を探してみます。


2 ダークなものを探す

 ダークなものは今のところ謎だから直接は観測できないということです。しかし、彼らのいるところには必ず動きがあります。それを見つければいいのです。

ダークエネルギーは、宇宙を膨張させてきたエネルギーということですので、物質が、広がっているということを見つけることで間接的に探せます。ダークマターは重力があるということなので、重力による現象を見つければ間接的ですが見つかりそうです。そのうえ、普通の物質やエネルギーの24倍もあるのですからそこいらに普通以上にあるはずですからそんなに探すのに苦労はしないはずです。そこで、観測がよくできている近いところから遠くへ順に探してみます。

 

(1) 自分とその周り

ア ダークエネルギー

 私の体は、ダークエネルギーの空間膨張で膨張しているということはありません。これは、原子の強い力や、弱い力や、電磁気力が空間膨張の力より強いから膨張しないとビッグバン論者は言っています。

 そうかもしれません。でもそうでしょうか。問題はその量です。

 通常の物質とエネルギーが半々とします。すると通常の物質は宇宙の2パーセント、通常のエネルギーは宇宙の2パーセントということになります。すると、ダークエネルギーは通常のエネルギーの38倍(=76÷2)あることになります。太陽の熱と光、地球の熱と、公転運動、太陽と地球の位置エネルギーなど、通常のエネルギーには巨大なエネルギーがあります。これらは私の体に多大な影響を与えています。それの36倍ものエネルギーを持っているはずのダークエネルギーが、どうして通常のエネルギーに負けてしまうのでしょう。しかも完膚なきまでに負けています。人間の髪の毛一筋動かせないのですから、春のそよ風にさえ勝てていないのです。どうしてでしょう。

 私の体や私の周りで膨張が一切観測されないということは、少なくとも私の周りにはダークエネルギーがないということの実証になります。ビッグバン論者の言う理由はもっともらしいですが、観測されないということは、「ない」ということの証明になります。理由より事実の方が重いです。

イ ダークマター

 私は、地球の引力で地球上にいます。ダークマターの重力でどこかに引っ張られているということはありません。あったとしても、全く影響がないくらい弱い重力しか働いていないということになります。私の周りの木や、草や、家などにもダークマターの重力は働いていません。

 ダークマターの重力が私や周りのものに働いていないということは、ダークマターが私の周りにはないということを表しています。

ウ まとめ

 このことから、私とその周りには、ダークエネルギーも、ダークマターもないということがいえます。

 

(2) 地球に、ダークエネルギーとダークマターはあるか。

 宇宙で今一番観測が正確にできるところは地球です。そこで、地球でダークエネルギーとダークマターを探してみます。地球も宇宙の一員ですから、ダークなものが宇宙の96パーセントも占めているなら地球にもかなりの量有るはずです。

ア 地球にあるダークエネルギー

これは観測されていません。地球のある空間が膨張して地球も共に膨張しているはずですが、この現象はありません。

46億年前、地球は太陽を取り巻くガスと塵が収縮してできたと云われています。膨張どころか、収縮しています。その後、現在までの46億年間、地球は一切膨張していません。ダークエネルギーはどこに働いていたのでしょう。

ビッグバン論者の言う理由は、地球の重力の力が強く空間膨張の力に打ち勝っていて、膨張しないということです。これは人間や石ころにもいえることで、電磁気力や重力が空間膨張より強いから、地球や、地球にある物質は膨張しないということらしいです。宇宙に、普通のエネルギーの38倍もあるダークなエネルギーが、ちっぽけな地球の重力に負けているのです。それも46億年かけてたったの1ミリも膨張させられていないのです。ダークなどと大げさなことを言ってもたいしたことはないみたいです。怖いお化けや幽霊みたいなものです。実際にお化けや幽霊に殺された人はいません。そんなものは思考の中だけで、実際にはいないからです。

空間膨張の現象は地球では観測できないので、ダークエネルギーは地球には存在していないという証拠になります。

これは、現在見つかっているすべての恒星や系外惑星にも共通した現象であると考えられます。銀河系にあるすべての星は、空間膨張による膨張はないということが言えます。

イ ダークマター

 ダークマターの重力によって地球がどこかに引き寄せられているという現象は観測されていません。地球に現れている潮汐力は月と太陽が主です。そのほかにも惑星の引力が働いています。しかし、ダークマターの重力は働いていません。地球の公転軌道は、太陽と他の惑星の引力で計算するケプラーの法則で一致します。

 このことから、地球ができるときから今までダークマターの重力は地球に一切働いていないということがいえます。

やはりダークマターも地球には存在しないということが言えます。有ったとしても、微々たるもので、たいしたことはないといえます。少なくとも、ビッグバン論に言うような、太陽系の通常の物質とエネルギーの5倍もの量あるということはありません。

 

ウ まとめ

 ダークエネルギーもダークマターも地球ができてから46億年間地球への影響は一切なかったということです。これは地球にはダークエネルギーもダークマターも存在しないということの証拠になります。

 

(3) 太陽系に、ダークエネルギーとダークマターはあるか

 太陽系は、2番目に観測が正確にできるところです。そこで、太陽系でダークエネルギーと、ダークマターが観測できるかを考えてみます。

ア ダークエネルギー

 空間膨張ですから、太陽系の惑星が空間の膨張につれて、軌道が膨張しているはずです。しかし、そのような観測はありません。ビッグバン論が言うように、太陽系が形成されてから46億年間に太陽系の空間が膨張しているとしても、惑星の軌道は影響されていません。これも、空間膨張より、太陽と惑星の重力の方が強いからという解釈です。少しは影響してもよさそうなのですけれど、まったくありません。宇宙のすべての銀河や銀河団を1点からここまで遠く拡散させたダークエネルギーが、太陽系の小さな惑星の軌道に46億年間なに一つ影響できないのですから、不思議なことです。太陽の引力に比べて、おそらく数十倍はあるはずのダークエネルギーがどうして何の影響力も発揮していないのでしょう。とくに、銀河系ができたのは100億年前ということですから、ビッグバン後38億年のときです。すると宇宙は、38億年間で、1点から銀河系やそのほかの銀河ができるほどまで大きく膨張していたことになります。この宇宙の全物質を1点から散り散りに膨張させたということです。全宇宙の物質が光も直進できないほどぎっしり詰まっていた、晴れ上がり以前の宇宙の巨大な重力を振り切って、38億年で無数の銀河ができるほど大きく宇宙を膨張させたダークエネルギーなのに、光が直進できるスカスカの太陽系を46億年かかってもたった1メートルも膨張させられないのです。

このことは、太陽系には宇宙を膨張させたダークエネルギーは働いていないということを表しています。太陽系にはダークエネルギーは存在しないということの証拠になります。

 これは発見されている系外惑星を持つ恒星や、連星系を持つ恒星に共通した現象であると言えます。それらにはダークエネルギーは働いていないと言えます。あるいは惑星系にはダークエネルギーは存在しないといえます。

イ ダークマター

 太陽系の惑星の公転軌道は、観測されている、太陽や惑星の引力だけで計算してぴったりです。ダークマターの重力は何一つ影響していないということがいえます。

 また、46億年前に太陽系ができたときの理論では、ダークマターが太陽系の収縮に重要な役目をしたという研究は今のところありません。

今は太陽系にはないけれどその時あったのが、星間ガスです。ガスの渦が自らの引力で収縮して太陽系を作ったとされています。太陽ができて輝き始めると、太陽の紫外線や太陽風で残っていたガスは吹き飛ばされて、太陽系の外に飛んでいってしまいました。太陽系の形成には、今のところダークマターは関係していません。

ダークマターは、重力しかありません。したがって、普通の物質のように位置エネルギーを発散するシステムがありません。普通の物質は、収縮するときに位置エネルギーが運動エネルギーに変化します。落下するボールと同じで、速度が徐々に速くなります。そして、互いに衝突します。衝突すると、運動エネルギーの一部は、熱エネルギーに変化します。この熱は、電磁波(光)となって放出されます。位置エネルギーが減少します。だから収縮できます。隕石が地球大気に衝突して流れ星になり光輝くのと同じ現象です。隕石の持つ位置エネルギーが、運動エネルギーになり、それが空気に衝突して熱になり、熱は光になって飛び去ります。恐竜を滅ぼしたという、小惑星の衝突も同じです。衝突で厖大な熱を出してそのあたりを焼きつくしたといいます。飛び散った破片は、もとの位置まで飛び出さずに、再び地球に降り注いだそうです。位置エネルギーが、熱や光になって、失われたからです。

ところがダークマターは光らないということです。重力による位置エネルギーが運動エネルギーに変化して、速度を増して衝突しても、熱にはならないのです。熱になったとしても、電磁波としてそのエネルギーを放出できないので、もとから持っていた位置エネルギーはそのまま運動エネルギーとして残ってしまいます。衝突すると跳ね返って、もとの位置まで飛び離れてしまいます。ダークマターは収縮できないのです。だから、ダークマターがあったとしても、太陽系の中心に集まって普通の物質を中心に引き寄せることはできません。かえって、平均に散らばって普通の物質の収縮を邪魔しさえします。

 これはダークマターの重力は太陽系には存在していない、すなわち太陽系にはダークマターは存在しないということの証拠です。

ウ まとめ

 太陽系では、ダークエネルギーの影響もダークマターの影響もなに一つ観測されていません。これは、太陽系にはダークマターも、ダークエネルギーも存在していないということの証拠になります。

 

(4) 銀河系に、ダークエネルギーとダークマターはあるか

 銀河系は3番目か4番目に観測が正確にできるところです。ここでは、ダークエネルギーやダークマターが起こす現象は観測できているでしょうか。

ア ダークエネルギー

 銀河系は、膨張していないと言われています。ダークエネルギーの影響は観測されていないということです。ビッグバン論者の言う理由は同じです。重力の方がダークエネルギーより強いので膨張しないということです。

 矛盾があります。銀河系を構成する物質は、宇宙誕生から数10万年間、宇宙の晴れ上がりまで、他の宇宙の物質と共に、ぎっしり詰まっていました。光も直進できないぐらいぎっしりです。それがその後38億年かけて散り散りに広がりました。これがダークエネルギーの膨張力ということです。そしてその散り散りに分散した物質がさらに膨張してバラバラにならずに何故か収縮して銀河があちこちで無数にできました。銀河系もその時できました。その後100億年間、銀河系は一つも膨張していないのです。38億年で、ぎっしり詰まった物質を、無数の銀河ができるほどバラバラに膨張させたのに、その後100億年かけても、ダークエネルギーはスカスカの銀河系をバラバラにできないのです。ダークエネルギーは銀河系では消えたとしか思えません。少なくともダークエネルギーの影響は0です。不思議な現象です。

イ ダークマター

 銀河系では、謎の重力源があって,銀河系の回転に影響を与えているということです。ここでは、ダークマターの重力による現象が観測されています。

 問題は、そのダークマターはなにかということです。

 銀河系には、星の観測されるところより外側にも、大量の水素を中心としたガスが観測されています。恒星の観測される円盤状の部分と、それを何倍にも大きく取り巻く球状の、ガスでできたハローという部分があるのが観測されています。巨大なハローの引力は銀河系の回転に大きな影響を与えていると考えられます。これが、ダークマターであると考えられます。しかし、宇宙論者はこの影響をかなり小さく見積もっています。巨大な球状のハローがあれば、銀河の回転はうまく説明できるのにもかかわらず、そのことは取り上げません。

ウ まとめ

 銀河系にはダークエネルギーによる現象は観測できていません。すなわちダークエネルギーがないという証拠になります。一方、ダークマターは銀河系では、恒星の回転速度に、謎の重力が影響しているということが観測されています。しかしそれは、謎の物質ではなく、中性水素や、電離水素を中心としたガスでできたハローである可能性があります。既知の物質で説明できるのですから、無理やり謎の物質を想定する必要はありません。

 

(5)銀河系とその伴銀河に、ダークエネルギーとダークマターはあるか

ア ダークエネルギー

 銀河系にはいくつかの伴銀河があります。マゼラン銀河は15万光年離れた所にあり、銀河の周りを回っています。そのほかにも、銀河系の引力のためにバラバラになってしまった伴銀河がいくつか回っているということです。

マゼラン銀河はダークエネルギーの力を受けて、銀河系から離れていってはいません。その他の伴銀河もダークエネルギーの影響を受けて離れていっている現象はありません。ダークエネルギーの影響は何一つ受けていないと言えます。

 このことから、銀河系とその周りの伴銀河の運動から銀河系と伴銀河の間にはダークエネルギーの影響は0であるということが言えます。

イ ダークマター

 銀河系とマゼラン銀河との重力関係で、ダークマターの存在で引き付けあっているという考えはありません。あったとしても、互いを取り巻く銀河間ガスの影響を否定することはできません。

ウ まとめ

 銀河系と伴銀河の間には、ダークエネルギーはないといえます。また、ダークマターも顕著な働きをしていないといえます。

 

(6)銀河系とアンドロメダ銀河に、ダークエネルギーとダークマターはあるか

ア ダークエネルギー

 銀河系と、アンドロメダ銀河は接近しているという観測があります。このことから、銀河系とアンドロメダ銀河の間にはダークエネルギーの影響はないということが云えます。

 また、アンドロメダ銀河の伴銀河も、アンドロメダ銀河を回転していることから、これらと銀河系との間にもダークエネルギーの影響はないと考えられます。

 このことから、銀河系と、アンドロメダ銀河の間の260万光年の間にはダークエネルギーの影響は存在しないと言えます。これはダークエネルギーを否定する現象であるともいえます。

 このことから、地球から半径260万光年の宇宙にはダークエネルギーの影響は0であるといえます。

イ ダークマター

 アンドロメダ銀河と、銀河系が接近している原因は、それぞれの通常の質量によるものか、ダークマターが関与しているのかは不明です。

 それは、ダークマターが何によるかが不明であることも原因です。銀河系の周りには大きく通常の物質からできたガスのハローが存在することが観測されています。そのガスは、薄まりながらも遠くアンドロメダ銀河のハローにもつながっているということです。

これが、ダークマターである可能性はあります。

 このあたりになると距離さえ変遷しているので、観測がそれほど正確ではないことが言えます。私自身分からないところが多いので言及が難しいところです。

ウ まとめ

 銀河系とアンドロメダ銀河の間には、ダークエネルギーは存在しないといえます。また、アンドロメダとその伴銀河の間にもダークエネルギーは存在しないといえます。

 ダークマターも謎の物質の重力による影響は確認されていません。

 ともに、地球から半径260万光年の宇宙にはダークエネルギーもダークマターもないといえます。


(7)銀河系と局部銀河団にダークエネルギーとダークマターはあるか

ア ダークエネルギー

 銀河系と、アンドロメダ銀河などは、近くの銀河と共に局部銀河団を作って、引力で結びついて集団で動いているということです。これは銀河系が含まれる局部銀河団にはダークエネルギーによる銀河間の膨張は観測されていないということです。ダークエネルギーの影響が観測されない、すなわち、ダークエネルギーが存在しないということがいえる可能性があります。反対に、ダークエネルギーがあるという現象はありません。

 局部銀河団の引力を合わせた力の数10倍は大きいはずのダークエネルギーが、なに一つ局部銀河団の銀河の動きに影響していないのはビッグバン論の矛盾です。

イ ダークマター

 局部銀河団の動きは通常の物質の数倍あるというダークマターの重力が関与している可能性はあります。しかし、それも、銀河間ガスによる可能性はあります。局部銀河団も銀河と同じように、巨大なハローに包まれています。ガスにすっぽり埋もれているのです。これがミッシングマスと言われていたものです。

 

ここまでのまとめ

ア ダークエネルギー

地球から、アンドロメダ銀河まで、近くで観測がかなり正確にできるところでは、ダークエネルギーはその影響がまったく見られません。銀河の持つ運動エネルギーや熱エネルギーや引力などの通常のエネルギーをすべて足したものの36倍もあるはずのダークエネルギーがなに一つ影響していないというのはどうしてなのでしょう。

これは、銀河系から300万光年くらいまでの範囲には、ダークエネルギーは机上の空論にしかすぎないということを表しています。この範囲にはダークエネルギーは存在しないと云っても差支えないということです。

 

イ ダークマター

 太陽系にはダークマターの影響は観測されていません。マゼラン銀河やアンドロメダ銀河の動きに、ダークマターが関与している可能性はあります。それが、銀河や、局部銀河団のハローのガスの影響である可能性はどうなのでしょうか。

 近年観測技術の向上により、銀河には、水素を中心とした大きなハローが存在していることが観測されだしてきました。これとダークマター(ミッシングマス)との関係はどうなのでしょう。ビッグバン論者は通常のガスではビッグバン宇宙に星ができないので困るのでこれを否定するでしょうが、観測されていない未知の物質より、観測され出した銀河のハローのガスの方が、ミッシングマスとしては可能性が大きいのではないでしょうか。

追記 ミッシングマス

 銀河の回転を調べると、本来、外側に行くほど星の回転速度が落ちなければならないのに、速度が落ちていない、そのための重力は、見える星の重力ではとても足りないということが発見されました。なにか目に見えない重力源がある。これをミッシングマスと名付けました。また銀河団の銀河の動きも、同じように、見える銀河の質量だけでは足りないということです。やはり銀河団にはなにか見えない重力源(ミッシングマス)があるということになりました。それと、ビッグバンの後、星や銀河ができるための重力源としてのダークマターが一緒になって、今では、ミッシングマスという言葉はなくなって、ビッグバン論のダークマターになっているようです。しかし、観測技術が向上して、銀河や銀河団に、新たに、見える星以外に、それまで見えなかったガスのハローが観測されるようになっています。その量はかなり多いようです。このガスのハローがミッシングマスとすると、銀河の回転も、銀河団の銀河の動きも説明できます。また、銀河の外側に、大きくハローがあればいいのですから、太陽系内に、見える物質の5倍から10倍ほどものダークマターがなくても大丈夫です。

 

(8)ハッブルの観測した銀河にダークエネルギーとダークマターはあるか

 ハッブルの観測した銀河は距離に比例して赤方偏移しているということでした。そこから、宇宙は膨張しているということになりました。

ア ダークエネルギー

銀河は赤方偏移している。→ 銀河が地球から後退している。→ 空間が膨張している。とビッグバン論者は言っています。

 しかし、最初の頃言われていた銀河の後退速度による赤方偏移は、ビッグバン論者も今は否定しています。銀河が後退することで起こるドプラー効果で赤方偏移しているのではなく、空間が膨張することで光が引き伸ばされて赤方偏移していると言っています。そして、空間が膨張するので、その膨張と共に銀河も離れていっているというのが今のビッグバン論です。

 今は、銀河団に属する銀河どうしは重力でしっかり結びついているので、空間膨張では離れていかないと言っています。太陽系が膨張していないのと同じ理由です。したがって、銀河系が属するおとめ座銀河団内の銀河は空間膨張では離れていっていないということになります。ハッブルの見つけた銀河の赤方偏移は、彼も言っていたように、銀河の後退によるドプラー効果の赤方偏移ではなく、空間膨張による赤方偏移ということになりそうです。

 このあたりは宇宙論者もとても混乱しているようです。いまだに銀河の後退によるドプラー効果で説明している本があります。空間膨張と説明しながら、ドプラー効果を持ちだしている本もあります。

 なぜ混乱しているのかは定かではありません。後退していない銀河が赤方偏移しているのですから、銀河の赤方偏移は後退速度によるドプラー効果でないのは明らかなのですから混乱することはないはずです。

その混乱の原因の一つが、空間膨張の持つ問題なのではないでしょうか。

空間の膨張の仕組みが何一つ解明されていないことがまず挙げられます。空間膨張のエネルギーとされるダークエネルギーが、ダークである以外に何も解明されていないのもその表れです。空間膨張は今まで分かっている物理理論にはあてはまらない現象なのです。空間は実質なにもありません。なにもないものが膨張してもなにもありません。なにもないということでは同じことです。なにもない空間がどのようにして光を引き伸ばすのかの憶測的説明はできても科学的説明ができないのではないでしょうか。また、空間は3次元に膨張しているということなのに、光を前後に引き伸ばすだけで、なぜ上下や左右に引き伸ばさないかの説明もできていません。光が赤方偏移するということは光のエネルギーが減るということです。減ったエネルギーはどこに行ったのかも不明です。エネルギー不変則に反しています。

このように、空間が銀河の光を引き伸ばすことで赤方偏移が起こったとすると、原理は証明されていないし、今の物理学に反することが起こってしまいます。しかし、後退速度によるドプラー効果なら、科学的説明も実証もできているので、こちらの方が説明しやすいからではないでしょうか。でも違う理由を持ちだして説明しても説明にはなりませんから、残念ながらドプラー効果を持ちだすのは間違いです。空間膨張が光を進行方向にだけ引き延ばす仕組みを科学的に述べて、説明すべきです。

 ともあれ、ハッブルの発見した銀河は銀河系と同じ銀河団に属しているので、地球からは離れて行ってはいないということです。ここでも、ダークエネルギーは銀河などの物質は動かしていないということがいえます。もし宇宙膨張があったとしても、空間膨張だけです。しかし、空間膨張が直接観測されたわけではないので、空間膨張があるということは言えません。

観測されたのは銀河の赤方偏移だけです。問題は、上に書いたように、銀河の赤方偏移は、空間膨張によって起こっているという科学的理論もないし、実証もなされていないということです。ビッグバン論者の憶測的主張にとどまっているということです。定説というときは科学的に矛盾のない説明ができる理論と実証が必要ですが、上に書いたように説明には矛盾がありますし、実証もありません。

銀河の赤方偏移が空間膨張によって起こっているので実証になるというのは間違っています。銀河の赤方偏移の原因はまだ不明です。決まっていると云っているのは、ビッグバン宇宙論者だけです。銀河の光が空間膨張によって起こっているかを見極めているのに、そのことで、証拠であるということはできません。

 実際、銀河の光の赤方偏移は他の原因でも起こることは可能です。それは、光は物質に衝突するとエネルギーを奪われて赤方偏移する、という現象です。たとえば部屋の電灯の光は部屋に溜まっていくことはありません。光が次々と電灯から出ているのだから部屋はどんどん明るくなってもおかしくはありません。ところがそうはなりません。また、電気を消すと部屋は瞬時に暗くなります。光は部屋に溜まらないのです。その原因は次のようです。

光が壁に当たると壁の分子を振動させます。そのぶん、光はエネルギーを壁の分子に取られるので、光はエネルギーを減らします。光は光速ですから、瞬時に何十万回も壁に衝突するのでエネルギーを瞬時に失ってしまいます。光は壁に当たるたびに赤方偏移し、赤外線からマイクロ波になって壁を通りぬけていきます。だから、光は部屋に溜まらないし、電灯を消すと瞬時に暗くなるのです。そのために壁は少し温度が上がります。

このように、光は物質に衝突すると、物質の分子を振動させるのでエネルギーを失います。エネルギーを失うので振動が遅くなります。その分波長が伸びます。赤方偏移です。これだと光の波長だけが伸びます。波高や、横幅が伸びないのはこれで説明できます。理論もあります。実証もあります。エネルギー不変則にも反しません。

 銀河の赤方偏移は銀河内や銀河間にある水素を中心とした分子に光が衝突するために起こっているとも考えられます。銀河間や、銀河内にガスがあるのは観測されています。銀河の光のスペクトルに暗線として物質に衝突した痕跡が残っているのも観測されています。こちらは、科学的に起こる仕組みも解明されていますし、実証もあります。空間膨張による赤方偏移が、なに一つ科学的理論も実証もなくエネルギー不変則にも反しているのとは大きな違いです。

 

イ ダークマター

 銀河の回転が外側でも速度が落ちないということが観測されています。これが、謎の重力源(ミッシングマス)が銀河に存在するという根拠になっています。

 問題はその謎の重力源がなにかということです。最初の頃は、銀河の見えるもの、恒星の重力だけを基準に考えていました。しかし、銀河には、ガスがあります。このガスの量が問題です。それを最初は無視していました。遠い銀河では観測できないのでないものとしていたのでしょう。特に中性水素の出す光は、昼間星を見るのと同じくらいに観測が難しいことでした。ところがそれが大量にあることが最近観測され出しています。ある渦巻銀河では、ガスが、球状のハローとなって銀河を大きく取り巻き、楕円銀河と同じ状態になっているということです。楕円銀河なら、渦巻き状の外側も、回転速度が落ちないので、観測に謎はなくなります。

 謎の重力源は、銀河を取り巻く大きなガスのハローということです。謎の物質ではないということです。しかし、今でも、このガスの量を小さく見積もっています。それは、ビッグバン論では、謎のダークマターがなければ今の宇宙ができないからです。通常の物質では困るのです。必要なのは重力だけなのです。ほかのもの、たとえば光を出すということがあっては困るのです。ダークマターが光を出すと、ダークマターだけの恒星や、通常の物質とダークマターが混ざった恒星ができなくてはならなくなるからです。通常の星の数倍ものダークマターの星が必要になります。そんなものは観測されていませんから、それでは困るのです。また、通常の物質だけでは、いくら増えても、今の恒星や銀河がある宇宙はできないからそれでも困るのです。ということで、銀河のガスは無視しているのが今の状態です。

 銀河の謎の重力源、ミッシングマスと言われていた、今ではダークマターと呼ばれているものは、謎の物質ではなく、水素を中心としたガスということです。

ウ まとめ

 ハッブルの観測した銀河も離れていっていないし、ダークマターの影響も、通常の物質で説明ができそうです。ダークエネルギーもダークマターもなくても大丈夫です。いえ、ない方が説明に矛盾がなくなります。

 

(9) 銀河団にダークエネルギーとダークマターはあるか

 現在多くの銀河団が観測されています。

ア ダークエネルギー

銀河団はたくさんの銀河が集まっています。銀河団の銀河は引力で結びついていて、集団になっています。そのことから、銀河団内の銀河は空間膨張の力より、重力の方が強いので離れていくことはないと云われています。銀河団の中の銀河の総重力エネルギーの数十倍はあるであろうダークエネルギーが、銀河の運動になんの力も発揮していないのです。

ダークエネルギーの影響が銀河団内の銀河間に現れていないのはどうしてなのでしょう。これはダークエネルギーが銀河団内にはないという証拠には使えても、あるという証拠には使えません。

 今言われていることは、空間膨張の影響で離れて行っているのは銀河団同士であるということです。これがダークエネルギーの現れている最後の砦です。

 しかし、銀河団同士でも衝突しているものが観測されています。銀河団同士でも離れていくものもあれば、近づいているものもあるということです。離れていく銀河団にも条件が必要ということです。これでは、宇宙開闢以来物質が膨張してきたという考えに赤信号が出てしまいます。

 考えてみます。宇宙がビッグバンで始まったとき、宇宙の物質は非常に小さな領域にぎゅう詰めになっていたということです。だから火の玉であったということです。すると、宇宙のすべての物質間の距離はなかったということです。数十万年後の宇宙の晴れ間のときまで、電離した物質の粒子のために光も直進できなかったというほどぎゅう詰めだったのによくバラバラになれたこと。太陽系くらいバラバラ(光は直進できています)でも、太陽の引力だけでダークエネルギーを凌駕しているのですから、全宇宙の物質が火の玉になるくらい詰まっていたら、その重力でダークエネルギーではバラバラに離れていくことはできないはずです。

 (参考;火の玉の爆発ということも考えられます。しかし、この場合、距離に比例して離れる速度が増加するということは起こりません。通常の爆発のように、離れる速度は距離に関係なく一定です。火の玉の爆発では空間膨張は説明できません)

 

もうひとつの問題。

銀河団同士は、銀河ができたと云われている百億年前はもっとはるかに近かったはずです。銀河団ができて百億年の間、離れていったのは銀河団同士だけで、銀河団内の銀河の間は広がっていないのですから、銀河団の大きさは今とほぼ同じはずです。すると、さかのぼると近づくのは銀河団同士だけになります。銀河団は過去に非常に近くにあったということになります。

銀河系ができた、今から100億年前ころから銀河団は膨張していないことになります。そのころは宇宙ができてまだ38億年ほどしか経っていないのですから、宇宙は今よりはるかに小さかったはずです。そこに今とほぼ同じ大きさの銀河団が何百万何千万と入っていたのですから、銀河団同士はくっついていたのではないでしょうか。

また、100億年で2点間の距離が2倍になるといわれていますから、銀河ができた100億年前には銀河団の距離は今の半分ということです。それだけ近づくと、衝突する銀河団がもっとあってもおかしくないはずです。銀河団どうしが近くにあるのに、どうして離れていけたのでしょう。不思議な現象です。

 衝突している銀河団を考えてみます。この銀河団を構成している物質やダークマターは、1点から膨張を始めたというのがビッグバン論です。宇宙開闢のとき1点にあった物質とダークマターは、ダークエネルギーの力で膨張したということです。そして、後に銀河団になる粒子であった物質はバラバラに離れていきます。互いに及ぼす重力は距離の2乗に比例して弱まって行きます。ダークマターも同じようにバラバラになり、互いの及ぼす重力は弱まります。ところがある時点から、粒子であった物質は、それまで、離れていっていたのに収縮し始めます。ビッグバンの頃より粒子間が広がり、及ぼし合う重力が弱まったのに、なぜか広がらずに近づきくっつくのです。理由は、宇宙に広がっていた粒子やダークマターのかすかな揺らぎが、膨張から収縮に転じる原因であったということです。しかし、揺らぎは最初からあったのに、それまでは膨張していました。揺らぎも、空間膨張のために引き伸ばされてより平坦になって行ったはずです。そのために粒子間の重力の偏りは弱まったのにどうして粒子間は収縮に転じたのでしょう。それにダークマターの重力が貢献したとしても、ダークマターも宇宙空間の膨張で薄くなっているはずだから、及ぼす重力も弱くなっているはずです。

一方、ハッブルの法則では、距離に比例して膨張速度が速くなるということです。すると、最初、小さな宇宙のとき粒子間の距離が小さいと、離れる速度も遅くなるはずです。膨張するに従って距離が離れると、ハッブルの法則から、膨張速度も速くなっていきます。このことから時間が経つにしたがって膨張速度が加速します。粒子間の膨張する力が強くなるということです。

 粒子間の距離が短いので離れる速度が小さくて重力が大きいときには、宇宙空間の膨張のために粒子は互いに離れていき、時間が経って、粒子間の距離が大きくなって、離れる速度が速くなり、互いに及ぼす重力が弱くなったときに粒子が近づいてくっつくことになります。矛盾しています。

 そのあたりはどうなっているのでしょう。

 これは銀河形成でも同じです。

銀河を構成している普通の物質は、ビッグバン当初は粒子の形で存在していて、ぎゅう詰め(ぎゅう詰めなのに、粒子でいられるのが不思議ですが、宇宙の晴れ上がりまでは電離して飛びまわっていたということです。ブラックホールよりぎゅう詰めでも飛びまわっていたのです。光速で宇宙が広がっても、50万年では半径50万光年です。銀河団1個分にも足りません。そこに、全宇宙の銀河団とダークマターを詰め込んだら物質は完全につぶれてしまうでしょう)でした。それがバラバラになって離れていき、互いに及ぼす重力は弱くなっていきます。それがあるときからくっつきだします。それがやがて恒星になります。恒星を生むのはガスです。ガスは、ビッグバン当初1点に集まって火の玉でした。それがダークエネルギーでバラバラになり、火の玉ではなくガスになります。火の玉時代より、ガスを構成する分子間の距離ははるかに大きくなっています。すると、互いに及ぼす重力は小さくなっています。すると、離れる速度は大きくなるはずです。ところが反対にくっついていきます。それが渦巻になり、恒星が生まれていきます。元々ひと塊であった物質がダークエネルギーの力が重力を凌駕し離れていったのに、及ぼし合う重力が小さくなったときにまた集まりだして、銀河を作ったのです。これもダークマターの重力だということですが、そうでしょうか。やはりダークマターもバラバラになっていっていたのですから、その重力が及ぼす力は小さくなっていたはずです。

矛盾した現象です。

 

まとめ

1 ダークエネルギー

 ここまで見てきたとおり、ダークエネルギーが実際に現れている現象は存在しません。では、何がダークエネルギーの存在を示しているのでしょう。それは、宇宙空間が膨張しているという考え方です。ではその考えはどこから出てきたのでしょう。それはハッブルが観測した、銀河の赤方偏移からです。それだけです。そしてそれを確定させたのが、宇宙背景放射、とビッグバン論者は言っています。

 では、銀河の赤方偏移は空間膨張の証拠になるでしょうか。なりません。書いたように、銀河の赤方偏移は、宇宙に漂う希薄な水素分子や塵に銀河の光が衝突してエネルギーを失うことから起こっている可能性があります。この、光が物質に衝突するとエネルギーを失う現象は、理論も実証もあります。しかし、空間が膨張することで、光が引き伸ばされるということは科学的理論も実証もありません。既知の実証された理論で説明できる現象は、新たな理論の証明に使えないという科学の方法論があります。それだと、銀河の赤方偏移は、塵に衝突して銀河の光がエネルギーを失っているために起こっているということになります。

 また、宇宙背景放射は、宇宙に漂う塵の出す光で説明できます。これが宇宙の平均温度です。

 銀河の光の赤方偏移も、宇宙背景放射も宇宙に漂う塵やガスで説明できます。理論もなく直接の観測もない空間膨張で銀河の赤方偏移を説明する必要はないのです。銀河の赤方偏移は、既知の証明された理論で必要十分間に合います。謎のダークエネルギーはまったく必要ありません。

 

2 ダークマター

 銀河や、銀河団の周りに観測されているということです。これは、通常の水素を中心とした、銀河のハローや、銀河団のハローと同じ所に存在しています。ということは水素を中心としたハローで説明ができます。未知の物質である必要は少しもありません。今まで、観測技術の問題で観測できなかっただけです。理由は、中性水素は、昼間の星のように、地球の周りの水素の光にかき消されて地上の観測機器では見えないからです。今はいろいろな観測機器が宇宙に挙げられているので、観測ができるようになったのです。

 地球や太陽系や銀河内にダークマターがないのは、そのためです。太陽系内や銀河内にも有るのですが、多くはハローとして存在するからです。なぜなら、ハローは広大な体積を持っているからです。いくらまばらにしか水素分子がなくても、体積が大きいから、全体の質量は膨大になるのです。

 しかし、困った問題も出てきます。ダークマターが通常の物質であったらビッグバンの後で星や銀河ができるために必要な重力がなくなるということになります。それではビッグバン論者は困ることになります。

 答えは簡単です。ビッグバンはないのです。宇宙は膨張していないのです。ダークエネルギーも、ダークマターもないのですから宇宙は定常なのです。宇宙が定常空間なら、今観測されている物質やエネルギーだけで宇宙はほぼ説明できます。謎のエネルギーや、謎の物質で96パーセントも占められているという現実離れした不可思議な宇宙を考える必要はありません。

 謎のものが96パーセントも必要な宇宙論はそもそも間違いなのです。ギリシャ神話の時代ならそうかもしれませんが、今の観測技術で観測できないものが96パーセントもあるというのはそもそもおかしいのです。

 どうしてそんなことになったかというと、ハッブルの見つけた銀河の赤方偏移の解釈が間違っていたからです。その間違った解釈を正しいとするために、謎のエネルギーや謎の物質が必要になったのです。間違いを正しいとするためにさらに間違いが増えたのです。

 宇宙が定状であっても、何の問題もありません。かえって、宇宙が膨張宇宙であるためにはこのほかにも多くの問題が生じています。

 

U その他の謎


1 ビッグバン宇宙はどこに出現したのかの謎

 それについては問う必要はないというのが、大方の意見です。しかし、宇宙が点として生まれ広がったというのですからその場所を問う必要があります。

 最初なにもない「無」から生まれたという人もいます。あるいは「真空」から生まれたという人もいます。ではその「無」なり、「真空」なりはなにかを問うても、答えはないでしょう。「無」も「真空」も何もないからです。

 このことに、一つの考え方があります。

キリスト教では、神の住む場所と、人の住むこの宇宙との二つがあることになっています。プルートという人は、われわれの住むこの宇宙は無限に広がっていると言ったために死刑になっています。理由は、人の住むこの宇宙が無限に広がっていると、神の住む場所がなくなるからです。神の住む場所がなくなることは神の存在を否定することになるからです。ガリレオが「それでも地球は動いている」といっても死刑にならなかったのは、地球が動いても神の住む場所を否定したことにはならないからです。

 ビッグバン論は、この神の住む場所を現代科学が提供したことになります。人の住むこの宇宙は、元からある「無」あるいは「真空」に突然小さな火の玉になって現れたということです。その現れた場所が、神の住んでいた「無」という名の宇宙空間です。「無」は人には計り知れなない何かともいえます。これで、神が最初に住んでいた「無」という空間と、そこに、現れた小さな宇宙が大きくなって人間の住むこの宇宙になったということで神の場所と人の場所の住み分けができたことになります。キリスト教にとっては願ってもない考えです。20世紀の最新科学がキリスト教の天地創造を改めて証明したということになったのです。ビッグバン宇宙論はキリスト教にとってとても素晴らしい考えなのです。

 ビッグバンを最初に唱えた人が科学者であり牧師であったということもこの考えに影響したということがいえそうです。

 そして、ビッグバン以前のことや、ビッグバンの外側のことは問う必要がないというのもそこからきている気がします。それは神の住む場所だから人間が問う必要はないし、問うことはできないということなのでしょう。しかし、1点から始まったのだから、1点の外側はどうなっているのだろうとか、広がって行くのだから、この宇宙の外側はどうなっているのかとかの疑問は必ず出てきます。問う必要はないということではないはずです。まあ、無限は問うても答えはないかも知れませんが。

 もしビッグバン宇宙が正しいとすると、ビッグバンでできた宇宙の外側は、無限の広がりがあるのではないでしょうか。そしてそれは膨張しない定状の状態ではないのでしょうか。これは、ビッグバン論以前にあった定状宇宙論の宇宙と同じです。定状宇宙論でも、やはり、宇宙は無限に広がっていて、そこに銀河が無数に散らばっているという考えです。ビッグバン宇宙論では、神の住む宇宙が無限に広がっていて、その中に銀河が散らばっている我々の宇宙が浮かんでいるという考えです。どちらも定状宇宙の中に銀河が散らばっています。違いは、定状宇宙の無限の宇宙に銀河が散らばっているという宇宙と、定状宇宙の一部にこの宇宙があって、その中だけに銀河が散らばっているという違いです。どちらにしろ、人間が観測できる範囲には銀河が散らばっているのは同じです。その先その先と、観測は遠くに伸びていったけれど、どこまで行っても今のところ銀河があるのは変わりありません。その先に何もない空間(?神の住む空間)だけが広がっているのか(ビッグバン宇宙)、それとも果てしなく銀河が散らばり続けているのか(定状宇宙)、今のところ見極められていません。今のところ、どこまでも銀河が散らばっていて、この宇宙の先のなにもない空間は観測されていないので、この宇宙は限りなく続いているという方に軍配が上がりそうです。

 

2 宇宙の生まれ方の謎

量子論とビッグバン 

ビッグバンが生まれる仕組みに「真空」が出てきます。量子論では真空から常に量子が生まれては消えている、それが突然暴走してビッグバンになったというのが、ビッグバン理論です。

この場合は、始まりに真空という宇宙が出てきます。これはこの宇宙が生まれる前にすでに存在しています。その宇宙については大きさも何があるのかもあまり検討されていません。有るのは、真空と、真空の揺らぎだけです。その真空の揺らぎが1対の量子を生み、すぐに対消滅します。それがあちこちで起こっています。その真空の宇宙がビッグバン宇宙の母体になります。宇宙の種は生まれてはすぐに消えている量子です。どのように量子がこの宇宙になるのかは人によって違うようです。

その一つは、たくさんの量子対が一斉に生まれてすぐに対消滅したのだが、対称性の破れというのがあって、消えずに残ったのがこの宇宙になったというのです。この考えだと、この宇宙の全物質の何兆倍、あるいは何京倍かわからない粒子が宇宙誕生の瞬間に生まれてすぐに消えたということになります。この宇宙に今ある物質だけでも、目も眩むほどあるのに、その何兆倍もの物質が生まれてひと所に集まっていると、一瞬であったとしても大変なことになります。また、真空のひと所でそんなにたくさんの粒子を生むのには、真空の揺らぎだけでは間に合わないでしょう。真空の嵐か、真空の激震でも足りないでしょう。これは量子論ではなく、超マクロの世界です。この宇宙の物質の何兆倍もの物質を生むのですから、量子論の範疇ではありません。

その矛盾はさておき、その真空の中でこの宇宙は膨張します。すると、この膨張する宇宙の端の先には揺らいでいる真空がまだ無限に続いていることになります。だからその宇宙にまた新たな宇宙が生まれる可能性があるということになります。ある考えでは、その宇宙の中に、宇宙ができると、いくつもの子宇宙ができ、その子宇宙から孫宇宙ができ、曾孫宇宙ができと、際限なく宇宙ができるというのです。最初にあった揺らぐ真空の宇宙の中に、いくつもの膨らんでいく気球が浮かんでいるようにいろいろな宇宙が浮かんでいるというのです。最初の土台となった宇宙は無限の大きさだから直径何百億光年の宇宙であっても、いくらでも浮かべることができるのでしょう。

 ビッグバン宇宙にしろ、いくつもの宇宙が浮かんでいる宇宙にしろ、最初からあるのは、無限に続く膨張しない揺らぎのある真空があるだけの宇宙だから、基本になっている宇宙は無限に広がる定状宇宙です。

ビッグバン宇宙論が出る前に言われていた定状宇宙は、定状の宇宙空間の中に銀河やガスが散らばっているという宇宙です。ビッグバン宇宙は定状の真空の宇宙の中に限定された膨張する宇宙があって、その中に銀河やガスが散らばっているということです。ただ、真空を人は見ることはできないから、土台の真空と、その中で膨張する宇宙の真空の間を区別することはできないので、定状の真空の広がりの中に銀河が散らばっているという、見た目は同じ宇宙になります。

ビッグバン宇宙が昔の定状宇宙と違うのは、ビッグバン宇宙には通常の物質以外に96パーセントの謎のエネルギーや謎の物質があるということです。しかし、これは見ることはできないようなので、やはり見た目はどちらも無限に広がる定状宇宙空間の中に銀河が散らばっている宇宙です。ビッグバン宇宙では距離に比例して銀河が赤方偏移しているということで違いが分かるということかもしれませんが、定状宇宙でも銀河間のガスで銀河の光は距離に比例して赤方偏移しますから、やはり見た目は同じです。

 

3 宇宙の誕生のなぞ

 ビッグバン宇宙は、真空から量子が生まれるように、この宇宙も生まれたということです。問題は、今の宇宙は巨大なエネルギーを持っています。巨大な物質も持っています。

 生まれたときの宇宙は、無数の粒子があったということです、それは対消滅してほとんどが消えてしまったということです。残ったのはそのごく一部だそうです。そのごく一部のものが、これだけの銀河を作っています。生まれたときの宇宙はどれだけの物質を生んだのでしょう。無からよく生まれたこと。不思議。謎ですね。

 通常の物質だけでそれだけあって、そのほかにその約24倍ほどのダークエネルギーやダークマターも生んだというのだからとてつもなくすごいことです。おそらく神だってそうは一度に沢山はうまく産めないでしょう。魔法使いなら杖の一振りで大丈夫かも知れませんが。ビッグバン宇宙誕生の法則は謎という法則以外の法則はなにもありません。

 

4 インフレーションの謎

宇宙はビッグバンの前に、インフレーションという時期があったということです。これは0.001秒よりずっと短い時間で起こって終わったということだそうです。

 それも、光速の千倍とか数兆倍とかの速度で小さな生まれたての宇宙は膨張したというのです。

 例えば0.1秒の早撃ちのガンマンが、銃に手を触れるか触れないうちに、生まれたての宇宙は光速の何兆倍もに加速し、それを、また通常の速度にまで減速したというのです。すごい速業です。居合抜きの達人が刀を抜いて相手を切り、また鞘に刀を納める速業の、何兆倍の何兆倍の何兆倍の何兆倍もの早業です。それこそ、目にもとまらない速業でしょう。瞬きを始めようと思ったらもう終わっていたというくらいの早業です。

 どのようにして加速したのでしょう。どのようにして減速したのでしょう。加速にはエネルギーがいります。全宇宙を光速の何兆倍にも加速するのですから、とてつもないエネルギーです。それはどこから調達したのでしょう。また、減速にも同じエネルギーがいります。そのエネルギーはどこから湧いてきたのでしょう。

 すべて謎です。エネルギー不変則はここでは通用しません。有るのは「謎」という法則だけです。ひょっとして、「神のひと声」でしょうか。あるいは魔法使いの杖の一振り。

この現象はどこから生まれたと思いますか。なにか観測した事実から生まれたのでしょうか。あるいは真空の理論からとか。そうではありません。それは、ビッグバン宇宙論では、平坦性とかいろいろな矛盾があって宇宙がうまくできないから、超光速の膨張があればその矛盾が解決するということで生まれたのです。ビッグバン論の矛盾を解消するために造られた理論です。宇宙の実際の観測から生まれたものではないということです。矛盾を解消するためにもっと大きな新たな謎を生みだしたということです。

 これが間違いをごまかすために新たな間違いで上塗りすることにならなければいいのですが。

 何にしろ、インフレーション現象は、今分かっている物理学を完全無視、あるいは否定する現象です。どちらかといえば神の世界、あるいは魔法の世界なら可能かもしれないという現象です。現象というより幻想です。

 

5 ビッグバンの謎

ビッグバンはインフレーションで膨れた宇宙が火の玉になったところから始まるようです。その始まりの大きさは科学者により異なるのですが、直径1センチから、この宇宙より大きいというところまで千差万別です。この宇宙より大きいとなると、火の玉にはなれない気がするので、10センチとか、100メートルとかから始まった方を考えてみます。

 ビッグバンが始まると、すぐに、強い力や、弱い力、電磁気力と共に重力が生まれたようです。

(1) 謎1 ブラックホール

 すると、困ったことが起きます。地球を9ミリにまで縮めるとブラックホールになるということです。10センチとか100メートルの宇宙の中に宇宙の全物質を詰め込むと、必ずブラックホールになるはずです。太陽1個でもブラックホールになります。ところが宇宙はなぜかブラックホールにはならずに膨張していきます。

今のところ、ブラックホールは爆発で飛び散らないということになっています。するといかにビッグバンといえども、おいそれとは爆発できないことでしょう。どのようにして小さな宇宙に詰め込まれた全宇宙の物質をバラバラに飛び散らせたのでしょう。謎です。また、なぜ宇宙はその時にブラックホールにならなかったのかも謎のままです。

宇宙論の本でこのことを説明した本に出会っていません。大切なことなのに無視しています。火の玉はブラックホールにはならないということではないはずです。そうならその理論が必要です。超新星(火の玉)の後、元の星の中心にブラックホールができるという理論もあります。今の物理学で考えられているブラックホールの原理では、宇宙のすべての物質が直径100キロメートルの中でも詰め込まれたら、必ずブラックホールになります。それなのにやすやすと膨張しているのですからその理由を解き明かす必要があるはずです。

できたての宇宙がその途端にブラックホールになったら今の宇宙ができないので最初から困りますからね。かといってブラックホールにならない理論もないでしょうから無視するしかないのでしょう。

(2) 謎2 ハッブルの法則

ハッブルの法則では距離に比例して離れる速度が速くなります。ハッブル定数では1メガパーセクで秒速80キロメートルほどの速度で離れていっているそうです。また、2点間は100億年で2倍に広がるという人もいます。

 すると、宇宙ができて138億年後の今日では、宇宙の大きさはできたときより約2,5倍ほど大きくなったことになります。

 直径10センチで始まったとすると、現在の大きさは25センチほどになります。これでは現実とあまりにも離れすぎています。ではインフレーションで直径10光年になったとします。そこからビッグバンが始まったとすると、今、宇宙は直径25光年ほどになっています。これでも今の宇宙とはほど遠い値です。地球からどの方向にも120億光年ほど離れた所に銀河が観測されているのですから、最初は、少なくとも100億光年の大きさはいります。それでやっと地球から見てどの方向も120億光年ほどになります。地球が宇宙の中心だとしてもそれだけいります。地球は宇宙の中心ではないということですから、始まりはもっと大きくなければなりません。すると、インフレーションが終わったときに宇宙はすでに直径100億光年以上に大きくなっていたという説が有力になります。しかし、これではとても火の玉にはなれそうにありません。あちらを立てればこちらが立たずです。

 もうひとつの問題も起きます。ハッブルの法則は、138億年時間をさかのぼれば、宇宙は1点に集まるという計算でした。これでは1点に集まれません。138億年遡ると、宇宙はもうすでに100億光年以上の大きさになっているのですからハッブルの法則と矛盾します。

 ここにも矛盾と謎しかありません。

 

(3) 謎3 空間膨張

 宇宙空間が膨張することで、この宇宙の物質も膨張(拡散)してきたというのがビッグバン説です。

ア 空間膨張の仕組み

 水銀柱などのように、空気を抜くと中には物質は残りません。有るのは、引力と、電磁波です。昔は、空間はエーテルが充満していたという考えがありましたが、アインシュタインがそれを否定しました。今は、ヒッグス場というものがあるそうです。ビッグバンの頃は宇宙空間にはヒッグス粒子が詰まっていたようですが、今はヒッグス粒子はなくて、ヒッグス場になっているようです。場だから実質はなにもないのと同じです。磁場は磁力線が実際に飛んでいます。重力場は実際に重力が働いています。しかし、ヒッグス場にはヒッグス粒子はなく、そのほかに電磁波のようなヒッグス波のような何かがあるということもないようです。実質はなにもないようです。

加速機の中で光速で飛ぶ陽子は、空間のヒッグス場の中を飛んでいるはずなので、ヒッグス場に常に光速で衝突しているはずですが、そのことで起こる現象はなにもありません。もちろんヒッグス粒子と衝突もしていません。ヒッグス粒子が検出されたのは、光速で飛ぶ陽子同士を正面衝突させたときです。これは衝突したことで粉々になった陽子の破片と考えられます。ヒッグス場に衝突して出たのではなく粒子同士が衝突したから出てきたのだから、ヒッグス場に衝突してヒッグス粒子をたたき出したということではありません。

 それはさておき、加速機の中を光速に近い速度で飛ぶ粒子は、空間の抵抗を受けていません。空間との摩擦も起きていません。物質の最高速であるほぼ光速で飛んでいるのになに一つ空間の影響を受けていないのは、空間は物質に直接影響するものはなにもないということを示しています。

 宇宙空間は真空で、その中に中性水素の分子や、電離水素を中心とした、いろいろな分子が漂っている状態だそうです。場所によってはそれらが集まって分子雲を作っているようですが、それでも、かなり希薄なようです。粒子同士の間はなにもない真空のようです。人工衛星は真空の抵抗は受けていないようです。

 問題は、その何もない真空が膨張するということです。なにもないのだから、膨張しても、もとの何もないのままのはずです。元のなにもないものと、膨張した後のなにもないはどのように違うのでしょう。

 空間が膨張する仕組みはなにもわかっていません。

 何もないもの「無」が膨張するという不思議が起こっているというのがビッグバン論です。これも謎です。

 先に書いたように、空間を膨張させるエネルギーがダークエネルギーです。「無」を膨張させるのはどのようなエネルギーなのでしょう。これも謎です。

イ 物質が広がる仕組み

 空間が膨張すると、物質もそれにつれて膨張するというのがビッグバン論です。空間が、銀河を動かす仕組みも不明です。加速機の中を光速で飛ぶ粒子は空間から何一つ影響を受けていません。それなのに、空間は、通常の速度の粒子や、銀河を引き連れて膨張しているというのです。矛盾があります。

 空間が物質を動かす仕組みも不明です。

 

V 宇宙空間の膨張の証拠とされていること

 書いてきたように、宇宙空間の膨張は直接観測されてはいません。間接的な証拠があるということです。

 宇宙空間が膨張している証拠と言われているものは二つあります。一つは、銀河の光が距離に比例して赤方偏移しているということです。もうひとつは、宇宙背景放射というマイクロ波が地球に降り注いでいるという現象です。大きなのはこの二つだけです。

1 銀河の赤方偏移

 他の人も観測しているようですが、ハッブルが観測し、距離との関係を発表したのが騒ぎの始まりです。

 この銀河の赤方偏移が起こる原因を銀河の後退速度のためだと考えたのが、ビッグバンの元になっています。しかし、後に、赤方偏移の原因は、銀河の後退速度によるのではなく、宇宙空間が膨張していることで起こっているということになりました。

 宇宙は膨張しているから時間をさかのぼると始まりは1点になるということから、ビッグバン宇宙論ができました。

(1) 空間が膨張すると光が赤方偏移するという主張は正しいだろうか。

 ビッグバン論では、空間が膨張すると、光もそれにつれて引き伸ばされる、という説明です。

ア 光の赤方偏移

ビッグバン論では、宇宙空間は3次元で膨張していることになっています。ところが光は進行方向にしか膨張していません。1次元だけにしか空間膨張が影響していません。高さや、横や斜めになぜ膨張しないかの理由が述べられていません。謎です。

イ エネルギー不変則

 光が赤方偏移するということは、光がエネルギーを減らしたということになります。そのエネルギーはどこに消えたのかという問題があります。エネルギーは勝手に消えてはだめです。エネルギー不変則に反します。それも謎です。

ウ 空間が光を引き伸ばす仕組み

 空間が光を引き延ばす仕組みは解明されていません。実証もされていません。

エ まとめ

このことから、空間が膨張すると光が赤方偏移するという主張には疑問符がつくことが分かります。科学的主張ではなく、観念的主張といえます。

(2)銀河の光の赤方偏移の、考えられる他の原因

 光は物質に衝突するとエネルギーを失うという性質があります。

光は物質に衝突すると物質の電子や分子を動かします。動かすのだから、その分のエネルギーを奪われます。

 たとえば、部屋の明かりを消すと、瞬時に部屋が暗くなるのもその表れです。

 これは、電灯の光が、壁などに当たると壁の分子を動かします。そのために光のエネルギーが少し奪われます。光は光速だから、瞬時に何万回も壁に衝突します。そのたびにエネルギーを失い、赤外線からマイクロ波になり見えなくなります。そして壁を通りぬけていってしまうのです。それで部屋は暗くなります。これは電気をつけっぱなしにしても部屋に光が溜まって次第に明るくなっていったりしないことにも現れています。その時壁の温度が少し上がります。温度は分子の振動だからです。日のあたる地面の温度が上がるのもそのためです。

 宇宙空間には水素をはじめとしてさまざまな分子が散らばっています。銀河の光がこれに衝突してエネルギーを奪われて赤方偏移していると考えられます。

 この考えなら、エネルギー不変則にも矛盾しません。空間膨張が原因のときのように光が高さや横にも伸びる必要はありません。他にエネルギーを奪われることによって光の振動数(周波数)が減るために波長が伸びるだけです。よくある赤方偏移です。これなら何の矛盾も謎もありません。既成の証明されている物理学だけですべて説明可能です。

(3)結論

 このことから、銀河の光の赤方偏移の原因は空間膨張ではないということが言えます。

 

2 宇宙背景放射

 宇宙背景放射がビッグバンの証拠であると云われています。そのために、最初の発見者にはノーベル賞も出ています。

(1)宇宙背景放射とは

 宇宙開闢後数十万年たった時、それまで、高温のために電離した粒子に衝突して直進できなかった光が、宇宙の温度が下がり電離した水素が、電子をとらえ中性水素になったので直進できるようになったということです。「宇宙の晴れ上がり」という名がついています。その直進できるようになった光が138億年たった今全天から地球に降り注いでいるというのです。それが宇宙背景放射ということです。ビッグバンの光だから、ビッグバンの証拠であるということになっています。

(2) 宇宙背景放射はビッグバンの証拠になるか

ア 宇宙の晴れ上がりのとき地球はどこにあったか

 宇宙の晴れ上がりのとき、地球はそこにはなく、それから92億年後(今から46億年前)にこの場所の近くで地球ができた、とすれば、138億年前に起こった138億光年先にある晴れ上がりの光が今地球に届いている可能性はあります。例えば、マゼラン銀河の光が15万年かかって地球に今届いているためには地球とマゼラン銀河が15万光年離れていることが必要です。ある銀河の光が15億年かかって今地球に届いているためには地球とその銀河が15億光年離れていることが必要です。

今は130億年くらい離れた銀河の光が130億年かかって地球に届いているのも観測されているようです。その8億光年先、138億光年離れたところから届く光は宇宙の始まりのときの光と言っています。そこからの光はビッグバンの光が直進を始めた「宇宙の晴れ上がり」のときの光だというのが、ビッグバン論者の主張です。そして、その光が138億年かかって地球に届く間に、宇宙が膨張して光も引き延ばされて可視光がマイクロ波にまで伸びているはずだ。それが全天から地球に降り注いでいる2.7kの宇宙背景放射だ、というのがビッグバン論者の主張です。ビッグバンの光を観測したのだからこれこそビッグバンの証拠になると云っています。

このことの説明に、ビッグバンが、今は、地球から138億光年先の宇宙をぐるっと取り巻いて、そこからの光が背景放射となって届いているという説明を見たことがあります。全天から降り注ぐには地球の周りを取り囲んでいる必要があるのでしょう。それ以外は、たいがい、宇宙の晴れ上がりの光が宇宙背景放射になって地球に降り注いでいるという説明くらいです。書かれているのは宇宙の晴れ上がりの仕組みくらいで、今晴れ上がりの光が届いている仕組みについては述べられていません。

 そこで検討してみます。

 138億年前のビッグバンの光が今地球に届くためには、その光を出した銀河と地球が138億光年離れている必要があります。マゼラン銀河の15万年前の光が今地球に届いているのはマゼラン銀河と地球が15万光年離れているからです。138億年前の晴れ上がりの光が今地球に届くには地球と晴れ上がりの光が出た場所とが138億光年離れている必要があります。

問題はそこにあります。地球は晴れ上がりの光とどのようにして138億光年の距離離れることができたのかという問題です。

 地球は46億年前、この近くのなにもないところから突然現れたのではありません。ビッグバン論では、ビッグバンのときすでに地球になる前駆物質も他の物質と共に生まれていたはずです。したがって、「宇宙の晴れ上がり」のとき、地球の前駆物質もその中にあったはずです。晴れ上がりの後、光は直進を始めたということです。同時に地球の前駆物質も宇宙膨張に乗って広がっていったはずです。そして、何度か恒星になっては爆発し、92億年後(46億年前)に地球の前駆物質のガス雲がこの位置までたどり着いて地球という形になったというのがビッグバン論から推測できます。その間も、晴れ上がりのときの光は光速で宇宙のかなたに向けて直進していったはずです。ビッグバンの位置から、92億光年先プラス空間膨張で動いた距離を飛んだはずです。その後も、46億年かけて、その光は直進して、さらに、46億光年プラス空間膨張の距離を直進しています。その間、地球になる物質はせいぜい秒速数百キロメートルだったでしょう。光速で飛ぶ晴れ上がりの光は地球の前駆物質を置いて、はるかかなたまで飛び去っていったはずです。その光が今地球に降り注ぐためには、真っすぐ宇宙の中を飛び去っていった晴れ上がりの光がUターンして地球に向かって飛んでくるしかありません。いつ、どのようにしてUターンしたのでしょう。

宇宙の晴れ上がり以前なら、光は直進できなかったので、何回でも地球の前駆物資に衝突する可能性はあったことでしょう。しかし、晴れ上がりの後は、光は秒速30万キロメートルで真っすぐ飛び去って、アッという間に92億年後地球になる物質は置いて行かれたでしょう。なぜ138億年たった今その光が地球に衝突しているのでしょう。不可思議な現象です。これについての説明は見かけません。説明できないからこのことについて詳しくは触れないのでしょう。

ビッグバンが、今は、138億光年先の宇宙をぐるっと取り巻いて、そこからの光が背景放射となって届いているという説明ではどうでしょう。138億光年先の光が今届いているということですから、その光が出たのは138億年前です。すると138億年前には宇宙はすでに地球を中心とした半径138億光年の大きさになっていたということになります。ビッグバンで始まった宇宙は宇宙の晴れ上がりのときにはすでに、今の宇宙と変わらない大きさになっていたことになります。ハッブルの法則に反します。

(余談:130億光年離れた銀河の光を観測した、ということです。すると、その光が銀河を出たのは、今から130億年前になります。宇宙誕生から8億年後です。ではその時地球はどこに有ったでしょう。ビッグバン後8億年だから、地球の前駆物質も、その銀河の近くにあったことでしょう。ビッグバンで反対方向に光速で飛んだとしても互いの距離は16億光年です。物質は光速で飛ぶことはありませんから、それが最大の距離です。すると、その銀河から130億年前に出た光は16億年以内に地球に到達してしまいます。138億年はかかりません。

その後宇宙膨張のために地球とその銀河が離れていったとしても、地球は、138億年でここまで離れるには、光速の半分の速度で互いが反対方向に飛ぶ必要があります。しかし2点間は100億年で2倍になるということなら、130億年ではせいぜいどんなに頑張っても40億光年くらいしか離れることができません。実際は、地球は秒速数百キロメートルくらいで動いているようですから、百三十億年では1000万光年くらいが関の山です。それも太陽や銀河を回転している堂々巡りがほとんどですからそんなに離れることはできないでしょう。地球は130億年前の銀河の光を見ることはできません。それが見えているのはビッグバン論の否定になります)

イ 晴れ上がりの光はいつまで地球に降り注いでいるのでしょう

 晴れ上がり前は光は直進できなかったから、そのあたりをうろうろしていつまでも地球の前駆物質に衝突していたでしょう。もちろん地球の前駆物質も、負けずにしっかり光を出して、ビッグバンの光の一部になっていたでしょう。しかし、晴れ上がりの後は光は直進していったのだから、上に書いたように、地球の前駆物質に衝突せずに飛び去っていったはずです。

宇宙全体が晴れ上がるのに、数万年かかったとします。すると地球を通り過ぎていく光は、最初に通り過ぎた光が過ぎてから、最後に通り過ぎるまでの光の間は数万年ということになります。また、そのときの宇宙の直径が100万光年とすると、地球の前駆物質と一番遠いところからの光は、100万年後には地球を通り過ぎていきます。それで晴れ上がりの光はすべて通り過ぎていったのだから、その後は晴れ上がりの光は地球にやってこないはずです。もし、何らかの原因でその光がUターンして戻ってきても、最初に戻ってきた光から100数万年後(宇宙が膨張しているとしたら)には最後の光もまた地球を通り過ぎていくはずです。なぜ138億年後の今ちょうどに、晴れ上がりの光が地球に降り注いでいるのでしょう。そしていつまでも地球に降り注ぎ続けるのでしょう。これでは、まるで晴れ上がり以前が続いていて、光は直進できずにそのあたりをうろうろしているときと同じ状態です。

なぜ晴れ上がりの光が今ちょうど地球に降り注いでいるのかも謎です。

(2) 宇宙背景放射の原因

 宇宙には塵があることが観測されています。塵は温度を持っています。温度を持った物質はその温度に見合った電磁波を出します。黒体放射です。この光が宇宙を飛び交っています。最近実際に観測もされました。

塵は光を出すと温度が下がります。しかし、他の塵や星から飛んできた光を受けて温度が上がります。塵は、互いに光りでエネルギーをやり取りして宇宙の平均の温度になります。この平均温度が2.7kです。2.7kの温度の塵は2.7kの温度の黒体放射をします。塵は宇宙空間全体に散らばっています。したがって、その光は全方向から地球に降り注ぐことになります。そして、銀河ができてから現在まで、常に塵は宇宙空間に漂っていたから、いつも塵の光が地球に降り注いでいることになります。

 宇宙背景放射の原因を宇宙の塵の出す2.7kの黒体放射の光だとすると、矛盾はありません。しかも、今までに理論も、実証もされている物理学で過不足なく説明できます。もし、宇宙背景放射の光がビッグバンの晴れ上がりの光だとしても、宇宙の塵の出す光も必ず混ざっているはずです。宇宙の晴れ上がりの光がなくても、塵の光だけで、十分2.7Kの宇宙背景放射になります。塵の光は必ずあるけれど、ビッグバンの名残の光はあってもなくてもいいのです。

 ビッグバンの光が今届いているという考えには矛盾があります。また、空間が光を引き延ばすという、科学的理論も実証もされていない原理を必要としています。ビッグバンの光が空間膨張により引き延ばされて今地球に届いているという考えには謎がいっぱいあるけれど、宇宙の塵の出す光だという考えにはなんの矛盾も謎もありません。

よって、宇宙背景放射は宇宙の塵の出す光だといえます。

 

W 結論

ビッグバン宇宙は、見てきたように謎だけでできています。ビッグバン宇宙の証拠だと云っている、銀河の赤方偏移と宇宙背景放射も、書いたように、普通にそこらにある現象の延長で矛盾なく説明できます。もちろん実証済みの理論だけで十分です。ビッグバン理論だと、実証されていない理論で説明するしかありません。そのうえ、たくさんある矛盾は無視するしかないのです。

なぜ、今の宇宙が96パーセントの謎のエネルギーと謎の物質でできており、私たちの知っている物質やエネルギーはたったの4パーセントしかないのかというと、最初の判断が間違ったからです。

それはハッブルの観測した銀河の赤方偏移の原因を、銀河が後退しているからだと考えたことです。そして、それを空間膨張に変更したことで、いよいよ、ニッチもサッチモも行かなくなったのです。後退速度は、ドプラー効果という証明されている現象です。しかし、空間膨張は原理も証明もされていない不可思議な現象です。宇宙論者は、なにもない空間を膨張させてしまったのです。そもそも、空間とはなにかということさえ分かっていないのに膨張させてしまったのです。もちろん何もないものが膨張する仕組みは誰も分かっていません。距離に比例して赤方偏移しているのだから、空間が膨張することにしたらうまく説明できるというだけの理由で原理も何も分からないのに空間を膨張させてしまったのです。それがビッグバンという幻想を生みだしたのです。そして、謎を説明するためにさらなる謎を持ちだして、次々と謎が謎を生むことになっていったのです。

空間膨張のために謎のダークエネルギーを生みだし、それではうまく宇宙に星ができないので、謎のダークマターを生みだし、結局、ビッグバン宇宙は謎が大部分を占める宇宙になってしまったのです。

それでも間に合わないので、ビッグバン以前にさかのぼってインフレーションという、ビッグバンをはるかに超えた、あり得るわけの無い荒唐無稽な現象を考え出すしかなくなったのです。

謎が謎を生み、通常の科学ではありえない現象ばかりになったのに、なぜこれが受け入れられているのでしょう。答えはこの世界の創造は神様がなされたことだから、人知を超えていて当然だからです。神の「光あれ」という一言で、神の住む空間に、インフレーションという、光に似ているけれど、光をはるかに上回る神の光が現れてこの宇宙が始まったという、新天地創造のシナリオができ上ったのです。

これは、神はどのような法則でこの世を作ったのか、というキリスト教の科学者の持つ興味を心底満たしたのです。ニュートンも、この世を動かしている神の作った法則を見つけるということで研究していたそうです。欧米の科学には、根底に神がいるのです。だからビッグバン宇宙論に謎がいくらあっても、それはかえって、人には分からない神の底しれない力を見ることになり、より素晴らしい研究になったのです。

しかし、今は、神の摂理から離れて、もう一度単純に科学だけに戻って銀河の赤方偏移から考え直すころではないでしょうか。これではあまりにも優秀な知能の無駄遣いになってしまいます。

 

X 追記

では、ビッグバン宇宙でないとすれば、どのような宇宙が考えられるのかを考えてみます。

 

定状宇宙

 

土台はビッグバン宇宙と同じです。無限に広がる真空の空間です。

違いは、ビッグバン宇宙論では、その宇宙はこの宇宙を生んだ母体です。わたしたちの宇宙とは異なる宇宙です。定常宇宙論では、母体となる宇宙は物質を生むだけです。わたしたちの宇宙です。宇宙を生むか、物質を生むかの違いです。

 定状宇宙論では、最初に真空の空間があり、そこに、真空の揺らぎから粒子が生まれます。宇宙全体にわたって、ランダムに粒子が生まれては消えています。そこに対称性の破れから、消えずに残る粒子が現れ、少しずつ増えていきます。これは量子論の考えです。生まれるのは小さな粒子で小さなエネルギーだけですから、量子論に反しません。1点に集中してこの宇宙全体の巨大なエネルギーと物質とを生むビッグバン論との違いです。

 何百億年、何千億年、とかけて粒子は生まれ続けます。時間はたっぷりとあります。

粒子は4つの力を持っています。粒子はくっついて陽子や中性子を作っていきます。この過程も膨大な時間が必要です。

 物質は万有引力を持っているので、離れて生まれた粒子は、そのとたんに位置エネルギーを持ちます。宇宙に散らばった粒子は生まれた場所だけで巨大な位置エネルギーを持つことになります。たった直径10キロメートルほどの隕石でも、地球に落下すると大量絶滅を起こすほどのエネルギーがあります。位置エネルギーは巨大な力を持っています。それが生まれただけで備わるのです。銀河や銀河団の持っている巨大な位置エネルギーは、こうして生まれます。

 ビッグバン宇宙ではそうはいきません。元はひとところで生まれるので、位置エネルギーは最初は0です。宇宙全体に散らばった銀河などの物質が持つ位置エネルギーは膨大です。そのエネルギーはビッグバンとダークエネルギーが生んだことになります。どこから生まれたかわからない謎の巨大なエネルギーが必要なのです。

 陽子は電子を取り込み分子になります、分子は引力で引き合い、ガスの固まりになります。分子同士が衝突することで持っていた位置エネルギーが熱エネルギーになり、光として放出されガスを温めます。暖まったガスは拡散します。しかし、一部は位置エネルギーを放出したので収縮して星となります。さらなる収縮過程で位置エネルギーは星の温度をあげ核融合を起こし、星は進化していきます。銀河ができ、今見られるような宇宙になります。

 位置エネルギーは万有引力によってうまれます。したがって、位置エネルギーと引力は等価です。これを地上に落としたボールが跳ね返るのを例に考えてみます。ボールは弾みながら、やがて地上に停止します。このとき、ボールの持っていた位置エネルギーは運動エネルギーになって、ボールの速度を速め地面に衝突します。跳ね返って、運動エネルギーが位置エネルギーになって、あるところで止まってまた落下します。これを何度か繰り返して地上に停止します。跳ね返るたびに高さが減ります。これは衝突によって、運動エネルギーの一部が、地面を動かしたり、ボールを変形させたりするために使われるからです。そして一部は地面やボールの温度を上げます。この熱は電磁波として放出されます。位置エネルギーが熱エネルギーに変わってボールは元の位置にまで戻れなくなります。

 もし、完全に跳ね返る物質どうしが宇宙空間でぶつかったら、両者は元の位置まで跳ね返ります。そしてまた引き寄せ合ってぶつかり元のところまで跳ね返ります。エネルギーが他に移動しない限り永久にくっつきません。

 普通の物質は、衝突すると温度を上げます。その分位置エネルギーが減るので、もとの位置には戻れません。そのために、引力で引きあって、大きな塊になっていきます。それが星です。しかし、その時放出された熱による電磁波は、他の物質に当たると、その物質の温度を上げます。温度が上がると運動が大きくなり広がります。

位置エネルギーは形を変えて他の物質を拡散します。一方で位置エネルギーを失い収縮します。宇宙全体ではエネルギー量は変わりません。いったん収縮して恒星になっても、超新星などになりまたバラバラになります。永久に宇宙は収縮も膨張もしません。元のバラバラの状態に戻ろうとするのがエントロピーの増大を起こしています。

 生まれた物質の位置がランダムだから、物質の濃淡ができます。そのために、収縮するところと、離れるところが出てきます。これが銀河や、銀河団や、大きな宇宙の構造を作ります。しかし基本はエントロピーの増大があって、物質は元の位置に戻ろうとします。超新星はその例です。

しかし、ブラックホールという究極のエントロピーの減少した星があります。これはいつの日にかあらゆる物質を飲み込み、宇宙を、ブラックホールと、そのほかの、ブラックホールに収縮するために放出された位置エネルギーが姿を変えた電磁波が飛び交うだけの広大な空間とに分けてしまうかもしれません。でも、それまでに果てしない時間がかかるでしょうから、人間が心配することではありません。それまでに太陽の温度が上がり、地球に生物は住めなくなるでしょう。もちろんそこまで人類が生き伸びている保証はありません。今までのところ、種はせいぜい数十万年くらいしか生き伸びていないのですから、人類も、滅びるか、姿を変えるかしているでしょう。

2020年5月8日 完

2020年5月11日改定

記 田 敞