「重力とはなにか」(大栗博司著)への手紙40
著者 高田敞
(以下{ }内は上記本よりの引用)
問題1
{たとえば、あなたの目の前に左から右に無限に伸びているゴムひもがあると思ってください。無限なので両端はありませんが、それでも、ゴムが伸びれば2点間の距離は広がるし、縮めば2点間の距離は狭まります。つまり、無限の空間でも膨張や収縮はできます。}
考察
{ゴムが伸びれば}ということです。無限の長さのゴムはどこに向かって伸びるのでしょうか。
有限のゴムなら、両端を引っ張れば伸びます。では無限のゴムひもはどこで引っ張っているのでしょう。無限の端同士で引っ張っているのでしょうが、それはどういうことでしょう。教えてもらいたいものです。どこか適当なところで引っ張っているならそれは有限の距離になります、間が30センチでも、100億光年の距離でもです。
{ゴムが伸びれば2点間の距離は広がる}これは有限のゴムひものことです。目の前のゴムだけが伸びています。無限の先のゴムのことは考慮していません。伸びた無限のゴムの無限の果てはどうなっているのでしょうか。もちろん無限の先のことなど、どうでもいいことなのでしょう。しかし、目の前のゴムひもが伸びるのは、私たちが、いつも有限のゴムひもをしか見ていないから言えることです。無限のゴムひもが伸びるかどうかは無限に長いゴムひもを持ったことのない私たちには判断できないことです。
もうひとつ重要なことは、ゴムひもは物質です。それが何でできていて、どのような構造をしているかは科学的に解明されています。しかし、空間は物質ではありません。エネルギーでもありません。今のところ「無」であることくらいしか推測されていません。なにも分かっていないことなのです。物質とはまるで違うことなのだから、物質から推測するのは間違いをうみます。その例が、空間は、無限の広がりの可能性を持っていますが、ゴムひもは無限には絶対なれません。
絶対存在しないゴムひもの無限を仮定することから説明することは、前提が間違っているのだから、そこから出てくる結論は間違いしか出てきません。
だから、無限の空間でも膨張や収縮はできるのです、というのはこじつけです。無限の空間が膨張したり、収縮したりする仕組みを、科学的に説明する必要があります。ゴムひもの比喩は科学的説明ではありません。
問題2
{ビッグバンの瞬間の「小さな火の玉」も無限だった。}
考察
無限の定義が不明であるから分からないが、{ビッグバンの瞬間の「小さな火の玉」}が無限とはどういうことなのでしょう。「小さな」と、有限の範囲を示しているのに、それが無限だという、禅問答のような説明で科学は困らないのでしょうか。
{ビッグバンの瞬間}は非常に小さかったという話です。顕微鏡でも見えないくらい小さかったという。それが時間の経過とともに膨張して今の宇宙ほど大きくなったというのがビッグバン理論です。すると、ある時、宇宙の直径が10センチであった時もあったはずです。1kmであった時もあったはずです。あるいは1万kmのときもあったはずです。それらが、無限だったというのはどういう理論なのでしょう。{ただ、そこでは2点間の距離が極限まで圧縮されていた―高密度だった―と考えればいいのです}と説明しています。無限を圧縮して高密度にしたら、直径10cmの火の玉になり、それが無限であるというのは何なのでしょう。無限が圧縮できる。そして高密度だったら、小さくても無限であるという不思議な理屈です。
ゴムひもの{2点間の距離}は有限です。だから圧縮すると小さくなります。しかし、無限の広がりを圧縮しても端がないのだから、いくら縮めても、端は無限の彼方にあるはずです。1点には縮まりません。「火の玉」が小さいということは、有限です。小さいとは有限の大きさを表す言葉ですから。
適当な話です。科学的根拠はあるのでしょうか。無限の長さのゴムひもや、直径10cmの無限というものがあるということを実証することからはじめるべきでしょう。科学は、実証してはじめて認められる世界のはずです。相対論や宇宙論は、巧みな言葉だけで実証はいらないというなら、ここは、まず無限とはなにかについて定義することが必要でしょう。
問題3
宇宙が{「無限」の空間だとしても、そこにある2点間の距離を広げることはできます。}
考察
そんなに難しい問題ではありません。無限のゴムひもなど持ち出さなくても大丈夫です。空間の中を物質は自由に動けます。普通は空間に束縛されていません。与えられたエネルギーに応じて動きます。物質そのものは有限ですから、何ら不思議はありません。地球上でも太陽系でも普通に2点間の距離はひらいたり短くなったりしています。
問題は、ビッグバンの言う空間膨張だけです。ビッグバン論では空間が生まれて、膨張しなくてはならないから無限のゴムひもや小さな無限空間などを持ちださなくてはならなくなったのです。空間膨張の仕組みについては理論はありません。空間の構造も分かっていません。理論で説明できないから、比喩で説明するしかないからゴムひもを持ちだしただけです。科学の方法ではありません。
結論
空間膨張などないのですから、この世界に適用すると矛盾だらけになるのです。空間が膨張するの、収縮するのという前に、空間とは何か、空間の構造はこうなっていると究明すべきです。暗黒エネルギーなどというお化けを持ちださずに、どのエネルギーが、空間のどこにどのように働いて、空間を膨張させたり収縮させたりするのかを理論づける必要があるようです。まあ、できないでしょうけど。