「重力とはなにか」(大栗博司著)への手紙21

  著者 高田敞






(以下{ }内は上記本よりの引用)

問題1

{遠心力と重力は区別されません。回転する宇宙ステーションの中には本物の重力があるのです。}

考察

 等価原理では{遠心力と重力は区別されません。}ということです。遠心力=重力ということなのでしょう。重力と万有引力を同じとするなら、遠心力=重力で、重力=万有引力だから、遠心力=万有引力になりそうです。そこで、遠心力と、万有引力を比べてみます。

@ 届く範囲

 万有引力・・・どこまでも届く

 遠心力 ・・・宇宙船の中だけ。

しかも、床と同じ速度で同方向に動いているものにだけ働く。

A 運動

 万有引力・・・物質であればどのような運動をしていても引き合っている。

(重力の場合は、落下しているエレベーターの中では、重力は消えるというが、万有引力の場合は、その場合でも中の人は地球と引きつけ合って地球に加速して近づいていくので、同じ大きさの力が働いている。)

 遠心力 ・・・内部の物質の運動によって、影響力が変化する。

B 力のかかりかた

 万有引力・・・互いに質量に比例した力で引き合っている。

地上にいる人は、地球を自分の方に引っ張っている。

 遠心力 ・・・一方的に外向きの力が働いている。

中の人は、宇宙船の壁を、自分の運動エネルギーによる遠心力で押しているだけだ。宇宙船の壁が中の人を引っ張っているわけではない。もちろん万有引力が働いて、壁と引きあってもいるが、それは、宇宙船に発生している遠心力ではなく物質が固有に持っている万有引力である。

C 力の方向

万有引力・・・全方向に働いている。

遠心力・・・・宇宙船の内部にだけ働いている。壁に向かって、垂直方向である。

D 落下実験  (手に持ったリンゴを落とす)

 万有引力  ・・・加速しながら地表に達する。

 宇宙船の中 ・・・同速度で足元に達する。このとき真下ではなく、宇宙船の回転方向と反対の方向にずれて落ちる。

D 投げたボール

 万有引力・・・放物線を描きながら地表に落下する。このとき落下の速度は加速されている。

 宇宙船の中・・・宇宙船の外から見る。

等速直線運動で進み、曲がっている宇宙船の壁(人から見ると床)に当たる。

投げた人から見る。 

ボールは曲がって飛んでいき壁に当たるように見える。その軌跡は、等速で円弧である。

 

結論

 このように、宇宙船の中の遠心力(重力)と、万有引力は似ても似つかないものです。とても同じとはいえません。

{アインシュタインの等価原理によると、加速度や、遠心力によって生じる、引力(著者注:引力ではなく押す力である。英語でいえば、プルとプッシュである)は、「見かけの重力」ではなく「重力そのもの」です。}といっていますが、上で見たように、遠心力と万有引力は、違いはあっても、同じ処が何一つないので、万有引力と同じとはいえません。

 重力と遠心力が同じものなら、重力と万有引力は違うものだといえます。万有引力は、引き合う力ですが、重力は重い力(ものは重いから落下する)ですから、性質は違うものなのでしょう。だから、押し合う力の、重力と、押し合う力が働く遠心力とは、類似点があるから、同じだというのかも知れませんが、引き合う力である万有引力とは似ても似つかないものです。