へんろ旅 15日目(晴れ)
28番大日寺 29番国分寺 30番善楽寺 そして

一面の 田の水光らせ 風渡る
春に萌える 逢坂峠越えていく
峠越え はるかな町並み 春霞
善楽寺 空の青 風の音
(何十年か前、1年ほど暮らしていたところを尋ねていく。土佐和宮駅より電車に乗る。)
無人駅 春風吹かれ 電車待つ
古の 青春の場所 探し行く
昔 ここに蛍のいる川が と道尋ねてる

(住んでいた場所は駐車場になっていた。40年近い月日は全てを変えていた。
 ここまでが過去だったんだと思う。このときまでの人も場所もこの後の私の人生からぱったり消えてしまう。この後、名前くらいしか知らなかった町へ行き、その後、それまで名前さえ聞いたことのない小さな町に住み着くことになる。現在につながっている人や町の全てはそこから始まっている。
  だけど、このときの不安だけは、ずっと、今日まで続いている気がする。いつもいつも、できないことだらけで、それでも何とかそれをこなさなければにっちもさっちも行かなくなるという不安。できないことをやって、できないままでいる無力感、虚脱感。それが、ずっとわたしの生活だったのかもしれない。
 それが、ひょっとしたらこの四国遍路へ来させたのかもしれない。
 青春そのものがあったはずの、今は見知らぬ町をバスで離れながら、そう、ここまでが故里だったんだと、思う。)
 

遠き日の 亡霊と バスを待つ

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