「モンスター銀河狩り」(著者 谷口義明 出版社 NTT出版)

についての感想と疑問

 著者 高田敞

雑談目次

1 ダークマターの性質と役割

(以下、「」内は同本よりの引用)

 P175

@「・普通の原子物質だけで銀河を作ることはできない」

A「・銀河は“見えない物質”に操られて生まれ、育ってきた」

P188

B「暗黒物質の正体は今のところ不明だが、未知の素粒子だと考えられている。質量はあるので重力的な相互作用はする。しかし、電荷は持たないので、電磁気的な相互作用は一切しない。そのために電磁波を放射しないので、私たち人類には見えないのだ。」

C暗黒物質の「質量密度は原子のそれの約5倍」

 

2 以上の条件から、考えなければならないこと

問題点1 暗黒物質の収縮の原理

 銀河や星が生まれるときは普通の物質が集まる。このとき、物質は互いに離れていたので、集まると万有引力による位置エネルギーが運動エネルギーになる。本来、万有引力で物同士がぶつかると、エネルギー保存則から、互いに元の距離にまで離れる。これではいつまでも銀河や星はできない。

 しかし、衝突時に運動エネルギーは熱エネルギーになる。その熱エネルギーは輻射で放出されるために位置エネルギーが減じ、物質は元の位置まで戻ることができなくなる。ボールを落とすとバウンドはしだいに小さくなりやがて地表にくっつく。これがばらばらにあった物質が集まる原理である。これがあるから銀河や星ができる。

 問題は、暗黒物質である。

 暗黒物質も、集まって銀河や大構造の元になるようである。すると、散らばっていた暗黒物質が集まるときに、何らかの形で位置エネルギーを減らさなければ集まることができないはずである。ところが、暗黒物質は普通の物質のように電磁波を放出できない。したがって、暗黒物質は、他の方法でエネルギーを放出しているはずである。それはどのような方法なのであろうか。このとき放出されるだろうエネルギーは観測できないのだろうか。解明の必要があると思う。

 もし、暗黒物質が位置エネルギーを放出できないなら、暗黒物質は集まることができない。すると、いつまでも広がったままだから、銀河や大構造の種になることはできない。かえって、それらを阻害することになる。

 ビッグバン論では、暗黒物質も集まれるようである。もし暗黒物質が集まることができるなら、今見える星の5倍の星や、5倍の銀河があっても不思議ではないのだが、それは観測されていない。(図5−11 三次元マップに構造があるが、それ自体で、銀河や、銀河団などを作っているわけではなさそうである。5倍もあるのにあくまで補助的な役割をしているだけである。とても奥ゆかしい。このことは後述)

 もしあれば暗黒物質でできた銀河どうしの衝突や、暗黒物質の銀河と普通の銀河の衝突などが頻繁に起こっているはずである。幸いそんなことは無く、

暗黒物質は単独では存在せず、普通の銀河と混ざりあっているという説である。すると、この銀河系の中にも暗黒物質が5倍の量あるはずである。すると、暗黒物質が5倍混ざった星ができることになる。ところが、このような星も観測されていない。

問題点2 太陽系と暗黒物質

 宇宙の大規模構造や、銀河を成長させるには暗黒物質が必要であるという。このことから、恒星の成長にも暗黒物質がかかわっていると考えられる。すると、太陽系の形成にも大きくかかわっているはずである。

 ところが現在の太陽系には暗黒物質は観測されない。電磁波を出さないので見えないだけで、本当は存在するということを書いてあるのを見たことがある。でもこれは間違いである。通常の物質の、5倍もの暗黒物質が太陽系に存在したら惑星の軌道は今とはまるで違った軌道を描くはずである。

 現在、太陽と惑星の質量だけで計算して、ぴったり合うことから、太陽系には他の引力源は存在しないことがわかる。すなわち、太陽系には暗黒物質は存在しないといえる。

問題点3 地球と暗黒物質

地球周辺や、地球の内部に暗黒物質は存在しないといえる。上に書いたように、地球の公転軌道も、地球の通常の質量だけで計算して、ぴったりの軌道を描いていることから、地球内部や周辺には暗黒物質は存在しないといえる。これは月と地球の関係からもいえる。

 

問題点2,3から考えなくてはならないこと

(1)恒星と暗黒物質

 太陽系に暗黒物質が観測されないことから、太陽と同じ生成過程の恒星にも暗黒物質は存在しないことが類推できる。このことから、銀河系のほとんどの恒星とその周りには暗黒物質が存在しないということがわかる。

(2)暗黒物質の星

 このことから暗黒物質は恒星とは交じり合わないことが考えられる。そうすると暗黒物質だけで恒星ができることも考えられる。すると、見える星の5倍の暗黒物質だけでできた星が存在することになる。暗黒物質星が銀河系の中をうようよすることになる。

 この星は核融合をするのだろうか。超新星になるのだろうか。ブラックホールになるのだろうか。位置エネルギーはどのようにして放出しているのだろうか。どうも、そのような現象はなさそうである。

(3)銀河系中心

 銀河系中心は膨大な数の恒星が集まっている。中心にはブラックホールがある。これらは今のところ、普通の物質でできている。銀河を作る中心になった暗黒物質はどこに行ったのだろう。引力に作用するというのであるから、銀河の中では通常の物質のように、銀河中心に一番濃く集まらなくてはならないはずなのに、なぜか銀河中心には無く、外に行くほど暗黒物質が多くなるというのはどうしてなのだろうか。ひじょうに不思議な現象だ。この現象が、銀河の中に暗黒物質だけの星や、暗黒物質の混ざった星がない原因であるのだろうが、この暗黒物質の重力の仕組みは不可思議としかいえないものだ。

 また、もしそれが事実なら、銀河の種ではなく、外側に引っ張る力として働いたのではないだろうか。銀河の外に5倍もある暗黒物質の重力を打ち破って普通の物質は中心に集まったようである。本当に不思議な現象だ。

(4)暗黒物質がある場所

 銀河の回転から考えられる暗黒物質は、銀河系の中心から離れるほど量が多くなるということだ。それは、普通の物質が少なくなる分をちょうど埋め合わせるように増えていくようである。

 夜空はなぜ暗いか、と疑問を持った人がいる。その人は、星が均一にあると、遠くなることで一つ一つの星は暗くなっても、空間の体積は3乗倍で増えるから、星の数が増える。だから星の光は減じないはずだ、と考えたようだ。だから全天星に満たされて、夜空は明るくなるはずであるという説である。残念ながら夜空は暗いのが現実であるが。

 同じように、銀河の中心から遠くなるにしたがって、ガスの濃度は薄くなっていくけれど、球殻の体積は3乗倍で増えるから、ガスの質量はそれほど著しくは減じないと考えることもできる。実際、口絵10.11のM82を含む銀河群を取り巻く中世水素原子ガス雲の空間分布の写真をみると、中性水素ガスが銀河を遠く放れて、となりの銀河まで伸びている。銀河を取り巻く中性水素のガスはかなり遠くまで広がっていることがわかる。銀河回転のミッシングマス(暗黒物質の旧姓)は、銀河から広がっている中世水素や電離水素を中心とした銀河間ガスと考えてもよさそうである。これは観測されているので、観測されていない暗黒物質原因説よりより事実に近いと思われる。

 

 この本の4章までの銀河は、普通の物質だけで活動しているようである。暗黒物質は考慮しなくていいようである。暗黒物質は銀河の回転と、銀河形成の始まりだけに関係しているようである。激動する普通物質の宇宙に比べなんとおとなしいことか。とてもおりこうさんである。決して通常の物質の活動に手出しをしない。暗黒物質ここにあり、と名乗りも上げない。一線を退いた人が窓際から若手の活躍を静かに見守るように、おとなしく銀河系の外で、銀河系の回転を手助けしているだけである。

 

 遠い宇宙にはものすごい量があるのに、近い地球や、太陽系には痕跡さえない理由はなんなのだろう。太陽系だけ特別な存在なのであろうか。

 観測が正確なところには存在せず、観測が不正確になるほど、存在量が多くなる不思議な物質である。暗黒物質は、多分かなり人見知りするのだろう。

 

3 遠いところの暗黒物質を考える

コスモス・プロジェクト

(1) 方法

「“弱い”重力レンズ効果を使って、暗黒物質の空間分布を調べることができるのだ。原理的には問題ない」

(2) 形

図5−11 三次元マップ

図5−12 銀河の分布と暗黒物質の分布

(参考)

口絵10.11

M82を含む銀河群を取り巻く中世水素原子ガス雲の空間分布

 

問題点1 重力レンズ(「原理的に問題はない」のだろうか)

 この光の屈折が、重力で起こっているということは証明されていない。アインシュタインが言っているというだけである。すなわち仮説である。

 地球上では、光の屈折は様々な物質で起こっている、ガラス、プラスチック、水、空気等々である。しかし、重力が原因で起こっている現象だけは観測されていない。(唯一証拠といわれているエディントンの観測については後述)

 口絵、10.11からもわかるように、銀河団は、中性水素に覆われている。また、X線で観測すると、電離水素のかたまりの中に銀河団が沈んでいるように見えるという。

 この中性水素の中を通った光は、中性水素により屈折しないだろうか。中性水素があるのだから、他の気体もあるはずである。

 また、銀河も大きく中世水素に覆われているという。銀河や、銀河団の中や近くを通る光は必ず気体の中を通ることになる。地球上で空気による光の屈折は観測されている。すると、遠い銀河の光も気体で必ず屈折するはずである。このことが無視されているのは科学としては大きな問題であると思う。なぜなら、科学は、新しい原理をたてるとき、全ての疑問や他の原因を観測事実に照らして精査し、是非を検討しなければならないからだ。特に、このように、地上ではありふれた、物質による光の屈折現象が、遠い宇宙では起こらず、地上では起こったことのない重力による光の屈折現象が遠い宇宙では普通の屈折に取って代わるという現象は、事実に即して説明しなければならない。地上では重力が小さいから重力による光の屈折は起こらないという説明だけでは何の役にも立たないはずだ。普通の屈折現象ではないという、事実に即した証明が必要である。それができないうちは仮説にしか過ぎない。したがって「原理的に問題ない」ということはできない。(原理は仮説だが)あるいは(原理は思いつきだが)と言い換えるべきであろう。

 同じように、エディントンの太陽近傍の星の光の屈折の観測も、太陽大気による屈折現象であるということを事実に即して否定しない限り重力による現象であるとは言えないはずである。おそらく、太陽大気による屈折を否定することができないので、無視しているのだろう。太陽大気によるのでは、と疑問を持つことくらい、プロの科学者なら当たり前のことのはずであるから。

 アインシュタインという権威者の言うとおりの結論がまずありきで、それに有利な証拠だけを取り上げ、不利な証拠は無視するという方法は科学の方法ではないはずだ。

 1054年のかに星雲の元になった超新星は、日本や中国では観測記録が残っているが、ヨーロッパでは残っていない。その原因は、キリスト教では、天は変わらないということになっているので、超新星が現れても無視したということらしい。強い影響力を持つものがあると、見えるものも見えなくなるものらしい。昔も今も、同じことが起こっているのかもしれない。原因が神から、権威に変わっただけで。

 このことから、図4−1,4−2の重力レンズによるとされる画像も、銀河団を中心に集まって見える銀河団の外まで、大きく広がっている構成物質である普通の気体による屈折が原因である可能性のほうが大きいといえそうである。少なくとも、その可能性は大きく残る。地球上の観測や実験で実証済みの現象である。地球上では起こったことのない実証されていない重力による屈折とは大きな違いがある。

 「最新宇宙学」(栗野論美、福江純、襟裳華房)によると、『ほとんどどんな銀河団の場合についても』X線で観測した銀河団の熱いプラズマから計算した銀河団の質量は、『重力レンズ現象を応用した方法で求めた銀河団の質量と比べ、数十%しかないことが指摘されている。しかもどちらの方法を用いる際にも、これまでの研究で我々がもっともらしいと考えている仮定が用いられている。』と述べている。(以上『』内は最新宇宙学からの引用)

 重力による、光の屈折より気体による屈折率のほうが高い。気体による屈折として計算したら、ぴったり合うはずである。これは重力レンズが考え違いであることを示唆している。

 また、エディントンの観測も、相対性理論からの計算と観測値がずれている。また、観測値にばらつきが大きいことから、観測機器の未発達のための観測誤差だといわれている。理論と観測の違いがあるとき、理論に疑問を持たなくて、観測が間違っていると決め付けているのは、単に権威主義である。科学ではない。

 観測が正しいとすればどうなるか。簡単である。太陽大気による屈折現象とすれば屈折率が大きいのは説明がつく。また、観測値のばらつきも、太陽大気が激動しているから、大気の屈折率が激しく変化しているために起こる、星の瞬き現象とすれば説明がつく。星の瞬き現象も地球上の星の観測ですでに実証されている。

 

 上記が、素人判断で、科学者には無意味なこととしても、次のことはどうだろう。 

 他の、重力によって光が曲がる現象といわれている現象(エディントンの観測、アインシュタインリング、アインシュタインの十字架等)のすべてが普通の物質で起こっている。ところが、この場合だけ暗黒物質で起こっているという。ところが、暗黒物質であるという実証はない。したがって、いえることはせいぜい(もし重力による屈折現象という仮説が正しいとすれば、ひょっとして暗黒物質であるといえなくもない)くらいではないだろうか。

 

 重力レンズも、観測が正確にできるところには現れないが、遠くなって観測が不正確になればなるほど顕著に現れてくるという現象である。

 偉い人が言っているから本当であるということは、科学としてはもっとも忌避すべきことであるはずである。それも、ビッグバンは神の一撃などという後ろ盾がついているとしたら科学者としてはなおさら考えなければならないのではないだろうか。

 

問題点2 形

 図5−11を見ると、分子雲に似ている。銀河内の分子雲よりはるかに巨大で、はるかに希薄なガスによるとは考えられないだろうか。これが水素分子や、水素原子であればこの中を通る光は屈折する。

図、5−12から、この暗黒物質の分布と、銀河の分布が重なる図である。

口絵10.11は銀河群と中性水素が重なっている。銀河団も、X線で見ると、水素原子で満たされているという観測もある。このことから、これは、暗黒物質ではなく、水素原子や水素分子を主とした普通の物質の集まりであると考えることも可能である。観測できる宇宙全体が水素を主としたガスで満ちているのは観測されている。それが希薄だとしても。

 書いたように、気体による光の屈折は、観測や実験で証明されている。水素原子や、中性水素分子の存在も観測されている。一方、暗黒物質は観測されていない。また何物かもわかっていない。重力による光の屈折も、アインシュタインという天才が言ったというだけで、仮説であることは変わらない。

 どちらが、正しいのだろう。すでに実証されている現象や理論で説明できる現象(通常の物質でできた希薄なガスの集まり)は、それに対立する理論(暗黒物質の集まり)の証拠には使えないのではないだろうか。あれが暗黒物質であるというなら、科学的検証、疑問を払底しなければならない。すなわち、少なくとも、ガスによる屈折ではないという実証と証明と、通常の物質が集まったものではないという証明が必要である。

 

問題点3 通常の物質と、暗黒物質の振る舞いの違い

 この本によると、通常の物質でできた銀河は、かなり激しい活動をしている。回転、衝突、巨大爆発、巨大ブラックホール、太陽の1兆倍を越える光を放射等枚挙に暇がない。

 ところが、暗黒物質はとてもおとなしい。宇宙の初期に銀河や巨大構造を作る中心になったということがほとんど全ての活動である。その後は銀河の回転に寄与しているというのがせいぜいの活動である。

 通常の物質の5倍もあるのに、通常の物質に比べてあまりにもおとなしい。見えないからわからないだけだというのは、間違いである。もし、ダークマターが、銀河のように、渦巻き衝突し、爆発したら、その重力の変動で、銀河が大きく振り回されるはずである。何せ、5倍もの量があるのだから。今見えている銀河の5倍のダークマターでできた銀河があっても不思議ではないのだから。

 それが、まるでない。おとなしく銀河の回転を支えているだけである。ビッグバン宇宙論のためにとても優等生で、おりこうさんであるのは、人間が考え出したものだからであろう。ビッグバン論者につごうのいいことだけしか性質として持っていない。

 

4 ビッグバン宇宙論について

 ビッグバン宇宙論は、ダークマターや、ダークエネルギーや、空間膨張や、1点から全宇宙が一瞬より短い時間でできた、とかインフレーションとかいうことが中心である。ところが、このどれをとっても、本当は何も分かっていないことばかりだ。今の科学では、説明も証明も不可能な謎以外の何物でもないものだけを中心としてできている。これを事実といいきることはできないはずだ。

(1)たとえば、「真空のエネルギーは、微小な宇宙を一挙に膨らませた」とあるが、針で突いた穴より小さな真空に、全宇宙を作り出すエネルギーがあっただろうか。

 たとえば今手に持っているコップの中には、その時の微小な宇宙の数兆倍、いや、数京倍では利かない体積の真空がある。すると、コップの中から数京倍の数のこの宇宙と同じような宇宙が瞬間より短い時間で生まれる可能性があるということになる。130億年前にはあった現象が、なぜその後1度も起こらないのか説明しなければならないはずだ。太陽系だけをとっても、宇宙になれる可能性のある点より小さな真空は、0をいくつ並べてもたりないくらいあるのだから、起こる可能性は0をいくつ並べてもたりないくらいあるはずだ。太陽系ができて45億年も立っているのだから、そのいくつかは宇宙に成長しても不思議はないはずだ。なぜ、130億年前にその一点だけが特別であったのかを説明し証明しなくてはならない。たくさんの宇宙ができたという説もあるが、われわれの宇宙内や、銀河系内や、太陽系内や、地球内になぜそれが起こらないのかの説明が要る。

 

(2)空間膨張も、風船を膨らましたり、ぶどうパンを膨らましたりして例えている。風船や葡萄パンの膨らむ原理は分かっている。しかし、空間はそれとはまるで違う原理で膨らむはずだ。何もない空間がどういう原理で膨らむのか。どのようなエネルギーが何に働いて膨らんでいるのか。そもそも何が膨らんでいるのかさえ誰も分かっていない。

 また、どこも倍に膨らむから、地球から遠くなるほど速い速度で遠ざかるという説明である。すると、太陽系の空間が膨張したとき、その力は1光年先の空間を押しやっているということになる。膨張の力はどのように1光年先まで伝わったのだろう。1億光年先にはどう伝わるのだろう。伝わる速さはどれくらいなのか。光速なら1億光年先には1億年かかる。

 伝わり方を考える。

 鉄道線路で考える。鉄は原子の振動の圧力で膨張するということだ。原子同士が押し合いへしあいして膨張する。だから、線路が長くなると、膨張の力をうまく端まで伝えることができなくて曲がったりする。では,空間の膨張はどうだろう。地球の空間と月の空間が膨張すると、途中でぶつかる。空間どうしはどのように押し合うのだろうか。混ざり合うのだろうか。混ざり合っては空間膨張にならない。壁のようなものがあって、押し合って互いに下がるのだろうか。何もないはずなのに、どうやって押し合いながら遠い宇宙の果てまでも、この地球の空間膨張を、かすかな淀みもなく伝えているものは何なのだろうか。

 風船や葡萄パンは小さいから膨らますのは簡単だ。しかし、地球ほどの大きな風船やパンを膨らますのは至難の業だ。これが宇宙となると、均一に、膨張を伝えるなどということができるのだろうか。

 短い鉄道線路は曲がらないが長くなると曲がる。大きさは無視できないことである。

(3)宇宙膨張の証拠は銀河の赤方偏移だけである。銀河の赤方偏移は空間膨張のためである、ということは誰がどのような事実で持って証明したのだろう。誰がその検証をしたのだろう。誰も証明していないのだ。星の後退速度による赤方偏移が存在する。だからといて、銀河の赤方偏移が空間膨張によるということには直接にはならないはずだ。空間や、空間膨張について何一つ判っていないのだから。ということは、いまだに単なる思い付きか仮説にしか過ぎないということになる。噂話やSF小説なら、それで十分だろうが、科学となるとそうは問屋が卸さないはずなのにみんな信用している。

 

 ビッグバン宇宙論はキャッチフレーズばかりがかっこよくて、中身は何ひとつ分かっていないのだ。面白いSFにはなれても、科学にはなれない。他の分野、たとえば医学や、生物学の科学なら仮説にさえならないものではないだろうか。実証も、検証も、ちゃんとした理論的説明さえもないのだから。

 

5 宇宙はなぜこのように激動しているのか
(宇宙のエネルギーは何に由来するか)の仮説(あるいは思いつき)

(1)定常宇宙論で考える

 今は否定されている定常宇宙論で考える(少数意見を考えるというのもたまには息抜きにいいのではないでしょうか)。

 物質は、宇宙のあらゆる場所で少しづつ生まれるというのが定常宇宙論の考え方である。今は、それプラス宇宙は広がっているというのが加味されているが、私は、空間は膨張しない、と考えるので、空間は一応最初から無限に広がっていたと考える。

 離れた物質は、万有引力で引き合う。位置エネルギーである。離れれば離れるほどそのエネルギーは大きくなる。ランダムに宇宙空間に生まれた物質は、そのとたんに位置エネルギーを持つことになる。そして宇宙は限りなく広いから、限りなく大きな位置エネルギーを自然に持つ。これが、宇宙を激動させている力の根源でないだろうか。

 この物質が、集まって銀河や、恒星になると、大きな位置エネルギーが解放されることになる。そのエネルギーは、運動エネルギーや、熱エネルギーに代わって銀河や恒星を激動させる。

 星も、縮み続ける。縮むことによって熱が発生し核融合を行う。水素からヘリウムになる。離れていた水素原子が、より近くなり、位置エネルギーから運動エネルギーが発生する、さらに星の進化が起こると、中心はさらに縮み、より高温になり、ヘリウムから炭素や酸素ができてくるといわれている。ヘリウム原子や、水素原子は、ここでもさらに縮むことになる。つねに位置エネルギーが関係している。これは少し行き過ぎか。

 万有引力は、つねに物質を引き寄せようとする(エントロピーの増加)。しかし、物質は常に元の位置に戻ろうとする(エントロピーの減少)。

 また。原子もこの過程を取る。素粒子から、陽子、そして様々な原子が重力によりできるが、これらはまたもとの素粒子にもどろうとして崩壊し続ける。

 エントロピーの減少(位置エネルギーから生まれた熱エネルギーによる)と、増加(万有引力)のせめぎ合いが果てしなく続いているのが、この宇宙である。

 物質が生まれた位置と、質量により、宇宙の力関係が決まるので、物質が多くても少なくても、必ず元の位置に戻ろうとするから、宇宙は広がりも収縮もしない。位置の変化があるのみである。

 

(2)ビッグバン宇宙論で考える

 一方、ビッグバン宇宙ではどうだろう。元は1点である。生まれたとき宇宙は位置エネルギーを持たない。ビッグバン宇宙のエネルギー源は真空のエネルギーである。真空のエネルギーにより、宇宙は爆発的に広がる。広がると位置エネルギーを持つ。これはものすごい量のエネルギーである。あの巨大な質量の銀河や銀河団を、何千億個も、万有引力に打ち勝って宇宙のかなたまで移動させるのだから並大抵の力ではない。

 それは真空のエネルギーが変わったものだ。後は定常宇宙論と同じである。その位置エネルギーが変化して宇宙を激動させる。

(3)結論

 問題は、130億光年以上にもわたってこれだけの物質を拡散させるエネルギーはどこから涌いてきたかである。その巨大な位置エネルギーが、針で突いたより小さな空間に存在したとはとても信じられないことだ。その上、宇宙の全物質もその針の穴から涌いてきたというのだ。すごいことだ。

 定常宇宙論なら、宇宙のあらゆる場所で、針の穴より小さな空間は針の穴より小さな陽子1個を生むエネルギーをもつだけですむ。それだけで宇宙を激動させるに足る巨大な位置エネルギーが生まれる。大きな違いだ。全宇宙と陽子1個の差がある。考えなくてはならないことであると思う。

 

6 終わりに (銀河の進化)

 銀河の進化は、130億年という時間制約を離れて考えることもたまにはやってみても面白いのじゃないだろうか。ビッグバン宇宙論が、上に書いたように、信じがたい現象ばかりで構成されているのだから。

 すると、ダークマターや、ダークエネルギーなどという、謎を解決するために新たな謎を導入していくとしか思えない科学にならなくてすむし、もっと事実に沿った考え方が生まれると思うのだが。たった数億年で銀河や、銀河団や、宇宙の構造ができたということから逃れられるのだから、銀河を考えるうえでかなり余裕が出てくるのじゃないだろうか。

 主流の学説に反することを研究するのは非常に難しいことかもしれないけれど、今まで、それで、大当たりを取った人たちがたくさんいる。ガリレオも、ニュートンも、ダーウィンも、ひょっとしてアインシュタインもそうかも(私は相対性理論は信用していないのですが)。

 

 早晩ビッグバン宇宙論はひっくり返ると私はにらんでいます。あまりにも思い付きが多すぎますからね。まっとうな科学の手法を取っているとはとても思えないですから。

 

 

終わり 平成21年9月9日 著者 高田敞 H21,9,14改訂