ビッグバン宇宙論と、高田定常宇宙論の比較

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T 両論の主張

 

ビッグバン宇宙

高田定常宇宙

宇宙は膨張している(空間膨張)

宇宙は膨張していない(空間はもとからあった)

1点からこの宇宙のすべてができた。(空間、物質、エネルギー、時間、まだ何かわかっていない、ダークエネルギーとダークマターが生まれた)

原子が宇宙全体で散らばって生まれた。(物質が生まれ、エネルギーは物質の持っている4つの力から生まれた。空間と時間はもとからあった。ダークエネルギーとダークマターはない)

1点に全宇宙を生むエネルギーがあった。

太陽系ほどの空間に数万年あるいは数億年に1個くらい原子が生まれるエネルギーがあった。

1点に、全宇宙に物質を拡散(膨張)させるための巨大なエネルギーがあった。

 元々散らばって生まれているので、宇宙に物質を拡散させるエネルギーは要らない。

誕生30万年後に、全宇宙の物質と光が分かれた。

ランダムに非常に長い時間をかけて徐々に宇宙は物質に満たされていった。光はその物質からでた。

宇宙は今まで観測されている通常物質と通常の4つの力のほかに、直接には観測されていない謎の物質と謎のエネルギーでできている

普通の物質とエネルギー 5% (4%)〈1〜2%〉

ダークエネルギー 72%(76%)〈83%〉

ダークマター 23% (20%)〈14〜16%〉 

{注:( )内は佐藤勝彦氏の見解・〈 〉内は、2010年2月9日の朝日新聞に載っていた見解}

通常物質と基本的な4つの力でできている。

現在散らばっている物質や、ダークマターの持っている巨大な位置エネルギーは、一点でのビッグバンより生まれた

ランダムに物質が生まれたから、生まれたとたんに位置エネルギーを持つ。そのための特別なエネルギーは要らない

背景放射はビッグバンの名残の光である(空間膨張の唯一の証拠)

背景放射は宇宙の塵の出す光である

銀河の赤方偏移は、銀河の後退速度で生じる。

銀河の赤方偏移は、空間の物質のために生じる

 

U 考察

 上のことについて、どちらが現実的かを順に考えていきます。

 

1 空間膨張

(1)空間膨張の仕組み

 ビッグバン宇宙論の空間の膨張については、空間とはどのような構造になっているのか、空間が膨張する仕組みはどのようになっているのか、そのエネルギーは何かなど、理論的なことは何もわかっていないようです。空間膨張のエネルギーはダークエネルギーということになっているのですが、ダークエネルギーとは何かが分かっていません。分からないことを分からないことで説明しているのではどうしようもありません。

 また、空間が膨張する直接の観測や実験も存在しません。唯一の証拠は銀河の赤方偏移ということですが、これは空間膨張の直接の観測ではありません。後述するように、銀河の赤方偏移が違う理由で起こっている可能性があります。この現象を発見したハッブルも、この現象を銀河の後退速度と考えるのはよく考慮してからにするようにと述べています。もちろん、古い人ですから空間膨張のためとは考えてもいなかったようです。

 要するに、理論も実際の観測も何もないのが宇宙空間膨張説です。科学の要件を満たしているどころか、科学的証明に値するものはただのひとつもないといえるのが現状です。

 

 

 膨張があるということは収縮もなくてはなりません。重力が大きいと、宇宙はやがて収縮を始め、元の1点にもどるという意見もあります。このときは空間も一緒に収縮するということです。この現象をビッグクランチというそうです。

 物質が万有引力でくっつきあう現象は様々なところで観測されています。したがって、ビッグバン宇宙のすべての通常の物質が万有引力ですべて収縮する可能性は否定できません。(定常宇宙では収縮できません。理由は後述)

 宇宙空間が重力で収縮するという考えはどうでしょう。

 ビッグクランチで空間を収縮させるエネルギーは重力であるということです。現在銀河の中心には巨大なブラックホールが必ずあるということになっています。これは今の宇宙にある最大の強さの重力源です。銀河系の中心にもそれらしい暗い星が観測されています。ほぼブラックホールと考えても間違いないというところまで観測値が絞り込まれているそうです。でもブラックホールだとは言い切りません。なぜ言い切らないのか。その人たちは、観測で宇宙の謎を解き明かそうとしている人たちだからです。観測精度が後1歩足りないからです。彼らは結論の中に推測を決して交えないからです。すなわち科学をやっているのです。

 銀河系の中心近くで、この星(ブラックホール候補。非常に強い重力源)の周囲を回っている恒星には、空間が曲がっていることによる影響はないようです。公転軌道は単純にケプラーの法則で計算しているようですから、空間が極端に曲がったり、吸い込まれたりはしていないようです。また、中心にあるこの星がブラックホールなら、光さえ出て来れないといわれているのですが、重力だけは普通の星とまるきり同じで、何の変化もなく出てきて周りの星をしっかり引っ張っているようです。

 このように、ブラックホール候補の星が周りの空間を収縮させて引き込んでいるという観測データーはありません。究極の重力源だから、少しくらいは空間を引き込んでもよさそうなものですがそれが観測されていません。ということは、空間はブラックホールくらいの重力では引き込まれないということのようです。

 まあ、空間が引き込まれたら、なくなった空間の跡に何が残るかも困った問題になります。空間がなくなったところには、何もない空いた場所ができます。そこには空間さえないはずです。空間もない何もない空いた場所とはどのようなものなのでしょうか。ビッグクランチでこの宇宙空間が1点に収縮した後には何があるのでしょう。やはり宇宙空間が広がっているのではないでしょうか。それともなにかがびっしり詰まっているのでしょうか。それも空間には違いありません。それらのこの空間でない空間も収縮したこの宇宙の巨大な重力で収縮しビッグクランチの2乗にならないのでしょうか。元の空間とどう違うのでしょう。ビッグバン理論では、いろんな空間があって使い分けているようですが、われわれのいる空間の構造すら一つも分かっていないのですから空間に種類があるという考えは科学にはいたっていません。

 このように、空間膨張は今のところ何ひとつ証拠のない仮説でしかありません。理論も実証もただの一つもない上に矛盾だらけだから、本当は仮説にもならない、たんに空想の産物にしかすぎないといえます。

 

 定常宇宙の、空間が最初からあったという説も同じです。実証も理論もありません。

 これではどちらが正しいとも双方が間違っているともいえません。宇宙の始まりや、空間の存在や、時間の始まりや、物質の存在は、今のところどのような考え方も、空想を一歩も出ないのです。

 

(2) 宇宙空間膨張についての検証

ア われわれはいつの空間の大きさなのか

 ビッグバン理論によると、物質は、空間膨張によって、物質の間だけ引き伸ばされ、散り散りになっていきます。散り散りになりながらもやがて部分部分で収縮し星や銀河や銀河団や、大構造ができたということです。

 空間膨張は、物質そのものを引き伸ばしはしないようです。空間が膨張すればすべてがそれにともなって膨張しそうなものですが、そうはならないのです。

 地球や、太陽や、太陽系や、銀河系が膨張しないのは、重力が空間膨張の力より大きいからだという説明です。原子の膨張については理論は見かけません。光が膨張するなら、原子も膨張してもよさそうなのですがそうはならないようです。膨張しないのは、強い力や、弱い力や電磁気力が空間膨張の力に打ち勝つということなのかもしれませんが、そんなことでいいのでしょうか。

 空間膨張は、4つの力とは関係ない問題です。物質の存在そのものの位置の問題です。私たちの右肩と左肩がどこにあるかとか、陽子と電子がどこにあるかとかの存在場所の問題です。空間が膨張すれば、右肩と左肩もそれにともなって膨張するはずです。引き合う力が大きいから、元々あった両肩の距離は、もとあった空間のときの距離そのままである、ということになるのはおかしな話です。

 宇宙空間が膨張しているなら、われわれの周りの空間もつねに膨張しているはずです。両肩の距離が膨張しないとすると、いつの空間の大きさに合わせた両肩の大きさなのか考えなくてはなりません。生まれたときなら、そのときの空間の大きさにずっと合ったままです。しかしそのときの母親の大きさは母親が生まれたときの空間に合わせた大きさになります、すると、その母親は、と遡っていくことになります。さかのぼると、46億年前の空間に行き着き、地球の構成物質の始まりのビッグバンに行き着きます。するとそのときの大きさをずっと引き継いでいて、その後の空間とは関係ない大きさになります。われわれは今の空間とは関係なく、ビッグバンの初期、物質ができたときの空間の大きさに合わせた大きさのまま、ひとつも膨張しないで今にいたっているということになります。まだ宇宙が非常に小さく、火の球であったころの空間の大きさに合わせた大きさのままです。その後、空間は何兆倍、何京倍になったかわからないくらい膨張しているというのにです。

 原子もそうです、原子もビッグバンの始まりに原子が出来たときの大きさのままなのでしょうか。まだ宇宙が非常に小さかったときのままであるから小さいのかもしれません。でもそんなことではないようです。生まれたての空間は小さすぎて、この宇宙のすべての原子は入りきれないでしょう。

 空間膨張は銀河団の間と光だけは引き伸ばすけれど、そのほかのものには一切手を出さないようです。そして宇宙のすべての物質は、ビッグバンによって生まれたときの空間の大きさに合わせたままの大きさを引きずってここまで来たということになります。

 また、もし、空間の膨張があっても、4つの力で物質は膨張しないのなら、銀河が膨張に逆らって重力で衝突するように、物質もその力で縮んでもよさそうです。同じ大きさを保っている根拠はないのですから。

 要するに、空間とは何かがわかっていないのに、かってに膨張させているから、つごうのいいところだけ膨張させて、観測して膨張していないと分かったところだけは理由をつけたり、無視したりして、膨張させていないだけなのです。そして、地球周辺で膨張しているものはひとつもないのです。

 

イ 銀河が膨張しないで、間の空間だけが膨張するときの矛盾

 地球ができてから、46億年の間に、地球の空間はかなり大きくなっているはずです。(ビッグバン宇宙論で考えると、46億÷137億=33.5パーセント)しかし、地球がそれにともなって大きくなっていることは観測されていません。太陽系もこの46億年の間に大きくなっている実証はありません。実際は、同じ大きさであると考えられています。空間膨張より重力や他の3つの力が大きいからというのかもしれませんが、大きくなっていないものは大きくなっていないのです。これは太陽系や地球の空間は膨張していないということの証拠になります。太陽系の物質や構造は膨張していないけれど、空間は膨張している、という根拠は何一つありません。物質や構造は膨張していない、したがって空間も膨張していない、というほうが、無理がありません。

 太陽は普通の恒星です。太陽とその周りが膨張していないということは、宇宙のすべての恒星の周りが膨張していないということになります。するとすべての銀河は膨張していないということになります。実際銀河は膨張していないようです。ビッグバン論者もそれは認めています。

 銀河ができた100億年前にさかのぼると、宇宙空間は小さいけれど、銀河は今と変わらない大きさです。そのときの宇宙は今の(137億年−100億年)÷137億年=0.27だから、約27パーセントの大きさです。すると、銀河系とアンドロメダ銀河の間の距離も、今250万光年という説だから、100億年前は67、5万光年になるはずです。銀河系は、星の観測できる部分だけで直径約10万光年、アンドロメダは25万光年です。その周りを取り巻いているガスはその数倍の距離はあるはずですから、互いのガスの腕は絡まりあっているといってもいい距離です。

 その後、空間膨張の力で両銀河は互いの重力を振り切って離れて行き、今(250万光年)より遠くまで離れた後、両銀河の重力により今度は接近しだしたということになります。おかしな話です。

 空間膨張によって、離れていく銀河と離れない銀河があると、100億年ほどさかのぼると、このように大きな矛盾が生じることになります。

 
2 1点から一瞬ですべてができたのか、ランダムに全空間から少しずつできたのか。 

 考察

 ビッグバン宇宙では、全物質のほかに、空間や、時間や、ダークマターやダークエネルギーというものが1点から生まれたことになっています。

 空間はどこで生まれたのでしょう。空間が生まれる前は何があったのでしょう。空間は生まれると、膨張していくという理論です。どこに膨張しているのでしょう。空間の外は何でできているのでしょう。擬似空間があったという人もいます。では擬似空間はどこから生まれたのでしょう。擬似空間と膨張しているこの空間とがぶつかっているところはどのようになっているのでしょう。この空間が膨張すると擬似空間は圧縮されるのでしょうか。それとも混ざり合うのでしょうか。

 様々な疑問がでてきます。しかし、このことはビッグバン論者はほったらかしです。この宇宙とは関係ないからということらしいです。要するに分からないから、知らん振りを決め込んでいるだけです。

 時間も生まれたといいます。時間が生まれる前はどうなっていたのでしょう。時間がなければ物事も進みません。これもほったらかしです。

 時間とは何かということと、空間は何かということは、現代の科学でも本質は何一つ分かっていません。何ひとつ分かっていないのに、それらが生まれたというので、説明の仕様がないのです。それらが生まれたというのが憶測に過ぎないということです。今のところ科学の域には達していません。

 ダークマターやダークエネルギーというものも生まれたということです。それが宇宙の96パーセントを占めているということです。

 これらもいまだに何一つ直接の観測はなされていません。少しだけ間接的な観測があるだけです。それも他のものである可能性のほうが高いようなしろものです。このふたつは、われわれの周りにも、空気や、大地や、太陽の光の24倍もあるはずなのに、われわれに何一つ影響しないのです。見ることも触ることも何一つできないというのです。すべてが、謎という材質でできているとても不思議なものです。

 これらが何もない空間の1点からすべて生まれたというのです。

 

 定常宇宙論では、普通の物質しか生まれません。生まれた物質は、4つの力を持っています。もとからあった宇宙空間全域に、最初からばらばらに小さな粒子が生まれます。生まれた物質は万有引力を持っているので必然的に位置エネルギーを持ちます。それがすべてのエネルギーの源になります。引かれあった粒子は衝突し、位置エネルギーが熱に変化します。これが光を生みます。

 不思議な物質や、不思議なエネルギーはなにもありません。

 ただ、空間がいつからあったとか、時間がいつからあったとかは、この理論でも何も分かりません。それは、ビッグバン理論と同じです。

 ただ、謎の物質や、謎のエネルギーは要りません。謎の現象もぐっと少なくなります。謎ははるかに少ないといえます。

 

3 宇宙を生むエネルギー

 ビッグバン宇宙論では、目に見えないほど小さな空間が一瞬でこの宇宙を生んだという理論です。この宇宙最小のエネルギー真空が(真空とは、エネルギーが最小の状態であるという定義があります)、この宇宙最大のエネルギーと物質、今あるこの宇宙を生んだわけです。最小の中の最小が、この宇宙最大の物質とエネルギーを生んだというのです。

 何もない空間の顕微鏡でも見えない小さな空間にそのような膨大なエネルギーが存在したのでしょうか。地球1個だって、そんな小さな空間から突如生まれたとは考えられません。コップの中から、とつぜん地球がヌーっと現れたらどう思いますか。それどころではないのです。針穴より小さい穴から全宇宙の物質すべてが突如出てきたというのです。ビッグバン論者も知っていると思うのですが、星は点にしか見えないけれど、ひとつひとつが、地球100万個分を越える大きさなのです。それが、ひとつの銀河で、1000億個もあり、その銀河がまた1000億あるか2000億あるか分からないくらい無数にあるのです。スバル望遠鏡を、宇宙空間に持ち上げて観測したら、今の銀河の10倍は見えるでしょう。すると、銀河は1兆個あることになります。観測技術がもっと発達したら、空はびっしり隙間なく銀河に覆われているのが見えることでしょう。それでも、それはまだ宇宙のたった4%しか占めていないというのがビッグバン理論です。それらが目に見えないような小さな1点の真空から瞬時に生まれたというのです。不思議どころではありません。

 量子的ゆらぎから生まれたという説だけれど、量子的ゆらぎで、この全宇宙が突如生まれるものでしょうか。量子的ゆらぎはこの世界最小のものです。それが、全宇宙という最大のマクロなものを瞬時に生み出せるものでしょうか。いまのところ、量子的ゆらぎは量子の世界のことで、マクロな世界には適用できないことになっています。

 

 一方、定常宇宙では、量子的ゆらぎから、空間に最小の粒子が1個だけ生まれます。最小のものが最小のものを生みます。エネルギーは最小でも大丈夫です。太陽系くらいの空間に何万年に1個の割合で生まれても、何千億年、何京年とたてばかなりの物質が生まれてきます。宇宙空間も時間も限りなくあるのだから、今の宇宙のようになっても不思議ではありません。

 

4 膨張のエネルギー

 ビッグバンでは、謎の大爆発が、この宇宙の物質や、ダークマターを宇宙空間に散らばらせています。物質が離れると位置エネルギーが生じます。現在の宇宙にあるこの位置エネルギーは巨大です。

 今、宇宙ステーションが地球を回っています。これは一度には打ち上げられませんでした。何度かに分けて打ち上げました。たったこれだけの物質を地球の引力に逆らって100kmほど離すのでさえ大変です。それが一箇所に集まった宇宙の全物質の重力に逆らって、巨大な銀河団さえ百億光年の先まで散り散りにするのですから、並大抵のエネルギーでは済まされません。このエネルギーを、顕微鏡でも見えないくらい小さな空間が生み出したというのです。すごいことです。

 このエネルギーはどこから生じたか不明です。ダークエネルギーといっているように、まさに謎のエネルギーです。

 また、爆発のエネルギーの大きさが分からないから、宇宙は拡散するのかやがて収縮するのか、ということも分かりません。爆発のエネルギーと、万有引力の大きさが違うと、宇宙は平坦にはなれなくなります。ところが、観測によると、この宇宙はかなり平坦だそうです。これは万に一つもない奇跡に近い出来事だそうです。

 

 一方、定常宇宙論なら、最初から散り散りに生まれるから、このばらばらにするダークエネルギーは要りません。また、散り散りに生まれるから、生まれたとたんに物質は位置エネルギーを持つことになります。宇宙の物質は生まれながらに巨大な位置エネルギーを手に入れることができます。もちろん、このエネルギーは謎ではありません。万有引力ですべてが説明できるエネルギーです。ダークエネルギーではありません。

 このエネルギーは、物質が持つ万有引力に一致します。すると、引き付ける万有引力と、斥力になる位置エネルギー(注1)が一致するから、生まれながらに宇宙は完全に平坦になります。宇宙にいくら物質が新たに生まれても、万有引力と位置エネルギーは一致するから、いつも宇宙は平坦になります。言い換えれば平坦以外にはなれないのです。

 また、この巨大な位置エネルギーを持った物質が収縮すると、星を輝かせ、核融合に点火する力にもなります。

 (注1:位置エネルギーと斥力の関係・互いに離れている物質はその距離と万有引力に応じて、ぶつかる速度が決まります。位置エネルギーの他への流出がなければ、ぶつかった物質はぴったり元の距離まで離れます。宇宙の物質は基本的には、すべて生まれた場所に戻ります)

 

5 物質と光

 ビッグバン宇宙では、光は最初の火の玉から生まれたことになっています。物質と光は混ざり合って膨張していったということです。その光は、空間膨張によって引き伸ばされ、背景放射の光になり今も宇宙に満ちているというのです。

 この光はどこから涌いてきたのでしょうか。まず、小さな真空から、物質が涌いてきて、その物質が光ったのでしょうか。

 最初に、全宇宙の物質が生まれたら、ブラックホールのように、ものすごい重力で物質はつぶれてしまいそうです。そうはならなかったようです。今ある原子ができる前から光もあったようですから、光は光として生まれたようです。物質が生まれただけでなく、空間が生まれたり、時間が生まれたりするのですから、光も生まれて不思議はありません。その後、物質が大きな重力のために熱を持ち、そのために出た光も加わったことでしょう。

 とにかく、時間も、空間も、物質も、光も、ダークマターも、ダークエネルギーも、何もない1点からとつぜん生まれ、そこから、すべてのものが、瞬時に飛び出て来るのですから、何があっても大丈夫でしょう。ただ科学とはいえませんけれど。

 この現象は、今の宇宙を観測したら、膨張しているということになった。計算すると、137億年前には1点に集まっていたはずだ。だから、すごい圧力であったから、大爆発したろうというようなことが始まりである考え方です。これはガスが収縮して星になる、星は輝きだし、やがて、圧力に耐えられなくなって大爆発を起こし超新星になり光り輝く、というのとよく似た過程です。

 だから、まず、今ある宇宙の物質が先にあります。それが過去にさかのぼって収縮するから、巨大な重力を持って大爆発を起こすのです。結果が先で、原因が後です。

 何もない空間からとつぜん宇宙にあるすべてが小さな点から一瞬で湧き出すということから考えが始まったのではありません。そうなら、そんなに小さな1点から、全宇宙の物質が飛び出すわけがないとなったことでしょう。この宇宙の物質が収縮し1点に集まったら、ものすごいことになる。巨大な重力により、ものすごい高温になるそして大爆発を起こすだろう、ということから考えたことだから、ありえるかも、となったのです。

 昔、太陽は、ピンポン球くらいの大きさで、コップの中からポンと出てきて、それから急激に膨れたんだよといったって誰も相手にしないでしょう。同じように、今ある宇宙の全物質と、全ダークマターとが、リンゴほどの大きさにぎっしり詰まって、コップの中からポンと生まれたと言ったってだれも相手にしません。

 その大きさでは信じてもらえないから、さらに過去にさかのぼらせて、1点に集まってももっと過去にさかのぼらせてドンドン小さくして、顕微鏡でも見えないくらい宇宙を小さくしてしまいます。すると、そんなに小さくなると、誰も、それがどんなことかわからなくなってしまいます。そしてそれを、針穴よりもっと小さい、やはり顕微鏡でも見えないくらい小さな真空からポンと生まれさせます。やはり、そんな小さな空間のこと花にも分からないから、人知を超えたことが起こっても大丈夫というわけです。まあ、見事なやり方です。きっと、人を納得させる方法とかいう類の本を熟読したのでしょうね。

 針穴より小さい全宇宙の物質と、ダークマターは、どうなっているのでしょう。見て見たいものです。まるっきり冗談です。

 まあ、こんなことは不可能でしょう。コップから、ポンと地球が飛び出るなんて、どう考えたってあるわけないでしょ。それがもっと小さいところからならポンと地球が出てくるなんて、言う人も言う人だけど、信じる人も信じる人です。

 

 

 ビッグバンの光は、3000Kの黒体放射から、3Kの黒体放射と同じにまで膨張しているということです。千分の1になっています。空間膨張は光エネルギーを減らすようです。

 銀河団同士は離れるから、位置エネルギーは増えています。物質も、1点から全宇宙に広がったのだから、ひじょうに巨大な位置エネルギーを獲得しています。

 光はエネルギーを失い、物質は巨大なエネルギーを手に入れています。仕組みの違いなのでしょうが、空間膨張は、かなりえこひいきであるようです。

 

 一方、定常宇宙では、光は、物質からでます。物質の温度に応じた黒体放射です。位置エネルギーの解放からでる光もありますし、核融合からでる光もあります。そのほかにも電子からでる光などもありますが、謎の光はありません。では物質はどこから生まれたか。これは分かりません。しかし、針穴から、ポンと地空が飛び出るなどということはありません。

 

6 銀河と宇宙の構造

 ビッグバン宇宙では、137億年がこの宇宙の年齢です。ところが110億年前には銀河があったことが観測されています。銀河や宇宙の構造は、数億年でできなくてはならなくなります。

 また、宇宙は非常な速度で空間膨張しているということです。その膨張に逆らって、物質は収縮しなくてはなりません。宇宙全体に物質をばら撒く力に逆らって、ガスの小さな引力で収縮するのです。これらの問題を解決するためにダークマターなる謎の物質を登場させています。この物質は謎以外の何物でもありません。ダークマターが銀河や、銀河団や、大構造の核になったという理論です。

 しかし、ダークマターが、空間膨張に逆らってそんなに早く収縮することができるのかが疑問になります。

 初期の宇宙では、宇宙が小さかったために、ダークマターも、通常の物質もひじょうに密集し、密度は高かったはずです。それが空間膨張とともに拡散しています。しかし、ある程度宇宙が大きくなると、今度は、部分部分でガスが重力のために収縮して銀河などの宇宙の構造を作るということです。密度が高く、及ぼしあう重力が強かったはずの初期のガスやダークマターが空間膨張のために拡散し、薄くなって互いの及ぼしあう重力が弱まってからは、空間膨張の力より重力の力が強くなり、収縮するのは矛盾があります。

 もうひとつの矛盾は、宇宙膨張の速度は距離に比例しているとされていることから生じます。100億年前の小さな宇宙での物質やダークマターの拡散する速度は、互いの物質間の距離が短い分、ハッブル定数から考えると今より小さかったはずです。すると、小さい速度で離れているときはその速度が重力に打ち勝って物質やダークマターは拡散し、速度が大きくなるとその速度に重力が負けて近づいているということになります。矛盾があります。

 上の二つをまとめると、宇宙が小さくて、互いの及ぼしあう重力が強く、離れる速度が小さいときには拡散し、離れて及ぼしあう重力が弱く、離れる速度が大きくなると収縮していることになります。2重の矛盾があります。

 宇宙のすべての物質とダークマターにこれがあてはまるのです。

 

 これに対し、定常宇宙では、時間は無限にあります、数百億年、数千億年、いや、もっと長い時間をかけてゆっくりと物質が宇宙空間にランダムに生まれ、万有引力と、位置エネルギーの熱への転化により収縮すればこの宇宙の構造は通常の物質だけで十分できます。空間膨張はないから、万有引力とそこから派生する位置エネルギーだけで宇宙の構造はできるのです。

 これは、小学校で実験した、水の中に味噌を入れて温めるのとよく似た構造になります。熱により、温まった味噌が上がり、冷めると、引力によって下がって行きます。宇宙の物質も、万有引力により収縮し、物質の熱により離れて行きます。物質の引力や、物質同士の衝突による位置エネルギーが転化した熱の放射や、吸収により、物質は様々に動きます。これが銀河や、星や、巨大な構造を作ります。そのための時間はたっぷりあります。

 実際、現在考えられている、恒星のでき方には、ダークマターは考慮されていません。現在認められている4つの力だけで宇宙の星のすべては出来上がるのです。ダークマター無しで星間ガスが収縮し、銀河のすべての星ができるなら、ダークマターなしで銀河間物質が収縮し銀河ができても不思議ではありません。定常宇宙なら、ダークマターもダークエネルギーも必要なく、知られている通常の物質とエネルギーだけで十分出来上がります。

 

6 宇宙は何でできているか

(1)ビッグバン宇宙の原材料

 ビッグバン宇宙にはダークマターがあるということです。これは謎の物質です。今までに直接観測されたことはありません。それなのに通常の物質の6倍ほどもあるということです。

 たとえば、太陽系でいえば、太陽系に太陽があと6個、地球があと6個、というように、惑星もあと6セット、彗星やその他のものもあと6セット分ダークマターがあるということです。

 なぜそんなものがあると考えられたかというと、ビッグバンに必要になったからです。

 100億光年を超える向こうにまで銀河が観測されたことから、ビッグバン宇宙が、誕生後、かなり早い段階で銀河が生まれなければならないことから考え出されたものです。通常の物質だけではそんなに早く銀河はできないということからです。

 ビッグバン後、ダークマターがまず収縮し、その重力で通常の物質を引き付けて銀河ができた、という理論です。そのためには、たっぷりとダークマターがいるというわけです。

(2)ダークマターの性質

 重力がある、電磁波を出さない、電磁波とは反応しないという性質があるそうです。

 電磁波を出さないので、完全に真っ暗な物質です。また電磁波と反応しないので、完全に透明です(光がそのまま通り抜ける)。ガラスは透明ですが、光が屈折するので、角度によって、光ったり、景色がずれたりして見えてしまいます。ダークマターはこれさえないから、完全に見えないそうです。だからこれまで直接には観測されなかったということらしいです。

 なぜこのような性質の物質が考え出されたかというと、上に書いたように、ビッグバン理論ではこの物質による重力が必要でした。しかし6倍もあると今までに観測されていなければならないはずです。ところが観測されていません。見えないということが必要条件です。だから、完全な透明で光を出さない物質でなければなりません。性質を推測して当てたということなのか、つごうのいいものを考え出したということなの

かは、今のところ分かりません。

(3)ダークマターの存在の証拠

ア 銀河の回転速度

 ビッグバン理論以前に、銀河の回転の異常が観測されていました。

現象

 銀河の回転は、外周部にいっても回転速度が落ちません。これは外周部でも質量が減っていないことを示唆しています。ところが、観測できる星の質量だけでは足りません。このことから銀河には謎の物質があるということになりました。これをミッシングマスと名づけました。それがやがてダークマターの存在根拠になります。

イ ダークマターの観測

 重力レンズ効果による最近の観測で、ダークマターの分布が計算により作図されたということです。(これは間接的な観測です)

(4)考察

ア 銀河の回転速度

@ ミッシングマス(ダークマター)は謎の物質説の検討

 ミッシングマス=ダークマター=謎の物資とする。

 ダークマターは銀河を作るときに中心となって通常の物質を引き付けたということです。すると、銀河の中心に多く、周辺部に少なくなくてはなりません。すると、銀河の回転は、やはり中心で速く、周辺部に行くほど遅くなって、銀河の回転を説明できないのは同じことになります。これでは困ります。

 そこで謎の「暗黒物質が銀河の外側を球状に取り巻くようにある」とします(「 」内は、2010.2.9付け朝日新聞)。すると、銀河を作るときに、通常の物質が謎の物質のために周辺部に引き付けられて、今観測されている銀河のように、中心に行くほど密度が高くはならなくなります。球殻状の銀河ができてしまいます。観測とは一致しません。これでも困ります。

 また、ダークマターは、最初に集まって銀河の種になるということです。なぜ銀河の内部は通常物質だけで、周辺部だけにダークマターが集まっているのか原理が説明できません。ダークマターはシャイで、窓際が好きだ、ということでもないでしょうから。

 ダークマターは通常の物質の約6倍あるということです。すると、銀河も観測されている物質の7倍の質量があることになります。観測されている銀河の回転速度と一致しなくなります。

 以上のことから、ダークマターが謎の物質であるとすると、銀河の回転速度や、構造をダークマターで説明できそうにありません。謎の物質は関係がないといえそうです。

 また銀河の中にはダークマターはなさそうです。少なくとも後6倍の物質があるとは考えられません。このことからミッシングマスは謎のダークマターではないということがいえそうです。

A ミッシングマスが通常の物質の場合

 ミッシングマスが発見されたときから今までに、銀河周辺部に新たな物質が観測されています。それもかなりの量です。それは、観測機器や技術の進歩によります。

 それによると、星の観測されるところより外側にも、水素でできた腕が大きく伸びているのが電波で観測されたということです。銀河の直径は今までの数倍になります。すると、面積はその2乗倍、体積はその3乗倍になることになります。ミッシングマスが発見されたころに比べると、はるかに多量の物質が、銀河周辺部に見つかったということです。

 低温の水素分子は光を出さないから観測が非常に難しいそうです。また、太陽系にある水素分子の出す光にまぎれて、遠い宇宙の水素分子が出すかすかな光は観測できなくなるそうです。このことから低温の水素分子がまだ観測されずに残っていることも大いに考えられます。これからも、観測機器や技術の進歩で、ますます多くの物質が発見されることが考えられます。

 ミッシングマスが水素分子だとすると、中心に行くほど密度が増し、外側に行くほど、薄れます。しかし、球の外側の体積は距離の3乗倍で増えるから、密度が薄くなっても質量はそんなに急激には減っていきません。観測されている銀河の構造と矛盾がなくなります。また、全体の質量も7倍にする必要もなくなります。

 このことから、ミッシングマスは、水素分子であると考えても矛盾はありません。

 

イ ダークマターの観測

 重力レンズ効果から、ダークマターの分布図がシミュレーションされたということです。

@ ダークマターは謎の物質説の検討

・ このときに光が曲がった原因が重力レンズ効果であるという証拠はありません。光は重力で曲がるという、相対性理論があるからそう思い込んでいるだけです。光はほかのことが原因でも曲がります。ほんとうはそちらの可能性のほうがはるかに高いのに、ビッグバン論者や、相対性論者はなぜかそのことを無視しています。

・ ダークマターは収縮できるか。

 普通の物質が収縮するときは、物質が持っていた位置エネルギーを何らかの形で放出しなければ収縮できません。

 (例:ボールを落とします。ボールは何回かはずんで地面に停止します。このとき最初にボールがもっていた位置エネルギーが運動エネルギーになり、それが、衝突により、熱エネルギーに変わり、地面やボールに吸収されます。何回かはずむうちに、すべての位置エネルギーが熱エネルギーに変化してしまうためにボールは地面上に止まります。位置エネルギーが熱エネルギーになって放出されなければ、ボールはいつまでも跳ね続けます)

 通常の物質でできた星間ガスはこのボールと同じように、収縮するときに、ぶつかり合って熱エネルギーになった位置エネルギーを電磁波で放射します。そのために位置エネルギーが小さくなり収縮できます。これを繰り返して、だんだん収縮していくのです。これは、分子雲をつくるときも、星をつくるときも同じです。

 ダークマターは重力を持っているということだから、必然的に位置エネルギーも持つことになります。しかし、電磁波を出さないから、収縮するとき、位置エネルギーをほかの方法で放出しなければ収縮することができなくなります(普通の物質の場合、熱は振動だから、熱を放出しないでためておくと、物質はそれに見合う運動をして、収縮できなくなります。太陽が引力でつぶれないのもそのためです)。位置エネルギーを何らかの形で放出したら、通常の物質の6倍もあるのだからそのエネルギーは観測されるはずです。その6分の1しかない通常の物質が出す熱エネルギーは電磁波になって観測されています。星や、銀河や、星間ガスが出す様々な波長の電磁波です。星の光は核融合による光ですが、分子雲や、できたての星や、ジェットの一部などは、位置エネルギーが熱になったために光っています。ところがその6倍もあるダークマターの収縮によって出しているだろうエネルギーは今のところ何一つ観測されていません。

 謎の物質説では今のところダークマター収縮の原理は謎です。まさしく、謎は謎を生む、です。

・ 重力レンズ効果と質量

 重力レンズが観測された今までの銀河や銀河団の質量と、光の曲がり方が計算では合わないといわれています。質量が足らないというのです。

 これを、銀河や銀河団の中や周りに大量にあるガス(これは直接の観測で実証済みです)による屈折現象とすれば、計算は合います。

 エディントンの太陽近傍の星の観測も、計算とは合っていません。こちらは観測誤差といわれています。

 これも、太陽大気による、屈折現象とすれば問題はなくなります。

 地球大気による屈折現象は、観測されているのだからこれらに新たな証明は要りません。反対に、重力で光が曲がるということには、エディントンの観測や、銀河の重力レンズ現象といわれている現象は科学としては証拠にできません。(ある現象が、それまでに証明されている原理で説明できるときは、その現象を新たな理論の証拠として使うことはできない)

A 通常物質が原因説の検討

・ このシミュレーション図は、分子雲に酷似しています。

・ 水素分子を主原料とする、ガスと考えてみます。

 このガスにより光が屈折したと考えます。そうでないという根拠はありません。ガスがあればそこを通る光は必ず屈折します。

 このことから、この光の屈折は、重力レンズと、ガスによる屈折の両方で起こったか、あるいは、ガス単独による屈折現象であるといえます。重力レンズ単独はありえません。地球大気を通る星の光は絶えず瞬いています。これは、地球大気による屈折現象です。同じことが宇宙のガスでも必ず起こるはずです。

・ 水素分子は宇宙に普通に大量に存在します。

 光が気体で屈折するのは、地球上の観測や実験で実証されています。重力で光が曲がる現象が観測されていないのと比べると、大きな違いがあります。

・ もしそのシミュレーション図が謎のダークマターとしても、水素分子は大量に存在するはずです。なぜなら、宇宙の物質は、謎のダークマターにより集められて、銀河や銀河団を作ったというのが、ビッグバン理論だからです。ダークマターがそんなに集まっていると、必然的に、水素分子やその他の物質が集められているはずですから。

 以上のことから、このシミュレーション図は、水素分子ガスによる屈折現象によるものと考えるほうがはるかに矛盾がないといえます。少なくともその可能性は大です。それを考慮さえしていないのは科学の方法としては間違っています。(科学の方法はすべての否定的証拠や考えをつぶしていかなくてはならないことになっています)

 

 (6)ダークマターの存在する場所の検討

 ア 地球上や地球内部、地球周辺

 地球にもあるのだが見えないだけだ、ということを述べている本があるが、それは間違いです。光とは反応しないから見えない、だから地球上にあっても観測できない、という論が通用するのはせいぜい小学生までです。

 ダークマターには重力があるということです。地球の6倍ものダークマターが地球やその周辺にあれば、地球の軌道が今とはぜんぜん違うものになります。今の地球の公転軌道は、太陽の通常の物質の質量と、地球の通常の物質の質量だけで計算してぴったりとあてはまります。すなわち、通常の物質以外の重力源は地球には存在しないということがいえます。ダークマターは地球にはないといえます。

イ 太陽系

 太陽系にもダークマターは存在しません。

 これは、太陽系の惑星の軌道が、通常の物質の質量だけで計算してぴったりあてはまることからいえます。6倍ものダークマターがあるとはいえません。

@ 太陽系にダークマターがない理由

・ ダークマターが通常のガス(水素を中心としたガス)の場合

 恒星ができるとき、まず通常のガスが収縮し分子雲ができます。それが収縮し、その中で多数の恒星が生まれます。恒星ができると、恒星からの紫外線で、分子雲は吹き飛ばされます。この現象は観測されています。そして散開星団とよばれる星の集団になります。その後、恒星は分散し、散り散りになるということです。

 太陽もこのようにして生まれたといわれています。太陽と共に生まれた星はばらばらになり、一番近い恒星でも、4光年ほど離れています。

 太陽系に分子雲がないのは、できたときにそれらを吹き飛ばしてしまったからといえます。銀河系内に分子雲が大量にあっても太陽系に太陽の6倍の水素の分子雲がない理由がこれで説明できます。

・ ダークマターが謎の物質の場合

 恒星をつくるとき、ダークマターが通常のガスを収縮させ分子雲を集めたと考えます。

 ダークマターは光と相互作用をしないので、恒星ができても恒星の紫外線で吹き飛ばされることはないから、分子雲が吹き飛ばされてもダークマターだけは星の周りにいつまでも残っていることになります。すると太陽の周りや中にも大量になくてはならないはずです。また、ダークマターは分子雲の6倍あるので、ダークマターが集まっていると、できた恒星もその重力で分散できずいつまでも散開星団のまま固まっていなくてはならないはずです。

 以上のことから、ダークマターが通常の物質であるなら今の太陽系にダークマターが存在しない理由が説明できますが、ダークマターがビッグバン論者のいうような性質を持った謎の物質であるとすると、太陽系にダークマターが存在しない理由が説明できなくなります。

6−2 ダークエネルギー

 このエネルギーも太陽系には存在しません。

 これは、空間膨張のエネルギーということです。しかし、太陽系の惑星の公転や、それぞれの衛星の公転にはなんら影響していません。普通の物質やエネルギーの約20倍あるというから、その斥力が惑星の公転に影響しないはずはありません。今のところ、ケプラーの法則と惑星の公転が一致することから、太陽系にはダークエネルギーが存在しないことがいえます。

 また、銀河系もダークエネルギーで膨張していません。通常の物質の20倍もあるのに何一つ影響できていないということは、銀河系にも存在しないということがいえます。

 

 ダークエネルギーや、ダークマターが太陽系にないということは、すべての恒星にも無いといえます。銀河系に無いということは、すべての銀河に無いといえます。

 ではどこにダークエネルギーや、ダークマターはあるのでしょう。遠い宇宙の果ての銀河団と銀河団の間にありそうです。そうでしょうか。観測の正確にできるところにはなく、観測がほとんど憶測であるところには存在するというのはどうも怪しい現象というほかないようです。

 

7 位置エネルギー

ビッグバン宇宙では物質は1点から膨張したことになっています。宇宙がうまれたとき、すべての物質と、ダークマターは1点にあったので、位置エネルギーは0です。物質とダークマターは、宇宙膨張にともなって離れていくので、位置エネルギーを獲得していきます。

 位置エネルギーは離れるほどに大きくなっていきます。1mの高さから鉄球を落とすのと、100mの高さから鉄球を落とすのとでは、地上に当たったときの破壊力が違うのでその違いが分かります。たった99mの違いでもはっきり違いがでます。また、1cmの大きさと、1mの大きさでも破壊力に違いが出ます。

 月が地球と衝突したら、地球は壊滅的な打撃を受けるでしょう。ところが、銀河系の中では地球や月は点にもなりません。離れている距離も、離れているとはとてもいえません。無に等しいくらいです。それが、地球よりはるかに巨大な物質が、何光年とか、何十億光年とかに離れているのですから、現在全宇宙に広がった物質の持つ位置エネルギーがいかに膨大かがわかります。

 この位置エネルギーはどこから手に入れたのでしょう。宇宙膨張による運動エネルギーが位置エネルギーに変化したのでしょうが、この運動エネルギーはどこから生まれたのでしょう。巨大な位置エネルギーに見合う運動エネルギーです。ビッグバンのエネルギーなのでしょうか。ビッグバンはどこからその巨大なエネルギーを得たのでしょう。ビッグバンが始まった1点の真空が持っていたエネルギーなのでしょうか。すると、針穴ほどの大きさの真空が、少なくとも、地球を吊り上げるクレーンよりは大きな力をもっているということができます。太陽だって捕まえてポンと宇宙のかなたに投げ飛ばしたんですから。

 

 定常宇宙なら、最初からばらばらに生まれるので、生まれたとたんに位置エネルギーを持ちます。そのための新たなエネルギー源は必要ありません。バラバラに生まれるだけで宇宙に満ちている巨大な位置エネルギーを獲得できるのです。 

 

8 背景放射

 背景放射は宇宙膨張の証拠であるといわれています。検討してみます。

(1) 背景放射がビッグバンの名残の光であるとする。

ア ビッグバンとともに地球の前駆物質もできているはずです。形の違う地球です。背景放射がビッグバンの名残の光であるなら、地球の前駆物質の出した光も混ざっているはずです。すると、背景放射を見るということは、赤ん坊時代の地球を見ていることになります。われわれが、自分の赤ん坊の姿をみられないように、地球の過去の姿が見えるはずはありません。昨日の地球も、10年前の地球も、1億年前の地球も、どんなに性能のいい望遠鏡でも見ることはできません。もちろん100億年前の地球も(あったはずです。星間ガスか、違う星の中かは分かりませんが、すべてがビッグバンとともに生まれたというのですから、地球も生まれていたはずです)137億年昔の地球も、見える訳はありません。そんなこと、ようく考えなくても、少し考えれば分かることです。

イ ビッグバンから、宇宙の晴れ上がりのときまでは30万年であったといいます。すると、ビッグバンの光も、どんなに長くても、始まりから30万年で終わりになるはずです。地球に始まりの光が到達してから、30万年すると見えなくなるはずです。ビッグバンの光のすべてが地球を通り過ぎていったはずですから。どうしていつまでも見えているのでしょう。

ウ 上に書いたように、宇宙晴れ上がりのとき地球はその真っ只中にあったはずです。すると、直進する光はあっという間に地球を通り過ぎていったはずです。宇宙誕生から、30万年では宇宙はまだかなり小さかったはずですから、地球から一番遠いところでも、せいぜい数十万光年の距離であったはずです。互いの端が光速の10倍で宇宙が広がっても、半径300万光年にしかなりません。だから、どんなに遠い所の光でも光が直進するなら600万年後にはすべての光は地球を通り過ぎているはずです。まして、ハッブルの法則では、宇宙空間膨張は1メガパーセクト(325万9000光年)で70.1km/秒ということですから、宇宙の年齢が30万年ごろより前までの宇宙膨張は、一番遠いところどうしでも光速どころか、70.1km/秒にも達していないはずですから、宇宙は非常に小さかったはずです。

  したがって、地球から一番遠いところの光も、あっという間に通り過ぎて、見えなくなったはずです。それが137億年後にまた見えるというのは変な話です。

エ 背景放射は約2.7Kをピークとする黒体放射であるから、ビッグバンの名残の光である証拠である、とビッグバン論ではいっています。

(2)背景放射が宇宙の塵の出す光であるとする。

ア 宇宙の塵の出す光だから、つねに地球にやってくるので、いつも見えます。

イ 宇宙に塵がある限り、光は出続けるから、次から次に光が地球に到達し、何万年、何億年たってもなくなることはありません。

ウ 宇宙の塵を見ているのだから、昔の地球を見るということはありません。

エ 塵の温度が2.7Kであれば、2.7Kをピークとする黒体放射を出します。

 

  このように、背景放射がビッグバンの名残の光とすると、様々な矛盾が生じますが、宇宙の塵の出す光とすると、矛盾はいっさいなくなります。

  宇宙には塵があることが観測されています。塵は温度があるので、その温度に応じた黒体放射をしているはずです。いわれている2.7Kあたりをピークとする黒体放射です。黒体放射はビッグバンだけの専売特許ではありません。すべての物質は、その温度に応じた黒体放射をします。

  したがって、宇宙に満ちている塵の出す光は必ず地球に届いているはずです。

  このように、背景放射がビッグバンの名残の光であるということは否定できても、宇宙の塵の出す光であるということは否定できません。背景放射がビッグバンの名残の光であるという考えは間違っているといえます。

 

9 銀河の赤方偏移

 ビッグバン論では、銀河の赤方偏移は、空間膨張によって光が引き伸ばされるからだということです。そのほかにも、空間膨張によって、銀河が後退していることからくるという考え方も初期にはありました。

 この、ビッグバン理論が考え出された元になった銀河の赤方偏移には謎があります。

 最初はビッグバン銀河の赤方偏移は、どの方向の銀河も距離に比例して赤方偏移が大きくなるという観測から、銀河が地球から遠ざかっているためにドプラー現象が起こり、光が赤方偏移しているということでした。ところが距離が倍になると、赤方偏移も倍になることから空間の膨張によるとされました。だから、その後は、後退速度による赤方偏移という考えは訂正され、空間膨張によって光が引き伸ばされた結果赤方偏移しているということになりました。

 謎のひとつはこの空間膨張です。先に書いたように、この原理は何一つ分かっていないし、観測もされていません。観測が正確にできるところでは全ての現象は膨張していないといえます。車も、木も、道路も、海も、地球も、太陽も、惑星の公転軌道も、彗星の軌道も、大小のマゼラン銀河も、すべて膨張していません。地球に近いところの現象は、空間は膨張していないという現象ばかりです。近いところでは、空間膨張の否定証拠は数えきれないほどあるけれど、空間膨張の現象は何一つ存在しません。

 遠い銀河の光が赤方偏移している原因が、科学としては、理論も、実証もされていない空間膨張が原因であるというのです。

 謎のもうひとつは、初期にあった、空間膨張によって銀河が地球から見ると後退していっていることになることによる、光のドプラー効果であるという説明です。これは今は否定されて、上に書いた、空間膨張による光の引き延ばしが原因であるということになっています。しかし、銀河が地球から離れているとすると、後退速度による、光のドプラー現象は必ず現れます。

 たとえば、星や、銀河の回転による速度変化による、光のドプラー現象です。アンドロメダ銀河が接近しているということも、アンドロメダの光が、青方偏移している観測から考えられました。また、系外惑星の探査も、惑星の公転のために恒星が揺れることによる速度変化を、光のドプラー現象で観測しています。

 後退速度による光のドプラー現象を否定することはできません。なぜ否定しているのでしょうか。空間膨張による光の引き延ばしがあったとしても、後退速度による、光のドプラー効果も存在するはずです。

 

 第三の疑問は、空間膨張があれば、三次元で膨張するはずです。すると、光は、波長が伸びるだけでなく、波高も伸びるはずです。波長が1000倍に伸びたら、波高も1000倍に高くなります。横幅はどうでしょう。横幅もやはり1000倍になるはずです。光が粒子とするなら、それも100倍に太っているはずです。宇宙に光が誕生してから、今日までに、宇宙は、1000倍どころの膨張ではありません。光の波は巨大に太った光粒子の巨大な波になります。この波は観測されているのでしょうか。そんなことにはなっていません。ビッグバンの光は、波長だけ膨張するということにしています。というより、都合のいいところだけ取り上げて、後は知らん振りしているのです。

 一方、ドプラー効果は、波長だけを引き伸ばしたり縮めたりします。こちらは、普通の赤方偏移になります。銀河の赤方偏移は、速度によるというほうがまだ現実的かと思われます。がそちらは否定して、なんだかわけの分からないことがいっぱいの光の膨張を正しいとしています。

 どちらの現象にしろ、空間膨張とは何かが究明され、その現象が観測の正確にできるところで、実証されてからの話ですが。

 このような矛盾は、究明できていない、空間膨張という現象に起因しています。何ひとつわかっていない現象で、宇宙を説明しようとするのですから矛盾だらけになるのは必然でしょう。

 しかも、華々しく、また誰もが信じて疑わないビッグバン理論の証拠は、8に書いた背景放射とこのふたつだけです。このほかには何もないのです。ともに現代科学では説明できない代物だけなのです。

 そのために、針の穴から、全宇宙の物質が飛び出したり、謎の物質やエネルギーが、全宇宙の8割から9割もなくてはならなくなったりするのです。モノポール問題を解決するためにインフレーションなどという現象が考え出されたこともそうです。一瞬で、針穴からこの宇宙以上に宇宙は膨張したという理論です。すると、よけいに矛盾が出てくるので、今度は、インフレーションのあと、また1から今度は普通のビッグバンが同じところから始まったという理論が出たりします。それがだめなら三度目の正直で、三回目のビッグバンがこの宇宙になったと言い出すことになるかもしれません。いうは易し行うは難しです。全宇宙が一瞬で生まれたなんて、言うのは簡単だから誰も言います。2秒もあれば事足ります。寝転んでても簡単にできます。でも川原の小さな石ころひとつだって、一瞬で、無から作り出せる人はこの世界に一人もいないのです。砂粒一つだってできません。それを全宇宙が一瞬でできたなんてあほなことを平気で言うのです。そんなことが起こるわけがありません。常識以前の問題でしょう。

 謎が謎を生み、その謎が新たな謎を生んでいるのが現在のビッグバン理論です。天動説の周天円とそっくりです。謎はますます巨大になり、収拾がつかなくなっています。

 

 一方、定常宇宙論なら、光の赤方偏移は、宇宙の水素分子や原子を光が通り抜けることによって、光のエネルギーが奪われることから起こる、と考えます。1億年も宇宙空間を飛べば光はたくさんの水素原子やその他の物質に当たります。銀河の光の中に多くの吸収線があることがその証拠です。そのたびにエネルギーが奪われるのです。銀河間の空間はほぼ均一にガスがあると仮定すると、距離によって、光のエネルギーの減じ方が倍倍になります。これなら謎の空間膨張はいりません。普通の理論で説明ができます。波高も高くなりません。エネルギーの減少によって、光の振動が遅くなるだけです。

 ハッブル定数は1メガパーセクト(325万9000光年)で70.1km/秒です。325万9000年も光が飛べば、光だって少しはエネルギーが減じるでしょう。325万年前には、人間はまだ猿とたいして違わない動物でした。それが人間まで進化し、宇宙のかなたまで見るようになったのです。その間、光は果てしなく宇宙空間を飛び続けてきたのです。たくさんの原子にぶつかり通り抜けてきたのです。エネルギーが少しくらい減ったって不思議なことではありません。

 

V 結論

 ビッグバン宇宙論は、謎の巨大なダークエネルギーや謎の大量にあるダークマターがなくては成立しない理論です。宇宙の95パーセントのものが、まだ見つかっていない原子や、観測されていないエネルギーでできているというのは空想科学の範疇です。それに対して、定常宇宙論は、この宇宙は、発見されている原子と、定説である、4つの力だけで成り立ちます。

 分からないのは、空間がいつから、どのようにしてできたのか、ということと、物質がどのようにして生まれたかということです。これはビッグバン宇宙論でも、ビッグバン以前の宇宙空間がいつからどのようにして生まれたか、ということや物質はどのようにしてできたのかは空想以上のものではないので共通です。

 ただ、物質やエネルギーのでき方や、今あるこの近辺の宇宙の構造や運動を説明するには、定常宇宙論のほうがはるかに無理がないとはいえます。

 ビッグバン宇宙論は以上のように矛盾に満ちているといえます。というより、今わかっている物理学が、4パーセントほどしか通用しない世界です。後の96パーセントは今までの物理学と完全に相容れない世界です。

 お話としてはとてもすばらしいです。よくそんなことを思いついたものだと感心します。しかし、科学は芸術ではありません。常識から離れれば離れるほどすばらしいということは芸術では評価されても、科学では何の意味もないことです。

平成22年2月13日 完 

高田敞著

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