銀河の赤方偏移とコンプトン効果

 

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著者  高田敞

1 条件

(1)地球上で起こっている光の赤方偏移

@ コンプトン効果による赤方偏移

 X線を金属に当てると、反射してきたX線の波長が長くなる現象(赤方偏移)。

 X線の光子が電子と衝突したとき、光子のエネルギーの一部が、電子を弾き飛ばすエネルギーになるために、X線のエネルギーが減るために起こる。

A 光の吸収による赤方偏移

 密閉した部屋で光を点ける。消すと、瞬時に暗くなる。これは、部屋の壁に当たった光が、部屋の壁の電子に衝突し、それを揺り動かすためにエネルギーを減じるために生じる。光はエネルギーを失うから、波長が伸び、可視光線から、赤外線になり、マイクロ波になり、やがて消失する(赤方偏移)。光は光速だから部屋の壁への衝突は一瞬でも数万回以上になるから、一瞬で光は見えなくなる。

 この現象は日常的に身の回りで起こっている現象である。

 

(2)ビッグバン理論が述べている赤方偏移

@ 銀河の後退による赤方偏移

 銀河が後退することによって、ドプラー効果が起こり、光の波長が伸びる。

A 空間膨張による赤方偏移

 宇宙空間が膨張することによって、そこを飛ぶ光の波長が延ばされるために赤方偏移がおこる。

@、Aのどちらを取るかは、言う人や、使う現象によって異なる。どちらかというと@が多い。元々、ハッブルの発見した銀河の赤方偏移は、銀河の後退速度であるということからビッグバン理論が始まったからだろう。また、@、Aを両方同時に使うことはない。

2 考察

(1)から、光は、物質に当たるとエネルギーを減じ、赤方偏移することが分かる。このことから、数百万光年の距離を数百万年かけて飛んだ光が、その間に、銀河間物質に衝突し、エネルギーを減じることは十分ありえる。

 実際、銀河のスペクトルに、衝突の痕跡が暗線となって刻まれている。

 これはそのとき、光がその物質の電子を動かし、エネルギーを減じているということの証拠だから、光が、銀河間物質に衝突して光の赤方偏移が起こっているといえる。

(2)から、銀河が実際に後退していれば、後退速度によるドップラー効果が起こり、やはり、光は赤方偏移するといえる。後退速度によるドップラー効果は銀河系内の動いている星の観測から実証されている。

 このことから、これは証明されているといえそうである。

 しかし、問題は、銀河の後退が空間膨張によって起こっているということだ。今のところ空間膨張は証明されていない。遠い銀河ほど、赤方偏移が大きいという観測事実だけでは、空間膨張の証明にはならない。上に述べたように、違う理由でも、銀河は赤方偏移するといえるのだから、この一点だけでは証明にならない。特にこの場合のように、今までに証明された理由により赤方偏移が起こっているといえる場合は、その赤方偏移という現象を、空間膨張の証明に使うことは出来ないのが科学の常識である。

 では他に空間膨張を証明する現象はあるかというと今のところ存在しない。

 空間膨張は直接観測されたことはない。地球上や太陽系や、銀河系内では空間膨張にともなって膨張したものは何一つない。銀河系と、アンドロメダ銀河も、近づいていることから、空間膨張があるとはいえない。すなわち地球近辺には空間膨張の証拠は存在しないということである。

 巨大な引力と質量を持つ銀河団をやすやすと動かす空間膨張のエネルギーが、それに比べれば、無いに等しい引力や質量しかない太陽系を46億年の間少しも膨張させることができなかったのは、太陽系では空間膨張がないということである。

 赤方偏移によって空間膨張があるといわれているのは観測の非常に不確かな1千万光年より遠い宇宙にだけである。

 Aの、空間が膨張することによって光が伸びるということも、今のところ実証されていない。空間が膨張するという現象が直接観測されていないから、それによって光が伸びているということも観測できないのである。したがってこれも仮説である。

 

 空間とは何か、どのような構造なのか、空間膨張は空間の何がどうなることなのか、空間膨張はどのように銀河に働きかけるのか、空間膨張はどのように光に働きかけ光を引き伸ばすのか、空間膨張のエネルギーは何か、等について、空間膨張説の科学者はどれくらい分かっているだろうか。100%?。否。50%?。否。10%?。否である。実に、分かっていることは0%なのである。何一つわかっていないのである。

 それなのに空間は膨張していると豪語している。まあ、科学者とはたいしたものだ。

 

3 結論

 銀河の光が、銀河間物質に衝突することでエネルギーを減じる(赤方偏移)ということは、地球上で日常見られる現象と原理は同じである。

 一方、銀河の光が赤方偏移するのは空間膨張が原因であるという理論は、空間膨張という現象が直接にはまだ一度も観測されていないことと、空間について、何一つ分かっていないことから、仮説にもならないお話である。