インフレーションビッグバン説の非科学性

 あるいは、インフレーションビッグバン説と天地創造の共通性

著者 高田 敞

 

まえがき

 インフレーションビッグバン説は、宇宙は、最初無の一点から、インフレーションというとてつもない膨張で始まり、その後、ビッグバンが起こったという説である。

 インフレーションというのは、光の何兆倍、あるいは何京倍では利かない、ほぼ無限の速度で宇宙が膨張したという爆発である。

 ビッグバンとは、1メガパーセクト(325万9000光年)で70.1km/秒で宇宙は膨張しているという、地球と太陽の間に持ってくれば、そよ風よりも遅い、大陸移動くらいの速度で広がったという爆発である。

 

1 インフレーション

 宇宙が出来たとき、10‐38秒の間に、1038倍に宇宙は広がった、という理論である。

(1)この数値の信憑性

 勿論上に書いてあるこの38乗倍とかいうのは私の適当な数値である。なんだ、ばかみたい、と言うなかれ。私が言ったら、馬鹿みたいで、科学者が言ったら、すばらしいというのは単なる権威主義にしか過ぎない。(補足1)

 科学者が言った数値が信憑性があるかというと、私のと同じ位適当なのである。彼らにしたって科学的根拠などないのである。勿論、科学者は科学的根拠があるとは言っているが、それがせいぜい上の(補足1)程度のことなのだ。だから、その最終的結果は人により大幅に異なる。直径10センチまで広がったと言う人もいるし、この宇宙よりはるかに大きく広がったという人もいる。

 10センチと15センチでもその差は5割である。今時、5割もの誤差がある工業製品を作ったら、どこもあきれて買ってくれはしない。それが5割どころではない。10センチから、ほぼ無限大である。インフレーションビッグバン説は、宇宙すべてが含まれる誤差である。というより、誤差しかないという理論である。私のあてずっぽうも偉大な科学者が言っている説の誤差の範疇にある。インフレーションビッグバン説とはあてずっぽうと大差ないのである。

 だから、今は何乗倍とはいっても、インフレーションが終わったときに、宇宙がこんな大きさになったとはいわない。いえないのである。

 じつは、この説を考えた根拠は思いつき以外の何物でもない。ビッグバン理論で出てきたモノポール問題や地平線問題が解決するから、というだけなのだ。天動説の周転円のようなものだ。天動説が惑星の運動の観測と合わないからといって周転円を考え出した。おかげで、天動説と、観測された惑星との誤差はその当時の地動説の計算による誤差より小さくなった。だからといって、天動説が正しかったかというと、そうではなかった。数値を小手先技でいくら合わせたって、事実でないものは事実ではないのである。それと同じである。

 地平線問題が解決しても、さらに困難な問題、ほぼ無限に近い速度で宇宙が飛び散ったという問題が生じている。今の物理学ではこのような速度はありえないことになっている。インフレーションビッグバン論者が、指数関数的膨張とか、総転移とかいう何の科学的根拠もない理屈(補足2)でお墨付きを与えているだけなのである。宇宙開闢の10‐38秒の間だけに許される、特別の1038倍ほども特別な現象なのである。それ以降は決して現れない現象なのである。なぜなら、今の真空は、エネルギーが最小の状態だそうだが、偽の真空(この宇宙を生んだ真空)は、エネルギーが最大の場だそうだ。針穴の大きさの真空でも、この宇宙を100億個は軽く生むほどのエネルギーを秘めているのだそうだ。今われわれが知っている真空は何一つ生み出すことが出来ないのとは大違いということだ。そうしないと、目の前のコップの中の真空から、無数の宇宙がインフレーションを起こして、生まれてしまうという、収拾のつかない状態になるから、今の真空は、何の能力もないとしておかなければならないのである。ご都合主義科学である。

 勿論インフレーションは実証されてはいないし、しようとも考えていないようだ。昔のことで観測しようがないからという理由である。だから実証しなくてもいいという理屈だそうな。なんともはあ都合よく出来ていること。

 

(2)出来方

宇宙は偽真空の量子的一点から生じたという。

 今の、真真空は無ではなく量子的には粒子が生じるという。その原理で偽真空の一点から全宇宙のエネルギーが生じ、指数関数的に膨張し、それが停止したとき、膨張の持っていたエネルギー(潜熱)が総転移し、火の玉となり、宇宙が生じたという。すばらしい。これほど理路整然とした話はそうめったやたらと聞けるものではない。しかし残念なことに、今分かっている物理学を総動員しても、この現象の何一つ証明できないのである。偽真空も、そこから、全宇宙のエネルギーが沸いて出ることも、指数関数的膨張の原理も、その潜熱も、である。

 量子的にはそうかもしれない。小さな一点からそれに見合う、小さな粒子ができては消えるかもしれない。

 しかし、宇宙は量子的ではない。非常にマクロの世界である。それも大きさが分からないくらい超巨大である。すると、インフレーションビッグバン説は、量子的な1点から無限大に近い数の粒子が飛び出したことになる。星の部分だけでも、太陽が、1000億×1000億個以上飛び出したということだ。星間分子や、銀河間分子の量を入れると、それの何百倍、何万倍になるか分からない。そのうえ、その何倍かのダークマターや、十数倍ものダークエネルギーまであるという説なのだ。電子顕微鏡でも見えないほど小さな偽真空の中に、それらが詰まっていたというのである。地球だって、コップの中に押し込めたらブラックホールになるというのにである。よくそんなことを言うこと。科学者とは不思議な人たちだ。

 勿論これも実証されていない。量子世界のことでさえ、無から粒子が生まれる現象はいまだ観測されていない。

 これも、科学の要件を何一つ満たしていない。思いつきの範疇を一歩も出ない。(補足3)

  

(3)エネルギー

 宇宙すべてのエネルギーも、直径10‐38センチの無の空間から一瞬より短い時間10‐38秒で生まれたという。

 真空とはエネルギーが最小の状態であるという定義もある。この宇宙は宇宙最大のエネルギーである。最小のものから、最大のものが出る。そのエネルギー差を埋めるものはどこから生じたのか。今ある真の真空ではなく、宇宙誕生前にあった、偽の真空から生じたという主張である。とてもつごうのいい真空があったもんだ。ではその偽の真空のエネルギーはどこから生まれたのか。それは元もと、偽の真空が持っていたというのだ。そしてそれは、この世界のことではないから人知を超えているから考えに入れる必要はないというのである。うまいことを考え付いたものである。最初から、エネルギーを持っていることが可能なら。最初から、物質が偽の真空の宇宙空間にばら撒かれていてもいいはずだ。最初からあるのなら、どっちだって同じ可能性なのだから、エネルギーに特定出来はしないはずだ。何もわざわざエネルギーで満たしてから超ミクロの真空から、超マクロの宇宙を作り出す必要などないはずだ。

 それにしても太陽はあんなに熱いのである、100億年は燃えているという。それが、針穴より小さな真空から生まれたというのだ。その太陽が、宇宙にはどれだけあるか分からないほどいっぱいある。地球だけだって、相対論から言うと、地球の質量かける、30万かける30万のエネルギーになるという。よくぞ針穴より小さい真空の中に入っていたものだ。偽真空はすごいものだ。

これも勿論実証されていない。

 

(4)ハッブル定数とインフレーションの矛盾

 1メガパーセクト(325万9000光年)で70.1km/秒という説がある。これも確定していない。いつも変わっている。

 ハッブル定数は、137億年前にさかのぼると、全宇宙がミクロの1点に集まっていたということを示す値である。

 ところが、インフレーションが最初に起こっている。宇宙誕生後、10‐38秒で、宇宙はすでに、少なくとも直径10センチの大きさになっていたといっている。これは明らかにビッグバン論者のいうミクロの1点ではない。ハッブル定数がいかに正しくても、ハッブル定数による膨張が始まった最初の瞬間は1点ではないことになるはずだ。

 このように、インフレーションがあるとハッブル定数では1点にはならないのに、一点になるといっている矛盾がある。ビッグバン説は、最初はインフレーションがなかったから一点から始まった、でつじつまは合っていたのだが、後から、インフレーションを入れたから、一点から始まることが出来なくなった。しかし、ハッブル定数は最初は一点であるという値だから、これをうまくすり合わせることが出来ないでいるようだ。それを考えて、インフレーションが終わったあと、また一点からビッグバンが始まったという説を考えた人もいる。まあ、いろいろあるようだ。

 まして、インフレーションによってこの宇宙より大きくなったという説になると、ハッブル定数で、137億年さかのぼっても、宇宙はこの宇宙より大きいのである。そこから10‐38秒さかのぼると宇宙は1点になる。ハッブル定数とは無関係の現象により一点になるのである。1点になるハッブル定数と完全に矛盾することになる。

 ハッブル定数はビッグバン宇宙論だけのときは、まだ何とかなるかも知れないが、インフレーションビッグバン論になると、大きな矛盾を抱えることになる。

 なぜこんなことになったのか。

 最初遠い銀河ほど赤方偏移が大きいことから、銀河が後退しているということになり、時間をさかのぼると、すべての銀河が一点に集まることになる。すると、宇宙はそこから始まったのだ、と推測し、ビッグバン説が生まれた。ところが時間がたつと、ビッグバン説だけではいろんな矛盾が生じてきた。そこで、それを解決するために、インフレーションなる現象を持ち出した。そして、インフレーションの後、ビッグバンが起こったということにした。しかし、銀河が後退しているという推測から宇宙膨張の速度をハッブル定数として特定したのだからハッブル定数をなくすわけにはいかない。ハッブル定数は、宇宙が137億年前には一点に集まるという数だから、インフレーションがあってもなくても一点に集まらなくてはならないのだろう。

 ビッグバンには、少なくとも銀河の赤方偏移という観測された現象があるが、インフレーションには、観測による証拠は何ひとつないのである。したがって、インフレーションが起こったあとビッグバンが起こったのでは、本当には一点にならなくてもそれを無視して一点から始まったとしなくてはならない。だからその矛盾のことは内緒にして触れないようにしている。そんなことをいうのは宇宙論を知らない人間だけだ。真実を知っている科学者は、そんなことは解決済みだと知っているという顔をしている。

 説明できないことは知らん振りするという得意技がここでも垣間見える。(補足4)

 

2 宇宙空間

宇宙空間もインフレーションビッグバンと共に生まれたという。

(1)空間

 インフレーションビッグバン説を信奉する人で、空間とは何かということを説明できる人はひとりもいない。何もわかっていないのにそれが生まれると言い切っている。科学的な理論は何一つないのにである。もちろん実証もされてはいない。科学的根拠も、実証もないのに、言い切っている。似非科学の特長に見事にぴったりである。

(2)空間膨張

 宇宙空間は点で始まり、膨張しているという。

ア 膨張の仕組み

 空間が膨張するというのは、空間の何がどのようになることなのか、説明できるインフレーションビッグバン論者はいない。勿論仕組みは何一つ解明されていない。また実証もされていない。それでも、膨張していると言い切る。これも似非科学である。

イ 膨張のエネルギー

 空間の膨張を起こすエネルギーは何なのか?不明である。今科学的に分かっている宇宙のすべてのエネルギーは、空間を膨張させることができるエネルギーではない。空間の膨張を起こすエネルギーは、最新の物理学でも発見できていない。理論もない。まるっきり謎のエネルギーである。勿論実証もされていない。理論も実証もない。あるのは、インフレーションビッグバン説の信奉者の願望だけである。これも、似非科学であるといえる。

ウ エネルギーはどこに働くのか

 餅を考える。これが膨らむ(膨張)のは、餅の中の水分が気化し、膨張することで餅を膨らませる。

 ではその水が膨張する原理はというと、水分子が熱せられることにより振動し、激しく動くことにより気体になることによる。

 このように物質が膨張するのは、熱エネルギーにより、原子の動きが激しくなることによる。

 普通の物質が膨張するのは、みんな熱エネルギーによる原子の振動ということである。これは実証されている。

 では、空間の膨張は、空間のどこにどのようなエネルギーが働いて、空間の何がどのようになるから起こるのだろうか。全て不明である。これについても、理論どころか、憶測さえない。分かるとは思えないから、研究もしていないのであろう。

 何ひとつ分かっていないのに、空間が膨張していると主張するのは、似非科学である。

(3)空間膨張の証拠

 いや実際に膨張している事実がある、とインフレーションビッグバン論者はいうだろう。そうだろうか。検討してみる。

 空間膨張の証拠は、遠い銀河ほど赤方偏移が大きいということだけである。空間が膨張しているから、光の波も引き伸ばされる(補足5)。だから赤方偏移するという。それをさかさまにし、赤方偏移するということは、空間が膨張しているということであるという説である。

  そういえるだろうか。

 この説への反論のひとつは、光が長い年月、たとえば1メガパーセクトの距離を325万9000年かけて飛んだとき、そんなに長い間(これは猿が人に進化できるほどの長い時間だ)飛んだら光のエネルギーが減少するだろう。だから、光が距離に比例して赤方偏移するのだという説を出した人がいる。

 これに対して、そのようなことは証明されていないからだめだ、と、ビッグバン論者(当時はインフレーションはなかった)は相手にしなかった。

 では、空間が膨張しているということは証明されたのかというと、いまだに証明されていない。証明されていないのは同じである。だからどちらともいえないはずなのに、空間膨張になっている。勿論他の理由かも知れないが。

赤方偏移の原因の案は今のところ2つなので、この2つを比べてみよう。 

ア 空間膨張

空間膨張で光の波が引き伸ばされる。

@ エネルギー不変

 光の波が引き伸ばされるということは、時間当たりの振動数が減るということである。それはエネルギーが減るということである。これはエネルギー不変則に反する。

A 引き伸ばされ方

 ビッグバン論によると、光は進行方向ばかりが引き伸ばされている。空間膨張があるとすると、空間は三次元方向に膨張しているのだから、光の波も、縦も横も高さも膨張しなければならないはずだ。それが縦だけである。

B 原理

 空間が膨張すると、空間の何が、光の何にどのように働いて、光が引き伸ばされるのか、理論もない。勿論実証もない。

イ 長い時間飛ぶことによる、エネルギー減

 宇宙空間には、様々な、分子や、原子がある。それに衝突しながら、光は進んでいる。衝突による光のエネルギー減少が起こっている、と考える。これは、エネルギー不変則に反しない。

 また、距離により、衝突する物質が増えるので、距離に比例して、光のエネルギーが減る。

 鏡張りの部屋に光を一秒入れる。光は鏡に反射していつまでも部屋が明るいかというとそうではない。一瞬で暗くなる。それは、鏡に当たった光が、物質と衝突することによりエネルギーを無くすからである。光は物質に衝突すると、エネルギーを無くすのである。

ウ 比較検討 

 アだと今の物理学では何一つ解けないが、イだと今の物理学で解ける、日常のありふれた現象である。

 観測されたのは、遠い銀河ほど赤方偏移が大きいということである。決して空間が膨張しているのが直接観測できたのではない。インフレーションビッグバン説信奉者が赤方偏移を空間膨張であると、何の証拠もないのに自分の都合のいいように勝手な解釈をしているにしか過ぎない。

 似非科学である。

(4)時間

 時間も宇宙誕生と同時に生まれたという。

ア 時間とは何か

何も分かっていない。

イ 時間が生まれた原因

何も分かっていない

ウ 時間が生まれた仕組み

何も分かっていない

 このように、時間が生まれたというが、何一つ分かっていないのである。勿論、実証もない。分かりっこないから実証するつもりもなさそうである。

 これは、上の空間と同じである。ではなぜこんなことを言い出したのだろう。それはこうすると、宇宙の始まりは、という問いに答えられるからである。

 しかし、では宇宙が生まれる前はどうなっていたのかという問いが生まれる。宇宙が生まれるには生まれる場所がいる。広がっていくにもその場所がいる。何かが起こるには時間が流れていなければならないはずだというのが通り相場であるという問いが出てくる。時間が生まれる前は時間がない、それはどのような状態なのかという問いも出てくる。

 この宇宙が始まる前には時間も、空間もなかったとしても、何もないとはどういうことなのかということが出てくる。

 その答えは誰も答えられない。宇宙の果ては、宇宙の始まりは、ということへの答えが今までも分からなかったように、この理論でも、やはり分からないままである。それはわれわれの宇宙のことではないから考えなくていいと言う人もいる。しかし、考えなくてよくても、宇宙が始まったならその始まりの前はどうなっていたという問いは残る。人知を超えているから、考えても仕方がないでは科学ではない。

 ではなぜ、科学的根拠は何もないのに空間や時間がそのとき始まったといっているのだろう。答えは神である(後述)。

 

3 宇宙背景放射はインフレーションビッグバンの証拠になるか

 宇宙背景放射がビッグバン宇宙説の証拠である、というのがビッグバン説の学者の言い分である。そこでそれは科学であるかを検討してみる。

(1)背景放射がビッグバンによる光であるという証拠はあるか。

実証されていない。仮説のみである。

(2)背景放射に他の原因は存在するか

 宇宙の塵の放射する光は、観測できたら宇宙背景放射となる、という仮説が、ビッグバン説以前から複数の科学者から出されていた。その予想温度は今発見されている背景放射とほぼ同じ周波数だった。ちなみにインフレーションビッグバン説の予想温度は数十倍違っていた。

(3)インフレーションビッグバン説の背景放射の検討

 宇宙開闢36万年後に宇宙の晴れ上がりという現象が起き、そのときの光であるという。

ア この年代は正確か

 非常に疑問である。インフレーションの終わったときの大きさが、未定である。インフレーションがこの宇宙より大きくなって終わったなら、宇宙はすでに今と同じようになっているはずだから、インフレーションが終わったときには灼熱状態は終わっているはずだ。10センチのときは、宇宙はその瞬間にブラックホールになっているだろう。 

 どちらにしろ、最初の大きさが分からないのだから、36万年などという結果が出るはずがない。

イ なぜ見えるのか

 宇宙の晴れ上がりのとき、インフレーションビッグバン説が正しいとすると、地球は背景放射の中にあった。勿論ばらばらではあったが地球はそこにあったのである。なぜなら、今宇宙にあるすべての物質は、インフレーションビッグバンの始まりとともに生まれたというのだから、地球を構成する物質も、形は違っても、そのとき生まれたはずである。したがって、宇宙の晴れ上がりのとき、すべての物質とエネルギーが光を出していたのだから、地球もそのとき、光を出していたはずだ。地球の元になった形の違う地球の出す光も背景放射の一部になったはずだ。背景放射がそのときの光であるなら、われわれは、今137億年−36万年前の地球を見ていることになる。ところが、電波望遠鏡はタイムマシーンではないから、自分の過去を見ることはできない。いくら、すばらしい望遠鏡が出来ても、2億年先の宇宙空間に、恐竜時代の地球を見つけることができないのと同じである。46億光年先の宇宙空間で小惑星が衝突して、地球が今の形になろうとしている姿を探しても、見つからないのと同じである。100億光年先の宇宙空間に、銀河系ができようとしている姿を探しても見つからないのと同じである。137億−36万光年先の宇宙空間に分子になりたての地球の姿を探しても、見つかるわけはない。それが見えたというのが、宇宙背景放射が宇宙開闢の光であるという主張である。

 背景放射が宇宙開闢の光であるというのは、2億光年先の宇宙に、恐竜時代の地球が見えるといっているのと同じである。

 2億光年先には見えないが、137億−36万光年先には見えるという不思議である。

(4) 検証しているか

 科学ならば、すべての反論を考え、それを検証しなければならないことになっている。ところが、インフレーションビッグバン論者は反証を考えるどころか、反証無視という手段で背景放射塵説を葬っている。

 

 以上のことから、背景放射は宇宙の塵の出す光であるとすると、今の物理学ですべて説明がつくといえる。しかし、宇宙開闢の光とすると、今の物理学では説明できない。電波望遠鏡は、自分の過去を見ることができるということになるからだ。

 自分たちの都合のいい解釈だけで、理論を組み立て、不都合なことは無視という手段を使っている。似非科学の典型的手法である。

 

4 キリスト教の神と、インフレーションビッグバン説

 この宇宙が始まる前には、インフレーションビッグバン説では偽真空という空間があったということになっている。そこはわれわれの周りの空間と違った空間である。そして、時間も違っていたようだ。ようだ、というのはそれが何一つはっきりしないからだ。インフレーションビッグバン論者も分からないのであろう。勿論偽真空と、今の真空の違いといっても、彼らは空想以外に何も述べることは出来ない。空想フィクションの世界なのである。

 なぜこれがキリスト教と関係があるのかを考える。

 ビッグバン説が出たとき、キリスト教会は大喜びしたという。あんまり喜びすぎたので、考案者が、少し静かにしないと科学者から反発が来るとたしなめたほどだ。

 では何がキリスト教会を喜ばせたのだろうか。

 その第一のことは、宇宙が二つあるということだ。

 この宇宙が無限に広がっていて、果てがないということになると、宇宙はこの宇宙だけになってしまう。

 一つでは何が困るのかというと、神の住む場所がなくなってしまうからである。この世と、神の住むあの世という考え方が、キリスト教の基本的考え方である。この世が無限に広がっていると、神の住む場所がなくなる。それは神を否定することになる。

 中世、ガリレオは宗教裁判にかけられたが無事であった。しかし、ブルートという人は死刑になった。彼の罪は、宇宙が無限だということを唱えたからだ。神の住む場所を否定したからだといわれている。地球が動いていることより、宇宙がひとつしかないということのほうが罪ははるかに大きいのである。地球が動いていても神の住む場所があれば神は安泰であるからだ。

 ところが、ブルートを死刑にしても、無限の宇宙という考え方は生き残った。ビッグバン説の前まではである。ビッグバン説は、この宇宙が始まる前にすでにこの宇宙とはまるで違った宇宙があったというのである。その宇宙の中にこの宇宙が突然より短い時間に生まれ、広がっていった、という説である。

 この宇宙と違った宇宙。それも人知では解明できない宇宙である。これこそ神が住む宇宙と解釈できる。その中にこの宇宙が広がっていく。それこそ、神の手の内にこの宇宙があるということである。しかも火の玉で始まった。光あれ、である。

 キリスト教にとって、これほど、聖書にぴったりの宇宙像はない。

 これこそが、ビッグバン宇宙説が、燎原の火のように広がった最大の原因ではないだろうか。実際、科学者の中でさえ、インフレーションビッグバン説は神を予言させると喜んでいる人もいる。そして、インフレーションビッグバン説の、すべての説明できない(実際は今の物理学ではすべてが説明不能である)現象や、エネルギーを、神の御力として、メデタシメデタシとしている様子がうかがえる。だから人間の科学では分からないのが当たり前だという姿勢である。だから科学で考えなくていいという考え方が出てくる。

 インフレーションビッグバン説は科学を前面に押し出して一生懸命隠しているが、本質は科学ではなく宗教論である。

 

結論

 インフレーションビッグバン説は、見てきたように、つごうのいい事だけ取り上げ、都合の悪い事は、無視するという似非科学のやり方とそっくりである。科学的証拠はひとつもない。あるのは謎のエネルギー、謎の膨張、謎の火の玉、謎の宇宙、など、現在ある物理学では手の出しようがない理屈だけである。その謎のすべては、神の空間と神の「光あれ」で解決するものである。この説の中心には聖書がある。キリスト教の世界を現代版にするために作られているのである。そう、現代版神の天地創造なのである。科学らしく装った現代版聖書である。  

 

補足

補足1

;「宇宙のからくり」山田克哉氏によると、「宇宙はその開闢から10‐35秒経ったとき加速的に膨張し、なんとたった10‐34秒という間に1050倍から10100倍に一挙に膨れ上がってしまったというのです」と述べている。この1050倍から10100倍がいかにいんちきか考えてみると分かる。たとえば、1cmの10倍から10倍の違いは、たったの90cmであるが、10倍から10倍の違いは9億cmである。1012から1013の違いは、9兆cmの違いになる。桁が増えれば、一桁の違いでも桁外れに巨大になる。1050倍から10100倍の違いは、巨大な数の上に、50桁もの違いである。1050倍と10100倍の違いは、おそらくこの宇宙の距離の何百倍もの違いになるだろう。科学者が言うことがいかに適当かが分かるだろう。私のあてずっぽうなどとても足元にも及ばない。でも科学者が言うとみんな信じるのである。不思議な世界だ。

 

補足2

総転移とは、水が氷になる現象だそうな。その原理で宇宙のすべてが、光速の無限大倍に近い速度で膨張し、そのエネルギーが宇宙のすべてを作ったなど、科学者以外誰が信じるのだろうか。

 水が氷になるとき、潜熱を出す。宇宙がインフレーションを起こしてから停止するとき、真空の潜熱が出て、宇宙は火の玉になったとか。水の潜熱は、水が持っていた熱エネルギーである。その熱エネルギーは、たどっていくと、ほとんど太陽の熱による。太陽の熱は、核融合反応によって生じている。エネルギーの原因が分かっている。一方、真空の潜熱とは何の熱なのだろう。それは、偽真空が持っていた巨大なエネルギーだそうな。なぜ偽真空は針穴より小さな空間なのに、この宇宙のすべてを生み出すほど巨大なエネルギーを持っているのだろう。謎である。偽真空て何なのだ、というと、われわれのいる宇宙空間の前にあった謎の宇宙空間だそうな。正体不明の、人間には決してその正体が分からない謎の空間だという。だから、何でもそこから生まれることが出来るそうだ太陽だって、地球だって、月だってそこから生まれてきたという。ドラエモンのポケットよりすごいものだ。なんといっても、理論が行き詰ると、そこから出たことにすればいい、とても便利な空間だそうだ。

 総転移のエネルギーがそんなにすごいものなら、氷ができるとき出る潜熱で、氷は、光速の無限大倍で膨張してもよさそうだ。すると、水は、太陽系どころか、宇宙の外まで一瞬で吹き飛んでしまうだろう。そんな現象は観測されていない。宇宙が瞬間で出来たのと、水が氷になるのとが同じだというのだから、科学者というのは頭がいい

 

補足3

 馬鹿な例:コップに、布をかぶせる。ワン、ツウ、スリー、で布を取る。地球がボンと飛び出す。これが地球誕生の真実である。と言ったらあなたは信じますか。信じるわけないでしょ。ところが、10‐38センチの無の空間から10‐38秒の間に、全宇宙が火の玉になって現れた、といったら信じるのである。馬鹿ばかしい話だ。なぜかというと、コップも地球もワン、ツー、スリー、も人間の日常感覚の範疇だから比べることが出来る。しかし、10‐38センチや、10‐38秒や全宇宙は人間の感覚をはるかに越えているので比べようがない。パソコンの画面や本の挿絵の世界である。本やパソコンの世界は何でも出来てしまうバーチャルの世界だ。インフレーションビッグバン説はパソコンの中にしかない、バーチャルの世界なのだ。すなわち何でもありの世界である。

 というより、ちっちゃい嘘は馬鹿にされるのが落ちだぞ、騙すなら法螺はでっかくふけ、という論理になぜかぴったりなのである、と言うほうが早いか。

 

補足4インフレーションビッグバン説が生まれた経緯

 遠い銀河ほど赤方偏移が大きい→遠い銀河ほど後退速度が大きい→

宇宙は膨張している→時間をさかのぼると宇宙は一点から始まったことになる→ビッグバン説→矛盾が出てきた→インフレーションがあったとしたら解決する→インフレーションビッグバン説

(注;勿論ハッブル定数も適当である。現在、ほぼ正確に星との距離を測れるのは、せいぜい数百光年までである。ハッブル定数の元になる、数百万光年離れている銀河までの距離は、大きな誤差が出る。その誤差を含んで出てきたのがハッブル定数である。誤差など存在しないような顔をしてひたかくしにしている。不都合なことを隠したり、無視したりするのは科学で一番やってはならないことで、似非科学の得意業でもある)

 

補足5 インフレーションビッグバン説の光の赤方偏移の原因

 インフレーションビッグバンには、光の赤方偏移の原因がふたつ述べられている。一つは、ここに述べた、空間膨張によって光が引き伸ばされたから起こったという説である。もうひとつは、先に述べた、銀河が後退していることによるドップラー効果によるという説である。この2説はまるで違う原理である。本により、どちらの説を取り上げているか異なる。両方が混在しているのもある。まあ、その程度の説である。


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2012年5月4日完