へいこく雑記帖

相対性理論でタイムマシーンは作れるか


著者 田 敞

 

まえがき

 アインシュタインは、相対性理論で、動く物質の時間は遅くなる、重力の働く物質の時間は遅くなる、ということを述べている。

 ということは、それらで時間が遅くなった人や物質は、普通の時間の人や物に置いて行かれて、普通の人より過去に取り残されることになる。また、地球の人より速度が遅かったり、重力が小さかったりした人や物質は、普通の速度や重力の人より時間の進み方が速くなって未来に行ってしまうということである。

このことから考えると、相対論でタイムマシーンができそうである。そこで個々の事例からそれが可能かどうか考えてみる。

 

問題1 SFのタイムマシーンとの比較

 SFのタイムマシーンは、時計の指す時刻に移動できる。たとえば、タイムマシーンの時計を西暦1950年1月1日に合わせると、タイムマシーンは西暦1950年1月1日に移動できる。では相対論の時計ではどうだろう。相対論で人は時間移動できるだろうか。

 

考察1 移動の限界(相対論で過去に遡れるか)

 例えば西暦2022年1月1日午前0時を出発点とする。相対論によると、すべての物質はそこから重力や速度の違いで物質ごとに様々な速度で時間が経過する。あるものは速くあるものはゆっくりである。

 一番重力が強いのはブラックホールである。一般相対論では時間が止まるということである。するとブラックホールは、2022年1月1日午前0時から1秒も動けない。それ以外の物質は遅速はあっても時間は先(未来)に進んでいく。

 また、一番早いのは光速である。特殊相対論ではこのとき時間が止まるといっている。そしてこれ以上速いものはないから、時間の進み方が一番遅くなるのは光ということになる。

 これ以上重い物はないし速いものはないから、時間経過は、一番遅くて「止まる」である。マイナス時間はないことが分かる。

 このことから、すべての物質は2022年1月1日午前0時、すなわち出発点より過去には行けないということが分かる。相対論にマイナスの時間はないからである。ということは、すべての人は、いま現在より過去にはさかのぼれないということが分かる。

 SFのタイムマシーンは、行きたい時刻に時計を合わせると、たとえば江戸時代にでも恐竜の時代にでも自由に行ける。相対論では、そうはいかない。人は今いる時刻から過去には行けないという制約があることになるから、江戸時代や、恐竜の時代には行けない。大きな違いである。因果律を持ちださなくても、父親がこどもだったころには行けないということだ。

 

考察2 相対論効果で変化した時計の時刻に人は移動できているか

(1)正確な時計の例

@ 東京大学の作った時計の例

 東京大学で正確な時計ができたので、高層ビルの上階と1階で、時間の進み方を計ったところ、上の階の方が時間の進み方が速かったという結果が出たということだ。1日経つと、1階と上階では指している時刻が違ったという。これは相対性理論が述べている通りだといっている。

 このことは、上階の時計が、1階の時計に比べて未来に進んでいるということを表している。すなわちタイムマシーンであるといえる。

すると上階に住んでいる人は未来に行っているということになる。その人は毎日会社に行っている。エレベーターに乗り、30階(未来)から、1階(現在)を通りぬけて出かける。未来から現在に戻り、出かける。乗ったエレベーターはタイムマシーンなのだろうか。

 こんな問題も生じる。

この時計を1階に運ぶと、1階の時計と並ぶことになる。未来に行ったはずの時計が、現在の時計と並ぶ。いつの間に、上階の時計は現在に戻ってきたのだろう。

 しかし、このとき、二つの時計の指す時刻は異なっている。どちらの時刻が1階の時刻になるのだろう。

この答えは、ガモフの著書「不思議の国のトムキンス」にある。特殊相対論効果で遅れたトムキンスの時計を、駅の時計に合わせている。駅の時計、すなわち1階の時計が正解である。変な話である。何が変かわかりますか。相対論効果で過去に行ったトムキンスの時計の針を指で回転させると、過去の時間が現在に進むということです。SFのタイムマシーンの時計を合わせるのと同じです。トムキンスの指の力は、相対論効果と同じ働きをしています。過去から一気に現在まで時間の速度を変えているのですから。このとき、トムキンスの時計は、過去を指しているが、それとは無関係にトムキンス自体は駅に現れているから、過去ではなく駅の時刻にいるということになる。トムキンスは遅れた時計の指す時刻にはいっていないということだ。

 東大の時計の話に戻すと、未来の時刻にある時計と現在の時刻にある時計が同時に存在しているという不都合が生じているということである。

 このことから分かることは、時計の針の指す時刻とは無関係に時計本体は常に現在に出現するということだ。

 すなわち、相対論効果で時計の針が違う時刻を指しても、時計本体やそれを持っている人はその時計の指す時刻に移動できていないということだ。トムキンスの場合も、トムキンスは時計の指している時刻に出現するのではなく、現在時刻の駅に着いている。相対論効果で変化するのは時計の針だけのようだ。

 高層ビルに話を戻すと、高層ビルの1階と最上階では時間の進み方が異なる。最上階は未来に行っている。すると、現在時刻の1階の上に未来時刻の最上階が乗っかっていることになる。もちろん他の階も上に行くに従って少しずつ未来時刻に存在することになる。時間経過は蓄積されるので時間差は日に日に広がって行く。

 現在時刻の1階に未来時刻の上階が重なっているということである。ビルのエレベーターに乗った人は現在と未来を行き来していることになる。エレベーターはタイムマシーンなのだろうか。エレベーターがタイムマシーンであることはない。

 こんなことはあり得ない。現実は高層ビルは下から上まで同一時刻にあるといえる。

 このことから、人や、時計本体は、相対論で遅れたり進んだりした時計の針の指す時刻には移動できていないことが分かる。

A ナビの位置情報衛星

 この衛星も相対論効果で、時刻が地上と異なるということだ。そこで、コンピューターで時間を地上に合わせているということだ。これはトムキンスの時刻合わせと同じやり方だ。方法が指で針を回すか、コンピューターで合わせるかの違いだけで、原理は同じだ。相対論効果で狂った時間は、人や、機械の力で変えることができるということだ。「相対論効果=指の力」あるいは「相対論効果=コンピューターの力」ということになる。変な話だ。

 相対論効果で地上より未来の時刻にある衛星の無線機からの電波が地上の現在の車に届いているということだから、衛星は未来にあるのではなく、地上の現在に出現しているといえるから、相対論効果では、現在の地上から他の時刻の世界には行っていないといえる。望遠鏡で地上から観測できることからも、衛星は地上の現在にあるといえる。どんな素晴らしい望遠鏡でも未来は見えないのだから。

(相対論効果で時間が速くなるのは、時計の針の速度を速めるだけでなく、衛星本体の時間も速くなるということのはずだから。衛星本体も未来にあるはずだ。時計を合わせたら、衛星本体の時間も地上の時間に移動するのだろうか)

 

B ジェット機で計った例

昔、東回りと西回りのジェット機に時計を積んで相対性理論の検証をしたことがある。そのとき、やはり東回りと西回りと飛行場の3つの時計の針は違う時刻を指した。相対論のとおりだったということだった。

 このときも3人は飛行場で会っている。未来と過去と現在を時計は指していたが。ジェット機も飛行士も時計の本体も飛行場の時刻に現れている。時計の指す、過去にも未来にも行っていない。

 このことから、相対論効果では過去にも未来にも行けないということが分かる。

 
考察3 思考実験から考える
 双子のパラドックス
 双子の兄がロケットで宇宙旅行をする。兄は速度が弟より速いから、特殊相対性原理で時間の進み方が遅くなる。地球に帰ってきた兄は弟より若いという話だ。
 これを時刻を入れて考えてみる。
 2000年に、30歳の兄は出発する。時間の進み方が遅くなって、兄の時間で6年後に地球に帰ってくる。その間に、弟は時間が30年経過している。兄の年齢は36歳、弟の年齢は60歳になっているというのが特殊相対論で考える双子のパラドックスだ。
 このとき、兄の乗ったロケットの時計は、2006年を指している。弟の地球の時計は2030年を指している。兄は、2006年の地球に帰ったのではなく、2030年の地球に帰っている。もし、2006年の地球に降り立ったのなら、兄と弟は同じ歳になる。もしそうなら、2006年の地球と兄が30年過ごしたはずの2030年の地球の2つが同時に存在することになる。100機のロケットが飛ぶと100の地球が存在することになる。宇宙のすべての星は、速度や重力が異なるから、時間の速度が違う。それに合わせて、地球は現れなくてはならない。銀河系だけでも何兆もの星に合わせて存在しなくてはならない。観測とは一致しないから、相対論で時間が速くなっても遅くななってもすべては地球の現在時刻に現れていると考えられる。
 このことから、相対論では、ロケットの時計の指す時刻に行くのではなく、地球の現在時刻に行っていることが分かる。相対論では地球の現在時刻に必ず現れるということだから、SFのタイムマシーンのように時間を行き来することはできないということだ。
 宇宙のすべての物質は、相対論では時間の速度が違うが、すべては地球時間に現れている。時刻に関しては、地球時刻が、宇宙の中心ということだ。これは、ニュートンの宇宙はすべて同一時間という考えと同じことになる。


考察4 自然現象から考える

@ ミューオンの例

 ミューオンは光速に近い速度で飛ぶから、時間が極端に遅くなるというのが特殊相対論だ。

 実際、ミューオンの時間は遅くなり、時間が延びているということが検出されているという。

 このことから、ミューオンは地上より過去の時刻にあるということになる。しかし、ミューオンは現在時刻の地上の観測器で観測されている。

このことから、ミューオンも相対論効果が示す時刻には行けず、現在の地上に現れているということが分かる。

A 太陽の例

 太陽は相対論効果で1年に1分地球時間より時間が遅れるということである。太陽系ができてから46億年経っている。すると太陽は、現在、地球時間より46億分遅れているということになる。

 しかし、太陽は、今現在の地球上空に出現している。太陽も46億分過去の地球に出現することができないで、現在の地球時間に出現しているといえる。タイムマシーンにはなれなかったといえる。(地上からは46億分過去の太陽ではなく、8分過去の太陽が見える)

B ブラックホールの例

 相対論によると、ブラックホールはその強い重力で、時間が止まるということである。銀河系の中心には巨大なブラックホールがあるということが観測されている。

銀河系は100億年前にできたといわれている。するとこのときに銀河系の中心のブラックホールの時間は止まってしまったはずだ。すなわちブラックホールの時刻は100億年前を指したまま止まっていることになる。ところが、今銀河中心のブラックホールは銀河系の星を引力でつないでいる。もちろん太陽も地球も引っ張られている。100億年過去のブラックホールの引力が引っ張っているのではない。今現在のブラックホールの引力が引っ張っているのである。

このことから、相対論効果では100億年前の時刻を指していても、ブラックホールは100億年前の地球(まるで違う形をしていたが)上に現れるのではなく、現在の地球に現れているといえる。

(注:ブラックホールは銀河系と共に動いている。時間が止まると、物質は動けない。「距離=速度×時間」だから、時間=0なら、移動距離は0になる。ブラックホールは銀河系に取り残されて宇宙の彼方にあるはずだ。ところが今もブラックホールは銀河系の中心にあるのが観測されている。相対論とは合わない)

 

結論

 以上のことから、相対論効果で時計の時間はさまざまになっても、人は現在の時刻からどこにも行けないということが分かる。相対論ではタイムマシーンはできないということが言える。

 また、相対論では速度や重力で、時間が速くなったり遅くなったりするということだが、実際の現象は、物質は常に現在に出現しているのだから、物質の時間は、遅くも、速くもなっていないということが言える。相対論の時間の遅速は間違いであるといえる。