赤方偏移の原因の変遷と真の理由

(宇宙は膨張していない)

 著者 高田敞

 


問題1

インフレーション宇宙論者は、銀河や銀河団の赤方偏移が空間膨張の為に起こっていると主張しているが、それで、物質宇宙は膨張しているといえるか

問題2

宇宙は本当に膨張しているか

問題3

銀河の赤方偏移の真の原因は何か

問題4

銀河の赤方偏移と宇宙背景放射の関係

以上の問題を考える。

 

1 銀河の光の赤方偏移の原因

(ビッグバン論、およびインフレーション論の主張)

(1) 初期ビッグバン宇宙論

銀河が地球から後退することによる赤方偏移(地球と銀河との相対速度によって起こる赤方偏移)

(2) インフレーション宇宙論

宇宙空間の膨張のために光が引き延ばされることによる赤方偏移

2 現在言われている赤方偏移の原因の主流

空間膨張によって引き延ばされた、というのが主流である。しかし、後退速度の説も残っている。原因は、赤方偏移は空間膨張による、だけでは、物質宇宙が膨張していることの直接の証拠にはならないことからと思われる。(詳細は後述)

3 宇宙膨張説の流れ

最初、銀河が地球から遠いほど銀河の光が赤方偏移しているという、ハッブルなど複数の人たちの観測があった。

 その原因は、銀河が地球から後退しているという解釈になった。

@(銀河の光が距離に比例して赤方偏移している)→(赤方偏移の原因は銀河の後退速度による)→(銀河が距離に比例して後退している)→(原因は空間が膨張しているためだ)→(宇宙は膨張している)→(時間をさかのぼると、1点に集まる)→(全物質が集まっていたのだから高温の火の玉のはずだ)→(宇宙はビッグバンで始まった)

 となった。これがビッグバン説の考え方であった。

 その後

A(空間膨張している)→(光は空間膨張によって引き延ばされている。後退速度によるのではない)になった。これが今のインフレーション宇宙論だ。

4 今も、銀河の後退による赤方偏移説が残っている原因

(光は空間膨張によって引き延ばされている)ということでは、銀河が後退しているということの直接の証拠にはならないからと思われる。

(銀河が地球から後退することによる赤方偏移)を全面否定すると、銀河は後退していないことになってしまう。すると、空間膨張の赤方偏移だけになるから、空間は膨張するといえても、銀河が地球から後退しているとはいえないのだから、銀河(物質)宇宙は膨張しているとはいえないことになってしまう。これでは、宇宙が膨張しているということを証明できない。

したがって、物質宇宙が膨張しているという証明のときだけ、赤方偏移しているのだから銀河が後退しているという説明が出てくる。いつまでも、後退速度による赤方偏移らしきもの(はっきり後退速度とは言わない。わかっていない人は、後退速度だ、といまでも言っているが)が残っている原因である。

 しかし、光の赤方偏移は後退速度ではない、としたのだから、上記@の(赤方偏移の原因は銀河の後退速度による)→(銀河が距離に比例して地球から後退している)の部分は間違った仮説であるということになる。したがって(銀河が距離に比例して地球から後退している)ということは言えなくなる。ビッグバン論は破綻する。

 では、銀河が距離に比例して地球から後退しているということは、もうひとつの赤方偏移の原因(光は空間膨張によって引き延ばされる)によって証明できるのかを検討する。

 

5 (宇宙空間の膨張のために光が引き延ばされることによる赤方偏移)は物質宇宙を膨張させる証拠になるか

―考察―

 空間膨張があるのだから物質宇宙もそれにともなって膨張する、という考えかただ。そこでそのことを考えてみる。

(1)理論

理論は一切ない。

空間が物質のどこにどのように力を加えて膨張させるのか不明である。

空間そのものの膨張の仕組みや、膨張させるエネルギーはすべて謎である。

空間とは何か、が何一つ分かっていない。

 空間膨張が光を引き延ばす仕組みも、せいぜい空間が膨張するのだから光が伸びる、くらいの中学生程度の理屈しかない。もちろん実証もない。

 空間膨張が銀河を動かす仕組みやそのエネルギーについても謎以外に何もない。

(2)実証

ア 光の赤方偏移が空間膨張の為である、ということは実証されていない。

イ 光の膨張の仕方

 インフレーション論では、光は空間膨張によって引き延ばされると述べている。空間は3次元方向に膨張しているというのがインフレーション論だ。しかし、光は進行方向(1次元方向)に引き延ばされているだけという主張だ。空間膨張によるのなら、光も3次元方向に引き延ばされなくてはならないはずだ。なぜ、光は1次元方向にしか引き延ばされないのかの説明と理論はない。

例えば光が上下方向に引き延ばされると、光は明るくなる。左右方向なら光は幅広になる。光は宇宙空間を進むと明るく、太くなり、振幅だけは引き延ばされる(赤方偏移)ということになる。観測とは合わなくなる。しかし、空間膨張によって進行方向に光が引き延ばされるなら、他の方向にも引き延ばされなくてはならないはずだ。自分の論に必要なところだけ引き延ばして、他は無視(他の方向は説明できないからなのだろう、絶対に触れない)しているのは科学としては間違った方法だ。

 

ウ 物質世界と空間膨張の関係

@ 地球

地球及び地球上の物質が空間膨張の影響を受けているという観測はない。

地球には空間膨張の影響はないということになる。あるいは空間膨張はないということである。

 空間膨張による速度より重力による固有運動の方が大きいから、とインフレーション論者は言っている(この考え方は以下の銀河団まで共通である)が、言っているだけで、その考え方を立証するものはない。

宇宙が、インフレーション論者の言うように、138億年で、一点からこの広大な宇宙にまで膨張したのなら、必ず、固有運動の中にも空間膨張の運動が入っていなければならないはずだ。

太陽系も地球もこの位置まで宇宙膨張によって動いてきたというのだから。

A 月

 月の公転が空間膨張の影響を受けているという観測はない。

 月の軌道は空間膨張の影響を受けていないということになる。あるいは空間膨張は存在しないという実証になる。

月の軌道が少しずつ遠ざかっているのは、空間膨張の為ではなく、潮汐作用の影響であるということだ。

B 太陽系

太陽系の惑星や、彗星が、空間膨張の影響を受けているという観測はない。

太陽系は空間膨張の影響を受けていないということになる。あるいは、太陽系には空間膨張はないという実証になる。

C 銀河系

銀河系が、空間膨張の影響を受けているという観測はない。

銀河系は空間膨張の影響を受けていないということになる。あるいは銀河系には空間膨張がないという実証になる。

D 大、小マゼラン星雲

大、小マゼラン星雲と銀河系の間が空間膨張の影響を受けているという観測はない。

大、小マゼラン星雲は空間膨張の影響を受けていないということになる。あるいは大、小マゼラン星雲には空間膨張がないという実証になる。

E 銀河系とアンドロメダ銀河

銀河系とアンドロメダ銀河の間が空間膨張の影響を受けているという観測はない。

銀河系とアンドロメダ銀河の間は空間膨張の影響を受けていないということになる。あるいは銀河系とアンドロメダ銀河の間には空間膨張がないという実証になる。

(3)ここまでのまとめ

 このように、地球からアンドロメダ銀河までの、230万光年の宇宙空間の物質は、膨張していないということがいえる。このことから、この間の宇宙には空間膨張の証拠は何一つないが、空間膨張を否定する証拠は無数にあるということがいえる。

距離が小さい時は重力の方が大きくて、空間膨張より物質の固有運動の方が大きいとインフレーション論者は主張しているが、その証拠はない。もし空間膨張があればその影響は必ず物質の運動に影響を与えるはずである。影響がなければここまで宇宙が膨張できないのだから。ところがその影響は何一つ観測されていない。

このことから、近くて観測が正確にできるところでは空間膨張の証拠は観測されない。反対に空間膨張はないという証拠のみが観測されている、といえる。

 赤方偏移が空間膨張の証拠であるということだが、そのことについては後で検討する。

 ではその先、ハッブルが観測した銀河は、膨張しているかを考えてみる。

 

(4) ハッブルの観測した銀河は地球から後退しているか

考察

@ 現在までの観測では、銀河団内の銀河や銀河間物質は、万有引力で結びついていて、空間膨張による膨張はしていないといわれている。銀河団はただ銀河が近くにあるというのではなく万有引力によって結びついた集団である。銀河団は、その内部もその外側も、大きくガスに満たされているのが観測されている。巨大なガスの塊の中に銀河がちりばめられているという状態だ。このガスの部分をダークマターだという主張もあるが、それにしろ、銀河団が重力で結びついていることには変わりない。

A ハッブルの観測した赤方偏移した光の銀河はおとめ座超銀河団内の銀河である。地球のある銀河系もおとめ座超銀河団の一員である。

@とAから、ハッブルの観測した銀河と銀河系は同一の銀河団に所属しているので万有引力で結びついていて、空間膨張によっては離れていってはいないといえる。銀河は後退していない。すなわち彼の観測した宇宙は膨張していないということだ。ハッブルの観測から、銀河が後退しているから宇宙は膨張している、と考えたことは間違いであったということだ。

これは銀河系とハッブルの観測した銀河の間は空間膨張の影響を受けていないということか、あるいは銀河系とハッブルの観測した銀河の間には空間膨張がないということになる。

このことから、かりに、空間膨張があったとしても、かなり大きな距離でさえ、空間膨張の影響は物質宇宙に何一つ影響を与えていないということの実証になる。

また、このことからハッブルの観測した銀河の赤方偏移は銀河の後退速度によるのではないという主張が正しいといえる。

ではなぜハッブルの観測した銀河の光は赤方偏移していたのだろう。

それは、空間膨張により光が引き延ばされたことによる、というのがインフレーション宇宙論者の言い分だ。これが現在インフレーション論者のいっている銀河の光の赤方偏移の原因である。

 

―ここまでのまとめ―

 おとめ座超銀河団内の物質宇宙の膨張はないということがいえる。

 インフレーションビッグバン論の理論の矛盾

 上に書いたように、現在の宇宙の観測からは、少なくとも銀河団の中の銀河間の膨張はないことになる。

 このことを詳しく見てみよう。

 まず、@(銀河の光が距離に比例して赤方偏移している)→(赤方偏移の原因は銀河の後退速度による)→(銀河が距離に比例して後退している)

という初期ビッグバン宇宙論の考え方は、銀河は後退していないのだから間違いであるということがいえる。ビッグバン宇宙論の根拠となった考え方が間違いであったということだ。したがってこれをもとに出来上がったインフレーション宇宙論も、根底があやふやであることになる。

 そこで、今インフレーション宇宙論が主張している、銀河団間は膨張しているという考え方は正しいか検討してみる。

 

(5) 銀河団は地球から後退しているか

上に書いたように、光が赤方偏移していても、銀河は後退していなかった。銀河が後退していなくても赤方偏移は起こっている。

この原因を、インフレーション宇宙論者は空間膨張による赤方偏移ということで説明している。銀河は後退していないが空間膨張はある、という主張だ。

 このことから、銀河団の光が赤方偏移しているという根拠だけでは、銀河団が地球から後退しているとはいえないということが類推できる。

 上に見た銀河と同じように、銀河団は後退していないが、地球と銀河団の間の空間が膨張していることで、光が赤方偏移している、ということも成り立つ。地球からおとめ座銀河団内まで、すべての物質は膨張していなかったのだから、その外側も膨張していないということのほうが、より観測に一致する。物質宇宙は膨張していないという観測はあるが、物質宇宙が膨張しているという観測はどこにもないのだから。

 どちらにしろ、銀河団の赤方偏移以外の証拠が必要である。

そこで銀河団と銀河団の間は離れていっているかを検討してみる。

@ 銀河団が地球から後退している証拠

a 銀河団の赤方偏移

これは、上に書いたように銀河団が離れていっている証拠にはならない。後退速度ではなく、空間膨張の為に光が引き延ばされている、というのがインフレーション宇宙論の見解だから、銀河団が離れていっているということにはならない。

赤方偏移は後退速度ではないといっているのだから、後退していることを否定していることになる。赤方偏移以外の観測事実が必要である。

A 空間膨張は銀河団を引き離しているか

銀河団は膨張していない。銀河団の間は膨張してきた、というのが、今の宇宙論の大勢である。

すると時間をさかのぼっても銀河団は小さくならない。100億年遡っても同じ大きさである。120億年遡っても同じ大きさである。銀河団ができたときから銀河団の大きさは空間膨張に関係なく独自の大きさを保ってきたと考えられる。

一方、銀河団間は膨張してきたのだから時間をさかのぼると収縮する。100億年遡ればかなり間は小さくなる。単純に考えると100÷138 0.72である。約72パーセント縮まる。120億年遡れば、120÷1380.87になる。87パーセント縮まる。

銀河団の大きさは変わらないのに、間だけ小さくなると、銀河団同士がくっついてしまう。すると銀河団の万有引力で、銀河団同士は離れられなくなる。銀河団同士も膨張できないということになる。

 

他の考え方も検討してみよう。

銀河がばらばらにでき、その後、引き合って銀河団を作った、としたらどうなるだろう。

出来た銀河はその重力で互いに引き合って収縮したのだから、その後も、銀河団を作った銀河は引き合って中心に落ちていく。あるところで収縮は止まるとする。

すると銀河団は時間とともに収縮したのだから、時間をさかのぼると、銀河団は膨張することになる。過去にさかのぼると宇宙は小さくなるのに、銀河団だけは大きくなっている。宇宙には無数の銀河団があるから、小さな宇宙に入りきれなくなる。

ランダムにあった銀河がまとまっただけだと考えてみる。すると時間をさかのぼってもランダムな銀河になるだけだから大丈夫のような気がする。ランダムにあった銀河はもっと昔、小さな宇宙に入っていたことになる。それが、宇宙膨張とともに散らばっていったはずだ。すると、すべての銀河の間は広がったことになる。すると、ハッブルの法則から、空間斥力は大きくなる。ニュートンの法則から、万有引力は弱くなる。散らばる前、互いの距離がちいさいときは、斥力が弱く、万有引力が強いはずだ。そのとき離れていった銀河が、散らばったためにたがいに距離が離れ斥力が強くなり万有引力が弱くなったとき、縮まることになる。力関係が矛盾することになる。

また、銀河を作るガスは、ビッグバンのとき1点から膨張している。一度空間膨張によって大きく飛び散っている。空間斥力のハッブル定数は距離に比例して大きくなる。万有引力は、距離の2乗に反比例して小さくなる。過去、宇宙が小さいとき、物質間は接近していた。小さな斥力で大きな万有引力があるときには飛び散って、その後、大きな斥力で小さな万有引力になった時再び収縮することになる。矛盾である。

初期宇宙は火の球で、その力で、超新星のように爆発で物質が飛び散ったとしよう。この場合は、物質は初速度のまま慣性の法則で飛び散ることになる。そして、万有引力でブレーキがかかり速度を落とす。離れても初速度より遅くなる。ニュートンの法則に従う。ハッブルの法則、距離に比例して離れる速度が大きくなるには従っていない。インフレーション宇宙論とは相いれないから、この考えも駄目である。

 

―まとめ―

 銀河団が地球から後退している、あるいは銀河団同士の間は離れていっているという考えには証拠がない。かえって、銀河団同士が離れるとすると矛盾が生じるということがわかる。

 銀河団同士が膨張できないとなると、膨張できるところがなくなる。物質宇宙の膨張はなくなるということだ。

 物質宇宙の膨張がなくなると、宇宙は空間だけ膨張して、物質は生まれたときのまま1点にあったということになってしまう。インフレーション宇宙論は成立しなくなる。

 

 では、空間が膨張しないのなら赤方偏移はなぜ起こっているのかということになる。

 

6 赤方偏移の原因の仮説

 赤方偏移は、宇宙空間の水素を中心とした、分子に衝突して、エネルギーを下げることで、赤方偏移している。

理論

 光は物質に衝突すると、物質の電子を動かすことで、エネルギーを物質に移す。

 そのとき、光のエネルギーは、物質の温度を上げるために費やされる。

実証

@ 部屋の電気を消すと、一瞬で暗くなる。これは部屋の中にあった光が、壁に衝突することでエネルギーを壁の物質に奪われ(壁の電子を揺り動かす)、エネルギーを失うことから起こっている。光のエネルギーは壁の温度を上げ、代わりに赤方偏移して、可視光から赤外線になり、マイクロ波になり、消える。

A 太陽の光

 太陽の光は、中心でガンマー線として生じる。それが、太陽の物質に衝突して、エネルギーを失って太陽表面に出てくるときには、可視光線まで赤方偏移している。

B 星の光

星間ガスの中を通過すると、ガスに衝突してエネルギーを減じて赤化現象を起こす。

C 銀河や銀河団の光のスペクトル

銀河や銀河団の光のスペクトルには暗線が数多く入っている。これは銀河や銀河団の光が宇宙空間の分子に衝突した証拠である。このとき衝突した分子の電子を動かすことで、分子の温度を上げる。その分光はエネルギーを減じる。

―まとめ―

以上のことから、銀河や銀河団の光は宇宙空間の水素を中心とした分子や原子に衝突することでエネルギーを下げ、赤方偏移しているといえる。赤方偏移の原因は後退速度でも、空間膨張でもないといえる。

7 赤方偏移と宇宙背景放射の関係

(1) 銀河の光に暖められた分子や原子の熱はどこに行くか

宇宙空間の分子は、長い間(138億年どころではない)様々な銀河や銀河団の光にさらされて、エネルギーを受け取っている。これは、熱となって分子の温度を上げることになる。すると、分子は、それに応じた光を放出する(黒体放射)。宇宙空間に散らばるすべての分子からこの光は放出されている。

 これが宇宙背景放射である。出る光と入る光が均衡しているところが、2.7Kの温度である。これが宇宙空間に浮かぶ分子の平均温度ということになる。

 宇宙背景放射は、ビッグバンの名残の光ではなく、宇宙の塵の出す光である。

 

8 結論

以上のように、空間も物質も膨張はしていないということがいえる。