霧氷の6
勝負は終わっていた。これ以上の戦いはなんの意味もない。相手はそれを告げていた。きつねは、少しの間その意味がわからないのか、ぽかんと突っ立っていた。それから、我に返ったようにくるっと背を向けると歩き出した。できるだけしっかりとした足取りで歩こうとするように、首を高く上げ、尻尾を水平に伸ばして。しかし左足の怪我がひどいのか、ぴょこんぴょこんと体が踊っていた。それでも、彼は、萱原の中をどこまでも歩いていった。
その朝、木々の枝枝は、氷の花に覆われた。その冬初めての霧氷は、いっとき朝日に輝いた。それも、すぐ溶け、吹き出した西風に枯れ木ばかりが音立てていた。
(おわり 2001年2月10日)