マルチバース宇宙と��田式定常宇宙の比較

著　��田　敞

序

　マルチバース宇宙論というのがある。けっこう支持を受けているようだ。この論はインフレーションビッグバン宇宙論の発展したものだ。そこで、��田式定常宇宙論と比べてどちらがより荒唐無稽か考えてみる。

１　定義

�@マルチバース宇宙論

最初に無限の大きな空間がある。その無の１点で宇宙が生まれ、膨張する。それが空間のいたる所で起こる。無限の大きな空間の中に、生まれた宇宙が膨張した無数の巨大な宇宙空間が点在することになる。

�A��田式定常宇宙論

　最初に無限の大きな空間がある。その無の１点で粒子が生まれる。それが空間のいたる所で起こる。大きな無限の空間の中に、生まれた無数の粒子が集まって銀河を作り銀河が点在することになる。

�B　違い

マルチバース宇宙論では、元からある空間の中に、空に浮かぶ風船のように無数の宇宙ができる。��田式定常宇宙論では、元からある空間に無数の銀河ができる。

　違いは、最初からある無限の空間の中で無の一点から宇宙ができるか、粒子ができるかの違いだけである。

�C　同じ所

　最初からある宇宙空間（マルチバース論では新たな宇宙を生み、��田式定常宇宙論では粒子を生む）は膨張していないし、収縮してもいない。

　実際に人間が観測できるものは、どちらも物質とそこから出る光（電磁波）だけである。空間自体は見えないから、見えるもの（観測上）は銀河や星や星間雲などの物質だけであるから、観測上は空間の中を動く物質（銀河、星、ガス）だけで同じ星空である。しかし、動きのエネルギーには違いがある。��田式定常宇宙では引力と、位置エネルギーと、電磁波や電磁気力などの知られている力だけが原動力だが、マルチバース宇宙ではそのほかに、謎の、空間膨張の力が大きく働いている。

　

共に、一番最初の物質を生んだり宇宙を生んだりするという無限の宇宙空間は膨張しないから、最初からある宇宙空間から見れば定常宇宙であるといえる。部分的に見たら、マルチバース宇宙論では新たにできた宇宙が膨張したり収縮したりする。��田式宇宙論では、ガスが収縮したり、発散したりして、星や銀河ができたり、構造を作ったりする。

 

　そこで、より現実的なのはどちらだろうと考えてみる。

 

２　比較

	マルチバース宇宙	��田式定常宇宙
最初にある場所	無限の空間	無限の空間
生まれる場所	最初の無限の空間の中のランダムにある無数の無の１点	最初の無限の空間の中のランダムにある無数の無の１点
生まれるもの	新しい宇宙（新しい空間、新しい時間、物質、ダークマター等）	粒子（物質）
生まれるエネルギー	・４つの基本の力 ・インフレーションのエネルギー・ビッグバンのエネルギー・ダークエネルギー・真空のエネルギー。	・４つの基本の力 ・位置エネルギー
空間の膨張	・宇宙を生む最初からある空間は膨張しない。 ・新しく生まれた宇宙空間が膨張する。 ・膨張する空間の、膨張の仕組み、膨張する空間の構造、膨張させるエネルギーなど、すべて不明。	・宇宙に最初からある空間は膨張しない。 ・生まれるのは物質だけだからそのほかの空間はない。 ・空間はなにもないただの空虚である。力は４つの基本の力だけだ。この力は空間と相互作用はしないので、空間は影響されない。
空間の状態	・元からある空間は膨張も収縮もしない。一定である。 ・新しく生まれた空間の膨張か収縮かは偶然による。宇宙の物質やダークマターの量と、インフレーションのエネルギーとビッグバンのエネルギーと、真空のエネルギーと、宇宙項（謎の斥力）の兼ね合いで決まる。現在の宇宙が平坦なのは非常にまれな、奇跡といえるほどの偶然であるといわれている。	・元からある空間は膨張も収縮もしない。一定である。 ・生まれた物質は、離れて生まれるから最初から位置エネルギーを持っている。これは万有引力によって与えられたエネルギーであるから、斥力である位置エネルギーと、引力である万有引力は同じ値になるから、全体としての物質は膨張も収縮もしない。したがって、宇宙は必然的に平坦になる。現在の観測値に一致する。
位置エネルギー	最初は１点で生まれたから、位置エネルギーは０である。　現在の地球と月の持っている巨大な位置エネルギーは、インフレーションか、ビッグバンか、ダークエネルギーによって生まれたということになる。これらのエネルギーは、謎のエネルギー（観測も証明もされていないエネルギー）である。	離れて物質が生まれるから、物質は、距離に応じた位置エネルギーを最初から持って生まれる。たとえば、地球と月は、巨大な位置エネルギーを持っているが、これは最初に離れた位置に物質が生まれたことから自然に生まれた。
キリスト教との関係	最初の空間は神の住む宇宙である。新たに生まれた宇宙（人の住むこの宇宙）は、神によって生み出された人間のための宇宙である。 　キリスト教の考えに一致する。	宇宙が一つで無限であることはキリスト教の神のいる場所の否定につながる。宇宙を無限と言った人（プルート）は火あぶりの刑にされている。 キリスト教の考えに反している。

 

３　考察

　��田式定常宇宙論と、マルチバース宇宙論の違いは、形としては一つだけです。��田式定常宇宙論では、無限の宇宙空間の中に銀河が散らばっているという形ですが、マルチバース宇宙は、無限の空間の中に、宇宙が散らばっているという形です。最初からある、無限の空間の中に生まれるものが、物質か宇宙空間かの違いだけです。

　以下違いを見ていきます。

１　場所

同じです。空間は最初からあります。

２　生まれる場所

　同じです。

３　生まれるもの

　異なります。

��田式定常宇宙では粒子だけが生まれますが、マルチバース宇宙では、新たな宇宙が生まれます。インフレーションやビッグバンで新たな空間が膨張していき、その中に生まれた物質や、ダークマターやダークエネルギーなどの謎の物質やエネルギーが新しい宇宙の膨張と共に、拡散していきます。

４　生まれるエネルギー

マルチバース宇宙のエネルギーは無の１点から生まれている。全宇宙の物質や空間を急速度で膨張させる巨大なエネルギーである。無の１点からそれが生まれるのは、不可解である。量子論で生まれるという人もいるが、量子論は、量子の世界にしか通用しない理論である。マクロの世界には通用しないといわれている。ところが、宇宙全体の物質と、膨張を生む巨大なエネルギーは、マクロ以上のマクロの現象であるから量子論の範疇ではない。最初は小さいから量子論でいいというのは間違いである。量子論で生まれることができるのは、最小のエネルギーと量子である。全宇宙のエネルギーや、物質が生まれるという理論はない。

・インフレーションのエネルギー

　全宇宙を、光速の数十倍から数百倍の速度で膨張させている。この巨大なエネルギーが、無から突然湧き出ている。現在分かっている物理理論では、あり得ない現象である。

・ビッグバンのエネルギー

初期の宇宙を膨張させたエネルギー。太陽の数千億倍の数千億倍もの質量を吹き飛ばすのだからとてつもなく巨大なエネルギーである。これも謎のエネルギーである。このような天文学的エネルギーは謎以外にあり得ないことだから、いつまでも謎だろうと考えられる。

空間の相転移により生まれたという説明もあるが、たとえば水が氷になるとき相転移が起こり熱エネルギーが出る。この熱は無から勝手に湧いたものではない。水が元から持っていたエネルギーが放出されたものだ。もちろんその熱も勝手に湧いたものではない。太陽の熱や、火によって与えられたものだ。そして遡っていくことができる。元があるのである。エネルギー不変則である。

ビッグバンが空間の相転移からエネルギーを得たとするなら、相転移前の空間にそのエネルギーがなくてはならない。ところが、その空間はあまりにも小さい。そのような小さな空間に、そのような超巨大なエネルギーがあるというのは、今の物理学では説明できない現象だ。インフレーションのエネルギーが変わったという説もあるようだが、それにしたところで、インフレーションのエネルギーの出所は不明である。無の一点ということなのだろうが、無の一点にそのような超巨大なエネルギーがあるということは、理論も実証もない。なにもない、ないないづくしだ。

　まして、ビッグバンの最中には物質も作らねばならない。物質を作るにはものすごいエネルギーがいるということだ。それも賄うとすると、天文学的なエネルギーの天文学倍のエネルギーがいる。それを無の１点の空間が賄ったというのは、ありえないことだ。言うは易し行うは難しである。（言葉は大したエネルギーはいらない。インフレーションと言うのに米粒一つのエネルギーもいらないだろう。しかし、実際にわれわれの全宇宙を光速の何十倍もの速度で吹き飛ばすインフレーションを起こすには、とてつもないエネルギーがいる。学者だって、どれくらいのエネルギーがいるか分かっていないだろう）

・ダークエネルギー。真空のエネルギー

この宇宙を膨張させているのは真空のエネルギーということだ。このエネルギーも、ダークエネルギーということで、すべては謎。なにも分かっていないエネルギーだ。全宇宙の銀河や、銀河間物質を動かすのだから、とてつもなく巨大なエネルギーだ。そのうえ、物質ばかりか空間も膨張させるというから、不可解はいや増す。なにもない空間を膨張させるというが空間のどこにどのように作用すると空間が膨張するのだろう。今の物理学では説明不可能なエネルギーだ。確かにダークなエネルギーである。

 

　それに対し、��田式定常宇宙論では、謎のエネルギーはほとんどいらない。４つの基本となる力だけでいい。ただ、粒子が無から生まれるという所に、謎のエネルギーがいる。量子論で説明できるが、本当に、真空から粒子が飛びだしたり消えたりしているのかは観測されていないから、その考えは仮説の域を出ていない。

　ただ、マルチバース宇宙の基本であるインフレーション・ビッグバン論のように謎の巨大エネルギーのオンパレードということはない。

５　空間の膨張

　マルチバース宇宙には二つの空間がある。一つは、最初からある空間で、新たな空間を生む母体となっている空間だ。もうひとつは、その空間の無の一点から生まれる、新たな宇宙の空間だ。この新たな空間がわれわれの住むこの宇宙や、それとは別の宇宙という説だ。

　この新たに生まれた宇宙の空間は膨張しているというのが、インフレーションビッグバン論やそれの発展であるマルチバース宇宙論である。

　したがって、最初にある空間は、無限の広がりを持ち、膨張も収縮もしない。

　��田式定常宇宙論では、この最初にある空間しか存在しない。そこに、量子効果で、ランダムに粒子が生まれ、それがやがて分子になり、星間ガスになり、星になり銀河になる。動くのは物質のみで、空間は動かない。そもそも、空間はなにもないのだから動くも、動かないもないというのが、��田式定常宇宙だ。

ところで、この両方の宇宙の見かけ、人間が観測できる宇宙はどう見えるだろう。

　現在人間が実際に観測できるのは物質と電磁波だけだ。空間や、ダークマターは見ることができない。われわれの宇宙の空間の端は見ようとしても見えない。膨張しているのだから、元からある空間と激しく衝突しているのだろうが（ビッグバン論ではおそらく光速の何十倍もの速度であろう）空間を直接見るすべを持たないわれわれには観測不能だ。（空間が衝突すると熱を出すならば、そこから出る電磁波を観測できる。しかし、熱は物質の振動である。なにもない空間は振動するものを持たない。したがって、熱は出ないから電磁波も出ない。観測できないということだ）

　われわれが見ることのできるのは、電磁波を出す銀河や星や星間物質のみだ。粒子であるニュートリノでさえ見えない。ニュートリノは、水の中で、水と衝突することでチェレンコフ光を出すことで間接的に観測できる。

すると、この宇宙では、マルチバース宇宙でも、��田式定常宇宙でも、見えるのは宇宙に散らばっている銀河や星や星間物質だけだ。見かけは同じである。物質以外の膨張する宇宙空間そのものや、マルチバースの空間そのものは決して見えない。無限に広がる空間の中に散らばる銀河や星や物質のみである。マルチバースの空間と最初からある空間の区別はできない。すると最初からある空間（膨張しない空間）に、星や銀河が散らばる定常宇宙と観測できるものは何ら変わりがなくなる。

　違いは、定常宇宙では、星や銀河や、星間物質は万有引力で固有運動をしているが、マルチバース宇宙では銀河はそれぞれの宇宙空間の膨張や収縮による動きもしているということだ。

このわれわれの住む宇宙は距離に比例して離れているから、地球から遠い銀河は光速の何倍、何十倍もの速度で地球から遠ざかっているということになるという。すると、最初の空間（マルチバース宇宙が生まれる母体の空間）に対しては光速の何倍何十倍の速度で飛ぶことになる。空間膨張によって銀河も動いているということだから、銀河も最初の宇宙空間に対して光速で動いていることになる。そちらの銀河から見れば地球もそちらの銀河に対して光速の何倍、何十倍の速度で動いているということになるから、最初の空間に対して地球もやはり光速の何倍とか、何十倍とかの速度で飛んでいることになる。（風船を考えるといい。膨らませると、風船のゴムは、われわれの空間に対して動く。それと同じように地球も最初の空間に対して動いているはずだ）

　われわれの宇宙を包む宇宙空間は考えなくていいということかもしれない。ただ、マルチバース宇宙では、他にも膨張する宇宙があるということだ。すると、その宇宙と、この宇宙の端っこどうしは互いに接近していることになる。衝突している宇宙どうしもあるかもしれない。すると、地球から遠く離れたこの宇宙の端っこは、そちらの宇宙と光速の何十倍もの速度で互いに接近していることになるはずだ。光速の何十何百倍もの速度で衝突すると物質はどうなるのだろう。

われわれから絶対見ることのできない宇宙の端で起こっていることだから、われわれには関係ないことかもしれない。ただ、見えないから、何でもありというのでは困りものだ。ばれなきゃいいというのと同じことになる。

 

６　空間の安定

現在の宇宙空間は観測すると、平坦であるという。

��田式宇宙では、最初にある宇宙空間のそこここにランダムに物質が生まれる。物質は４つの基本の力を持っている。その中の万有引力は離れた物質に作用し位置エネルギーを生む。物質が万有引力で引き合うと、物質は加速しながら接近する。このとき、位置エネルギーは運動エネルギーになる。衝突すると位置エネルギーはすべて運動エネルギーに変わって位置エネルギーは０になる。そして跳ね返る。そして、万有引力で減速しながら離れる。このとき、運動エネルギーが位置エネルギーに変化していく。エネルギーが他に移動しなければ、物質は元の位置まで戻り止まる。運動エネルギーがすべて位置エネルギーに変化する。

　普通の物質は、衝突すると、運動エネルギーの一部が熱となって物質の温度を上げる。したがって、衝突した物質は運動エネルギーの一部を失い、もとの位置に戻ることができない。元の位置エネルギーを取り戻せない。そしてまた引き合い衝突する。落としたボールが弾みながらやがて地面に停止するのと同じように、物質はやがてくっつく。このようにして、粒子が集まり、ガス雲になりやがて星になる。しかし、このときに、失われた位置エネルギーは、巨大な熱エネルギーになる。（恐竜を滅ぼした隕石の衝突は巨大な熱を生んでいる）これは電磁波になって宇宙空間に発散される。このエネルギーは、他の物質に受け渡され、それが物質を動かす。宇宙の物質の斥力である。エントロピーがつねに増大するのもこのためである。物資は、生まれたときに持っていた位置エネルギーのために生まれた位置に常に戻されようとしているのである。

（この電磁波のエネルギーが他の物質に受け渡されているのは光の赤方偏移に現れている。太陽の光は、太陽の中心で発生したガンマー線が、太陽の物質に当たり、物質にエネルギーを受け渡し、可視光線まで赤方偏移して太陽表面に出てくるということだ。この間１００万年かかるという。銀河系の中で星の光が赤方偏移している現象（赤化現象）が観測されている。これは電磁波のエネルギーが星間ガスの中の分子などに当たり、エネルギーを物質に受け渡し、電磁波のエネルギーが減る現象である。同じように、遠い銀河からの光も赤方偏移していることが観測されている。インフレーションビッグバン論では、この現象を、空間膨張により光が引き延ばされると説明している。しかし、空間は３次元に膨張しているのに、光が進行方向にしか引き延ばされないという理由は説明されていない。もちろん空間膨張の直接の現象は観測されていない。空間が膨張する仕組みも何一つ解明されていない。理論もないのだ。

それに反し、光が物質に当たると、赤方偏移する現象は日常的に観測されている。理論も観測もある現象であるので、銀河の赤方偏移の現象を、宇宙に浮かぶ水素を中心とした物質に銀河からの光が当たってエネルギーを奪われる現象とすると理論も実証もできていることになる）

位置エネルギーは万有引力からできているので、「万有引力＝位置エネルギー」になる。くっつく物質があればその発散したエネルギーで他の物質が離れる。宇宙全体としては、物資は収縮もしないし、膨張もしない。宇宙は安定していることになる。

（注：現在の定常宇宙論は、宇宙は膨張しているという理論だ。宇宙空間が膨張すると、新たに物質がその分生じて隙間を埋めるので宇宙は定常であるということになっている。この考えだと、宇宙空間が膨張するのだから、体積が増えた分宇宙空間が進出していく場所が必要になる。この宇宙には端も必要になる。すると、インフレーションビッグバン論やマルチバース宇宙論と同じく、この宇宙が膨張する場所が、元からあるこの宇宙を包み込んでいるもうひとつの宇宙ということになる。やはりこのわれわれが住む宇宙と、もうひとつ別の宇宙があるというキリスト教にとってはとてもうれしい考え方になる）

　ビッグバン宇宙ではどうだろう。

　ビッグバン宇宙では、物質は１点でできる。位置エネルギーは持っていない。今離れて存在する星や、銀河の位置エネルギーは巨大なエネルギーだ。これはどこから生まれたか。それは、インフレーションや、ビッグバンで物質が吹き飛ばされたことによって生じている。元は、ビッグバンのエネルギーである。したがって、位置エネルギーと、万有引力の値はイコールではない。「位置エネルギー＝ビッグバンのエネルギー」であるからだ。だから、ビッグバンのエネルギーが物質の持つ万有引力の総和より大きければ、物質は万有引力を振り切って飛び散ってしまう。小さければ、もとの位置に収縮してしまう。ビッグバンのエネルギーと、万有引力が一致することは、万に一つもありえない。宇宙は不安定になる。しかし、今、宇宙の観測値は１でそのあり得ない一致の状態だという。そこで神の奇跡だという人まで現れる。科学ではそうはいえないから、無数に宇宙が生まれ、その中のある一つがたまたま平坦な宇宙で、今のわれわれの住むこの宇宙であるということになったりする。無数に生まれたから、偶然に今の宇宙が生まれることもありだということだ。

　インフレーションビッグバン論では無数の宇宙がいるけれど。��田式定常宇宙では、奇跡も、無数の宇宙も必要はない。一定になるのが当たり前になる。

　　

　��田式定常宇宙では銀河がそんな速度で飛ぶことはない。銀河の光が赤方偏移する原因は、空間にある物質に光が当たり、エネルギーを減じるためであると考える。マルチバース宇宙論のように、銀河の光が赤方偏移するのは、空間膨張のためというのではない。

　（例えば、先に書いた太陽で考える。太陽の中心でできたガンマー線は１００万年かけて太陽表面に達するという。その間物質に当たった電磁波は、ガンマー線から可視光まで赤方偏移しているという。

　もし、太陽を半径１００万光年まで膨張させるとする。その中心でガンマー線を出すと、１００万年かかって、膨らんだ太陽表面に達するだろう。そのとき、通ってきた希薄な太陽物質に衝突して、ガンマー線は可視光までエネルギーを減じているだろう。

それと同じことが銀河の光でも起こっている。宇宙空間に散らばる希薄な中性水素や、電離水素によって、銀河の光は赤方偏移しているはずだ）

 

以上のように、インフレーションビッグバン論では、謎のエネルギー（インフレーション、ビッグバン、ダークエネルギー、宇宙項）や謎の物質（ダークマター）が必要である。それも、観測できている物質やエネルギーの２０倍もの非常に大きなエネルギーや質量であるという。それに反し、��田式定常宇宙論では、エネルギーは、基本の４つの力だけですむ。物質も知られている物質だけでいい。宇宙も、謎の斥力がなくても位置エネルギーで安定する。

第一の原因は、宇宙が膨張しているという仮説だ（定説だという人が多いが、証明されていないので仮説だ）。しかし、宇宙空間が膨張しているという直接の観測はない。銀河の光が赤方偏移しているという観測から、空間が膨張しているという仮説を立てただけにすぎない。上に書いたように、銀河の赤方偏移は、宇宙空間の水素分子やヘリウム分子や塵でも起こる。こちらの説だと、証明もされているし、観測もされている現象である。この考えを完全無視して、根拠もない空間膨張論に走ったのはなぜなのだろう。科学は、理論に一番不利になる現象や理論をまず考えなくてはならないという原則がある。これに背いてまで、一番不利になる、光は物質に当たるとエネルギーを減じるという現象を完全無視するのは何故だろう。

（補足：空間が膨張するというが、空間の膨張とは空間がどのようになることかとか、空間を膨張させるのはどのようなエネルギーなのか、なにがどのように空間に働くと空間は膨張するのかとか、たとえば太陽系の空間が膨張するとそれはどのようにして、宇宙の果てまで届くのかとか、地球の空間の膨張と月の空間の膨張が、間で衝突すると、空間はどうなるのか、どちらに動くのか、混ざるのかとか、普通は空間にさわれないし、空間の圧力はなにも計測されないのに、空間の膨張にともなって、巨大な銀河や、銀河団が動いていくのは、どのような空間の作用によっているのかとか、解明されていない現象が山積している。空気や水の膨張は理論も実証もなされている。しかし、空間の膨張は実証も理論もない。何一つ分かっていない。ないないづくしである。とても定説とはいえない。科学的に見れば理論も実証もないのだから仮説にもなっていない状態といえる。

ないないづくし、謎だらけなのが、インフレーションビッグバン論である。それの延長上にあるマルチバース宇宙は空想以外の何ものでもないといえる。

何故それが受け入れられているのだろう。

この理論はキリスト教の偉い人たちが大喜びした理論であるということだ。この理論だと、永遠に広がる宇宙（神の国）の中に、光で始まる、端のあるわれわれの宇宙ができる。聖書の天地創造を科学で裏付けていることになる。

神様が出てくると、神秘と奇跡と謎は神の行うことだから、と信じられる。いや神様には神秘と奇跡と謎が必携品なのだ。だから、この宇宙で人間が見ているものは、５パーセントにすぎない。後の９５パーセントは、謎の物質やエネルギーだということになる。それこそ、人知を超え、神の存在を予言する神秘であるのである。神にとって、謎は多ければ多いほどいい、深ければ深いほどいい。人知を超えた謎だらけの宇宙、マルチバース宇宙論は現在の神の天地創造にぴったりなのである。

それに対して、��田式定常宇宙は、今まで分かっている原理と物質だけで成り立つ。それでは、神様の出番は露ほどもない。

問題は、インフレーションビッグバン説とマルチバース宇宙は、キリスト教の神のみ心にかなうけれど、��田式定常宇宙論は、神のみ心に反するということだ。

 

２０１８年１１月２９日完

��田　敞著