へいこく雑記帖       



いろいろな理論に見る空間


--相対性理論、インフレーションビッグバン説、ヒッグス理論、量子論の空間を考える--

 

 著者 田 敞


  2018年1月1日


まえがき

相対性理論の空間はへこむゴムシートにたとえられています。インフレーションビッグバンの空間は膨らむゴムフーセンにたとえられています。空間の中身は、昔の人はエーテルに満ちていると考えていました。アインシュタインによってエーテルは否定され、今は、エーテルに代わって、ヒッグス場とそこから生まれるヒッグス粒子に満たされていると考えています。量子論では、揺らぐエネルギーに満たされていると考えています。

 ところが、われわれの周りの空間は、触ることもできないし、どのような方法でも見ることはできません。空間はまるで何もないかのようです。(重力だって、見えるのは落ちるリンゴで、空間の曲がりが見えているわけではありません。膨張する宇宙空間だって、見えているのは銀河の赤方偏移で、空間が膨張するのが見えているわけではありません)

 空間にはいろいろな考え方がありますが、現実のわれわれの生活とはかなり違いがあります。そのことについて考えてみます。

                                                           

T 空間についての考え方

 

1 特殊相対性理論の空間(相対性原理)

・ 動く空間がある

飛んでいる宇宙船から見ると空間が動く。

(宇宙船が光速の20%で飛んでいると、宇宙船から見ると、宇宙空間が光速の20%で動く。動くのだから、空間は何かであるということだ)

・ 縮む空間がある

宇宙船から見ると空間が縮む。

(宇宙船が光速の20%で飛んでいると、宇宙船から見た空間は光速の20%で動いているので、空間は、その速度、光速の20%に応じた縮み方をする。やはり空間は縮む何かであるということになる)

2 一般相対性理論の空間

・ 空間は曲がる

質量のある物質で空間が曲がる。この曲がりが重力である。

(例 太陽によって空間が曲がり、その曲がりに落ちることで惑星が公転している。また、空間の曲がりに沿って光は進む。重力によって光は曲がるともいう。あるいは、空間の曲がりが直線だから、光はその直線を進んでいる、ともいう、光は最短コースを通るともいう。説明は様々だが、空間という何かがあって、それが太陽の質量で曲がるということだ)

・ 重力波を伝える空間がある

(ブラックホールの衝突によって重力の変動が起き、それによって空間にさざ波が起きそれが空間を伝わっていく。このさざ波は地球を伸び縮みさせる。さざ波を立てるのだから、空間は何かであるということになるし、空間は物質にしっかり作用する何かであるということになる)

 

3 インフレーションビッグバン説

 空間は、インフレーションと共に、「無」から生まれ、最初に起こったインフレーションで、超光速で大きくなり、その後、ビッグバンが起こって、ハッブル定数による速度で大きくなっている。このように、空間は「無」から生まれる「何か」のようです。インフレーションビッグバン説では、空間そのものの定義はなされていませんから、「何か」としか言いようがありませんが。

この説では、元は1点にあったこの宇宙のすべての物質を、空間の膨張と共に空間が引き連れて、拡散させ続けているということです。空間は物質を動かす力を持っているということです。それも巨大な恒星や、銀河や銀河団をしっかり動かしています。

現在の宇宙はこのようにして出来上がったということです。

 この説には、二つの空間が存在します。この宇宙が生まれる前からあり、この宇宙を生んだ元からある「無」という空間と、インフレーションで生まれたこの宇宙の空間の2種類です。元からある空間はこの宇宙の外に今もあります。その空間の中で、われわれの空間は広がり続けているというのが、インフレーションビッグバン説です。

また、次から次に宇宙を生んでいるという、マルチバースという考え方もあります。

その元からの空間の中で、次々に新たな宇宙が生まれ続けているというのがマルチバース宇宙論です。

4 ヒッグス理論

空間はヒッグス場に満たされており、ヒッグス場から生まれたヒッグス粒子が物質の質量(動かしにくさ)を生んだということです。

(補足:ヒッグス粒子が生んだのは、動かしにくさだけのようです。アインシュタインの空間を曲げて重力を生む質量、あるいは、ニュートンの物質が持つ万有引力は、ヒッグス場の理屈にはないようです。空間を曲げる物質の性質、あるいは、物質同士引きつけあう物質の力がどこから来たかは、ヒッグス理論にはありません。まあ、ヒッグス理論の、「質量=動かしにくさ」、というのは物質の持つ引き付ける力が入っていないのですから「=」とはいえません。ヒッグス論には万有引力は邪魔だから、邪魔者を質量から取り払うために「=」にしただけのようです)

5 量子論

空間はなにもないのではなく、エネルギーに満ちていて、量子が生まれては消滅を繰り返している。この空間は、インフレーションビッグバン論の、最初からあった「無」の宇宙ではなく、この宇宙の真空を想定しています。

 

6 実際の空間

 私たちは空間の中にいます。しかし、空間を感じたことはありません。私たちを取り巻いている空気は、手を動かすと感じます。水中で手を動かすと、やはり抵抗を感じます。しかし、空間は私たちを取り巻いているにもかかわらずなにも感じません。

 地球も、空間の中を飛んでいますが、空間の抵抗を受けてはいません。人工衛星も、空間の抵抗を受けてはいません。実際問題として、空間そのものを観測できたことは今までのところありません。

 空間そのものは実態としては存在しないといえそうです。

 

U 考察

 相対性理論や、インフレーションビッグバン理論では、空間は「無」ではなく、物質にしっかり働きかける何かであるということが分かります。そこでこのことを考えてみます。

1 空間の性質

特殊相対性理論では観測者の速度によって、空間は、動いたり、縮んだりします。ほとんど物質のような性質があります。物なら動いたり,縮んだり、膨れたりします。もし、空間がなにもないなら、動こうにも動くものがありません。縮もうにも、縮むものがありません。ふくらもうにも、膨らむものがありません。空間が、動いたり、縮んだりするには、物のような何かの存在でなくてはなりません。

一般相対性理論では、物質によって曲がり、それによって物質を動かします。物質によって曲がりその曲がりによって物質を落とすのは、硬いもののようです。実際、相対論者は、ゴム膜にたとえています。

インフレーションビッグバン説では、爆発によって空間は膨張します。この膨張している空間は物質を引き連れて膨張していきます。ヒッグス理論では、空間はヒッグス場で満たされているという主張です。量子論では、空間は、エネルギーで満たされているという主張です。

これが空間の性質であるようです。これは二つに分けられます。ひとつは空間そのものの性質です。もう一つは空間の中にあるものの性質です。

相対性理論とインフレーションビッグバンの空間は、空間そのものの性質です。ヒッグス場と、量子論は、空間の中に存在するものの性質です。

2 相対論と、インフレーションビッグバン説の空間を考える。

(1)特殊相対性理論の空間

空間は動いたり縮んだりします。このとき、星などの物質も、動いたり、縮んだりします。この場合、空間が動くために、物質も動くのではなく、観察者の動きにともなって空間と物質が動くので、空間が硬くて一緒に物質を引き連れていくというのではありません。このてんは、次から述べる、一般相対性理論の空間や、ビッグバン論の物質を動かす空間とは別の性質のようです。

問題1

問題は、アンシュタインは、この宇宙を動かしたり、ちぢめたりするエネルギーについてはなにも言っていないことです。そのようなエネルギーは存在しないからいえないのです。エネルギーなしに、全宇宙の物質(ものすごい量です。50キログラムの石を動かすのにどれくらい力がいるでしょう。それが力なしに全宇宙の物質を動かすのです)が動くのが特殊相対性理論です。エネルギー不変則や慣性の法則を全否定している理論です。

問題2

動いている空間の前端はどこに向かって動いているのでしょう。不明です。反対側の後端が移動した後に残るのは何でしょう。不明です。

 宇宙空間が縮んだとき、その端がちぢんでなくなった所には何があるのでしょう。不明です。

結論

 今の物理学で分かっていることでは説明できない現象です。なぜ説明できないかというと、特殊相対性理論の、相対性原理が間違っているからです。

(2)一般相対性理論の空間

ゴム膜に鉄球を乗せるとゴム膜はへこむ。この端にビー玉を乗せると、へこみの中心に向かって転げ落ちる。ビー玉を横に動かすと、螺旋を描きながら中心に落ちていく。ビー玉に抵抗がなければ、横方向の速度と落ちる速度がつりあったところで回り続ける。しかし、ビー玉の周りには空気があるので、空気を圧縮したり、空気やゴム膜との摩擦で運動エネルギーを奪われて速度が落ちるので、どうしても螺旋を描いてへこみの中心に落ちてしまう。(注:宇宙空間でやればよさそうだが、宇宙空間では、ゴム膜を支えることができないので、鉄球とゴム膜を接触させても、ゴム膜と、鉄球は同じ加速度で、落下しているのでゴム膜はへこむことはないし、ビー玉も鉄球に向かって落下しない。宇宙ステーションの外に取り付けても同じである。ゴム膜はへこまないし、ビー玉も移動しない)

空間に太陽があると、太陽の重さで空間が曲がる。この端に地球を置くと地球は曲がりの中心、太陽の方に落ちていく。地球は太陽に対して横方向の速度を持っているので、横方向の速度と、曲がりによる落下とがつりあったところで公転する。地球の動きにはほとんど抵抗がないので公転し続ける。

これが一般相対性理論の重力の仕組みです。ゴム膜は宇宙空間ではへこまないけれど、空間はしっかり凹むようです。

 このことから、空間は、太陽や地球が乗るとへこむけれどしっかり支えて破れないような、ゴムのように弾性があり、かつ、どんなに重いものが乗っても破れない強い弾性を持った、あるいはそれに類似した未知の何かを持ったものであることがわかります。空間がなにもないものなら、へこむも曲がるもありません。何にもないんですから。

もしゴム膜が薄ければ鉄球はゴム膜を破って下に落ちてしまいます。また、ガラスのように弾性が少なければ、へこまずに割れてしまいます。しかし、空間は、太陽や地球の重みで曲がりながらもしっかり太陽や地球を支えています。すごい力を持っているようです。

これには問題が生じます。

問題1

太陽や地球は、空間の中を移動しています。

 ゴム膜は鉄球やビー玉の下にだけあります。周りにはありません。ビー玉が転がるとき、下以外にはさえぎるゴム膜はありませんから、下以外には動くことができます。

 しかし、地球の場合、空間が地球を取り囲んでいますから地球には進行方向にも空間があります。その空間は地球の直進運動を曲げて太陽に転がり落とすゴム膜と同じものです。その膜が前方にもあるのです。地球はこの空間にも衝突しているはずです。下は、地球の重さを支えて太陽に向かって滑り落としているほど、強靭なゴム膜のような空間があります。それと同じ空間が地球の進行方向にも、立ちはだかっています。地球は跳ね返されそうです。しかし、そうはなっていません。

また、後ろにある空間を引っ張っていかなくてはなりません。後ろの空間を置いていくと、地球と空間の間に隙間ができてしまいます。その隙間は地球の進行と共にどんどん広がっていきます。この隙間は何かということになってしまいます。地球と空間の間に、新たな空間ができたことになります。地球は新たな空間を作りながら進むことになります。空間がなにもないなら作るも作らないもないのですが、相対論では重力を生むゴム膜のような空間があることになっていますから、実質的に空間は重力を生む何かであるのですから、地球が公転することで、空間という重力を生むなにかを作り出しているということになります。するとエネルギーがいります。するとやはり後ろの空間を引きずるしかなくなります。

 現実の地球は、太陽の周りを、その強靭な空間を引きずって太陽に対して秒速数十キロで公転しています。ところが、空間は、ゴム膜どころか、薄い紙1枚の抵抗もしません。それは、地球が46億年間公転をしていることからわかります。ゴムのように柔らかく、かつ、太陽や地球が乗っても破れない強靭な空間を引きずって46億年間公転しています。46億回転です。空間は引き延ばされて太陽を46億周ぐるぐる巻きにしていることになります。太陽が乗ってもあるところで止まってそれ以上は引き延ばされないような弾性がある空間を地球の運動エネルギーでそんなに引き延ばすことができるでしょうか。それも無抵抗で。とても不思議な矛盾だらけともいえる性質を持っているのが相対性理論の空間です。

問題2

 地球上ではどうでしょう。

リンゴを手から離すと、ストンと落ちます。相対論によると、これが地球による空間の曲がりによってリンゴを落とした重力ということです。リンゴと地球の間にも空間がしっかりあるはずなのに、空間はリンゴを支えません。なんの抵抗もありません。リンゴは見事に空間を突き破っています。

私たちが手を動かしても、走っても、空気の抵抗は感じても、空間の抵抗は感じません。感じるのは縦方向の重力だけです。私の周りすべてに空間が満ちていて、しっかり弾性があるのだから、前にも横にも、空間の抵抗があってもよさそうなはずなのに、歩いても走ってもなんの抵抗もありません。あるのは、空間の曲がりによる縦方向の重力だけです。

 これはなにを意味しているのでしょう。空間は曲がって物を落とすときは、硬くて、しっかり、物質を滑らせるけれど、他の動きに対しては、何もないようにふるまいます。重力の方向には存在しても、他の方向には存在しないということになるようです。

 鉄球とゴム膜と同じです。下にはゴム膜はあるけれど、他の方向には空気しかないというのと同じです。では周りにあるのは何なのでしょう。

またリンゴが落ちるように、人も、ビルから飛び降りると落ちます。そのとき、人と地面の間には空間がありますが、落ちる人を受け止めるゴム膜のようにはなりません。宇宙空間では地球さえ受け止めて太陽に向かって滑り落ちさせる滑り台のような空間が、ちっぽけな人間を受け止められないのです。

人間を受け止めるのは地面です。これは空間ではなく、電磁気力です。このことから、空間は下でもゴム膜の役目を果たしていないことがわかります。

 太陽や、地球を曲がりに沿って落下させる空間は、そのときだけその方向に動かして、あとの物質の運動には何もないようにふるまっているということのようです。とても面白いもののようです。あるいは一般相対性理論の都合のいいように現れる性質を持っているということです。

 

そこで万有引力と比べてみます。重力と万有引力は同じだって。いえいえ、まるで考え方が違うものです。

(2) 万有引力と重力の違い

 物質は空間を曲げる力を元々持っているので、物質によって空間が曲がって、そのために物は落ちるというのが重力です。万有引力は、物質は元々引き合う力を持っているので、物は引き合うという考え方です。磁石のようなものです。磁力はなにもない空間を伝わります。媒質はいりません。そして電磁気力にしか働きかけません。物質が磁力線の中を動いても、摩擦抵抗はありません。

 万有引力もこのように考えられないでしょうか。万有引力もなにもない空間を伝わります。光が空間を伝わるように媒質は必要ないとします。影響するのは、万有引力を持った物質のみです。それも引き合うだけの作用です。一般相対性理論の空間のゴム膜のような性質はありません。だから、物質が空間を移動しても、空間の摩擦抵抗も、空間との衝突もありません。もちろん空間が「無」であってもかまいません。

 太陽と、地球はこの万有引力で引き合います。地球は直線運動をしているのですが、この引き合う力によって進路が曲げられます。ハンマー投げの鉄球と、ワイヤーのような関係です。鉄球を引きとめてはいるけれど、鉄球の進行方向にはワイヤーはないので、鉄球とぶつかることはありません。万有引力は引き合う力だけなので、地球が進む方向で引力にぶつかって抵抗を受けることはありません。空間そのものはなにもないとすると、曲がるもへこむも破れるもありません。地球が空間を引きずって46億周回ることで、空間が太陽に巻きつくこともありません。

 リンゴも同じです。地球とリンゴが引き合って落下します。リンゴと地球の間には空間があります。空間はなにもないから、空間の抵抗はありません。

結論

 相対性理論の重力の場合、曲がる空間という何かが存在して、ゴム膜のような空間の作用によって地球の軌道を曲げたり、リンゴを落下させたりします。

 しかし、この考えだと、動く地球も、落ちるリンゴも、空間を切り裂くか引きずって動いたり落下したりしなくてはならなくなります。地球さえ動かす硬い空間と、リンゴでも何の抵抗もなくあっさり切り裂ける空間との二つの空間が存在します。空間の性質に矛盾があります。

 かたや、ニュートンの万有引力は、空間とは関係なく、ただ引き合う力です。地球もリンゴも、引っ張り合って動きますが、進行方向には、何もない空間しかないので、何の抵抗もなく公転したり、落下したりします。矛盾は存在しません。

 実際、私たちが空間に取り囲まれて生活していても、空間と衝突したという感覚はありません。空間の抵抗で動きが邪魔されたということもありません。空間が観測されたという実証もありません。人工衛星も、空間の中を飛んでいるのに、空間の抵抗を受けていません。あるかないかの希薄な空気の抵抗を受けて落下する人工衛星が時たまあるだけです。引きずっている、あるいは切り裂いている空間の抵抗は一切ありません。

 無数の星や銀河も、宇宙空間を自由に動いています。周りを強靭なゴムのような空間に取り囲まれているのに、その抵抗は受けずに動いています。

とても不思議なのが相対論の空間の性質です。なぜ矛盾する現象があるのかというと、一般相対性理論の、「物質は空間を曲げ、曲がった空間は物質を動かす」という重力の考え方が間違っているから矛盾だらけになるのです。空間がなにかでできているという間相対論の考え方に対して、私たちの周りの実際の空間は何かでできているということはありません。何もない空間です。

 

3 インフレーションビッグバン説の空間を考える

 この仮説は、もとからある「無」という空間の1点から突然このわれわれの宇宙が出現したということです。その原理は、量子論や、総転移ということだそうです。もちろん、大昔のことですから、検証はできていませんから仮説です。あるいは空想です。

(1)量子論との矛盾

 量子論は超ミクロな世界の理論です。現在あるこの宇宙は、宇宙最大の超マクロな世界です。量子論の範疇から一番離れているのがこの宇宙です。量子論で説明できることではないはずです。

最初は非常に小さいから超ミクロな宇宙だった、などということのようですが、そのエネルギー量はこの宇宙と同じ大きさです。ミクロなわけはありません。超ミクロな「無」の1点に超マクロなエネルギーが潜んでいるというのは、量子論ではありません。インフレーションビッグバン論だけの特殊な理論です。量子論では、超ミクロな粒子と超ミクロなエネルギーが生まれては消えているだけです。

(2)総転移との矛盾

超小さな生まれたての宇宙が、総転移で、エネルギーが増えたようなことを言っていますが、現実のこの世界ではエネルギー不変則があるので、総転移しても、総転移以前と以後で、エネルギー量は変わりません。氷が水になるときも、水が氷になるときも、水が水蒸気になるときも、水蒸気が水になるときも、総転移以前と以後のエネルギー量に変化はありません。見た目の形の変化と、分子の動きの違いがあるだけです。

ところが、インフレーションやビッグバンのときには、総転移するとエネルギーが指数関数的に増えるといっています。水蒸気が水になるとき潜熱がでる。宇宙が総転移したとき、潜熱が出る、という説明があるけれど、上に書いたように水蒸気が水になるときに出る潜熱は、水蒸気が元々持っていたエネルギーです。宇宙が総転移するときも、宇宙がもともと持っていたエネルギーが形を変えて潜熱として現れるというならわかりますが、インフレーションビッグバン論では、総転移すると、突然どこからともなく潜熱が湧いて出てきます。勝手にエネルギーが出現するのです。それも、量子論ではほぼ0のエネルギーが、この宇宙すべてのエネルギーにまでいっきに増えるのです。HOの総転移ではありえない現象です。それなのに、宇宙のエネルギーが出現する根拠を総転移によって、と説明しています。明らかな間違いです。あるいはごまかしです。

エネルギー不変則を完全否定している理論です。もちろん現在の地球や太陽系で起こる現象には適用できない理論です。インフレーションビッグバン論独特の特殊な理論です。

それはさておき、インフレーションビッグバン説の空間の性質を考えてみます。

(1)考察

 インフレーションビッグバン説では、空間は1点から始まり、膨張しているということです。この膨張する空間に引っぱられて、物質は拡散し、拡散しながら、あるところでは重力で収縮し星や銀河や銀河団や、巨大構造になったということです。

 この宇宙空間は、それ以前からある「無」という空間から生まれた何かであるということです。その生まれた空間は最初小さかったけれど、宇宙の全物質を引き連れて、大きく膨張したということです。

 空間は距離に比例して、離れる速度が大きくなるということです。この速度をハッブル定数といっています。そして空間はこの速度ですべての物質を拡散させているということです。空間は物質を動かす何かの作用を持っているということになります。これは空間の曲がりによって落ちていくという作用をする一般相対論の空間とは違う作用をする何かであるということがわかります。巨大な恒星や、銀河や銀河団を捕まえて百億光年もの距離を引っ張っていっています。とても強い力です。

 今まで直接観測できたこともなく、構造も、性質も、有るかないかも不明の空間が、巨大な質量を持つ銀河団までしっかり動かすことができるのが、インフレーションビッグバン論の空間です。

問題1

空間の中で恒星や、銀河は、空間を切り裂いて動いていても、空間に何の抵抗も受けずに自由に動いています。その反面、空間は恒星や銀河や、銀河団をしっかり捕まえて動かしています。公転する地球を、公転には何ら作用しないけれど、空間はしっかり捕まえて何らかの力で元あった1点からこの位置までおそらく100億光年近く動かしてきたということです。

 ここでも、重力の場合と同じように、空間の膨張は完ぺきに受けて動かされても、その空間を恒星や銀河や、星間雲や、銀河間雲は空間の抵抗は何一つ受けずに動き回っているということです。しっかり物質を捕まえて動かすけれど、物質の動きには何ら影響を与えないという、2つの相反する性質を持っています。

(2) 空間の膨張のしかた

 空間は観測されている範囲でもおよそ半径120億光年あります。この空間がちゃんと外に向かって膨張しているということです。その仕組みはどのようになっているのでしょう。

 インフレーションビッグバン論者は、風船を膨らましたり、ゴムシートを引っ張ったりして説明しています。しかし、それは、小さな物質でのことです。巨大になるとうまくはいきません。

 例えば、太陽系くらいの風船を膨らましてみましょう。均一に、ちゃんと膨らますのは至難の技です。地球と火星の間にゴムシートを渡して、両方から引っ張ってみましょう。うまく均一に伸びるでしょうか。

 物質は質量があるから難しいが、質量のない空間なら抵抗なく動くということかもしれません。(中に、巨大な星や銀河や銀河団があるのですが、それは無視しましょう)

 宇宙空間の膨張について考えてみます。地球のところにある空間が膨張して膨らんでいくとします。月のところにある空間が膨張して膨らんでいくとします。二つの空間は間で衝突します。衝突したとき二つの空間はどうなるでしょう。押し合って、どちらも後退していくでしょうか。なにもない空間がどのようにして押し合うのでしょうか。空間が押し合うことのできる未知のなにかであるとします。そのとき、衝突面はどのようになるのでしょうか。月と地球が押し合ったら、衝突面は砕け熱を持ち融けるでしょう。空間の衝突面はどのようになるでしょう。このほかに、火星のあるあたりの空間も膨張して地球の方にやってきます。金星のあるあたりの空間も膨張します。太陽の当たりの空間も膨張してきます。いたるところの空間が膨張して、押し合いへしあいになります。

 宇宙中の空間が勝手に膨張して、押し合いへしあいになっています。どのようにして、宇宙全体が一定方向に膨らんでいくのでしょう。その方向はどちらでしょう。

 また、地球の空間が膨張して100億光年先の空間を地球を中心にして、全方向に広げるにはその伝え方はどのようになっているのでしょう。膨張を伝える速度はどれくらいでしょう。膨張した部分と、これから膨張する部分の堺はどのようになるのでしょう。

 風船を膨らませるのは簡単です。しかし、宇宙全体を膨らませるのは、容易なことではありません。インフレーションビッグバン論の人たちは、宇宙空間の膨張の仕組みについて何一つ述べていません。空間が膨張するというのに、空間が何でできていて、どのような構造になっているかも何も言っていません。たぶん何一つ分からないからでしょう。

 だから、宇宙の95%は、謎のエネルギーと、謎の物質でできているなどと適当なことを言っているのです。彼らが言う、分かっている5%の宇宙、はインフレーションビッグバンでなくても大丈夫な宇宙です。インフレーションビッグバンの人のいう宇宙は残りの95%のなにも分かっていない宇宙です。要するに、インフレーションビッグバン宇宙はなにもわかっていない宇宙のことだということです。インフレーションビッグバン論には必要だけど、実際には観測もされないし、理論もない、影も形もないお化けのようなものです。

 それはさておき、インフレーションビッグバンの空間と物質について次に考えてみます。

(3) インフレーションビッグバンの空間の性質

 空間は、全体として膨張しており、その空間が物質を引き連れて動かしているということです。137億年前に1点で生まれた空間は、現在、地球から観測できる半径120億光年くらいの範囲のすべてにわたって膨張しているということです。その範囲のすべてに、物質は存在しています。これは、ビッグバン説によると、1点で生まれた物質を空間が引き連れて拡散させたということです。物質が爆発で飛び散ったということではありません。空間は、何らかの方法で、物質を百億光年の範囲にバラバラに動かしたということです。星や銀河や銀河団さえ有無を言わさず動かすのだから、非常に強い力を持っているといえます。しかし、星や銀河の進行方向の空間はそれらに衝突されても何ら抵抗を示しません。なにもないかのようです。

 空間は、物質をしっかり捕まえて、宇宙空間にまんべんなくばらまくけれど、それ以外では存在しないようにふるまっています。相対論の空間と同じ性質です。理論に必要なところだけに現れるがそれ以外には「無」と同じように振る舞っています。インフレーションビッグバンにはとても都合のいいお利口ちゃんな空間です。

 

4 ヒッグス理論

 宇宙空間はヒッグス場に満たされているというのがヒッグス理論です。このヒッグス場が生むヒッグス粒子が、物質に質量(動きにくさ)を生じさせたので、物質は質量を持ったということです。

(注:物質は、動きにくさと共に4つの力も持っています。この4つの力はヒッグス場とは関係ないようです。物質は、動きにくさ以外の力を最初から持って生まれたようです。なら、動きにくさも最初から持って生まれてくれば良かったのに。そうすれば、ヒッグス場やヒッグス粒子などに頼らなくても済んだのに。相対論では、4つ目の万有引力ではなく、物質は空間を曲げる力を持っているということです。この力が2次的に重力という4つ目の力を生むというのが、相対論です)

 このことから、宇宙空間は端から端までヒッグス場に満たされているということがわかります。このヒッグス場は、過去に、宇宙の全物質にまんべんなく動きにくさを与えたようですが、その後は何の影響も与えていません。数年前、加速機で、ヒッグス場からヒッグス粒子をたたきだしたことが観測されましたが、それ以外の場所では観測されていません。ヒッグス場の中を動いている私たちや、車や飛行機には何の影響も起こさないようです。太陽や、超新星のかなりの爆発でも観測されていません。光速で飛びまわっている電磁波や、宇宙線や、ニュートリノにも、何一つ影響しませんし、影響されません。宇宙線やニュートリノや,電磁波が空間を満たしているヒッグス場からヒッグス粒子をたたきだしたという観測はありません。まるでヒッグス場は存在しないかのようにふるまっています。ヒッグス場はヒッグス場でヒッグス粒子ではないので、普通の現象に対してはなんの影響も与えないのかもしれません。

加速器の中でも、ヒッグス場からヒッグス粒子をたたきだしたことになっていますが、実際は、光速で飛ぶ粒子同士の衝突からヒッグス粒子は生まれています。粒子の破片です。ヒッグス場に粒子がぶつかってヒッグス粒子が生まれたのではありません。空間に満ちているヒッグス場は加速機の中にもあるのですが、その中を光速で飛ぶ陽子や反陽子や電子も、ただ飛ぶだけで、ヒッグス場からは何の影響も受けていないし影響を与えてもいません。

 

 ヒッグス場が存在することの現象として現れるヒッグス粒子は、非常に特殊な場合(加速機でもなかなか現れない)にのみ、ごくごくまれに、一瞬現れることのようです。これはこの広い宇宙に普通は存在しないと考えることができます。宇宙にびっしり満ちていて、全物質に作用したはずなのに、今はどこにも存在しないのです。変ですね。

宇宙に満ちているのになにもしない、観測もできない、昔言われていたエーテルのようです。現在では、相対論の空間や、インフレーションビッグバンの空間のようです。

 

5 量子論

 宇宙空間は、無ではなく、エネルギーがあって、粒子が生まれては消えているということです。空間は不確定で、エネルギーが出たりなくなったりしているということです。

 この現象は観測されていないので、まだ仮説です。やはり空間は何かであるということのようです。この説の場合は、空間は、硬い構造を持たないようです。ただ、空間は常に揺らいでいる何かということです。

 

V 結論

 このように、理論によって様々な空間があります。

 相対性理論と、インフレーションビッグバンの空間は、物質を動かす物理的ななにかとして存在しています。ヒッグス粒子論と、量子論は、空間の中に、なにかが存在して、物質を作ったり、物質に影響を与えたりしたという理論です。「無」という宇宙は存在しません。

 しかし、現実の空間にはなにも観測されていません。空間そのものも観測されていませんし、ヒッグス場も、量子的揺らぎも観測されていません。宇宙空間から、物質をとりはらうと、電磁波も引力も消えてしまいます。その後にはおそらく何もないでしょう。実際それ以外のものは今のところ観測されていません。曲がった空間も、膨張する空間も、ヒッグス場も、揺らぐ空間も直接観測されていません。その一方、空間はなにもない様にふるまっていることが観測されています。これは空間はなにもないということの観測です。空間そのものは、何もないものではないでしょうか。観測事実は今のところそうなっています。

空間は、一般の物質の自由な動きになにも反応していないし、物質の自由な動きになんの影響も与えていません。光速で飛ぶ宇宙線も宇宙空間に衝突しているという現象はありません。特殊な状況である加速器の中でも、光速で飛ぶ陽子や電子や反陽子は空間から何の影響も受けていないし、空間に対しても何の影響も与えていません。まるっきりそこには何もないかのようです。

 空間は、理論の中では重要な仕事をしていますが、現実の世界ではなにもしていません。

 理論を信じるか、現実を信じるかです。一致すればいいのですが、今のところ一致はしていません。科学の方法論としては、これは理論が間違っていることを示唆しています。今のところは。

 

補足1 エディントンの観測

相対論の、太陽が空間を曲げることの実証としては、エディントンの観測がある。しかし、この観測された星は太陽コロナの中に映っている。したがって、この星の光が曲がったのは、太陽コロナの屈折現象であるといえる。地球の大気が、星の光を曲げるのは実証されているから太陽大気でも同じ現象が起こったといえる。一方、空間が光を曲げるということは、他では実証されていないので、エディントンの観測した星の光が、空間の曲がりによるとはいえない。(重力レンズも、銀河の星間ガスなどの物質による屈折である。銀河団による重力レンズも同じように宇宙にあるガスによる屈折現象として説明できる)

補足2 宇宙空間の膨張

インフレーションビッグバンの空間の膨張の理由は、遠い銀河ほど赤方偏移しているという観測である。これは、空間膨張が直接観測されたのではない。赤方偏移が観測されただけである。

光が物質に当たるとエネルギーを奪われて赤方偏移する現象が地上で日常的に起こっている。部屋の電気を消すと瞬時に暗くなる。これは、光が、壁に衝突することで、光のエネルギーが壁に奪われて赤方偏移し、可視光から赤外線へ、そして電波にと、赤方偏移したからである。これは、光は物質に衝突すると物質の電子や原子を揺り動かす。そのために、光の持つエネルギーが物質に移動するという光の性質から起こっている。

このことから、銀河の光も、宇宙空間にある水素原子や分子や、その他の原子や分子に当たってエネルギーを減じて赤方偏移するはずである。距離に比例して光が水素原子や分子に衝突する頻度は高まるから、遠い銀河ほど赤方偏移することと矛盾しない。また、銀河の光や星の光が、物質に衝突した証拠が暗線として観測されてもいる。

それに反して、空間が膨張することで光が赤方偏移することの理論はあるが、いまだ直接的な実証はない。

空間膨張は直接観測されたことはない。地球上でも、太陽系でも、銀河系でも、観測が正確に行われるところでは、空間の膨張は確認されていない。これは空間膨張がないことを示している。したがって、遠い銀河ほど赤方偏移しているという観測が、空間膨張のためであるというには実証された根拠がないといえる。

光が物質に衝突して赤方偏移することは実証されているが、空間膨張によって光が赤方偏移するということは実証されていない。したがって、遠い銀河ほど赤方偏移する現象は、光が宇宙にある水素原子や分子に衝突してエネルギーを減じる現象であり、宇宙空間の膨張のためではないといえる。

補足3

 ヒッグス粒子の観測

 加速器の中で観測されたが、粒子が、ヒッグス場を光速で飛ぶことによって、ヒッグス粒子が生まれたのではない。粒子同士が正面衝突して生まれたということだ。これは粒子が粉々になって飛び散ったのだから、粒子の破片であるといえる。ヒッグス場から生まれたのではない。もし子rがヒッグス粒子だとすると、ヒッグス粒子はヒッグス場から生まれるのではなく、物質の一部として存在しているということになる。