へいこく雑記帖


ホログラフィック原理について


2022,10,11〜


著者 田 敞


まえがき

 先日NHKの「コズミックフロント」でホログラフィック原理というのを放送した。

 宇宙の端にある2次元世界の情報が、量子もつれで投影されて3次元のこの宇宙ができているという理論だ。2次元の宇宙から3次元の宇宙が立ちあがるということだそうだ。

 最新の考えで、人気があるようだ。これについて考えてみたい。その理由は、普通の暮らしから見るととてもありえないことだからだ。難しい理論で考えるとあるのかもしれないが、私の日常生活が映像などとはとてもあり得ないことだ。そこで、われわれの日常からこのことを考えてみることにする。

 

考察1 宇宙の端にある情報

 宇宙の端に量子の集まった2次元の世界があって、その世界が投影されたのが、この宇宙ということのようだ。では、元になった2次元はどこにあるのだろう。ハッブルディープフィールドにもそれは写っていないようだ。そのほかの巨大望遠鏡にも写っていない。ということは、少なくともそれは130億光年より遠い所にあるということなのだろう。

しかし、今のところ見つかってはいないということは確かだ。すなわち実証はなしということだ。宇宙は謎だらけだから、実証がなくても大丈夫ということなのだろうか。ダークエネルギーやダークマターのように。

あるいは、2次元は3次元からは見えないということなのかもしれない。だがそれでも実証がないということには変わりはない。科学は実証することが大切である。

考察2 宇宙の端

 元になる2次元世界は宇宙の端にあるという。宇宙の端はどれくらい遠いのだろう。どのようになっているのだろう。ビッグバン宇宙論が正しいとすると、宇宙の端は地球から光速以上の速度で飛び去っているということだ。するとそれに伴って、この宇宙の元である2次元宇宙も光速以上の速度で飛び去っているということだ。投影先であるこの3次元宇宙が、大元である2次元宇宙を光速で吹き飛ばしている。主役と脇役が逆になっている。

考察3 2次元の情報

2次元とはどういうものなのだろう。映画はフイルムを投影する。ではフイルムは2次元かというと、そうではない、ちゃんとした3次元だ。どんなに薄くても厚みがある。縦、横、高さがある。

 このわれわれが住む世界に2次元のものは存在しない。遠い宇宙の端にはそれが存在するというのがこの理論だ。「昔むかしあるところに、おじいさんとおばあさんがおりました」というむかし話のようだ。ここではないどこか遠いところには、妖怪が住んでいたり、人魚がいたりするのだ。遠い宇宙の果てにはこの世界にはありえない世界があるということのようだ。

考察4 対の量子

 対になった量子の一方の変化が量子もつれで対になった相手の量子に瞬時に伝わるということだ。地球をつくっている量子は、宇宙の果ての2次元世界の量子と量子もつれでつながっているという。地球の量子はいつどのようにして宇宙の果ての量子と対になったのだろう。

ビッグバン宇宙論が正しいとしたら、それは、137億年前宇宙が生まれたとたんにできたと考えられる。そのとき2次元世界の量子と3次元世界の量子が分かれ、2次元世界の量子のビッグバンが3次元世界の量子に投影されてこの3次元世界のビッグバンがそれに従って進行したということになる。すると2次元世界が、超高温高圧で始まり、インフレーションを起こし、その後、ビッグバンが起こり、巨大な2次元宇宙に膨張していったということになる。

2次元世界の高温高圧とはどのような原理で起こるのだろう。高さのない世界に高温はどのようにして生まれるのだろう。温度は分子の振動である。高さのない世界に、分子の振動はあるのだろうか。高圧はどのようにして生まれるのだろう。高さのない世界に圧力はあるのだろうか。高さのない分子は存在しない。高さのない世界に圧力はない。

2次元世界のインフレーションの仕組みはどうなっているのだろう。2次元世界にも真空はあるのだろうか。2次元世界の真空はどのように相転移したのだろうか。

2次元世界のビッグバンの仕組みはどうなっているのだろうか。ビッグバンで電子や陽子ができたということだから、2次元世界のビッグバンでそれらができたということだ。高さのない2次元世界の電子や陽子は、どんなものなのだろう。

この世界が2次元世界の投影だとしたら、3次元世界で主体的に起こったと考えている今までのインフレーションビッグバン理論は無意味になる。2次元世界で起こるインフレーションや、ビッグバンの原理に切り替えなくてはならないことになる。

考察5 地球の相棒

 地球の相棒の量子も2次元宇宙にそっくりあることになる。その相棒は、130億光年以上離れている。どのような原理でそんなに遠く離れてしまったのだろう。理由はあるのだろうか。

考察6 次元

 棒の上を歩く蟻は1次元だ、とか、地球の表面は2次元だとか言う人がいるが、どれも実際は3次元だ。1次元の蟻や棒は存在しないし、地球の表面をどんなに薄く削っても、厚みはなくならない。厚みがなくなったら、そこには物質は存在できない。1次元や2次元は言葉上の存在で実際には存在していない。ところが、遠い宇宙の彼方には2次元世界が存在するという。それはどんなものなのだろう。宇宙の表面というのだろうか。そんなものがあるだろうか。地球の表面が2次元だ、などと言って平気なのだから、宇宙に表面があるという人もいるかもしれないがそれは言葉上のものである。

この世界には存在しない2次元世界は、3次元世界の住人の頭の中だけの世界だ。ホログラフィック原理の世界は一部のとても頭のいい科学者の頭の中にあるバーチャルの世界といえる。

考察7 投影

 投影ということは、私たちは映像ということになる。そのわりには、物に触ったり火山が噴火したり、津波が来たりしている。実際にそれで人が死んでいる。バーチャルではなく、リアルである。どちらかというと、宇宙の端にあるという2次元世界の方がバーチャルと言える。現実にこの世界には存在しないものなのだから。

その2次元世界はこちらの科学者が考え出したものだ。2次元世界の科学者が考えていて、それが3次元世界に投影された科学者と共に考えも投影されたというかもしれないが、その証拠はない。反対に、2次元世界のことをこの世界の科学者が考えたということは、いろいろなところで、講演や論文で発表されているから、実証はある。その講演や論文も2次元世界の科学者がおこなったものの投影であるというかもしれないが、それは考えだけで実証はない。実証のある方が勝ちである。2次元世界はこの世界の科学者の想像の産物だと言える。

考察8 2次元の火山

 この世界の火山は2次元世界の投影だということだ。では2次元世界の火山はどのようになっているのだろう。地下のマグマはどこにあるのだろう。2次元には地下がないのだからマグマの存在する場所はないといえる。曲がっていない2次元の地表と重なっているのだろうか。2次元には高さがないから、重なることもできないはずだ。

噴火で飛びあがる噴煙はどこにあるのだろう。2次元には空がないはずだ。やはり地表と重なっているのだろうか。ところが、その地表も高さがない。そこにマグマと噴煙と、地表が重なっているのだろうか。どうやって高さのないところに重なれるのだろうか。

考察9 台風

 台風は、海水温が高くなって、その熱で空気が暖まり上昇気流ができる。それと地球の自転の影響で大気に渦巻ができることでできる。2次元世界の上昇気流はどのようになっているのだろう。2次元世界の地球の自転はどのようなものなのだろう。2次元世界の地球は経度に沿ってぺったらなのだろうか、緯度に沿ってぺったらなのだろうか。回転しているから、緯度に沿ってぺったらかもしれないが、高さのないぺったらは存在できない。もしあったとしても、2次元世界の地球の歳差運動はどのようにして起こっているのだろう。説明できる人はいないだろう。3次元世界では何でもないことが2次元世界では説明不可能になる。そんな2次元世界が元になっているというのがフォログラフィック原理の世界だ。

考察10 投影方法

 量子もつれという現象で投影されているということだ。量子もつれは対になった量子の間で、情報が瞬時に伝わるという現象らしい。だから、130億光年以上離れていても、瞬時に情報が伝わって、こちらの量子があちらの量子の言うとおりに動くらしい。非常に便利な仕組みだ。相対論などでは光速以上で情報は伝わらないということだから、瞬時に130億光年以上の距離を伝わるのはとてつもなくすごいことだ。世の中には上には上があるということのようだ。あるいは、頭の中では何だって可能だということだ。火星人が襲撃してきたり、馬車が空を自由に飛び回るのだって頭の中なら簡単にできる。

問題1

 2次元の量子はどんなものなのだろうか。縦と横だけで高さのない量子である。そんなものがあるのだろうか。

問題2

 この世界の量子は3次元である。2次元の量子と、3次元の量子は対になることはできるのだろうか。

問題3

 2次元の量子が元で、3次元の量子がその投影である理由はあるのだろうか。なぜ3次元の量子が元で、2次元の量子が投影であってはならないのだろうか。私たち3次元の影が地面にぺったらに投影されるように。まあ、影は光が当たっていないということだけで物が投影されたわけではないが。

考察11 なぜわれわれは投影されている方にいるのだろうか

 今、私はパソコンを打っている。これは、宇宙の彼方の2次元の投影であるということだ。では2次元にいる私の方が本体なのだから、私は130億光年以上遠い2次元世界にいて、パソコンを打っているはすだ。ところがその感覚がまるでない。本体の方が感覚がなくて、投影されている方が自分の意思で動いているつもりになっている。なぜ、私は2次元にいて、パソコンを打っている感覚がないのだろうか。

 2次元世界にパソコンがないとこの世界に投影することができないから、2次元世界にもパソコンがあるはずだ。遠い宇宙の彼方の2次元世界にも、やはり研究者がいて、工場があってパソコンをつくっているはずだ。2次元の工場で、2次元の科学者や技術者が働いて2次元のパソコンをつくっているはずだ。

 2次元にいる私はどんな格好をしているのだろう。高さのない私だ。想像すらできない。

 130億光年以上遠いところの2次元の私の動きがこの世界にいる私の行動をすべて支配しているなんて、おとぎ話にもなりはしないと思うのだが。

 

考察12 始まり

 ホログラフィックの考えは、最初、ブラックホールに物質が落ちるという考えで登場したと述べていた。

 ブラックホールの事象の地平線では時間が止まるから、ブラックホールに向かって落ちて行く物質は、だんだんゆっくりになり、やがて時間が止まっているところ(事象の地平線)で、離れたところから見ると落下が止まったように見えるということだ。なぜか「離れたところから見ると」と言っている。離れたところから見なければ困ることでもあるのだろうか。

その後は止まった物質の映像がブラックホール内に落ちて行くということだ。

問題点は、実質はどうなのかということと、映像の落下の速度だ。

1 実質は

事象の地平線では、物体は止まっているのか、離れたところから見るとそう見えるだけなのか、ということだ。はっきりしない。これは相対論ではよく使い分けられる説明だ。

昔、ジェット機で相対論の検証をしたとき、ジェット機に積んで地球を回った時計と、地上の時計とは時間が異なっていたから相対論の正しさが証明されたと言っている。また、先日、東大が作った非常に正確な時計で、スカイツリーの上と下で時間を計ったら、上の時計の時間が進んでいたから、相対論のとおりだと述べている。

これらは、実質の時間が重力で遅くなったということを表している。離れたところから見たら時計の時間が遅くなったように見えるということではない。実際に時計の針の位置や、カウンターのメモリの数字が異なっていたということである。ということは、ブラックホールの事象の地平線では実際の時計の針が止まっているということである。離れたところから見ると、見かけ上時計の針が止まって見えるということではない。すなわち事象の地平線では物質は止まっているということだ。

2 映像が落下

 相対論では、ブラックホールの中は時間が止まっていることになっている。するとどのようなものも動くことはできないはずだ。「移動距離=速度×経過時間」である。時間が止まると、この式の経過時間の項が0になる。したがって移動距離も0になる。光が秒速30万キロメートルであっても、移動はできない。落下してきた物体が事象の地平線で止まるのもその原理だ。

 では映像が落下するのはどうしてだろう。映像が光とすると、動くことはできないはずだ。

 時間が止まっているブラックホールの中で映像はなぜ動くことができるのだろう。時間が止まっている中で動くことができる映像とはどんなものでできているのだろう。不可思議な現象だ。

 かりに動くことができるとしたら、その落下速度はどれくらいなのだろう。光のように光速で落下するとするなら、普通の宇宙を飛ぶ光と同じ速度である。時間が止まっているブラックホールの中と時間が止まっていない普通の宇宙空間の中で速度が変わらないなら、相対論効果は働いていないことになる。

光は特別で、時間が止まっても光速で動ける、ということなのだろうか。特殊相対論では、光は光速だから時間が止まるはずなのに、実際の光は普通に光速で飛んでいるから、以前から光は特別扱いしているようではあるが、その根拠はあるのだろうか。なんにしろ時間が止まっているはずのブラックホールの中で動くことができるのはどういう原理なのだろう。

 この理論とは違うが、ブラックホールに落下する物体は遠くから見ると事象の地平線で止まって見えるが、物体はブラックホール内に普通の速度で落下すると言っている人もいる。普通の速度とはどういう速度なのだろう。宇宙全体に普通の速度があるなら、その速度は絶対速度になり、すべての動きは相対的であるという相対論の否定になる。

 また、遠くから見ると事象の地平線で止まって見えるというが、物体そのものが落下すると、そこには物体がなくなるから、その後は見えなくなるはずだ。通り過ぎた車がいつまでも目の前に見えないのと同じことになるはずだ。

そこは時間が止まっているから、そこから出た光も止まって見えるはずだとする。その場合は遠くから見ている人に光が届かなくなるから、遠くから見ている人には見えなくなるはずだ。近くから見る人も同じである。止まっている光は見えない。

あるいは時間が止まっているから、物体はそこに止まっているという考えなら、物体はそこから先には移動しないことになるから、普通の速度で落下するという前提が崩れる。

3 ブラックホールの動き

 ブラックホール自体も動いている。銀河の中心のブラックホールは銀河と共に動いている。また、白鳥座に見つかったブラックホールも銀河系の回転と共に動いている。重力のために時間が止まっているはずのブラックホールが普通の重力の場所にある星と同じケプラーの法則(ニュートン力学)で動いている。

普通の速度や重力の時は、ニュートン力学で十分だが、非常に速い速度や極端に強い重力の時は相対論に従うと言っているが、ブラックホールでさえ、ケプラーの法則で動いているのだから、この考えは現実と合っていないといえる。宇宙はニュートンの法則で動いていて、相対論では動いていないということだ。(相対論が正しければブラックホールは動けないはずだ)

4 事象の地平線に落下した物質

 もうひとつの問題は、事象の地平線で止まった物質だ。次から次にブラックホールに落下してくる物質は事象の地平線で止まってしまう。すると、事象の地平線は物質で埋まってしまう。そんなことはあるのだろうか。最近のブラックホールを写したという映像にはそれは写っていなかった。まあ、あれにはあるはずのブラックホールから出ているジェットも写っていなかったから、よけいなものは写らないようになっているのかもしれない。あれは直接の映像ではなく、電波望遠鏡でとらえた情報をコンピューターで相対論に即して処理した映像だから、余分な情報は削除した結果だからそうなるのかもしれない。

 また、ブラックホールの事象の地平線に落下してきた物質がそこで停止しても、ブラックホールが動いているのだから、ブラックホールと共に動いていくことになる。ブラックホールに対して停止しても、他の星に対してや空間に対しては動いていることになる。ここでも停止は存在しない。

5 結論

 相対論が正しければ、時間が止まっているブラックホールの中をどのような映像も落下できないといえる。また事象の地平線には降りつもる物質があふれていることになる。ニュートンの絶対時間の考えでは、ブラックホールでも時間は他のところと同じ速度で進んでいる。それなら、物体は、ブラックホールに落下するし、ブラックホールは銀河と共に動いていくし、重力の大きい星も、重力の小さい星間物質も、同じようにケプラーの法則で動いていく。ニュートンの絶対時間絶対空間の考えだと何の不都合も生じないし、観測とも一致する。ブラックホール内にホログラフィックの必要性はなくなる。

 

結論

 地球から観測できた直径130億光年を越える宇宙が、どこにあるか分からない、しかも実際には存在できない2次元世界のホログラフィックであるとはいえない。難しい理屈の中にはあっても現実にはありえない現象であるといえる。

庭の梅の木が、初秋の風に揺れ、葉を落としている。一斉に黄色くなって落ちるのではなく、思いついたようにあちこちの葉が黄色くなって少しづつ落ちていく。その梅の木が130億年以上遠い宇宙の2次元世界に吹いている初秋の風に揺れているホログラフィックであるわけがない。2次元世界では風は上下に揺れないはずだ。葉の落下もありえない現象だ。

 この世界はリアルである。2次元のバーチャルではない。ホログラフィック原理こそ科学者の頭の中のバーチャルと言える。

 2022年10月18日完