へいこく雑記帖

ジェイムス・ウエッブ宇宙望遠鏡は、ファーストスターを観測できるか


著者 田 敞

 

1 ファーストスターの性質

ア 誕生

宇宙誕生から2000万年〜2億位年後。

(インフレーション・ビッグバン宇宙論では、138億年前に宇宙が誕生したと言っているので、137億8000万年前から136億年前の間ということになる)

イ 大きさ

太陽質量の数百倍

ウ 寿命

100万年

エ 組成

水素とヘリウム

超新星爆発を起こし、その他の元素を作りばらまいた。

後の岩石惑星などの材料を作った

(以上、ニュートン2022,11月号より)

 

2 ファーストスターは見えるか

(1)インフレーション・ビッグバン宇宙(膨張宇宙)で考える

ア インフレーション・ビッグバン宇宙とファーストスター

・ ビッグバン宇宙は、宇宙は小さな火の玉から始まりそれが膨張したという理論だ。インフレーション宇宙論でも同じだ。違いは膨張速度がけた違いに大きいということと、インフレーション後にビッグバンに移行するということだ。

・ インフレーションでは宇宙は光速の数十ケタ倍の速度で膨張するという。このときは今につながる物資はないようだ

・ ビッグバンでは、宇宙膨張の速度はハッブル定数によると326万光年離れている空間の離れる速度は秒速60kmから70kmといっている。

・ ビッグバンで物質ができたことになっている。

これらのことを考えると、ファーストスターが生まれたころの宇宙の大きさは、光速で宇宙が広がったときで、半径2000万光年から2億光年の間と考えられる。

(インフレーションでは物質はできなくて、ビッグバンの火の玉で初めて物質ができるので、ファーストスターはビッグバン宇宙でできると考えられる)

ハブル定数で膨張したときは小さな火の玉の時は膨張速度はほぼ0だから宇宙は大きくなれないから、2億年経ってもおそらく直径10センチにもなっていないと考えられる。実際太陽系はできてから46億年の間少しも膨張していない。

 このことから、ハッブルの法則ではファーストスターが生まれることができるほどには初期宇宙は大きくなれないと考えられるから、一応これは除外する。ビッグバンの膨張の仕組みは、火の玉の爆発と言ったり、ハッブルの法則で空間が膨張すると言ったり、かなり曖昧である。

 ハッブルの法則ではだめだから、火の玉の爆発で宇宙は膨張したということにする。物質の速度は光速を越えないということから、その最大速度である光速で宇宙が膨張した場合を考える。もちろんこのような速度は何の根拠もないのだが、2億年以内にファーストスターを生むほど宇宙を大きくするにはこの速度しかないと思われる。

 すると、ファーストスターが生まれたときの宇宙の大きさは半径2000万光年から、2億光年の間と考えられる。

 しかし、半径2000万光年では宇宙のすべての物質がこの中に詰まっていては星ができるほどの隙間はないと思われる。現在、宇宙は数千億個の星が集まっている銀河が、2兆個はあると考えられている。そのうえ、銀河は星の見える範囲の外に数倍の距離にまで通常の物質のガスのハローが広がっているのが観測されている。そればかりでなく、その30倍ほどのダークマターもあるという。銀河系でもハローを入れれば半径五十万光年の大きさである。半径2000万光年の宇宙では銀河が1000個も入れば銀河がひしめき合うことになる。半径2000万光年では2兆個の銀河の元になる物質とダークマターが入れば引力でつぶれてしまうだろう。少なくとも膨張することはできない。おそらく2億光年でも無理だと思われるが、そのときファーストスターができたといっているのだから、普通に宇宙の全物質とダークマターが入っていたのだろう。

(疑問:ファーストスターができたころの宇宙の大きさはどれくらいだったか、とか、初期宇宙が膨張する速度はどれくらいだったとか、そのときの膨張の法則とかは非常にあいまいである。説明のしようがないのだろう)

 そこで、半径2億光年の宇宙にファーストスターが生まれたとする。このファーストスターは見えるか、を考えてみる。

 

イ ファーストスターは見えるか

ファーストスターは、水素とヘリウムからなり、やがて超新星爆発を起こし、その他の元素を造りばらまき、後の岩石惑星などの材料も作ったということである。

すると、岩石惑星である現在の地球にも、そのときファーストスターを構成していた水素やヘリウムやこのときつくられたその他の元素が含まれていると考えられる。地球を造る材料は、宇宙の進化の途中で真空から生まれたのではなく、宇宙ができたときに他の星になる材料と共に生まれたと考えられる。するとファーストスターの中に地球の原材料も含まれていることになる。これは、形は違っても地球である。そして、ファーストスターが1億個あっても10億個あってもすべてのファーストスターは半径2億光年の宇宙の中にある。したがって、地球の元になった原材料は、地球の原材料とは関係ないファーストスターがあったとしても、そこから4億光年以内にあったと考えられる。

 ファーストスターが出した光は光速で宇宙を直進する。もっとも遠いファーストスターの光も4億年で地球の原材料を通過する。それ以降地球の原材料にはファーストスターの光はやってこない。それが92億年(=138−46)後地球の形になったからといってファーストスターの光が戻ってくるわけはないから、地球からはファーストスターは見えないことになる。

もちろん地球の原材料の速度によってその通過する時間は変わるのでそれを考えてみる。

 最初、宇宙は光速で膨張している{便宜上そのように設定した。宇宙論では宇宙はハッブルの法則で膨張しているから、ビッグバン宇宙論だと直径4億光年の宇宙の膨張速度は最大で、8589km/s(=4億÷326万×70km/s)になる。光速とは程遠い}から、地球はファーストスターの光と共に進んでいく。しかし、100億年前に銀河系ができたころには、銀河系は通常の速度になっている。太陽系ができた46億年前のころには地球は宇宙空間を秒速数百キロの速度になっている。すると、ファーストスターの光は地球を置いて光速で宇宙の彼方に飛び去っていったはずだ。100億年もの間ファーストスターの光がそのあたりでもたもたしているはずがない。今、地球にはファーストスターの光は届いていないことになる。すなわちファーストスターの光は見えないということだ。これは昨日の花火を今日は見られないのと同じ原理だ。昨日の花火の光は1光日先の宇宙を光速で遠ざかっているからだ。ファーストスターの光も、100億光年ほど先の宇宙を光速で地球から遠ざかっているはずだ。

 

結論

 ジェイムス・ウエッブ宇宙望遠鏡が遠くを見ることができるといっても何もかもが見えるとは限らない。1光日先の宇宙をいくら探しても昨日の地球を見ることはできない。100光年先の宇宙をいくら探しても100年前の地球を見ることはできない。同じように46億光年先の宇宙をいくら探しても46億年前の地球を見ることはできない。136億光年先の宇宙をいくら探しても136億年前(ファーストスターがあった頃)の地球を見ることはできない。ファーストスターは形は違っても地球の一部を含んでいるからファーストスターを見るということは136億年前の地球を見るということになる。そんなことができるわけがない。

100年前の星を見るには100年前の星の光が現在ちょうど届いていることが条件である。そのためにはその星との距離がぴったり100光年であることが必要である。同じようにファーストスターを見るためには、ファーストスターと地球がぴったり136億光年離れていなければならない。膨張宇宙では136億年前には宇宙は非常に小さかったはずだから、やがて地球になる地球の前駆物質もファーストスターの中か、すぐそばにあったはずだ、そこから136億年で、ファーストスターと136億光年離れるためには地球は光速で飛んでいなければならない。しかし、地球が光速で飛んでいることは観測されていない。だからファーストスターを見ることはできない。

 

(2)定状宇宙で考える

 定状宇宙は、最初に「無」あるいは「真空」の広がりがあった。これはインフレーション宇宙が、最初からあった「無」の中に火の玉ができて膨張したという考えや、ビッグバン宇宙が最初からあった真空の広がりの中に火の玉ができて膨張したという考えと同じように、最初に「無」あるいは「真空」の広がりがあったという考えと同じである。定状宇宙はその先が異なる。その中に火の玉の宇宙が生まれるか、小さな粒子が生まれるかの違いだ。

 「真空」の無限の広がりの中に粒子がランダムに生まれていく。何10億年何100億年あるいはそれ以上の時間をかけて粒子は生まれつづけ、やがて引力で引き合い、物質が生まれていく。それがさらに集まってファーストスターが生まれる。ファーストスターは宇宙の無限の広がりの中で、ランダムに生まれることになる。その距離は最初から何十億光年、何百億光年、何千億光年と様々である。その一部には、やがて地球になる物質も含まれている。

 すると、地球になる物質からはるかに遠いところにファーストスターも存在する可能性がある。その星と最初から136億光年離れていたら、136億年かけて現在の地球に今光が届くことになる。205億光年離れていたら、205億年かけて地球に光が届くことになる。230万光年離れているアンドロメダ銀河から230万年かけて光が届いているのと同じ原理だ。これだとジェイムス・ウエッブ宇宙望遠鏡から見える可能性がある。ただファーストスターの寿命が100万年だということだから、見える期間は100万年になる。ファーストスターが無数にできていたならそのうちの何個かは今、その光が地球にぴったり届いている可能性はある。その小さな光を見る能力がジェイムズ・ウエッブ宇宙望遠鏡にあれば見えるだろう。

 定状宇宙なら、ファーストスターが136億年前にできたとは限らない。それ以前にできた可能性は十分ある。宇宙の年齢が138億年というのはビッグバン宇宙の考えだからだ。だから、138億光年先に銀河が見えたり、200億光年先に銀河が見えたりする可能性はある。ジェイムス・ウエッブ宇宙望遠鏡の能力次第である。おそらく150億光年先くらいの銀河は見えるだろう。ビッグバン宇宙が生まれる前の銀河だ。ビッグバン宇宙誕生前に銀河があったということは、インフレーション・ビッグバン宇宙を否定する事実になる。ジェイムス・ウエッブディープフィールドをやったならそれが現実になるだろう。

結論

定状宇宙では、ジェイムス・ウエッブ宇宙望遠鏡の能力の限界まで見ることができる。地球と遠くの星が最初からバラバラに生まれたからだ。138億光年離れていることも200億光年離れていることもありえる。インフレーション・ビッグバン膨張宇宙では138億年前にはやがて地球になる元素とファーストスターになる元素が同じ火の玉の中にあったということとは根本的に違う。

 ただ、ファーストスターが数百億年前に生まれていたら、ジェイムス・ウエッブ宇宙望遠鏡の観測能力より遠くにあって、見えない可能性はある。ファーストスターが500億年前に生まれていたら、ジェイムス・ウエッブ宇宙望遠鏡との距離は500億光年必要であるからだ。そこまでの解像度はあるかどうかである。

 しかし、膨張宇宙とは違って、見える可能性はあると言える。

 

結論

 このことから、もしファーストスターが見えたら、それは、宇宙はインフレーション・ビッグバン宇宙(膨張宇宙)ではなく、定状宇宙であるということであると言える。

2023年5月6日