へいこく雑記帖


ビッグバン宇宙論の4つの困難を解決する方法


著者

田 敞


「宇宙はどのようにして誕生進化したのか」(佐藤勝彦・技術評論社)によると、ビッグバン論には以下のような4つの問題があるということです。

(以下{ }内は上記本よりの引用)

@特異点の困難

 宇宙の始まりは大きさのない“点”(特異点)の状態から生まれたとされています。しかし、特異点は密度も温度も無限大なので、現在の物理学では説明することができません。

A平坦性の困難

 宇宙空間が平坦に見えるという問題。宇宙空間が平坦であるためには宇宙の物質密度が途方もない厳密さで、特定の値でなくてはなりません。しかし、そのような値が、偶然生じることは到底ありそうもないことです。

B 地平線の困難(一様性の困難)

 宇宙誕生からいままでに光が届いた距離をはるかに超えた“宇宙の地平線の向こう”でも、温度がこちら側とまったく同じという不可解な観測事実の謎のことです。

C マグネティック・モノポールが見つからない

 宇宙誕生直後の超高温の中では電磁気力、弱い力、強い力は互いに見分けがつかない対称性状態にあった。この場合、初期宇宙では巨大な質量のマグネティック・モノポール(磁気単極子)が大量に生まれ、それは今も存在するはずである。だがこれまでの観測ではまったく発見されていない。

D その他

軽い元素の存在比の問題、ダークマター、グレートウォール、ボイドなどの宇宙大規模構造の問題

 

これらを解決することができるのが「インフレーション宇宙」ということです。

 

 インフレーション宇宙は、10−35秒〜10−33秒の間に、点より小さな宇宙が爆発的に膨張したという考えです。光速より速い速度で膨張したということです。ただ、そのありようは科学者によりいろいろあるようで、統一されていません。

 上記の本では、宇宙はインフレーションで、1センチ〜10センチの大きさになったということです。10倍の開きがあります。それどころではありません。大きさについては、やはり科学者によっていろいろで、この宇宙より大きくなったという人もいます。何10倍何100倍どころではありません。だから膨張速度も大きく違います。10−35秒ほどで1センチになるのと、この宇宙の何十倍にも大きくなるのとでは、速度がまるっきり違います。光速の10倍と、光速の10兆倍の違いは、インフレーション論者には何でもないことのようですが、普通の判断では、でたらめだ、という部類です。それがインフレーション宇宙の特徴です。

 そこで、このことから上記のビッグバンの問題を考えてみます。

 

考察

@ 特異点の困難

 ビッグバンは、小さな1点から始まるので特異点ができるので困るということです。ところが、インフレーション宇宙でも、やはり小さな1点から始まっています。小さな1点ということは同じです。インフレーションの1点が特異点にならない理由がいります。

 インフレーションには物質が無かったからということかもしれません。しかし、巨大な質量のモノポールがあります。また、ビッグバンでも最初は物質はないということですので同じです。

偽の真空が相転移して、真の真空になったという考えもあります。その考えだと、偽の真空が持っていたエネルギーが真の真空に相転移したときエネルギーだけが現れて特異点にならないということです。なるほど。問題は偽の真空というのが存在するかどうかです。どこにそんなものがあったのでしょう。どのような性質のものなのでしょう。存在の証明はできているのでしょうか。考えた人の頭の中だけに存在するものなのではないでしょうか。

解決困難な問題が起こったとき、それを解決するために、よそから偽のなにかを持ち出し、それが困った問題を帳消しにする性質を持っているとするなら、何でも成立してしまいます。この場合はエネルギー問題です。偽の真空は都合よく問題解決の特効薬のエネルギーを持っています。

もし偽の真空に問題ができたら、偽の偽の真空を持ち出せばいいのです。ビッグバンに問題があったら、インフレーションを持ち出し、インフレーションに問題があったら、偽の真空を持ち出す。それでもだめなら今度はデフレーションでも持ちだしますか。

インフレーションなどという、光速の1024倍もの速度で宇宙を膨張させる、現在ではありえない現象を平気で持ちだしているのですから、何だって持ちだせます。魔法だって神様だって詐欺師だってインフレーションよりは出現可能です。

A 平坦性の困難

 {誕生直後の宇宙がインフレーションでとてつもない速さで膨張したとすると、一気に引き延ばされた時空はほとんど曲がっていない平坦な世界になります。}ということです。

ア 伸ばす速度は、影響するのでしょうか。

 インフレーションで光速で引き伸ばしてもビッグバンでゆっくり引き延ばしても、曲がりが引き伸ばされるのには変わりがないと思われるのですが。

 インフレーションで引き伸ばした宇宙の極一部分からビッグバンで新たな宇宙ができたということにして、平坦になるということなのでしょうが、なんで2回も宇宙を造らなければならないのでしょう。それは神様のなされたことだから人間の知るところではない、とでもいうのでしょうか。もちろん2回起こったってかまいはしないのでしょうが、不都合を解消するために、より荒唐無稽な現象を持ちだすのは、どうなんでしょう。@と同じやり方です。

イ 時空は何からできているのでしょう。直接観測できたのでしょうか。

 アインシュタインは空間が曲がると言っています。空間が曲がるならそれが直接観測できるはずです。曲がるならなにかがあるはずですから。ところが何一つ直接には観測されていません。これは時空がなにも無いことの証明になります。

エディントンの観測や、アインシュタインクロスや、重力レンズが観測されています。この現象が、空間が曲がることの証拠だといっています。これらは間接証明です。時空の曲がりが直接観測されたわけではありません。

また、それらの現象が重力によるということは相対論者の手前味噌の解釈です。これらの現象は、太陽の大気、銀河のガス、銀河団のガスによる屈折現象でも十分説明できます。エディントンの観測した星は、太陽コロナの中に写っています。銀河も銀河団もすっぽりとガスに包まれ、ガスにうずもれているのが観測されています。宇宙に浮かんだ気体のレンズです。観測された光はすべてこれらの気体の中を通っています。気体による屈折は、理論も実証もあります。日常的にどこでも見られる現象です。重力による屈折は他では観測されていません。証明はされていない現象です。

証明された理論で説明できる現象は、その他の理論の証拠に使えないという科学の方法論があります。それに従えば、これらの現象は重力による屈折現象の証明には使えません。

ウ 時空は引き伸ばせるか

 時空は実質がなにも無いものです。なにも無いものが引き伸ばされるとはどのようなことでしょう。曲がった時空とはどのようなものでしょう。曲がっていない時空とはどのようなものでしょう。なにも無いものが曲がったり引き伸ばされたり平坦になったりできるものでしょうか。

アインシュタインは、時空は曲がると言っていますが、上に書いたようにその証拠はありません。本では、時空の曲がりを絵に描いて説明していますが、絵は物質です。物質の曲がりであって時空の曲がりではありません。時間が細長く引き伸ばされたり、くねくね曲がったりするわけがありません。空間は実質なにもありません。なにもないものが伸びたり縮んだり、曲がったりするわけがありません。なにもないものはなにもないのですから。曲がっても縮んでもなにもないに変わりはありません。

エ 宇宙は平坦になったのに、真空の揺らぎは残ったのか

 インフレーション論では、インフレーションのときの宇宙にはモノポール以外に物質はありません。真空と真空のエネルギーとモノポールだけです。

真空は量子揺らぎがあって、それがインフレーションで引き伸ばされて、後に、星や銀河や銀河団などに成長したと言っています。

 宇宙の曲がりは引き伸ばされて平坦になるけれど、揺らぎは引き伸ばされても必要以上にはなくならなくて、銀河などの種になったということです。科学者が必要なもの{量子揺らぎ}は残し、不必要なものは消すというご都合主義です。

オ インフレーションでできた時空の平坦は、ビッグバンにどのように関与したのか

 インフレーションで宇宙が急激に膨張したから、今の宇宙が平坦になったということです。この本では、インフレーションで宇宙は1センチから10センチの大きさになったということです。最大10センチです。たったの10センチの真空が、数百億光年の宇宙を平坦にすることができるのでしょうか。地球に比べても点にもならない小ささです。それがどのようにしてこの巨大な宇宙を平坦にすることができるのでしょう。まあ、10センチのものをビッグバンで数百億光年に引き伸ばしたら、中身はほとんどなくなるでしょうが。地球くらい大きくたって、たった1光年の直径に引き伸ばしただけでも、すかすかの、ほとんどなんにもないものになってしまうでしょう。平にするのに、なにもわざわざインフレーションを起こすほどのことでもないと思いますが。

 

B 地平線の困難(一様性の困難)

 何百億光年離れたところが同じ温度になるのはおかしいということです。

 インフレーションなら、交流があったから大丈夫だということです。上記の本ではインフレーション宇宙はさしわたしがたったの10センチです。光は一瞬で何億回と往復できるでしょう。しかし、それは膨張していないときの話です。インフレーションは、光速の何百倍もの速度で膨張しているということです。端と端は光より速く遠ざかっています。片方の端の光は光速以上の速度で遠ざかっている反対側に到達できません。互いに反対側の情報は伝えられないということです。インフレーションが終わった直後、宇宙の膨張が止まったときにということもできます。一瞬で光は何万回も往復できます。しかしそれではインフレーション後なのだからインフレーションとは関係ありません。インフレーションが起こる瞬間という手もあります。しかし、10−35秒で、宇宙は光速より速い速度になって、膨張しているということですから、ここでも光が現れたときには膨張が始まっているでしょう。やはり光は追いつけません。

それなら、ビッグバンの方がまだましです。ビッグバン初期の、まだ宇宙が小さなときに端から端に光は到達できます。少し大きくなってからでも大丈夫です。宇宙の晴れ上がりの前には光は宇宙全体に飛び回っていたということですから、十分情報の交換はできたはずです。

ハッブル定数では、326万光年で、膨張速度は秒速60キロから80キロほどということです。宇宙が1光年の大きさのときなら、光はほぼ1年で端から端まで到達できます。ハッブル定数を80としても、1年間で宇宙が膨張するのは、774km(≒60×60×24×365×80km÷326万)です。光が100年間で端から端まで50往復する間に、77400kmしか大きくなっていません。その距離は光では1秒もかからない距離です。ビッグバンでもいくらでも情報は交換できるはずです。直径100光年の宇宙になったときでも、光は200年で1往復できます。インフレーションよりよっぽどましです。ここでもインフレーションは必要ないようです。

 

C マグネティック・モノポールが見つからない

 インフレーションで膨張した宇宙の大きさは最大10センチです。これではモノポールはぎゅう詰めでしょう。

この後、ビッグバンで膨張しても、宇宙の彼方には追いやれません。ビッグバンでできた物質は今宇宙にほぼ均等に散らばっています。モノポールも均等に宇宙に散らばるはずです。また、インフレーションで広がって密度が稀薄になったともいっていますが、たった10センチの球で稀薄にできる量なら、インフレーションが無くても直径数100億光年に広がったビッグバンでも十分希薄になるでしょう。

 また、インフレーションで宇宙は10−35秒でこの宇宙よりはるかに大きくなったという説を唱えている人もいます。そのためにモノポールは宇宙の彼方にすべて吹き飛ばされてこのあたりの宇宙には存在しないという考えです。これならこのあたりをいくら探してもモノポールは存在しません。でもそうでしょうか。「巨大な質量のマグネティック・モノポール(磁気単極子)が大量に生まれ」ということです。巨大な質量をもった大量のモノポールを、10−35秒で光速の1050倍(この短時間で宇宙を何百億光年先まで飛ばすのですから)にも加速し、直後に通常の速度まで減速することは可能でしょうか。現在の宇宙では不可能です。現在分かっている物理理論では不可能です。インフレーションは、現在の宇宙の力学とはまるで異なる原理でできている、ということなのでしょうか。そうなのでしょうね。インフレーションは、荒唐無稽としか言いようがない現象ですから。

ということで、どのようなインフレーションでもモノポールを宇宙から消すことはできないということです。

 

D ダークマター

 観測された銀河の回転や、銀河団の動きから考えると、見える物質の5倍から6倍の重力源があると考えられた。

 ビッグバンから考えると、通常の物質の5,6倍の重力源が無ければ今の銀河や銀河団や、大規模構造ができない。

 この二つが結びついてダークマターが存在するということになったようです。

 このダークマターは、重力はあるが、一切見えないなにかであるということです。

 マッチョや、ブラックホールなどを観測したがそれでは足りないということで、未知の物質であるということになっています。

 銀河や銀河団の回転では、それ以外にも、それらを埋め尽くしているガスが観測されだしています。これらは、銀河や銀河団の回転異常が見つかったころには見えなかったものです。これに観測が難しい中性水素を入れると、重力源は足りるのではないでしょうか。

銀河や銀河団の回転から考えた謎の物質は、言いだした当時では観測されなかった、銀河を包む中性水素を中心としたガスや、銀河団を包むガスである可能性があります。ガスは稀薄でも体積は巨大です。かなりの中性水素があると考えられます。でもビッグバン論者はそれは無視しています。ビッグバン論のためには、通常の物質がダークマターでは困るのです。

 

それ以外の問題

1 真空のエネルギーの大きさ

 インフレーションは、巨大なエネルギーを生み出しています。そのエネルギー源は、真空のエネルギーだということです。ところが、真空の持っているエネルギーは最低のエネルギーだということです。それなのに、インフレーションを起こすと、それが巨大なエネルギーに変化するというのです。それも並大抵のエネルギーではありません。宇宙全体の物質やエネルギーを造り出すエネルギーです。宇宙最大のエネルギーです。宇宙最低のエネルギーが宇宙最大のエネルギーを10−35秒で生んでいます。宇宙最大のギャップです。どんな手品師にも無理でしょう。神様にだって無理ではないでしょうか。神様が宇宙を造るのに、まず「光あれ」と言ったといいます。言い終わるまでに0,5秒はかかるでしょう。10−35秒ではこれは言えません。だから神様でも無理でしょう。

 {わずか1gの質量が1000億キロジュールのエネルギーになります。これは火薬にして、2万トン分あり}とあります。このことから、反対に、1gの物質を造るのには、1000億キロジュールのエネルギーがいることが分かります。火薬2万トン分のエネルギーです。65キロの人を1人造るのに、65000兆キロジュールのエネルギーがいります。火薬845億トン分です。宇宙全体の物質を造るのには、どれくらいのエネルギーがいることでしょう。これがインフレーションでつくられたということです。

真空のエネルギーは最低のエネルギーレベルということですから、インフレーション直後の直径10センチの真空が持つエネルギーだけで全宇宙の物質を造ることができるエネルギーを生み出せるのでしょうか。不可能です。

しかもこれだけではありません。ビッグバン論では、通常の物質は宇宙の4〜5%しか占めていないということです。インフレーションの10センチの真空は、あとの、宇宙の96%もの、謎のダークな物質やダークなエネルギーもつくらなければなりません。今観測できている物質だけでも大変なのに、そのエネルギーの24倍ものエネルギーです。たった10センチほどの真空のどこにそんなエネルギーがあるのでしょう。

ダークエネルギーは宇宙空間が膨張すると勝手に湧いてくるというとても便利なものです。空間が膨張すると真空が増える、真空が増えると、真空のエネルギーが増えるという説明です。ビッグバン論者の打ち出の小づちです。いいものを手に入れましたね。真空は真の空だから、本当の空っぽという名前です。その空っぽがエネルギーを持っているというのです。銀河団を軽々と押すエネルギーです。どのような形で、どこに蓄えているのでしょう。

ビッグバン論では、今は、再度のインフレーションだということです。宇宙は加速膨張しているということです。今宇宙で増え続けている真空は、直径たった10センチどころの体積ではありません。10センチの真空がこの宇宙を造るエネルギーを持つなら、今のインフレーション宇宙は、膨大な真空をつくりだしているので、毎秒毎秒何百兆もの新たな宇宙をあっちこっちに造り出すことができます。

え、最初の真空と今の真空は違う。そうでしょう。宇宙が次々にできたら困りますからね。今の真空からは宇宙ができているのは観測されていませんからね。今の真空は昔の真空とは違うと言うしかないですから。真空にも色んな種類がないと使い勝手が悪くなりますから。まあ、偽の真空よりはましかもしれませんね。大差はないけど。

ダークマターはどうなのでしょう。ダークマターを造るのにどれくらいのエネルギーがいるのでしょう。ダークマターはE=mcではないかもしれませんが、重力を持っているというのだからそれなりのエネルギーを持っているということなのでしょう。それを造るにはそれなりのエネルギーがいるはずです。通常の物質の5,6倍はあるといっているのですから、やはりかなりのエネルギーがいることは確かです。

そのエネルギーを造るための真空の相転移なのでしょう。相転移で新たなエネルギーが湧いてくると言っています。水の相転移がよく引き合いに出されますが、そのときの潜熱は、水がもともと持っていたエネルギーです。勝手に湧いてきたのではありません。変化しただけです。エネルギー不変則です。

真空のエネルギーは最低のエネルギーですから、水の持っていたエネルギーよりはるかに小さなエネルギーのはずです。それがいくら相転移したからといっても、宇宙の全物質やダークマターを造るエネルギーにはなりようがありません。

 水の相転移は、エネルギー不変則を満たしているから、真空の相転移もエネルギー不変則を満たしているといっていますが、そんなことはありません。真空の相転移では、エネルギーがインフレーション論者の必要なだけ「無」から無尽蔵に湧いています。

 また、次のような疑問も生じます。

{インフレーションが終わるころ真空のエネルギーは消滅し、熱エネルギーに変わりました。これによって宇宙はいっきに過熱され、超高温・高圧の火の玉になりました。このとき、現在の宇宙を満たしている物質(正確にはその質量分のエネルギー)が生まれたのです。}とあります。

ア 熱は何が担っているのか

超高温ということです。その温度は1032Kだということです。真空は熱を持つのでしょうか。現在の宇宙では、熱は、物質や電磁波が持つものです。現在の真空は熱を持っていません。真空はなにもないから熱を持てないのです。宇宙全体が火の玉というのは何がどのような形で熱を持っているのでしょう。何が火の玉になっているのでしょうか。今の宇宙では火の玉になるのは物質です。物質が出す光です。光だけがあったのでしょうか。すると、電磁波はすでにできていたということになります。その電磁波は何が生んだのでしょう。すべて不明です。

イ 圧力は何が担っているのか

 「高圧」ということです。どこから圧力が生まれたのでしょう。圧力は物質が持つ万有引力(相対論では重力と名を変えた)が生みます。また、物質が物質に衝突したときにも生まれます。光も圧力を生むようです。インフレーションの終わり、まだ物質が無い時の圧力は何が担っていたのでしょう。それとも、アインシュタインの「重力」は物質が無くても存在できたのでしょうか。「重力」は空間が物質で曲がることで生まれるということです。「万有引力」は物質が持つ物質どうしが引き合う力です。どちらも物質に依存した力です。物質が無いインフレーションの終わりには高圧はまだないはずです。

 現在の宇宙では、温度も圧力も電磁波も物質が担っています。物質が無いインフレーション直後の宇宙では何が熱や圧力を担っていたのかという疑問が生じます。その説明がありません。これも不明です。

ウ 熱は空間を膨張させるか

 超新星爆発は大きな熱も生みます。しかし、その熱は物質を膨張させても空間は膨張させていません。また、ブラックホールの周りでは超高温の降着円盤があるということです。その熱でも、空間は膨張していません。銀河中心の巨大なブラックホールから光速に近い速度で飛びだすジェットも空間を膨張させていません。熱は現在の宇宙では空間に作用していないと言えます。熱が、ビッグバンを引き起こしたとしたら、熱がどのようにして空間を膨張させるのかの理論が必要です(ビッグバンは、超新星のような物質の爆発ではなく、空間が膨張することによって、現在のような大きな宇宙になったということです)。熱が空気を膨張させることから類推したとしたら、空気について教わらない、空気も空間も同じと考えている小学生低学年の子供のレベルです。現在宇宙にある熱は空間を膨張させません。空間を膨張させるビッグバンの熱は今の熱とどのように違うのでしょう。真空のエネルギーが空間を膨張させるということでしょう。しかし、{インフレーションが終わるころ真空のエネルギーは消滅し、熱エネルギーに変わりました。}とあります。真空のエネルギーは消滅しています。あるのは熱エネルギーだけです。もちろん真空のエネルギーにしろ、それが空間に作用して膨張させる仕組みの理論はありません。もちろん証拠もありません。

ところが、現在でも空間が膨張しているということです。現在の地球の周りや太陽系の空間も膨張しているはずです。その空間を膨張させているのは何なのでしょう。熱でないことは確かです。真空のエネルギーが地球や太陽系の空間に働いて、空間を膨張させているということなのでしょうか。もしそうならその仕組みはどうなっているのでしょう。説明できないでしょうね。

真空が今もエネルギーを持つとしたらどうなるでしょう。太陽系の真空は巨大です。インフレーション終了時の直径10センチの真空よりははるかに体積があります。太陽系の真空のエネルギーは巨大な宇宙を何兆個も出現させる体積があることになります。でも、太陽系から新たな宇宙ができたということはありません。最初のインフレーションの真空と、50億年ほど前にまた始まったインフレーションを起こす真空と太陽系の真空は違うのでしょう。太陽系の真空は相転移を起こさないし、エネルギーも、太陽と地球を引き離す力はないけれど、遠いところの銀河団と銀河団を再度のインフレーションで引き離すことにかすかに寄与している微々たる(?)エネルギーはあるようです。観測が正確にできるところには真空のエネルギーが起こすだろう現象は皆無です。遠い宇宙や、観測できない昔には、無尽蔵に近い真空のエネルギーがあるようです。不思議な現象です。

真空のエネルギーという、魔法の杖みたいなとても使い勝手のいい便利なものを持ちだしていますが、その仕組みを述べるべきです。できないでしょう。なぜなら、真空は何もないものです。空間もなにも無いものです。なにも無いものがなにも無いものを膨張させているのです。空想以外に理論も実証もないのは当然です。ない袖は振れぬです。

 

2 現在の宇宙を満たしている物質(正確にはその質量分のエネルギー)が生まれた

 上に書いたように、巨大なエネルギーです。どこからどのようにして生まれたのでしょう。たった10センチほどの真空が生むことができるエネルギー量でしょうか。

 佐藤氏は、「宇宙論入門・岩波新書」の中で、ビッグバンを起こすエネルギーはエネルギー保存則を破っているのではないかという疑問に以下のように答えています。

「重力ポテンシャルの中で物体が落下するときその運動エネルギーが増大する現象とアナロジーが成り立つ。この場合、運動エネルギーが増大するのは、ポテンシャルエネルギーが減少するからである。両者を合計した全エネルギーは一定であり、エネルギー保存則が成り立っている。宇宙が急膨張するときには、宇宙膨張を記述する方程式の中で重力ポテンシャルに対応する項が急減少し、エネルギー保存則が成り立っている」

と述べています。確かに、落下運動は、エネルギー保存則が成り立っています。重力ポテンシャルが、運動エネルギーに変化するからです。では、これが、真空の膨張とアナロジーでしょうか。考えてみます。

ア アナロジーは本当か

落下運動は物質の運動です。物質が持つ引力によって起こる運動です。しかし、空間は引力を持っていません。したがって、落下の法則は適用できません。だから、「同じ」、ではなく、「アナロジー」と言っているのでしょうが、アナロジーというには、その根拠が必要です。似ていても、引力が無いのだからまるで異なる原理の現象のはずです。その原理を述べなくてはなりません。原理を述べずに、アナロジーで済ませているのはごまかしです。

イ 落下と収縮

膨張は、落下とはエネルギーの移動が反対です。落下と同じなのは収縮です。膨張と同じエネルギーの移動が行われるのは、物質が上昇するときです。

落下の時は、ポテンシャルエネルギーが運動エネルギーに変化します。上昇の時は、運動エネルギーがポテンシャルエネルギーに変化します。膨張収縮も同じです。膨張するときは熱エネルギーが、ポテンシャルエネルギーに変化し、収縮するときは、ポテンシャルエネルギーが熱エネルギーに変化します。

地面にある物体が飛びあがる場合は、物体に他からエネルギーを与えなければなりません。ボールを投げ上げるときの腕の力、ロケットを打ち上げるときの推進剤の力、等です。また、空気や水が膨張するときも、他から熱エネルギーを与えなければなりません。この、他からのエネルギーが運動エネルギーに変化し、上昇、あるいは膨張によってそれがポテンシャルエネルギーに変化します。

 インフレーションやビッグバンで空間が膨張する前は、一点に宇宙はあったのだから、ポテンシャルエネルギーは0のはずです。ボールが地面にあるときには、ボールのポテンシャルエネルギーが0なのと同じです。ポテンシャルエネルギーは、引力のある物質が、離れて存在しているときにその引力の強さと距離に応じて生まれるものです。距離が0の時にはポテンシャルエネルギーはありません。

「宇宙が急膨張するときには、宇宙膨張を記述する方程式の中で重力ポテンシャルに対応する項が急減少し」と言っているけれど、ポテンシャルエネルギーは0なのですから、「それに対応する項が急減少し」ということはあり得ません。空気や水が膨張するときには、他から熱エネルギーを与えなければなりません。その熱が運動エネルギーになって、膨張し、その運動エネルギーがポテンシャルエネルギーに変わるのです。宇宙が急膨張するときも、他からエネルギーを与えなければならないはずです。インフレーションのエネルギーが熱に変わってそれがビッグバンを起こし宇宙を膨張させたというのがその表れでしょう。「重力ポテンシャルの中で物体が落下するときその運動エネルギーが増大する現象とアナロジーが成り立つ。」という落下の法則と同じだからエネルギー保存則は成り立っているというのは間違いです。インフレーションの熱が、ビッグバンを起こし、1点から始まった空間膨張にともなって、物質が離れて行ったというのがビッグバンです。そのインフレーションの熱エネルギーは真空の相転移が作ったということです。ではその真空の相転移のエネルギーはどこから来たかというと、どこからでもありません、無から湧いてきたのです。エネルギー保存則は成り立っていません。

宇宙論者の多くは、そのエネルギーを真空のエネルギーとか、真空の相転移によるエネルギーと言っています。しかし、たった1点の真空がインフレーションを起こしたからといって、この宇宙を生むエネルギーをもともと持っていたというのはあり得ないことだと私は考えます。たった1点の真空のエネルギーが、宇宙を光速の何億倍もの速度で膨張させるのです。今、知られている物理学では不可能です。

インフレーションで宇宙が膨張するときは、物質が無いので、ポテンシャルエネルギーは存在しませんが。ビッグバンでは物質があるので膨張に伴ってポテンシャルエネルギーは増加します。実際、太陽系は巨大なポテンシャルエネルギーを持っています。月が地球に落下したら、地球は火の玉になるでしょう。月と地球が持っているポテンシャルエネルギーが落下によって、運動エネルギーになって、それが衝突で、熱エネルギーに変化するからです。地球と月は137億年前ビッグバンが始まったときには、1点にあったはずです。(46億年前突然この場所に地球と太陽が現れたかのように考えている人がいますが、ビッグバン論では、ビッグバン直後に、この宇宙の物質のすべてが生まれているはずですから、地球も月もその前駆物質がそのときに生まれていたはずです)ポテンシャルエネルギーは0です。それが、宇宙膨張によって離れてしまったのです。そのためにポテンシャルエネルギーが生まれたのです。月と地球を離すためには巨大な運動エネルギーがいったはずです。

もし、ビッグバンが本当なら、最初は0であったポテンシャルエネルギーが、宇宙の膨張によって星や銀河が離れたために、膨張の運動エネルギーが、星や銀河のポテンシャルエネルギーに変化したためです。これは巨大なポテンシャルエネルギーです。書いたように月が地球に衝突したら、地球は火の玉になるでしょう。月はくだけドロドロになるでしょう。月と地球が持っていたポテンシャルエネルギーが運動エネルギーになり、衝突で熱になるからです。このポテンシャルエネルギーはビッグバンとその後の宇宙膨張から得たエネルギーです。地球が太陽に落ちたらもっとすさまじいことになるでしょう。地球は解け砕け散るでしょう。これも地球が持っているポテンシャルエネルギーのためです。では、恒星同士はどうでしょう。はるかにすさまじいことになるでしょう。その恒星が何千億と集まっている銀河の持っているポテンシャルエネルギーは計りしれないでしょう。銀河どうしはどうでしょう、銀河団はどうでしょう。

宇宙全体で物質が持っているポテンシャルエネルギーは計算できないくらい膨大なものです。そのポテンシャルエネルギーは、宇宙ができたときは1点にあったのですから0です。それをビッグバンで膨張させたことで、今の宇宙のポテンシャルエネルギーができたということです。そのためには巨大な運動エネルギーが必要です。1トンの人工衛星を打ち上げるのでさえ、巨大なロケットが必要です。全宇宙の物質を1点から全宇宙に打ち上げるのですから、とてつもないエネルギーが必要です。これがインフレーションでつくられたというのです。どこからそのエネルギーが出たのでしょう。仕組みはどうなっているのでしょう。宇宙の今あるポテンシャルエネルギーをビッグバンとその後の宇宙膨張が生んだのです。真空の相転移がそのエルギーを生んだということのようですが、それはあり得ないことです。

エ 空間はポテンシャルエネルギーを持っているか?

また、こんな疑問も生じます。「宇宙膨張を記述する方程式の中で重力ポテンシャルに対応する項が急減少し」、ということです。このとき、重力ポテンシャルはどこから生まれているのだろうという疑問です。重力は物質が持っている力です。物質が生まれていないインフレーショでは、重力ポテンシャルは存在しないはずです。物質が引き合う力(ニュートンでは万有引力。相対論では重い力、重力と言う)から生まれるのがポテンシャルエネルギーなのだから、引力が無い(物質が無いから引力も無い)ならポテンシャルエネルギーは存在しないことになります。空間膨張は物体落下の現象とは仕組みがまるで違うのですからアナロジーとはいえません。似て非なるもの、です。似てもいませんが。

この本では、インフレーションによる宇宙膨張の力は、真空のエネルギーであり、相転移の潜熱であると述べています。ポテンシャルエネルギーとは言っていません。

しかし、先に書いたように、水の相転移の潜熱はもともと水が持っていたエネルギーです。水が相転移することで勝手に無から湧いたエネルギーではありません。真空が相転移するときに、勝手に無から潜熱が湧くのなら、それはエネルギー不変則に反しているということになります。それは真空が持っているエネルギーだといえるかもしれません。しかし、真空は最低のエネルギー状態であるということだから、1リットルの水が持っているエネルギーより1リットルの真空のエネルギーの方が比べ物にならないくらい小さいはずです。直径10センチの真空から全宇宙の温度を1032Kの火の玉にできるエネルギーを生むとは考えられません。また、10センチの真空が1032kになったぐらいで、全宇宙の物質と、熱と、ポテンシャルエネルギーを生むことができるのでしょうか。せめて、1038kくらいにしたらどうでしょう。え、それじゃ、嘘の38になってしまうからだめだって。そうですね。じゃ反対にして、1083kくらいにしたらどうでしょう。もちろんそんなのになんの根拠もないということでしょう。では宇宙論者の云う1032kにはどのような根拠があるというのでしょう。宇宙の物質の量がまるでわかっていないし、宇宙の銀河の距離がかなり適当であるのが現在の観測です。ほとんどの銀河の距離は観測されていません。どうやって、宇宙全体のポテンシャルエネルギーを計算したのでしょう。そのうえ、ダークマターは謎です。ダークエネルギーも謎です。それらが、宇宙の95%も占めているというのです。分かっていることが0,1%もないのですから、それらを造るためのインフレーションの温度が1032kというのは何から計算したのでしょう。あてずっぽうという点では嘘の38とまるで変わりありません。

 

3 膨張速度

 インフレーションは、10−35秒ほどで、宇宙は光速をはるかに超える速度に加速し、減速しています。これほどの短い時間で、このような加速と減速が可能でしょうか。時速100kmで壁に衝突したら、自動車はぐしゃぐしゃになります。それだって、時間は0、1秒はかかります。100キロに加速するのは100秒はかかるでしょう。インフレーション論では、光速の何万倍もの速度に10−35秒より短い時間で加速し、停止させるのです。宇宙はただでは済まないでしょう。光速の何万倍もの速度の運動エネルギー(何の運動エネルギーだか不明だが)を一瞬より短い時間で熱エネルギーに変えてしまう仕組みはどのようになっているのでしょう。説明がいります。説明できないでしょう。現在分かっている物理学では説明できない現象だからです。もちろん今の宇宙では起こり得ない現象です。理論も実証もない現象です。科学ではありません。思いつき以上には出ません。

結論

 ビッグバンの難問を解決するためのインフレーションですが、解決とは程遠いと言えます。そのうえ、インフレーションにも難問が山積しています。今の宇宙では起こっていない現象だし、絶対不可能な現象だからです。

また、インフレーションにも科学者によってさまざまなインフレーションがあります。インフレーション論者の数と同じくらいあるということのようです。インフレーションの大きさだけでさえ、1センチから、この宇宙の何十倍も大きくなったのまであります。誤差なんてもんじゃないです。まるっきり適当です。いえ、でたらめといえるでしょう。

 なぜこんなことになるかというと、インフレーションが、現在のこのあたりの宇宙では起こっていない現象だけでできているからです。また、今までに証明されている物理理論とは相いれない現象でできているからです。インフレーションや、ビッグバンの基本である、熱による空間膨張は、現在の最大の爆発である、クエーサーの熱や超新星の熱でも起こっていません。もちろん熱が空間を膨張させる理論もありません。それがインフレーションビッグバンの基本なのですから、問題が起こるのは当然です。最近の観測では、地球から2億光年以内の宇宙では空間膨張は観測されてもいません。そういう根本的な問題を無視して、ビッグバンよりはるかに不可思議な現象のインフレーションを持ちだして問題を解決しようというのですから、問題が解決するわけはありません。

 

ビッグバンの問題を解決する方法は他にあります。それも簡単です。今この宇宙で起こっている現象で解決すればいいのです。

 

 

問題

 ビッグバンの問題を解決する方法

考察

 ではビッグバンを解決する方法はあるのでしょうか。この宇宙が今あるということは、矛盾のない現象で宇宙ができたはずですから、解決はあるはずです。そこで考えてみます。

 インフレーション宇宙は、無の1点から10−35秒で、宇宙が光速の何万倍とか何億倍とかの猛スピードで膨張して、急膨張したとたんに急停止したというのですから、その他のどんなことだってそれよりはよっぽどありえる現象ですから、何だってインフレーションよりは起こりうる可能性が高いということになります。

考え1

まずビッグバンが無かったと考えたらどうでしょう。これなら、ビッグバンの問題もあっさりなくなります。ビッグバンの問題がなくなったのだからインフレーションも必要ありません。簡単です。

これに対する反論がひとつあります。ビッグバンが無かったら、今あるこの宇宙がなくなってしまうだろう、という反論です。今ある宇宙がなくなるような考えは、事実に合わないから間違いだ、です。そのとおりです。とてももっともらしいです。しかしそうでしょうか。ビッグバンでこの宇宙ができたのなら、この宇宙に問題が無いのだからビッグバンにも問題が出ることはないはずです。それなのに問題だらけなのは、ビッグバンそのものが間違っているからということも考えなければならないはずです。事実に合わなければ理論を見直せということです。

宇宙のでき方についてはビッグバン論以外にもあります。定状宇宙論です。定状宇宙だって今の宇宙ができるということです。ビッグバンが無かったら、今あるこの宇宙がなくなってしまうだろう、という反論への反論が成り立ちます。

定状宇宙論なんて、今は完全に否定されているということでしょう。そのとおりです。しかし、今の宇宙では絶対にあり得ない現象だけでできているインフレーション宇宙論がほとんどの科学者に肯定されているのだから、定状宇宙論だって、考えてみてもいいのではないでしょうか。定状宇宙論は、今証明されている物理理論では説明不可能な現象ばかりでできているインフレーションや、ビッグバンと違い、今分かっている物理学で説明できる普通に起こりうる現象でできているのですから。それに考えるのは勝手ですから。特に、科学では、あらゆる可能性を考える、ということはやらなければならないことなのですから。それが古い考えであっても。東日本大震災以降誰もが知っているプレートテクニクス理論だって、ほとんどすべての地理学者に否定されていたのが、数十年後見直されて今主流の考えになったのですから、一度否定されたからといって捨ててしまうのには惜しいものもあるのです。そもそもガリレオだって否定されたし、ダーウィンだってぼろくそに言われていたのですから。それが今は主流です。見直すのもあながち捨てたものではないのではないでしょうか。

 

高田式定状宇宙論

 現在の定常宇宙論は、膨張している宇宙です。高田式は、膨張していない宇宙です。ビッグバン論が出る以前の昔の定状宇宙論です。

まず、なにもない空間が広がっています。果てはあるのかないのか不明です。これはインフレーションを生んだ空間、あるいは以前のビッグバン論のビッグバンを生んだ空間と同じものです。最初からある空間です。もちろん偽の真空ではありません。ただの真空、ただの空間です。

 その真空の空間に、ランダムに、対の量子が生まれては消えます。全空間にランダムにです。量子論では真空の揺らぎから、量子が生まれるということです。

インフレーション宇宙論では、後にこの宇宙を生む巨大なエネルギーの宇宙がミクロな1点から生まれます。定状宇宙では、ミクロな1点からミクロな対の粒子が生まれるだけです。もちろんエネルギーもミクロです。それに対して、インフレーション論では、この宇宙を造ることができる巨大なエネルギーが一瞬より短い時間で生まれます。インフレーションが生むエネルギーは宇宙最大のエネルギーです。宇宙最大のマクロだから量子とはいえません。小さいから量子だといっていますが、そうでしょうか。体積だけで決められることでしょうか。

 このことから、高田式定状宇宙の方が、インフレーション宇宙より、格段に理論にマッチしています。真空が対の粒子を生むということは、この辺りに真空では観測されていないというのが難点ですが。

 

何千億年、何兆年、何京年と時間が経つうちに、宇宙には、対消滅しなかった量子が残って増えていきます。

 この量子は4つの力を持っています。

 量子は質量と引力を持っているうえに、離れて生まれたので、生まれたときから、引力によって生じるポテンシャルエネルギーを持っています。また、万有引力で量子は引き合って、くっつきます。

 例えば、離れた二つの原子が引力で引き合い、加速しながら接近し衝突します。ポテンシャルエネルギーが引力によって運動エネルギーに変化します。すると、跳ね返ります。このとき、その運動エネルギーが失われなければ、原子は減速しながら元の距離まで離れます。運動エネルギーが引力によってポテンシャルエネルギーに変化する現象です。元の距離に離れたとき、運動エネルギーが0になり、元の大きさのポテンシャルエネルギーを持つことになります。そして、また引き合って、接近して衝突して跳ね返り、元の距離まで離れます。エネルギー不変則です。これでは、量子は量子のままで、大きくなりません。もちろん星も銀河もできません。ガス雲さえできません。

 このとき、量子は、その運動エネルギーの一部を衝突の時に熱に変えて、量子の温度を上げます。熱はそれに応じた電磁波を出します。運動エネルギーの一部が電磁波として宇宙空間に飛び去ったので、量子は元の距離まで戻れません。ポテンシャルエネルギーが減ります。これを繰り返すと、やがて量子はくっつきます。その繰り返しで、原子になり、原子は分子になり、やがて恒星や銀河ができて行き、今の宇宙になります。

これだと、@の特異点はできませんから、特異点問題は解消されます。Aの平坦性は、まず空間は定状で動かないから平坦です。粒子は、ランダムに生まれます。粒子同士は、引力と、引力から生まれたポテンシャルエネルギーを持ちます。ポテンシャルエネルギーは引力によって生じているので、同じ力の反対向きの斥力になります。引力と斥力は反対向きの同じ大きさの力なので、物質は平衡状態になります。Aの問題はこれで解決します。

Bの地平線の困難は宇宙の年齢が解決します。定状宇宙では宇宙の誕生からの時間は果てしなくあります。粒子の誕生に何兆年もかかれば今見える百数十億光年の宇宙には光で情報は共有できます。宇宙のどの方向も温度が同じになります。実際120億光年先の銀河の光が地球に届いています。もっと遠くの光も届いているけれど観測技術の限界を超えているので、見えないだけではないでしょうか。ハッブルディープフィールドの銀河も、ハッブル望遠鏡が無い時代はそこは闇しか見えなかったのですから。

Cのマグネティック・モノポールが見つからない問題も、簡単です。宇宙の始まりは、高温高圧ではないので、モノポールはできません。

 このように、ビッグバンの4つの問題は定状宇宙では生じない現象だと言えます。問題は簡単に解決します。

Dのその他の、軽い元素の存在比の問題、ダークマター、ダークエネルギー、グレートウォール、ボイドなどの宇宙大規模構造の問題は、ランダムに粒子が生まれるのと、時間は、果てしなくあるので、グレートウォールやボイドはできます。軽い元素も、時間が解決します。ダークマターは、宇宙空間に浮かんでいる中性水素を中心とした分子です。銀河を大きく取り巻き埋め尽くしているガスや銀河団を大きく取り巻き埋め尽くしているガスや、宇宙全体に漂うガスです。非常に希薄ですが、宇宙空間の体積は巨大です。ガスの中心は中性水素や電離水素です。なかでも中性水素は非常に観測が難しいと言われています。

 ビッグバン宇宙論ではダークエネルギーは宇宙の斥力と言われているものです。謎以外なにもわかっていない力です。高田式定状宇宙論では、ポテンシャルエネルギーが斥力です。木から落ちるリンゴの持つエネルギーです。ありふれた力です。

ビッグバン宇宙は、巨大な謎のエネルギーと謎の物質と、少しの、普通の物質でできています。宇宙の95%が謎です。高田式定状宇宙は、万有引力とポテンシャルエネルギーと普通の物質と、電磁波だけで宇宙は成り立ちます。どれも、今の物理学で証明されているもので成り立っています。謎はありません。

どちらに軍配が上がりますか。

 

宇宙の構造

 ポテンシャルエネルギーが電磁波や熱エネルギーに変化して、物質が、星や銀河や、ガス雲などに収縮して、果てしなく収縮して宇宙の物質はつぶれてしまいそうですが、衝突で放出された電磁波は、他の物質に衝突して、電子の振動(熱)を高めます。その振動で物質は運動して、ポテンシャルエネルギーを高めます。ポテンシャルエネルギーを電磁波で放出した物質どうしは収縮しますが、その電磁波を受けた物質は運動エネルギーを高め、離れ、ポテンシャルエネルギーを高めます。

あるところでは、電磁波を放出して収縮し、ガス雲や、恒星や、銀河になっていき、その放出された電磁波を受け取った物質は、物質同士離れます。長い時間が経つと、離れた場所と、収縮した場所とに偏りができ、それが大きくなってボイドができたり、巨大構造ができたりします。

宇宙の平均温度2,7kは、最初に量子ができたときに持っていたポテンシャルエネルギーが、収縮によって放出されて熱エネルギーに変化したものです。

 

宇宙背景放射

 恒星も、ガスも、宇宙に漂う塵もその温度に応じた電磁波を出しています。電磁波を出した物質は温度が下がります。しかし、その物質も、他の物質から届いた電磁波で温度が上がります。長い年月をかけて電磁波でエネルギーをやり取りして宇宙の物質は平均温度になります。これが2,7kの宇宙の電磁波です。宇宙背景放射といわれている光です。

 

エントロピーについて

 また、このポテンシャルエネルギーから変化した熱エネルギーがエントロピーの増大を起こしています。物質はポテンシャルエネルギーが他に逃げない限り元あった距離に離れます。ポテンシャルエネルギーが熱になって失われても、その熱は他の物質の熱になって物質を振動させて運動エネルギーになり、物質は離れようとします。ポテンシャルエネルギーは形を変えても、伝わって、常にトータルとして元の距離になるように働きます。宇宙のすべての物質は、ポテンシャルエネルギーを持って生まれたために、最初の距離に戻ろうとします。生まれたばらばらの場所にです。その身近な現われが、エントロピーの増大です。

 

宇宙項

 アインシュタインが、宇宙が収縮してしまわないように、数式に付け加えたと斥力の項です。

 インフレーション宇宙や、ビッグバン宇宙は、1点から始まっています。元に帰れば1点に収束してしまいます。エントロピーは減少してしまいます。この宇宙を今の宇宙まで膨張させるために、斥力として、真空のエネルギーや、真空の相転移のエネルギーを持ちだしました。アインシュタインは根拠もなく宇宙項を付け加えましたが、インフレーション理論では、これらのエネルギーが宇宙の斥力だといっています。しかし、それらのエネルギーは、理論の中のエネルギーで、いまだに存在は証明されていません。理屈に必要だから持ちだしただけでそれ以上の根拠はないエネルギーであることは、アインシュタインの宇宙項と変わりありません。もちろん今の太陽系の真空には観測されていません。そればかりか、地球から、2億光年以内の宇宙にはその現象は観測されていないということです。

 しかし、物質がバラバラに生まれたら、初めから、ポテンシャルエネルギーを持ちます。宇宙全体に散らばった物質のポテンシャルエネルギーは巨大です。それが巨大な斥力になります。謎のエネルギーはいりません。

 

結論

 このように、高田式定状宇宙なら、今の宇宙、いや地球上で見られる現象の延長上で、ビッグバン宇宙の4つの問題は簡単にクリア出来ます。インフレーションでは、最低のエネルギーの真空の一点から、全宇宙の物質とエネルギーが10−35秒で出現します。その宇宙が光速の何万倍もの速度で膨張します。現在の宇宙には絶対にありえない現象が理論の中心です。定状宇宙は、量子論以外は今の地球で観測できる現象で起こります。量子論が正しければすべてが現在起こっている現象で説明できます。定状宇宙論の方が今証明されている物理学にはあっています。

 

 問題は宇宙が膨張しているという問題です。高田式定状宇宙論では宇宙は膨張していません。次にそれを考えてみます。

 

問題 

宇宙は膨張しているか?

考察

 インフレーションビッグバン宇宙論でも、現在の定状宇宙論でも、宇宙は膨張していることが基本になっています。宇宙論者のほとんど、たぶんすべての人の考えも宇宙膨張が基本になっています。だから、宇宙が膨張していないという理論は最初から間違っている、という考えはもっともです。しかし、ガリレオだって、ダーウィンだって、東北大地震の後マスコミをにぎわしたプレートテクニクスだって、一度は否定された理論です。

あらゆる可能性を考える、というのが科学の方法です。考えることを最初から否定して既成の理論をなぞるだけでは、新たな、画期的な理論も研究も生まれてはきません。ガリレオやダーウィンやプレートテクニクスを否定した科学者たちがいい例です。宇宙は膨張しているというのは正しいと決まっているのだから考える必要はない、という人は、既成の理論にへばりついていればいいのです。それなら安全です。ただ、なにも生めないだけです。

 そこで、宇宙が膨張しているという考えを検討してみます。考えるのはただですから。ボケ防止の頭の体操にもなるし。

 

宇宙膨張の根拠はふたつあります。

@ 銀河の光が距離に比例して赤方偏移している

距離に比例して銀河の赤方偏移が大きくなる。これは、銀河が後退していることによるドプラー効果によって起こっている。あるいは宇宙空間が膨張しているために光が引き伸ばされているために起こっている、という意見です。根拠が二つもあります。根拠が二つあるということは理論を確固とすることなのか、理論があやふやであるということなのか、どちらでしょう。

A 宇宙背景放射

これは137億年前に宇宙が晴れ上がったときの光が今地球に届いているためだ、という意見です。

 

 この2点が、宇宙が膨張しているということの証拠であるということです。他にもありますが、それらは、ビッグバンがあったということから類推したことで、大きな証拠ではありません。

そこで、この二つを考えてみます。

1 銀河の光が距離に比例して赤方偏移しているのは宇宙膨張の証拠になり得るか

 銀河の光の赤方偏移は空間膨張によるという考えには問題が山積しています。

(1)空間膨張の直接の観測

空間膨張は太陽系では観測されていません。空間膨張が小さすぎて観測されないということでしょう。しかし、太陽系ができてから46億年間太陽系の空間も膨張していたはずです。それが太陽系には何一つ影響していません。空間膨張は観測されなかったということです。

最近の観測では、地球から2億光年以内の宇宙でも銀河の固有運動は観測されたが空間膨張による銀河の後退は観測されなかったということです。ただ、これはハッブルの観測した銀河の赤方偏移とは矛盾する観測です。詳しいことが分からないので、私としては今のところ保留です。

(2)空間膨張の仕組み

空間は、観測ではなにも有りません。空間をいくら観測しても、空間そのものを観測することはできていません。観測上は、空間はなにもないということです。

空間膨張の仕組みは今の物理学では説明できていません。空間が銀河や銀河団を押す仕組みも解明されていません。

地球の周りで起こった空間の膨張(空間膨張があるとすれば)が、1億光年先の銀河を押す仕組み(地球、あるいは太陽系の空間の膨張が、どのようにして、1億年先の空間に伝わっていくのか)が解明されていません。また、1億光年先の空間の膨張が伝わってきて、地球や太陽や銀河系を押す仕組みが解明されていません。実際は、そのために地球や太陽や銀河系が動いているという現象は観測されていません。

なにもない空間が膨張したり、なにかを押したりする理論は、今分かっている力学だけでは説明できないのでしょう。

具体的に考えてみます。

ビッグバン論では、地球の北側の空間が膨張して地球を押しています。南側の空間も膨張して地球を押しています。地球はどちらに動くのでしょう。押す力の弱い方に動くのでしょうか。どちらが弱いでしょう。地球は固有運動の方が大きいといっていますから、離れて行っていると言われている銀河団について考えてみます。

今は、空間膨張によって離れて行くのは銀河間ではなく、銀河団どうしだということになっています。考えてみます。

銀河団の間の空間が膨張して、銀河団どうしを離して行くということは考えられます。しかし、銀河団間の空間が膨張しているのと同時に、その両側の空間も膨張しているはずです。この空間膨張は、両側から銀河団を内側に押しているはずです。銀河団間から押す力と外側から押す力がかかります。銀河団間の空間より、外側の空間の方がはるかに大きいから、外側からの膨張速度が大きいはずです。銀河団は押されて、接近することになるはずです。宇宙空間の膨張は銀河団を接近はさせても離すことにはならないはずです。

宇宙全体が風船が膨らむように外側に向かって膨張しているということかもしれません。そのときは宇宙の外側がいります。宇宙の中心がいります。中心から全方向に宇宙が膨張していることになります。すると、地球の近くは一定方向に動いていることになります。そのような観測はなされていません。

その場合でも、銀河団間の宇宙空間が膨張するのと同じように外側にある宇宙空間も膨張しているのだから、どちら側の空間の膨張にも押されていることには変わりありません。一定方向に動きながらも両方から押されて銀河団間も縮まるのは変わりありません。

風船は中の空気が膨張すれば外に膨らみます。小さいからです。宇宙はそうはいきません。この巨大な宇宙を一定方向に膨張させるというのは不可能でしょう。

そのほかにも問題があります。地球は全方向から空間に押されていることにもなります。全宇宙の空間膨張の圧力が全方向から地球にかかっているはずです。空間膨張の力は銀河団も動かす力があります。その力が周りから地球にかかっているとすると地球は押しつぶされてしまうはずです。それなのに、地球が空間によって押しつけられているという現象は何一つ観測されていません。巨大な圧力のはずなのに、何一つ観測されていないのです。銀河も銀河団も同じです。周りの空間の膨張圧力が銀河や銀河団を押しつぶす方向にもかかっているはずです。銀河内や銀河団内の空間の膨張があっても全宇宙の空間の圧力には到底かなわないでしょう。銀河も銀河団もつぶれてしまいます。そんなことは起こっていません。

 

このように、銀河の赤方偏移を空間膨張のためだとすると、解決されていない問題だらけになります。では、銀河の赤方偏移は銀河の後退を示している、それはどうする、ということになります。

 

そこで、銀河の赤方偏移の原因を考えてみます。

 

2 銀河の赤方偏移の原因を空間膨張や、後退速度以外に考える。

 光の赤方偏移は物質でも起こります。光は物質に衝突すると、物質の電子を動かします。そのときにエネルギーが減ります。光のエネルギーが減ると、光は赤方偏移します。この現象は日常的に起こっています。一番簡単に分かるのは部屋の電気です。夜、部屋の電気を消すと瞬時に暗くなる現象です。これは、光が部屋の壁などに衝突して、エネルギーを奪われて赤方偏移し、可視光から電波になって外に飛び出すからです。このとき少しだが壁の温度が上がります。また、電気をつけっぱなしにしても部屋がどんどん明るくならないのも同じ原理です。光は次々に壁に衝突して赤方偏移して目に見えなくなり、電波領域に赤方偏移して部屋の外に飛び出して行くからです。部屋に光が溜まり続けることがないのはこのためです。

 銀河の光も、宇宙空間を飛ぶ間に、宇宙空間にある水素などの分子に衝突し、その電子を動かすことでエネルギーを失っています。そのために、赤方偏移するはずです。距離が長くなると、衝突する分子も多くなるので、遠い銀河ほど大きく赤方偏移します。赤方偏移にばらつきがあるのは、通り道が違うので、通り道の物質に濃淡があるからです。ハッブルの観測と一致します。

銀河の光が、宇宙の水素などの分子に衝突していることは銀河の光のスペクトルの暗線で観測されているので実証済みです。

 この現象でも、遠い銀河の光ほど赤方偏移するという現象の説明になります。この考えの有利な点は、今地球上で普通に起こっている現象や、観測で実証されていることですべてが説明できることです。それも、特別に実験するまでもない、日常的に部屋の中でも観測できる現象でです。

 上に書いたように、宇宙空間が膨張しているとすると様々な未解決の問題が生じるのに反して、銀河の赤方偏移が宇宙空間に漂う水素を中心とした分子に衝突したことによる赤方偏移とすると、何一つ問題は生じません。

 実際、観測技術の進歩で、宇宙には、濃淡はあっても、水素を中心とした分子が銀河を包み、銀河団を包み、銀河団の間にも浮かんでいることが観測されています。

 これらのことから、銀河の光の赤方偏移は、宇宙空間に漂う水素を中心とした分子に衝突することで起こっていると言えます。

 証明済みの理論で説明できる現象を、他の新たな理論の証明には使えない、という科学の方法論にもマッチしています。証明されていない空間膨張の証拠には使えないということです。

 

 また、このガスは宇宙背景放射にも直接関係しています。

 

3 宇宙背景放射

 宇宙背景放射は、ビッグバン直後の宇宙の晴れ上がりの光が今届いているという考えです。だから、宇宙はビッグバンで始まったということだそうです。そうでしょうか。

 宇宙には塵があるのが観測されています。膨大な量です。塵は、先に書いたように、宇宙に飛びかう電磁波を受けて温度を上げ、自身も電磁波を出して温度を下げて平均温度になります。その温度が2,7kです。宇宙の平均温度です。

 物質はその温度に応じた光を出します。黒体放射です。宇宙に塵があるのだから、宇宙の塵が出すこの光が地球に降り注いでいるはずです。ビッグバンの晴れ上がりの光が届いているとしても、宇宙の塵が出す光も必ず届いているはずです。宇宙の平均温度2,7kの電磁波です。この温度は、ビッグバン論が出る前に、違う分野の二人の科学者がそれぞれに計算した宇宙の塵の温度です。

 この塵の出す2,7kの電磁波が地球にも降り注いでいるはずです。これが宇宙背景放射です。2,7kになる原理は先に書きました。

 

 では、宇宙晴れ上がりの光はどうでしょう。

ビッグバン論では、137億年前に、高温の光が直進を始めたということです。この光が137億年間の宇宙膨張により引き伸ばされて、2,7kの電磁波になったということです。この光が今地球に降り注いでいるのが2,7kの宇宙背景放射というのがビッグバン論者の意見です。

 この考えにも問題が山積しています。

(1)空間が光を引き伸ばす仕組み

 空間膨張と光の関係です。ビッグバン論では、空間が膨張すると光が引き伸ばされるということです。しかし、空間がどのように働いて光を引き伸ばすかの仕組みが解明されていません。空間が膨張したのだから、光も伸びる、では、科学ではありません。その仕組みを解明して、実証して初めて科学です。

ビッグバン論では、宇宙空間は3次元で膨張しているということです。ところがビッグバン論では、光は前後にだけ引き伸ばされています。他の2次元、上下と左右には引き伸ばされていなということです。もちろん斜めにも。空間が3次元で膨張しているのに、光は1次元でしか膨張していません。光が前後以外には引き伸ばされない理由がありません。

光が上下に引き伸ばされると、光は強くなるはずです。遠い銀河ほど強く光るということになります。そのような現象はありません。光が強くなるのは、エネルギー不変則に反するから、上下には引き伸ばされない、ということかもしれません。しかし、光が前後に引き伸ばされ赤方偏移するならエネルギーが減ることになります。これも、エネルギー不変則に反しています。増える方のエネルギー不変則に反するのはだめで、減る方のエネルギー不変則に反するのは大丈夫というのではエネルギー不変則の意味がありません。エネルルギー不変則は理由になりません。

 上下左右には膨張しないということの理由をビッグバン論者は明確にしなければならないはずです。できていません。自分たちの理論に都合のいい前後だけ引き伸ばして不都合な上下左右は無視しているだけです。一番不利なことをまず考える、という科学の方法論に反しています。

 その他にも問題があります。

(2)地球がある場所

137億年前、宇宙が晴れ上がったときに、やがて地球になる地球の前駆物質も、誕生直後の宇宙の中にあって、その晴れ上がりの光(今の宇宙背景放射と言われている光)を他のものと一緒になって出していたという問題があります。(地球は、46億年前に突然ここに生まれたというのは、ビッグバン論ではありません。ビッグバン論では、137億年前に今の宇宙のすべての物質になる元が生まれていたという理論です。地球の前駆物質もそのとき生まれていたはずです)

何が問題かというと、137億年前に自分が出した光を、137億年後また見ているということです。自分が生まれた様子を70歳のお爺さんになってまた見ているという不思議な現象です。DVDじゃないのだから見られるはずはありません。自分の生まれた様子を見るためには、70光年先を飛んでいるそのときの光に追いついて振り返るしかありません。

(3)宇宙背景放射と宇宙の晴れ上がり

宇宙の晴れ上がりのときは宇宙誕生後40万年ほどだということです。光速で宇宙が膨張したとしても、そのときの宇宙の直径は最大80万光年です。地球の前駆物質が宇宙の端にあったとしても、一番遠い光(地球とその光の光源が宇宙の互いに端にあるとき)でも、80万年で通り過ぎて行きます。80万年で、晴れ上がりのすべての光が地球の前駆物質を通り過ぎてしまうので、その後は、地球の前駆物質に晴れ上がりの光は降り注ぐことはないということです。その後、地球の前駆物質が変化して地球になったとしても同じです。

宇宙が40万年間光速で膨張してもそうなのだから、ハッブル定数で膨張したとしたら、宇宙はとても小さいから1月もかからずに晴れ上がりの光は通り過ぎてしまうでしょう。ハッブル定数からすると、直径80万光年の距離では、宇宙の端の膨張速度は、約20km/sくらいです。ハッブル定数で膨張しているとしたら地球はのろのろしか動けません。光は30万km/sだから地球を置いてけぼりにすることでしょう。その後137億年もたっているのに、いまだにその光が地球に降りそそいでいるというのはどうしてでしょう。しかも全天から降り注いでいるということです。光はどこで道草を食っていたのでしょう。

晴れ上がりの光を今見ているとしたら、もうひとつの問題も生じます。

(4)過去の光と距離

 見ている太陽の光は、8分前に太陽を出ました。地球と太陽の間が8光分の距離があるから、今8分前の太陽の光を見ることができます。1億年前の銀河の光は地球と銀河の間が1億光年の距離があるから、今、見ることができているのです。同じように、137億年前に直進し始めた光が今宇宙背景放射として地球に届くには、地球と宇宙背景放射の光源との距離が137億光年必要です。地球は、晴れ上がりの光からどのようにして137億光年の距離離れることができたのでしょう。晴れ上がりの時、地球もその中にいてその光を出していたのだから、光を出し終わったとたんに、超光速でそこから離れ、光を置いてきぼりにして、137億光年先まで飛んできたのでしょうか。最初は、水素であった地球の前駆物質の一部は巨大な星の一部になり、鉄などの元素をつくり超新星爆発をし、また、中性子星の一部になったのもあり、金などの重い元素を造り爆発して、宇宙を飛びかい、やがて、それらが集まってガス雲になり、太陽の傍で固まって今の地球の形になったというのが今考えられている地球のできるシナリオです。それらの出来事が、晴れ上がりの光に追い越されないように、超光速でこの場所まで飛んできた間に起こったのでしょうか。あり得ません。

(5)昨日の花火を見る方法

 晴れ上がりによって、火の玉の宇宙は終わっています。だから、火の玉の宇宙を見ることはできません。終わってしまった花火を見ることができないのと同じです。昨日の花火を見る方法は理論上はあります。光速より速いロケットに乗って、花火の光を追いかけて、1光日先の宇宙を飛んでいる光を追いかけて追い越せばいいのです。同じように、宇宙の晴れ上がりの光を見るためには、光より速く飛んで、光を追い越せばいいのです。しかし、それができたとしても、その光は後ろから追いついて来るので、全天から降り注ぐことはありません。

このことについて、次のようなたとえを書いている本がありました。雲の中にいるときは周りが見えない。これが晴れ上がり以前の宇宙だ。飛行機が雲から飛び出して振り返ると、雲が見える。これが晴れ上がりだ、と説明していました。雲が晴れ上がり前の宇宙で、飛行機が地球ということです。

問題の一つは、地球(飛行機)が宇宙(雲)から飛び出していることです。地球は特別だ、ということです。宇宙から飛び出した地球はどこにいるのでしょう。

第二は、これでは振り返らなければならないことです。雲の光は後ろからだけ来ているのだから。これでは、宇宙背景放射が全天からまんべんなく降り注いでいることと一致しません。

3つ目の問題は、飛行機も雲も、同じ時刻にいることです。共に現在です。雲が晴れ上がり以前の宇宙の状態を表しているとしたら、宇宙が晴れ上がったときには、晴れ上がり以前の宇宙は過去になって無くなっているはずです。雲が消えるから晴れるのです。曇りと晴天は同時には存在できません。晴れ上がり以前の混とんとした宇宙と、晴れ上がり以後の透明な宇宙が同時に存在することはできません。それでは宇宙が二つになってしまいます。晴れ上がり以前の混とんとした宇宙は晴れ上がりで終わっているので、消えてしまっているはずです。

振り返っても過去は見えません。振り返っても、終わってしまった花火が見えないのと同じです。

晴れ上がりのこのたとえは間違いだということです。137億年前の過去(宇宙の晴れ上がり)を今見ているということの説明が必要です。晴れ上がりは137億年前に終わっているのですから。遠いところを見るということは過去を見るということだ、では済まされないのは上に書きました。

(6)晴れ上がりの時の宇宙の大きさ

他にも問題があります。137億年前の光が、全方向から現在の地球に降り注いでいるとすると、その光は、137億年前に今ある地球の位置から137億光年先の宇宙で出された光ということになります。その光が、今地球から全方向に見えるということは、137億年前には、すでに地球を中心としてどの方向にも137億光年先に晴れ上がりの光があったということになります。宇宙誕生40万年で、すでに、直径274億光年(=137億光年×2)以上の宇宙ができていたということになります。そのときにすでにこの宇宙と同じ大きさの宇宙ができていたということです。ハッブル定数とは相いれません。ハッブル定数では137億年前には宇宙は1点だったのですから。それから137億年かけて今の宇宙の大きさになったというのがハッブル定数のビッグバン宇宙です。

もし、晴れ上がりの光があったとすると、その光は、現在、晴れ上がりの場所から137億光年先の宇宙を外に向かって光速で飛んでいることでしょう。その光は半径137億光年の球の表面で外に向かって光っていることでしょう。その光は、出たところから直進しているので、Uターンして地球に戻ってくることはありません。もしUターンしたとしても、その光が地球に届くのは今から137億年後のことです。

(7)ハッブル定数と光

もうひとつの問題も生じます。晴れ上がりの時の宇宙が最大直径80万光年とすると、ハッブル定数ではその膨張速度は20km/sほどです。晴れ上がりの光は光速で、宇宙の端を飛び越えて、膨張する宇宙をほったらかしにして、この宇宙以外のところに飛びだして行くことになります。光はどこに行ったのでしょう。パラレルワールド?偽の真空?それとも神の住むあの世?そんな世界はないでしょう。

結論

 このように、宇宙背景放射が宇宙の塵の出す光とすると、今分かっている物理学で問題なく説明できます。しかし、宇宙開闢の光とすると、今分かっている物理理論にはない現象ばかりでできていることになります。

 宇宙背景放射は宇宙の塵の出す光だと言えます。少なくともビッグバンの証拠にはなりません。

 

 

結論

 宇宙論者は、ビッグバンの難問を解決するためにインフレーション宇宙を考え出しました。しかし、インフレーション宇宙の現象は、今観測されている宇宙には影すら存在しません。考えられている現象も、今考えられている物理学ではありえない現象です。証拠もない、証明されている物理理論にも当てはまらないのがインフレーション宇宙です。一方、定状宇宙だと、今観測されているありふれた現象で説明できます。それも、部屋の中の日常の現象で説明できるのです。もちろん今までに証明されている物理学で説明できます。

 どちらが、ビッグバンの難問を解決できる理屈でしょう。

 唯一の問題は、インフレーション理論は、偉い学者が言っているし、多くの学者の支持を得ているということです。定状宇宙論は、学者に否定された考えであるということです。

 科学は、だれが言ったかで決めるのか、理屈で決めるのか、の問題です。どう考えますか。