Who is Tonny Clifton?トニーって誰？ 　お世辞にも趣味がいいとは言えない服装、真っ黒なサングラス、嫌味なヒゲ、でっぷりとしたお腹。出で立ちだけでも相当圧迫感のあるこの人。このルックスに加えて、下品なジョーク、人を不快にさせる毒舌、ひどい歌声、短気、無礼、横柄、派手な女遊び、大酒を飲んでからむ、煙草を吸いまくる.............これでもか、これでもか、という位の、「抱かれたくない男ベスト10」なんてその時にあったら堂々と1位を獲得するんじゃないかという位の、史上最悪のキャラクター、これがトニー・クリフトン。 　アンディがTVで活躍するようになる前から、アンディは時々トニーとしてレストランなどの営業の仕事で、暴れていたのだそう。 　ズムダさんと組んでからはそのキャラクターはさらに強烈に。客のひとりになりすましたズムダさん相手に暴言を吐きまくり、他のお客さんを驚愕させる、という二人だけが楽しいネタをやったりしていた。

新生クリフトン 　アンディがトニーになり始めの頃は、つけヒゲにサングラス、といった変装程度のものだったそう。 "Taxi"のヒットは、アンディを人気者にしたけれど、決められた枠の中でしか自分を動かせられない、窮屈なシットコムにアンディは心底ウンザリし、フラストレーションがたまっていた。そんなアンディが爆発できるのが、トニーとしての世界だったという。 　トニーとして自由に好き勝手ができるよう、アンディと、TVで大暴れをするトニーは別人である、という説を定着させるため、ズムダさんが徹底的にトニーの容姿をアンディだとわからないように作り上げ、トニー最強バージョンが誕生した。 　トニーになりきったアンディは、普段一滴も飲まないアルコールをガブ飲みし、いつもの菜食主義からは想像もつかないほど分厚いステーキを食べ、人が吸う煙草の煙でも嫌がるはずなのに煙草をプカプカとふかし、ズムダさんを仰天させたそう。性的な趣味まで変わってしまうというけど、それも含めて全て演じ通していたなら凄いし、演技じゃなくて、トニーの時は本当にアンディじゃなくてトニーという人格になりきってしまってたなら、これまた凄い...。

"Taxi" 出演前にクビに 　アンディが"Taxi" に出演する際にNBCに要求していた条件の中に、"Taxi" へトニー・クリフトンを少なくとも2回以上、出演させること。というのがあった。 　トニーはリハーサルの時間にもちろん遅れて到着。しかも二人の売春婦のおねえさん付き。台本はもちろん読んでなくて、実際に他の出演者の人達と合わせる時にもメチャクチャなアドリブばかり。リハははかどらないどころか、全く進まず、他の出演者もスタッフもイライラが最高潮に達していた。 　とにかく、やりたい放題のトニーは、酔っ払いながらセットのタクシーのボンネットに上り、「聞けよ、これが新しい主題歌だ。」とか言いながらヒドイ即興の歌を歌ってみたり、飛んだり跳ねたり大騒ぎ。 　我慢の限界が来たプロデューサーがトニーに「クビ」を伝えると、トニーはキレて手のつけられない怪獣のようにセットをボコボコに壊し出した。飛んで来た警備の人に取り押さえられ、トニーはスタジオから強制退去。この事件は新聞にも載り、トニー・クリフトンの名を世間の人に知らせるのに大いに役立った。

アンディ＝トニー？？？ 　「アンディ・カフマン？！アイツは俺様の名前をかたって自分の人気に利用しようとしてるんだ。けしからん！」と、トニーは、自分とアンディが同一人物であることをTVなどで激しく否定。アンディも同じく、アンディがトニーを演じている、ということを否定していた。しかし、おおかたのTV局の関係者は二人が同一人物である、ということを暗黙の了解としていた。 　そんな了解、ぶっ壊さずにいられるかい、とアンディはズムダさんとまた大掛かりなドッキリ作戦をたてる。それは、映画でも描かれていたけれど、ズムダさんがトニーを演じる、というもの。トニー・クリフトンとして取った仕事だから、中味がアンディであろうと、ボブ・ズムダであろうと問題はないだろう、とトニー＝ズムダも大暴れ。トニーに依頼が来たショーの仕事をこなしたり、「レターマン」に3回も出演。その放送の模様をアンディは自宅のTVで見て大ウケしていたという。 　アンディ＝トニーと思っているお客さんにも、アンディとトニーと二人同時にショーに登場して見せ、混乱させた。 　映画「マン・オン・ザ・ムーン」のラスト、アンディの死後一年後に復活したトニーを、ズムダさんも観客側で見ている、というシーンがあったけれど、実際はズムダさんが扮したトニーがステージにあがっていた。映画のあれは、映画全体をアンディテイストに仕上げるための作られた演出だとのこと。 　けど、実際に、映画のようにトニーをズムダさんが端から見ていたことがあったんだって。アンディも出演しているステージに登場して歌い踊ったトニー・クリフトン。何とそれはアンディの弟、マイケルさんが演じていたのだそう。ほんと、一筋縄ではいかない。

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