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   研究集会発表要旨集

 投稿規程
2005年8月24日(水)発表
                           バイオによる原位置土壌浄化-実施例と課題-
                                                                 三井造船鞄y壌環境グループ担当部長 本間憲之

1.  バイオレメディエーションの考え方
  三井造船は米国の大手エンジニアリング会社であるパーソンズ社との広範な技術提携事業の一つとして、バイオレメディエーションを中心とした原位置土壌浄化業務を国内で行っている。三井造船の バイオレメディエーションの考え方、捉え方は次のとおりである。
 (1) 土着の微生物を活性化する: 外部から微生物を導入する方法は微生物のサイトへの適応性の面で不確実さがあるため、土着微生物を活性化する事を基本と している。
 (2) 栄養塩の投入は必要な場合のみ: 窒素、リン等が栄養塩として考えられるが、これらは土壌中で循環する。従って土壌中にある程度以上存在すれば新たに加える必要はない。
 (3) 土壌中は微生物が介在する化学反応場と捉える: 微生物群は多様であり個々の微生物の特性を追求することはしない。浄化対象物質、対象物質の反応性生成物、微生物の代謝物質等の変動を観測し、分解が促進される環境に誘導する事を大きな目標としている。
2.  バイオレメディエーションの機構
  微生物にとって油のような汚染物質は食物であり栄養素である。油汚染がある場合、微生物が油を消費する中で酸素が使われる。自然の中で酸素が供給されなければ、微生物の活動は低下し、油汚染の分解も低減する。油汚染のバイオレメディエーションでは微生物に対し十分な量の酸素を供給することが浄化対策の中心である。一方有機塩素化合物の分解は油と異なり、嫌気的に進行する。この場合汚染物質である有機塩素化合物が酸素のような役割となっている。呼吸に必要な物質(汚染物質)は十分あるが、食物や栄養素が不足した状態であると言える。有機塩素化合物汚染のバイオレメディエーションでは微生物に対し食物となる炭素源を与える必要がある。三井造船の手法ではこの炭素源として食用油を使用している。
3.  実施例と課題
  油汚染では空気を酸素源として用い、約1~2年で浄化を完了している。有機塩素化合物汚染の場合は食用油を炭素源とし、約2~3年で 完了するペースで浄化を実施している。バイオレメディエーションの課題は浄化完了時期の予測である。浄化速度は濃度の一次反応であると考えられ、実績でも一次反応の関係式が良く一致している。しかし、汚染物質の濃度低下は、高濃度時点ではガスとしての回収のような物理的な低減が支配的である。物理的な低減の効果がなくなる時点以降が微生物分解の影響が大きくなると考えられる。その意味において浄化の全期間を一次反応の関係だけで捉えることは実態を表していない可能性がある。物理的な除去や拡散、微生物による生化学的な分解をそれぞれ適切に把握した上で、正確な浄化速度を推定することが今後の課題である。
2006年2月1日(水)発表

         建設汚泥等造粒固化再資源化工法(オデッサシステム)の現状と今後について
       宮城県リ・ソイル事業協同組合 事務局長 澁川眞彦

1.    工法の紹介
  1)1995年4月:省エネルギー支援法に基づく補助金を頂き開発された、宮城県独自の新技術、建設汚泥等造粒固化再資源化工法(オデッサシステム工法、以下、同工法
    と言うのです。
  2)同工法は土木・建設工事等に伴って発生する無機汚泥を、従来の最終処分(脱水・乾燥・焼却)とは全く違う、リサイクルを目的とした適正処理により短時間に水を
    含んだ儘、“造粒固化”させ、大気汚染や水質汚濁等の二次公害を出さないシステムです。
2. 現状(問題点)
  1)許可取得の折の遺漏
      令7条に無い方法=文言(造粒固化)で得られた許可に対して、特許出願の手続きを逸し酷似工法の追撃に苦戦中です。
  2)所管部局による「法」解釈の相違
   長らく国交省、農水省、環境省等の法解釈が異なり、本来有る冪、環境保全・資源リサイクルが阻害されておりましたが、漸く2005年後半辺りから3省の折衷案とも
   取れる自ら処理・自ら利用(以下、自ら手法と言う)の考えによる、資源再利用の道が開かれつつあります。
  3)自ら処理・自ら利用の拡大
    然し乍ら、自ら手法は動もすれば排出事業者の自己管理に任される所が多く、其の運用に当たっては強く法の遵守を求められる所です、其処が中々の曲者で
   す。
3. 派生的な新技術の確認と確立へ
  1)同工法の心臓部「特殊固化材」中に特殊融合している、高分子の持つ陽イオン交換能が活性化され、重金属を上手に封じ込め安定(不溶)化出来る事に気付
    きました。
  2)此れに更に其々の重金属類の最好キレートを混合させる事で、安定(不溶)化された重金属類は酸や有機物等によって変異しない状況を呈して行きます。
  3)1)、2)につきましては、其々に計量証明も頂き、2002年辺りからは種々のマスメディアにも報道され、多くの共感を得ております。
4.     今後について(結び)
  1)建設汚泥等リサイクル事業の中から、汚染土壌安定・不溶化事業をも視野に入れた総合土壌環境事業に取り組み、循環型社会形成の本の一翼でも担える様心
    掛けます。
  2)何故なら其れは、有形・無形のもの其の全てが、母なる大地に帰し其処で新たなる息吹(リサイクル〜サイクル)を得て再生(輪廻)される事で営々と営み続けられて来
    た、地球40数億年の自然の摂理だからです。
  3)其の母なる大地が病みかねない「不法処置」、「不適正処理」の横行は、決して許される冪では有りません。
2006年2月1日(水)発表

株式会社ピーエス三菱における環境事業への取り組み
                                              潟sーエス三菱土木本部土木統括部環境関連部     副島隆広

1,工場閉鎖に伴う土壌調査と汚染土壌対策工事の事例 【土壌汚染対策法第5条に基づく指定区域対応工事】
 (1)指定区域の指定
   本対象地は、東京都内にある敷地面積が約8,000m2ある工場解体にあたり、土壌汚染対策法第3条及 び東京都環境確保条例第116条の調査要件に該当し
   調査を始めた。土壌汚染状況調査の結果、本対象地の土壌が特定有害物質による汚染状況が環境省令で定める基準に適合しないと認められた為、法第5
    条により指定区域として指定された。その後、法第6条の指定区域台帳に公示された。
(2)指定区域の解除
    浄化対策工事完了後、行政に各完了報告書提出後、法第5条により指定区域が解除された。ちなみに、平成18年2月1日現在に於ける指定区域の状況として
   は、指定区域として指定した件数が全国で100件あります。その内、指定区域解除件数は44件です。今回紹介した事例は、土壌汚染対策法第5条に於ける指
   定区域の指定から解除まで行った事例です。
 (3)浄化対策工事
   土壌汚染対策法及び東京都環境確保条例に基づき汚染の除去工法等に関する汚染拡散防止計画を行 政に提出した。汚染拡散防止計画に於ける対策方法
   のコンセプトとしては、本対象地の土質形成が現況 地盤から3mまでがローム層で、それ以深は礫層で対策深度までは地下水位がない地層である為、第一 種
   特定有害物質汚染土壌は、原位置浄化(土壌ガス吸引法)を行うことにより掘削処理量を減らせること で、コストの削減、工期短縮が可能であると判断し採用
   した。故に土壌ガス吸引法と掘削除去法を併用した措置を行った。又、第二種特定有害物質に関しては、掘削除去措置を行った。
2,DeDIOX使用による焼却炉解体工事の事例 【大気環境基準対応工事】
 (1)焼却炉解体概要
  本対象物は焼却能力が600kg/hある為、焼却炉解体を行う際には、労働安全衛生法第88条及び同規則第90条(火床面積2m2以上又は焼却能力が200kg/h以
  上)により、所定の書類を作成し所轄労働基準 監督署に対し、計画届の提出が必要です。実施工に於いても、「ダイオキシン類特別措置法」「廃棄物焼 却施設
  内作業におけるダイオキシン類ばく露防止対策要綱」「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に 準拠し焼却炉解体工事を行った。焼却炉解体工事完了後、工
  事報告書を作成し所轄労働基準監督署に提出しました。提出書類について は、30年間の保存が義務付けられている。
 (2)DeDIOX分解概要
  焼却炉解体工事で使用した大気環境基準対応装置(DeDIOX)の分解概要については、排気ガス中のダイオキシン類を触媒と過酸化水素水により、低温(80〜
  100℃)で分解し、水・炭酸ガス・塩酸を生成無害化して大気へ排気する。
3,ダイオキシン類無害化システム乾燥機(ディスクドライヤ)にダイオキシン類汚染物(飛灰・土壌・底質)を投入し、薬剤(ダイオカットA-10)を3〜5%程度添加しま
  す。その後、400℃の低温で1時間程度加熱する事で、ダイオキシン類を無害化できます。

2006年10月24日(火) ジョイント環境フォーラム 講演要約 

油汚染の調査・対策について〜ガソリンスタンドにおける油汚染対策の現状〜 
日本地下水開発(株)事業本部 地盤環境部
環境プロジェクトグループ 黒沢 亘 

  油汚染とは、油を製造・保管する施設において、老朽化、事故等の原因によって油が地下に漏洩し、土壌・地下水を汚染した状態のことを指しており、油臭や油膜によって容易に発見が可能で、かつ感覚的に障害を感じることができるものである。
  油汚染問題は、土壌汚染対策法ではベンゼン一成分しか基準対象になっていないものの、土地取引時にトラブルとなるケースが多く、土地所有者による自主的な取り組みとして調査・対策をとることが慣例化してきた。しかしながら、基準がないために調査手法や処理目標が曖昧となっていたため、平成18年3月に油汚染対策ガイドラインが制定された。 油汚染対策ガイドラインでは、@生活環境保全を目的とし、油汚染対策の基本的な考え方、取りうる方策、A汚染の対象は鉱油類を原因とし、人の感覚によってとらえることができる油臭・油膜による障害、B画一的規制ではなく、現場の状況に応じた対応方策の検討に活用すること等を基本的な考え方として取りまとめられている。現在国内ガソリンスタンド業界においては、石油元売り会社の統廃合や競争の激化に伴い、ここ10年で不採算店舗の閉鎖が相次いでいるが、東京都埼玉県愛知県においては条例により営業廃止時の調査が義務づけられている。
  ガソリンスタンドにおける油汚染の特徴としては、漏洩事故については、地下タンク、配管の腐食等劣化が原因であることが大半である。ガソリン等の軽質油は粘性が低いため、汚染が地下水に到達すると水平方向に汚染を拡大しやすく、重油等は高粘性であるため土壌・地下水中からの分離が難しく、浄化が困難となる場合が多い。
  ガソリンスタンドにおける作業時の留意点としては、営業中のガソリンスタンドであれば埋設配管(油配管、電気、水道、排水等)の破損事故に注意しなければならず、給油作業を阻害しないような作業の実施が求められている。
  当社では、油汚染の浄化方法として、フェントン反応剤を用いた浄化対策を用いている。フェントン法は、原位置化学酸化浄化処理技術に位置づけられており、土壌・地下水中でベンゼン等有機化合物と酸化剤を接触させることにより、化学的酸化反応をおこし、有機汚染化合物を無害な無機化合物にまで浄化させる浄化方法で、低コストで短期間の浄化が可能な技術として国内でも実施例が増加している。

2006年12月08日(金)発表

                     「アクアセパレート」−触媒的高性能凝集材による固液分離工法−
                     錢高組東北支店・土木工務部工務課長  原田浩二

1.開発の背景
 高さ76m,総貯水量901万m3の「出し平ダム」の湖内堆積土砂は、完成後7年で総貯水量の60%までした。このため貯水能力回復を目的に、1991年12月に「排砂ゲー
 ト」を開けて大量の土砂を水とともに黒部川に排出し、富山湾の沿岸漁業に深刻な被害を与え問題になった。自然環境における河川や湖沼に堆積した泥土は、治
 水面から国民の財産を守る目的で浚渫されるが、これらの泥土は高含水であるため浚渫後の処理方法や処分場所が課題となっている。土木建築工事においても
 コスト縮減の政策と限られた処分場の延命化から、工事で発生する高濃度泥水の減量化が求められてきた。
2.「アクアセパレート」
  既存の凝集技術では、高分子水溶液を原泥土と混合して凝集させるが減溶化率は80%にとどまるが、アクアセパレートを原泥土に投入攪拌すると、固液分離によ
  って減溶化率を50〜40%にできる。「アクアセパレート」は粉末凝集剤で、汚染はそのまま存置して固液分離を助ける触媒的役割を有する。
3.減溶処理システム
  小容量〜10m3/日、中容量10〜90m3/日、大容量100〜200m3/日の3タイプのシステムがあり、それぞれのタイプについてフロック形成設備、脱水設備がある。
4.適用事例、施工実験
4-1.小容量システムを河川浚渫土処理に適用
  大型土のうで河川を仮締切してバキューム車で汲み上げ、袋で重力脱水した。分離水は水処理施設で水質検査し放流。分離土は土壌検査し適性処分。
4-2.中容量システムで公開施工実験
  今までの凝集剤とアクアセパレートについて、分離水濁度と分離土性状を比較。固液分離効果を確認した。  
4-3.大容量対応実験
  標準型フィルタープレスと同様の条件で、模擬プレスによって高強度脱水ケーキを製造した。ケーキはコーン指400kN/m2の第三種建設発生土として再利用可能
  である。
5.今後の展開
  国土の75%が山岳であるわが国では、河川流域や臨海部に生活圏を求めざるをえないが、そこには大量のブラウンフィールドが 潜在する。用地リサイクルには、
  適切な処理技術が求められる。

2006年12月08日(金)発表
                                東北地方の重金属異常とバックグラウンド
                                              東北大学大学院環境科学研究科 山田亮一 

 自然由来の重金属異常は,元来,土壌汚染対策法や水質汚濁防止法における‘汚染’とはされてない.しかし,平成15年
に「生活環境の保全に関する環境基準」という考え方が導入され,水棲昆虫や動植物を含めた生態系に少しでも影響を及ぼす惧れのある重金属異常は,全て環境悪化要因とする風潮が強まった.このため,土壌溶出試験において,鉛や砒素が0.01mg/kg(ppm)を超過する場合には,その異常原因が自然由来か人為由来かを厳密に議論されることなく,汚染土壌と同等の扱いを求められるケースが増大している. 東北地方の脊梁山地から日本海沿岸まで広く分布するグリーンタフと呼ばれる地層は,大部分が海底火山活動の産物であり,火山噴出物自体や火山活動に伴う熱水活動によって必然的に重金属に富む傾向がある.それらの火山岩類が,日本列島の隆起によって侵食され,浅海に再堆積する過程で,様々な地球科学的プロセスにより著しく重金属に濃集する層(レイヤー)が形成される.最近の,東北大学や産業技術総合研究所の研究によって,多くの地域から,この様な重金属異常レイヤーが報告され,多くの地点において,環境基準をはるかに超える鉛や砒素の溶出が確かめられている.とりわけ,環境省告示の定める公定法溶出試験において,塩酸抽出液を検液とした分析値には,環境基準はおろか排出基準をも上回るPbや,Asが検出される.この様な試料から重鉱物を濃縮し,顕微鏡で観察すると魚卵状の形状を持つ微粒の黄鉄鉱が多数含まれている.即ち,微粉状の黄鉄鉱を多く含むレイヤーが,何らかの理由,例えば,宅地造成とか,都市基盤整備事業とかで暴露されると,黄鉄鉱と雨水が反応して硫酸酸性水が形成され,pHが4以下になるとPbやAsの溶解度が急激に大きくなって河川水や地下水中に溶出されると考えられる.この溶出メカニズムが一時的なものか,あるいは長時間継続して環境悪化を引き起こすものか,今後の研究を待たなければならないが,露頭面に析出した鉄分(多くは2価鉄)が直ちに酸化されて毒々しい赤褐色の沈殿物が形成されるため,地域住民からの苦情によって,結果的に,工事の進捗が妨げられるケースが発生している.筆者らの予察的調査において,この様な微粒の魚卵状黄鉄鉱を多く含む地層は,浅海(内湾)〜内陸(湖)で形成された砂岩と泥岩やシルト岩との互層部分に多いことが判っている.当面,「リスクの高い地層」を正確に予測し,工事工程上やむを得ない場合には,可能な限り暴露を抑制する対策を講ずる必要があると考えられる.

2007年2月02日(金)発表

                                        汚染土壌最終処分の現状と課題
                                          仙台環境開発株式会社  営業本部 副本部長  及川 善朗
1.汚染土壌最終処分の実績
   当社が運営している、管理型最終処分場には、この1年間で19件、約33,000トンの汚染土壌(汚染土壌産業廃棄物含む)が処分されている。以前と比較
 すると件数も処理量も急激に増えつつある。その背景として2点が考えられる。 第一は、マンション等の開発案件が増加し、その土地取引に係る土壌調査
 が確実に実施され、その結果、汚染が判明し最終処分となるものである。 第二は自然由来と考えられる汚染に起因するものであり、19件のうち8件は自然
 由来若しくは自然由来の汚染土の盛土と思われる案件である。自然由来の汚染については、土壌汚染対策法は該当しないが、それらに準じて処分に至った
 ものである。また、汚染土が産業廃棄物と認定され、処理方法が限定されたために、最終処分せざるを得なくなった事例もみられる。
2.汚染土壌と産業廃棄物
   外観、分析結果が同じようなものでも、汚染土壌として受け入れる場合と、産業廃棄物として受け入れる場合では、その対応が全く違ってくる。 産業廃棄物
 と判断される場合は、土壌に加水等人為的な行為を加えた場合である。土壌の外観もさることながら、排出プロセスによるところが大きい。それらの対応の大
 きな違いは、汚染土壌は土壌汚染対策法に準じ、産業廃棄物は廃棄物処理法に沿って処理を進める点にある。処理方法、運搬手段、管理伝表、課税措置、
 受入基準、試験方法、等の違いがある。 また、建設残土再利用マニュアル、建設汚泥再利用マニュアルは汚染されていないことが前提であるため、汚染土
 壌の場合には適用できない。最終処分増加の一因ともなっている。
3.今後の汚染土壌処理対策の課題
   汚染土壌の処理は、土壌汚染対策法によるが、ほとんどの場合は法適用外であり、その運用には広い社会的視点を持った判断と、関連行政間の連携、
 コスト意識等が不可欠である。また関係   技術者の幅広い知識、処理技術の開発も必要である。さらには、自然由来汚染対策はすべての関係者が広い見識
 を持ち、効率的に対応していくことが肝要である。
  汚染土の処理については健康被害の防止が第一であり、現状散見される不必要な社会的コスト負担が削減されていくことを期待したい。 

2007年2月02日(金)発表
                                                −汚染土壌、廃棄物等のセメント資源化−
                                  太平洋セメント株式会社 東北支店  環境事業営業部 生田 考

セメント産業では近年、廃棄物・副産物をリサイクル資源として積極活用しており、2005年度の業界全体での活用実績は約3千万トンに達している。これは日本国内で毎年発生する産業廃棄物(約4億トン)と一般廃棄物(約5千トン)のおよそ7%弱に相当している。太平洋セメントにおいても、国内セメント工場にて廃棄物、副産物等をセメント原燃料として、738万トンを使用している。(セメント、固化材等生産高:約22百万トン)セメント協会では、2010年度の使用原単位を400kg/t−セメントとする努力目標を掲げており、太平洋セメントもこの目標達成に向け努力している。(05実績で351.8kg/t−セメント)廃棄物等のセメント資源化の特徴としては以下が挙げられる。
@受入れる廃棄物等は、石灰石、粘土、ケイ石、鉄原料、石膏等の代替原料として、また石炭、重油等の代替燃料として、全量を資源として有効に再生利用する。
Aセメント工場からは灰やスラグ等の残渣類が発生しないため、最終処分(埋立)が不要。
B焼成温度1,500℃、24時間連続運転での処理となるため、安全且つ大量に、また安定して、安価に処理することが可能。
Cセメントの品質や製造工程に影響を及ぼす含有成分(塩素や重金属類)に規制値を設けている。
  太平洋セメントでは新たな取組みとして、2003年度より建設現場等で発生する汚染土壌をセメント資源化する事業を開始している。現在受入量は順調に伸びており、06年度実績で100万トンに達する見込みにある。現在物流体制の拠点として、また土壌の改質や異物除去等の前処理の拠点として首都圏4箇所に中継基地を設置している。さらに、環境省指定調査機関の認定を取得し、調査から工事、物流、工場での処理まで一貫して請け負える体制を整備した。 日本最大規模の不法投棄事件である青森・岩手県境産廃不法投棄事案にも取り組んでいる。岩手県側に埋設された有害物を含む汚泥状の産業廃棄物を04年度より大船渡工場で受入れ、06年度には累積処理量が8万トンを超える見込みにある。本件は00年度に岩手県から当社に対し処理依頼の打診があり、様々な実験・検証を経て現在に至っている。10年度までに総量18万トン程度の受入が想定されている。

 
2007年7月04日(水)発表

                                               土壌汚染コンシェルジュサービスについて
                                       株式会社ランドコンシェルジュ 取締役 西村実

土壌汚染対策法が施行されて4年が経過した。この間に土地取引の際に土壌汚染の有無を調査し、汚染が見つかれば売買条件に反映させることが一般的となってきた。その結果、土壌汚染調査や土壌汚染対策工事を必要とする顧客の裾野が広がり、土壌汚染の知識を持たない顧客層が増大してきた。また、土壌汚染の存在やそのおそれが懸念されることから有効に活用されない塩漬けの土地(ブラウンフィールド)が社会問題化してきており、ブラウンフィールド化を回避するための多様な土地の活用戦略が必要となってきた。一方、土壌汚染調査を実施する指定調査機関は1600社を超え、顧客と優良な指定調査機関をつなぐ架け橋の機能が求められている。このような背景から、土壌汚染の知識を持たない顧客の立場に立った中立的なソリューションを提供するべく、土壌汚染コンシェルジュサービスを立ち上げた。本サービスは、既存のワンストップサービスや汚染地買取サービスとは異なる土地の有効活用と土壌汚染対策を一体化した支援を特徴としている。 土壌汚染コンシェルジュは、土壌汚染が懸念される土地を有効活用するための道先案内人を目指しており、土地の有効活用方策、そのために求められる土壌汚染調査、汚染が見つかった場合の土壌汚染対策についてのコンサルティングを無料で実施している。土地の有効活用方策については、三菱地所リアルエステートサービスが担当し、対象地の特性や土地所有者の要望を踏まえて、最適な売却戦略や有効活用法を提案する。売却戦略や有効活用方策を踏まえて、ランドコンシェルジュが土壌汚染調査や土壌汚染対策の仕様を設計し、土壌汚染コンシェルジュサービスの登録企業に提示して見積提案書を募り、集った見積提案書を一覧表にして顧客に説明する。顧客は見積提案書を比較してもっとも条件の良い企業を選定することができ、選定後は企業に対して直接発注することができる。登録企業については、実績が豊富で技術的に信頼できる企業を厳選してネットワークしている。 本サービスでは、専門のエンジニアが作成した共通の仕様や条件を提示して見積提案書を募るので、調査や対策工事の内容や品質にバラツキがなく、費用等の条件を正確に比較検討できるのが最大の特徴である。 サービスを開始して間もないが、既存の見積提案書の妥当性の評価や既存の調査報告書の解説と今後の方策に関する助言などを第三者意見として求められるケースも多く、土壌汚染に関する中立的な助言に対するニーズの大きさを実感している。

2008年7月2日(水)発表
                                                        建設汚泥リサイクルの手法とリサイクル製品の性能について
                            ジャイワット株式会社 営業部長 山本順一

 本システムは含水比の高い建設汚泥を脱水せずに、水溶性ポリマーを含む特殊固化材を用いて高含水状態のまま処理する建設汚泥リサイクルシステムである。
高含水比の汚泥に特殊固化材を添加することにより、ポリマーが水を吸着し見かけ上の含水比を下げ、土粒子にからみつくことにより細粒分を凝集する。そして、セメント系固化材が粒状化した土粒子の間や表面を被覆し、エトリンガイトやケイ酸カルシウム水和物等の生成および土とのポゾラン反応により強度を高める。ポリマーを加えた固化材は、吸水と同時に75?m未満の懸濁浮遊微粒子を団粒化するため、高含水性状の建設汚泥を0.1mm以上の大きさに造粒・粒状化・固化させることができる。
 改良土の性能であるが、一軸圧縮強度は改良後7日目には200kN/m2、コーン指数も800kN/uを確保することができ、国交省「処理土の土質材料としての品質区分と品質基準値」による第2種処理土以上となる。透水係数は10−3p/s前後となり、砂および礫の透水係数が10-3〜100p/sであることから、締め固めた改良土が砂と同程度の透水性を確保することができる。また、従来のセメント系固化材のみで改良された地盤の透水係数が10-5〜10−7p/s3)であることからも、本システムにより透水性のよい地盤の形成が可能である。
 改良土が自然の影響を受け乾燥・湿潤を繰り返すことにより、細粒化等の悪影響を起こさないかを調べる乾湿繰返し試験(スレーキング試験)や、改良土が施工時に締固めなどで発生する撹乱エネルギーによって粒子の細粒化を起こさないかを調べる締固め前後の粒度試験においても、実験前後の粒度分布に大きな変化は無くほぼ同じ粒度分布になる。このことから、改良体を用いた地盤が、雨水や地下水位による湿潤や地盤の乾燥、また締固めによるエネルギーを受けても細粒化は起こらないを確認している。
 設計CBR値は20%以上となり、実際舗装厚を検討する際には設計CBR値は20%が最高値であることから、これらの改良体は路床材として十分に利用が可能である。
凍結融解作用により、本システムで作成した改良土の粒子破壊を確認する凍結融解試験でも、造粒物が凍結融解の影響を受けて細粒化しないことを確認している。
 弊社では、土壌環境基準を満足する汚泥の改良を行っている。しかし、泥土と改良材を混合することにより、pH値が増加し、その化学的性状が変化することも考えられる。そこで定期的に改良土について「土壌の汚染に係る環境基準」に指定されている27項目について溶出試験を行っており、基準を満たすことを確認した後、それを販売することとしている。
 しかし、pHについてはセメント系固化材を使用しているため11〜12程度と高くなり、改良土の利用にあたっては覆土、敷土などを行うことにより、直接アルカリ分が流出することを防ぐような対策が必要である。
 
2008年7月2日(水)発表
                       重金属を含む土砂を判定する簡易分析手法
                              domi環境株式会社 山内裕元 
 
  建設工事の中で地盤汚染に遭遇した場合、その対策を迅速かつ適切に講ずることが求められる。土壌汚染に遭遇した場合、汚染性の有無を速やかに判定し、汚染の拡散防止に努めることが初動対策として重要であるにもかかわらず、現行の公定法による汚染判定には長時間を要するという問題がある。
 このような状況に適切に対応するため、独立行政法人土木研究所と民間企業8社により、平成16年度より平成18年度までの3年間、「簡易分析技術を用いて重金属類を含む土砂を判定する手法の開発」に関する共同研究を実施した。具体的には、土壌環境基準を超過する有害物質として事例が多い鉛、ヒ素、フッ素、ホウ素を対象として、土砂に含まれる特定有害物質が土壌環境基準を超過する可能性を、現場で簡易に分析し、判定する手法の開発を行なった。
 この共同研究成果について、次の4つの項目に分けてその概要を紹介した。
   @ 簡易前処理法
   A 簡易分析法(フッ素、ヒ素、鉛)
   B 簡易分析利用マニュアル(案)
   C ストックヤードにおける簡易土壌照合判定法の適用事例
 上記の検討項目のうち@については、「土研式簡易前処理法」と「超音波簡易溶出法」についてその成果を紹介した。また、Aでは「イオンメータ(イオン電極法)」、「蛍光X線分析(濃縮X線法)」、「イムノスティックス」の3手法について概説した。Bについてはストックヤードにおける利用マニュアル(案)を紹介するとともに、Cの「土壌照合判定法」という判定手法を開発し、実際のストックヤードに適用した事例について概要を紹介した。
 土壌照合判定法は、蛍光X線装置による含有量の分析結果から建設発生土の土壌環境基準超過の可能性を推定する手法であり、ストックヤードに搬入される建設発生土の土壌環境基準超過の可能性を判別する1次スクリーニング手法として提案されたものである。実際のストックヤードでデータベースを構築し同手法について適用した結果、土壌照合判定法で「基準超過の可能性がある土壌」と判定された土壌は搬入土の15%程度であった。なお、溶出試験の結果それらの試料はいずれも土壌環境基準値以下であった。 
  今後、このような簡易分析手法が多くの建設現場で手軽に利用できるよう、さらに検討を重ねていきたいと考えている。 

2008年7月2日(水)発表
                                      有機酸鉄錯体によるVOCの光分解
                                                    岩手大学大学院工学研究科 晴山 渉

 揮発性有機化合物(VOC)に汚染された地下水の揚水後の分解処理法には、O3/UV法等の促進酸化法がある。しかし、促進酸化法には、太陽光を用いることができない、中性付近で反応しない等の欠点がある。そこで、有機酸鉄錯体の光反応が着目し、まだその適用が検討されていないVOCの分解実験を行うことにより、VOCによる汚染の新たな処理法への適用とVOCの分解メカニズムを検討した。

  【クロロエチレン類の光分解】
シュウ酸と鉄イオンを用いてVOCの光分解実験を行った。VOCには、最も多くの地下水汚染が検出されているクロロエチレン類を用いた。その結果、どのクロロエチレン類も30分で初期濃度の約10%まで濃度が減少した。このことから、シュウ酸と鉄イオンを用いた方法により、クロロエチレン類を光分解できることが分かった。また、この光分解の生成物は二酸化炭素と塩化物イオンであった。
  【シュウ酸鉄錯体の形成とトリクロロエチレン分解】
初期pHを調整し、トリクロロエチレン(TCE)の分解実験を行うとpH3〜8のFe(III)(C2O4)33-が主な化学種として存在する条件で、光反応が最も活発であるためTCEの分解速度は最も大きくなった。また、pH3以下においては、Fe(III)(C2O4)2-の化学種が増加し、TCEの分解速度は小さくなる傾向がみられた。これはFe(III)(C2O4)33-とFe(III)(C2O4)2-の活性の違いによるものと考えられる。pH9以上においては、TCEの分解が見られなかった。この領域ではFe(III)(OH)4-が主な化学種であり、実際の実験においては水酸化鉄の沈殿が見られた。このため、シュウ酸鉄錯体を形成しておらず、TCEの分解反応は進行しなかったと考えられる。以上のことから中性付近のpHに置いても分解反応が進行することが確認された。また、TCEを分解した溶液の吸光度を測定したところ、300〜450nmの波長を吸収し、太陽光の波長を用いても光反応は進行することが分かった。.
 【TCEの光分解メカニズム】
 TCE分解反応におけるシュウ酸消費量の量論と酸素依存性は、既往のメカニズムでは説明できないことが分かった。そこで、シュウ酸鉄錯体によるクロロエチレン類の光分解の新たな反応メカニズムを提案した。

 2009年1月30日(金)発表
                         植物の重金属蓄積能とファイトレメディエーションへの利用
                                        東北大学大学院環境科学研究科助教 畑山正美

 ファイトレメディエーションは植物の生理作用を利用し、地圏、水圏、気圏から汚染物質を除去する方法の事を示すが一般的に本方法はコストが低い、エネルギー消費やCO2の排が少ない、低濃度・広範囲の汚染に対応可能などの利点が挙げられる。しかしながら、処理時間が長く高レベルの汚染に対応し難しい事や気候、土質など植物の生育可能な条件であることが求られることから制御が難しい問題となっている。これまでファイトレメディエーションは重金属類等や放射性物質から有機物質まで広範な物質に適応され、その有効性が証明されているが本法は根の長さに対応した深度まで浄化可能であるため、有機塩素化合物よりは表層付近に留まり易い重金属汚染への利用が好ましい。重金属汚染のファイトレメディエーションはhyperaccumulatorという重金属を高濃度に集積する特殊な植物を利用する。本植物は土壌の汚染濃度よりも何倍もの重金属を地上部組織に蓄積すると共に重金属に対して高い耐性能を持つ。以上のことから、ファイトレメディエーションに利用される植物の要件として以下の事項が挙げられる。@hyperaccumulatorであるAバイオマス量が多い事B植物根の成長範囲が広く、密度が高いC気候が適している。ファイトレメディエーションを行う際には蓄積機構の解明などの基礎研究とフィールド試験の両者が必要となる。蓄積機構の研究により吸収可能な重金属の化学形態や植物体中の重金属の毒性評価など使用する上で必要な知見が得られる。アメリカでは有機塩素化合物、PAHsのファイトレメディエーションが行われており、関連するベンチャー企業がいくつか存在する。アメリカとの他国との発展の違いはフィールド試験の多さに違いがあるといわれている。アメリカでは多くのフィールド試験の結果が本手法を後押ししている。日本でもフィールド試験が進められている事例があるが、まだその効果を検証する段階である。 ファイトレメディエーションは、浄化に長期間を要する事や制御が困難であること浄化の適用範囲が根の長さに依存してしまうといった欠点がある。また、実際のフィールド試験では効果の検証に何年も要するため、正確なコストや浄化間の算定が難しい。しかしながら、低環境荷・低コストな技術が求められている今日、ファイトレメディエーションは重要であり、基礎研究による技術評価と多くのフィールド試験により問題点改善されその利用が増してくと考えられる。

 2009年1月30日(金)発表
                               EDCによるVOC汚染浄化(国内外におけるEDC/EDC-E適用事例のご紹介)
                                                                エコサイクル株式会社開発部マネージャー 前田 信吾 

環境汚染物質として知られる、トリクロロエチレンやテトラクロロエチレンなどの有機塩素化合物(以下、VOC類)は、土壌中を浸透しやすく比重が水よりも大きいことから、漏洩後に地下深くまで浸透し、地下水に達すると溶解した一部が地下水流に乗って広域汚染を形成し、高濃度部位では、原液の溜りを形成するという特徴がある。こうしたVOC類による地質汚染に対しては、掘削処理、揚水曝気などの物理的手法、過酸化水素、鉄粉あるいはホットソイルなどの化学的手法などが浄化・対策技術として知られているが、浄化コスト、地上設備の制約、環境負荷といった面に課題があった。近年、微生物の汚染浄化能力を利用する、いわゆるバイオレメディエーションが脚光を浴びている。一般的に従来のバイオレメディエーションは、低コストに優位性がある反面、低濃度しか対応できないことや工期が数年単位となるといった点に課題があり、その適用範囲は、限定されていた。EDCは、VOC類による地質汚染を浄化するために開発された、土着の嫌気性微生物を活性化させ、増殖させることによりVOC類の自然浄化を促進するバイオレメディエーション用の栄養源製品である。EDCは、水に溶解させて地中に注入して使用する。その特長としては、@食品材料より構成されており、安全性が高い、A水溶性であることから、効果範囲が広く、注入井戸の設置コストが低減される、B分解性が高く、VOC分解に関る各種の微生物群に対して効果があり、それ故に効果発現が速やかであり、また有害な副生成物が残留しない、C簡易な設備で施工可能である。これらの機能により従来のバイオ工法に比べて短工期、低コストでの浄化施工を実現した。最近では、材料の効果を持続させることによりバイオレメディエーションの適用範囲の拡大を実現し、さらに適用事例数が増えている。この持続性の製品がEDC-Eである。EDC-Eは、食品材料から構成されている液体状の製品であり、EDCと併用することにより速効性のEDCに持続性を付加することができる。この持続性の付加によって、従来バイオレメディエーションの適用が困難とされていた、百mg/L超の高濃度のVOC汚染、粘土あるいはシルトなどの粘性土、塩分及び硫酸イオン濃度が高く潮汐による浄化剤の散逸が著しい沿岸部、域外流出・汚染流入の対策など様々な現場条件、汚染形態に対応することを可能とした。

2010年2月9日(火)発表

                          水,土壌,岩石環境中での元素の存在状態とその地球化学的意義
                                             東北大学 大学院環境科学研究科 小川泰正

 岩石,土壌中に存在する有害元素が人体に接近する最初のプロセスは,岩石,土壌中から“溶出”することである.溶出した有害元素は,地下水や河川などの水を移動媒体として“拡散”する.この水を飲用水として利用,あるいは,食物連鎖を通じて,有害元素は我々の人体へと取り込まれることになる.従って,環境リスク評価を行う上では,この“溶出”と“拡散”の2つのプロセスを考えなければならない.環境省告示18号試験は,汚染土壌中から溶出した有害元素が,地下水を経由して人体に取り込まれた場合の毒性評価であり,地球化学的に重要な“溶出”と“拡散”の2つの過程の評価が含まれている溶液中での化学種は,フリーイオン,錯体,イオンペアなどの真溶存種とフミン酸等の有機コロイド,鉄やアルミニウムなどの酸化物,水酸化物,微細粘土鉱物などの無機コロイド,微粒子への吸着体に大別される.そして,有害元素がどのような化学種で存在するかにより,元素の移行メカニズムの差異が報告されている.そして,生体に対して害毒を与えるのがフリーイオンであり,錯体形成や微細粒子への吸着は,有害元素の持つ毒性を低減すると言われている.従って,どのような形態で有害元素が土壌や岩石中から溶出するのかは,重要な問題となる.環境省告示18号試験のような水による抽出実験では,土壌,岩石中に含まれる有機物,粘土鉱物,水酸化物等が,0.45?mフィルターでも除去することのできない微細なコロイド粒子として分散することがある.このろ液に対して限外ろ過(5000 dalton)を施したところ,コロイド粒子だけでなく有害元素の大部分が除去される傾向にある.このことは,有害元素は,溶存イオン(フリーイオン,錯体など)で存在しているのではなく,その大部分は微細コロイドへの吸着態として存在することを意味する.ここで問題となるのが毒性の評価である.植物は根から溶存イオンとして存在する成分を吸収する.故に,コロイド吸着態として存在する有害元素は,直接,吸収されることはない.しかし,植物は根から酸を出し,岩石成分を溶解して成分を吸収することもできる.土壌,岩石やコロイド粒子に存在する有害元素は,コロイドや岩石成分との結合が比較的に弱く溶出しやすいものから,自然界で起こり得る地球化学的作用では溶出する可能性が極めて低いものと,存在形態,溶出のしやすさは一様ではない.植物を起点とした食物連鎖からの有害元素の人体への移動を考える場合,有害元素の溶出時の形態(溶存イオンであるのか吸着態であるのか)のほか,吸着態として存在する場合は,根から分泌される酸により溶出し得るのかを考慮する必要があると思われる.さらには,有害元素が地下水経由で直接人体に取り込まれることを想定する場合も,コロイド粒子の地下水脈での移動性,及びコロイド粒子内で存在する有害元素が胃酸により溶出し得るものなのかを評価することも必要ではないかと考えられる.

2010年2月9日(火)発表
                                    土壌汚染対策法における土壌分析法の現状と課題
                                               東北緑化環境保全(株)測定分析事業部  後藤 妙子

  土壌汚染対策法では,土壌汚染にかかわる基準値が定められその値は土地売買の契約や土地の活用に使用されるなど測定の重要性は明らかである。
   従って,環境省ではその測定方法を平成15年環境省告示(環告)16号(土壌ガス調査),17号(地下水調査),18号(土壌溶出量調査)及び19号(土壌含有量調査)
   に定めている。
しかし,その工程で分析精度上明確化されていない部分があるため,多くの課題が浮き彫りとなっているのが現状である。それらの一部を報告し
   たい。


1.   土壌溶出量調査に係る測定方法(環告18号)
 (1)風乾から中小礫や木片除去及び疎砕
   礫の大きさや木片の定義が明確でないため個人差が発生する。また,礫が大半の場合は対象とする土性を明確化する。この場合,顧客とのコミュニケーション
     が重要となる。

 (2)振とう
    環告では振とう回数と振り幅及び時間が明確にされているが,縦振または横振の指定はないため,十分な攪拌が行われていることを浸透状況で目視観察し
     分析機関のマニュアルに盛り込むことが繰り返し精度向上につながる。
また,土壌の中には成分によって緩衝作用を持っていたり土壌のpHに左右されること
     が多い。土壌が酸性の場合は金属の溶出量が増加する。水質と異なり均一性の低い土壌では値の再現性が低い。従って代表となる試料を採取すること,
     均一な試料分取は値を変動させる重要ポイントである。出来上がった検液のpHはpH調製した同一溶媒で行うものの,先に述べたような理由から複数個の値
     が同じにならない場合がある。

  (3)遠心分離及びろ過
   遠心分離することでコロイドを除去することになっているが,現状ではなかなか除去できない場合が多い。これらを0.45?mメンブランフィルターでろ過すると,
      0.45?mでも通過するコロイドがあるためろ過初めと終わりのろ液性状が異なる。また,コロイドに溶出成分の吸着が起こるためろ過速度で濃度が変動する等
     の影響を及ぼしている。

 2.   土壌含有量調査に係る測定方法(環告19号)
   (1)振とう及び静置
      含有量試験では,土壌の誤飲を仮定し人体の胃酸濃度に合わせた塩酸濃度が溶媒となっている項目がある。この塩酸溶液で溶出した時,発泡する試料
      には炭酸塩が含有されていると推測される。また,セメント成分が多く含まれるなどアルカリ性土壌では中和反応による発熱が伴う場合があるため,安全
      な作業を行うためには反応が収まってから振とうするなどの注意を要する。

   (2)遠心分離及びろ過
    (1) に記載したような試料は2時間振とう後も反応が完了していると限らないため,観察後に次の操作に写ることが安全作業になる。しかし,塩酸による
       溶解が完了しない場合は,放置時間やろ過時間で濃度に影響を与える。

3.分析
   (1)前処理
     含有量試験の場合,溶出の際,溶媒である塩酸と反応しガスになった砒素,セレン及び鉛が揮散し低濃度になる可能性がある。また,六価クロムは検液が
       着色している場合に三価クロムとの分離操作が必要である。フッ素やシアン分析の蒸留操作では,油分を多く含む試料の場合にその油分成分が留出し
       測定不能となることがあった。今後検討をしていきたい。

   (2)測定
     測定方法では様々な装置を選択できるが,試料のマトリックスなどを考慮して選択することが重要である。
 3. まとめ
        溶出試験の測定結果つまり分析の妥当性は試料性状と前処理から溶出し検液作成までの操作で決まってしまう。それは,溶出条件によって左右される
        ため,試料の代表となる検液を作成するのは非常に困難ではあることが大きな要因である。測定した結果の妥当性を証明できるように操作の記録を
        持つことが値を保証することにつながる。適正な品質管理と事前の試料情報入手などが短工期や信頼性の高い測定につながると考えそれらを実行し
        ている。

                                                                
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