銅アンモニアレーヨン 裏マニュアル ver. 1.10β 文責 吉野 I.出発前/確認と作業 1.薬品類 (一回一テーブル当りの量) 濃アンモニア水 9.16 mL 硫酸銅(II)五水和物 1.00 g 20%希硫酸 50 mL (濃硫酸 6.45 mLを水で希釈して定容とする) 水酸化ナトリウム 0.35 g 脱脂綿 0.3 g 2.器具類 (準備で使用する分) 5mL駒込ピペット x 3 (濃アンモニア水, 1%アンモニア水, 8%NaOHaq用) 5mL駒込ピペット用球 x 3 100mLビーカー x 2 (1%アンモニア水, 8%NaOHaq用) 薬匙 撹拌棒 (一テーブル当り) 50 mLビーカー x 2 (シュバイツァー試薬, 1%アンモニア水用) 100mLビーカー x 1 (20%希硫酸用) 撹拌棒 x 1 注射器シリンダー x 1 注射器用針 x 1 ポリ手袋 x (テーブル当り生徒数 + 1) 3.すること 1) 必要量の硫酸銅(II)五水和物を乳鉢ですりつぶして粉末にし、1.00gづつ分包する。 2) 必要量の20%希硫酸を調製する。 II.当日/準備方法 1.共用試薬の調製 以下の試薬を、演示前に必要量調製する。 1) 8%水酸化ナトリウム水溶液 10mLは、水酸化ナトリウム 0.87g を水に溶かして定容として調製する。 一回一テーブル当り 4mL 必要。 2) 1%アンモニア水 10mLは、濃アンモニア水 0.4mL を水で希釈して定容として調製する。 一回一テーブル当り 4mL 必要。 2.シュバイツァー試薬の調製 以下の手順で調製する。以下は一回一テーブル分で、必要な個数調製する。 1) 50mLビーカーを一つ用意し、濃アンモニア水 9mLを入れる。 2) これに、硫酸銅(II)五水和物一包(1.00g)を少しずつ加え、撹拌棒でよく攪拌して溶かす。 3) これに、8%水酸化ナトリウム水溶液 4mLを少しずつ加え、静かに攪拌する。 3.その他準備すること (一回一テーブル毎に) 1) 脱脂綿 0.3g を取り分ける。 2) 1%アンモニア水 4mL を50mLビーカーにとる。 3) 20%希硫酸 50mL を100mLビーカーにとる。 4.この実験の番がきたら 以下のものを各一個づつテーブルに用意する。 1) シュバイツァー試薬(青)入り50mLビーカー 2) 1%アンモニア水(無色)入り50mLビーカー 3) 20%希硫酸入り100mLビーカー 4) 脱脂綿(0.3g) 5) 撹拌棒 6) 注射器シリンダー 7) 注射器用針 5.注意点と備考 1) シュバイツァー試薬の調製には約15分を要する。 2) シュバイツァー試薬は調製してから時間がたつと劣化する。一時間ぐらいで水酸化銅の沈殿が生じ、セルロースを溶かさなくなる。 3) なので、人手と必要量から考えて、遅れないよう早すぎないよう調製をはじめる時間を決める必要がある。 4) ポリ手袋は予めテーブルの方に用意されているものと見なしていますが、出ていないときはポリ手袋人数分もテーブルに用意する。 III.当日/演示 1.確認事項 1) 手袋着用。演示者、生徒とも。 2) 酸及び塩基を使用。生徒に注意を促すこと。 3) 万一皮膚や衣服に試薬がかかった時は、すぐに多量の水で洗うこと。 2.手順 1) 脱脂綿を少しずつ小さくちぎってシュバイツァー試薬に加え、撹拌棒でよく撹拌して溶かす。 溶けるところを生徒に見せると良い。 2) 脱脂綿がすべて溶けたら、これに1%アンモニア水を加えて撹拌する。 3) 得られた溶液を注射器のシリンダーにとり、針を付ける。 4) 注射器の針先を20%希硫酸の中に入れ、溶液を押し出すと青い糸になり、しばらくすると白くなる。 5) 生徒に交代で4)をさせる。 3.注意点と備考 1) セルロースの溶解に約10分かかる。 2) 黙っていると飽きられます。 3) 生徒にセルロースの再生をさせ始めたら、中断して説明を聞いてもらうのは困難と思われます。 4) というわけで、セルロースの溶解中に、原理や関連などの話をしてしまうことをお奨めします。 5) セルロースを再生して遊ぶのに10分ほど必要か。 6) 針が詰まっているのに無理にピストンを押すと、針が抜けてせっかくのセルロース溶液を失うことになります。 危なそうなときは針を手で押さえながらするのがよいと思われます。 4.えとせとら 1) Schweizer's reagent; [Cu(NH3)4](OH)2溶液。 2) シュバイツァー試薬にはセルロースがコロイドになって溶ける。酸を加えるとセルロースが再生する。 IV.当日/後片付け 1.すぐにすること 1) セルロース溶液の付いている物すべてを希硫酸廃液で洗ってセルロースをすべて再生、固形化させておく。 2) 針は念入りに洗って詰まりを除いておく 2.その日の終わりまでに 1) 希硫酸廃液から固形物を取り除き、これを水でよく洗う。 水を切って燃えるゴミとして持ち帰る。 2) 余った8%水酸化ナトリウム水溶液と1%アンモニア水は希硫酸廃液に加える。 加えた体積を記録すること。 3.注意点と備考 1) 廃液は銅を含むので、他の廃液の中和にはまわさないこと。 2) 余った8%水酸化ナトリウム水溶液は、計算上 10mLが濃塩酸(12N) 1.8mLで中和。 3) 余った1%アンモニア水は、計算上 10mLが濃塩酸(12N) 0.5mLで中和。 V.後日/後片付け 1.処理方法 1) 固形物は燃えるゴミ。 2) 廃液は、中和して廃液タンクへ。沈殿を生じないようpHを調節する。 2.廃液の量と成分、及び中和に要する量 希硫酸廃液は、余った塩基溶液を加えなかったとすると、 (一回一テーブル当りの量) アンモニア 9.16 mL 硫酸銅(II)五水和物 1.00 g 硫酸 6.45 mL 水酸化ナトリウム 0.35 g を含み、約 70mL で、計算上は 3.53g の水酸化ナトリウムで中和。 未使用20%希硫酸は、計算上、50mLが 9.29g の水酸化ナトリウムで中和。 処分しないで置いておくのも可か。 VI.検討課題 1.針の目詰まりとセルロース溶液の粘度 セルロースの量が多いとセルロース溶液の粘性が大きくなり詰まりやすい。 1%アンモニア水の量を加減して粘度調節可能だが、その場で調節は難しいような気がする。 セルロースの溶解が完全でない時も詰まる。 時間をかけて洗えば詰まりはとれるが時間がないので替えの針を多く用意しておくべきか。 もっと粘度を落としてみるか。細い針でもできるようになるかも知れない。 VII.改訂履歴 1.00β -> 1.10β: 試薬使用量をほぼ確定。