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後書き

戯れ言

化学部における実験活動を終えるにあたり、振り返ってみると、 まず楽しかったです。物質を溶かしたり混ぜたり加熱したり冷やしたり、 などなど各操作のたびにうまくいったり失敗したり、また予想通りの 変化が起きたり思わぬことになったりと、色々なことが起きるのが 楽しかったです。また、変化が起こらず待っているときも、 間違えて何も起こらないのか、起きているけれど見えてこないのか、等々 考えるべきことはあって、それはそれで楽しかったです。

面白かった、というのもあります。私は、以前は形の整った美しい結晶 をみて綺麗だなあと思うことはあっても、結晶を成長させてみたいなどと 思ったことはほとんどありませんでしたが、有機化合物の結晶を製取 してみて考えが変わりました。物質ごとに異なる多様な結晶形。 文献に針状と書いてあっても、物質が違えば違った風合いの針状晶が 生成する。結晶させる条件や環境によっても形や大きさが違ってくる。 こればかりは実際に結晶させてみないと見られないもので、 結晶は面白いものなのだなあ、と納得しました。 また、成長の速い結晶では、何もない溶液中から徐々に何かが現れ、 形を取りどんどん大きくなっていくのが観察でき、 これもまた面白いものでした。

失敗もよくしました。せっかく得たものを全部だめにしてしまって 悔しい思いをしたこともしょっちゅうでした。化学部で実験を始めた頃と 比べて、少しは実験技術が向上したのかどうかはわかりませんが、 何か得る物があったとしたら嬉しいです。

反省、としては、有機化学の学習と平行して実験をしていたこともあり、 何をしているのか理解せず実験していたことがままあった、ということです。 結果についてもあまりまともに考察した/できたとは言えないものがあり、 その辺が反省点としてあげられます。また、よく理解せずに実験を とにかくするということで実験書にすがって実験を行い、 もう一歩踏み込んで少しでも新しいことをしてみるという姿勢に 欠けていたというのも残念です。 これらの反省を今後の某かに生かしたいと思います。

個々の実験について覚え書き

有機化学反応が面白い、結晶が面白い、と最初に思えた実験は ジベンザルアセトンの合成実験だと思います。液体同士の反応物を 混合しても何も起きないのに、塩基溶液に加えると次第に様相が変化して 最後には結晶が容器を埋めるというのが面白かったのです。

一番感動したのはcis-ノルボルネン-5,6-endo-ジカルボン酸の合成でしょうか。 酸無水物を加水分解してジカルボン酸を結晶させた溶液をろ過したところ、 液体を除くと大きな無色の針状結晶がブフナー漏斗上に山になって現れました。 ろ過するまでこれほど大きくて綺麗な結晶には見えなかったので、これには 感動しました。

実験で得た生成物の中で一番綺麗な色のものはビス(グリシナト)銅(II) だと思います。やはり金属錯体は色合いが鮮やかです。この錯体は 配位子の配位の仕方によって2つの異性体があり、結晶形と色が違いますが、 加熱して青色のcis体から紫色のtrans体に変える操作も面白かったものの一つです。

蛍光といえばフルオレセイン。フルオレセインのあの蛍光の強さと美しさは 何度見てもいいものです。

キンヒドロンは生成させて感動できた物の一つです。有機物であろうと 条件さえ満たせば金属光沢を持つというのはわかってはいても、 実際目の当たりにすると感動できるものです。


謝辞

私がこのような実験を行うことができたのは東京大学教養学部化学部 があったからこそであり、化学部が実験室で活動することを許可 して下さった教養学部化学教室、及び顧問の尾中篤助教授に 深く感謝致します。また、私の勝手な実験をあたたかく見守ってくれた 化学部員の皆様にも感謝を申し上げます。


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