私は待ち続ける。
ずっと、ずっと。

あの人のいなくなった空を眺め
叶わぬ願いを胸に秘めたまま。
ずっとずっと。

想い人を想いながら
編み続けたマフラーも随分長くなった。
この手編みのマフラーをいつか
渡せる日が来る事を夢見ながら。

こんな事
無駄だと分かっていても
これは
コレだけは止める事は出来ない。

コレを止めると言う事は
私のこの想いに終止符を打つと言う事だから。
そんな事はこの世が終わろうとも絶対に無い。
私のこの想いが永遠に無くなるなんて。

例え
あの白猫に寝取られたのだとしても。
あの人が私に兄さんで無くなる事は無いのだから。


























「待ち惚け」









































「秋葉様。随分長くなりましたね」
紅茶を入れた琥珀が私の手元を見て呟く。
仄かに香るこの香りを楽しみつつ。
続けていた編み物を一時止めて紅茶を持つ。
いつも愛飲してる紅茶。
兄さんも好んでいた紅茶。

そう思うと。
胸の奥が締め付けられる様に痛む。
兄さんの事を考える度に襲われる形容し難い痛み。

コレが嫉妬とか負の感情なら
又別の方法があったと思うけど。
今の私はとても落ち着いて対処出来ている。
自分でも驚く位に。

それでも
決して兄さんの事を諦めた訳でも無く
ワザと冷静ぶってる訳でも無く。
至って普通の精神状態であの時から過ごしている。

「ん。おいし」
一口含みその味と香りを楽しむ。

緑茶が好きな兄さんだったけど。
こうやって私とよく午後や夜のお茶会をしましたよね。
その時は私の飲んでる紅茶を横から飲んだりして。
あの時の事。
私は忘れていませんよ。
帰って来たらお仕置きですからね。

「琥珀。貴女もどう?
少しは時間、あるんでしょ?」
横に控えている侍従に声をかける。
呼ばれた侍従は暫し首を傾げると

「ええ。これからは特に差し迫った用事は無いので
大丈夫ですよ」

「なら構わないわ。
琥珀、翡翠も呼んでらっしゃい。
三人で久し振りにお茶会でもしましょう」

琥珀は
分かりました、と言うと双子の妹を呼びに一度席を外す。
そんな琥珀を横目で眺めつつ
私は空いた時間で
又手元にある編み物を再開する。

兄さんがいなくなってから始めた編み物。
最初は手慰み程度に始めたものだけど。
今では趣味の一つを言っていい程に上達した。
何かに集中していないと直ぐに感情が乱れてしまったあの頃。
見るに見兼ねた琥珀が勧めて始めた編み物。

琥珀から手取り足取り教わり
漸く一つ形はいびつだけど出来上がったマフラー。
一つのものが出来上がる事の嬉しさ。
それを見て欲しくて
今でも作り続けている。

毎年冬が近付くと編み始め
今回で何個目だろう。
もう数え切れない位の失敗作と成功作。
その中から一番出来のいい物を兄さんへと。
ずっと仕舞ってあるけど兄さんが帰って来たら
この品を差し上げますからね。

糸を棒に絡め、一つ一つ丁寧に編み上げて行く。
糸の一本一本に願いを込めて編み上げたこのマフラー。
知ってますか?兄さん。
私が全て作ったんですよ。
このマフラーも、手袋も、セーターも。
どうです?
ぴったりなんですよ?
当然です。
だって秋葉は何時まで経っても
兄さんの妹、なんですからね。























ですから早く帰って来て下さい。
何時までも待っていますからね。
兄さんが
「ただいま」ってドアを開けるその時を。































親愛なる
愛しい兄さん。
























FIN
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後書き
月詠:ハイそーゆー事でコンニチハ。
秋葉:ハイこんにちは。
月詠:年明けましたねー。
秋葉:そうね。
月詠:では一応しますか?
秋葉:この前の作品でしたんでしょ?
月詠:したと思う。
秋葉:もぅ。皆様新年明けましておめでとう御座います。
月詠:本年もどうぞ宜しくお願い致します。
秋葉:挨拶くらいちゃんとしなさいよね。
月詠:面目次第も御座いません。
秋葉:さて、それでは恒例の解説よ。
月詠:こちらは「EIJI・S様」よりのキリリクです。
秋葉:何でも兄さんがあの白猫と一緒になる時の私の心理描写とか言ってたわね。
月詠:あの作品を知らないでも読める様に少し都合のいい様に解釈をしましたが。
秋葉:何でよりによってあの泥棒猫なの!
月詠:カレに直接聞いて下さいよ。私は知りません。
秋葉:この私を捨ててあのあーぱーと一緒になるだなんてー!
月詠:人の好みなんて千差万別だしね。
秋葉:でも許せないのは許せないの!
月詠:んな我が侭な。
秋葉:我が侭でもいいの。兄さんは私のものなんだから!
月詠:そうやって雁字搦めにするのがいけないと思うけど?
秋葉:だって、こうでしないと兄さんが又どっか行ってしまいそうで。
月詠:不安の裏返し、ね。
秋葉:現にこうやってどっか行ってしまったし。
月詠:そりゃ不安だよなー。何処にでもホイホイ首を突っ込む性格だしね。
秋葉:ホント、少しは自重して欲しいわ。私の身にもなってよね。
月詠:それは無理でしょ?
秋葉:大丈夫。知ってて言ってるから。
月詠:貯まってるのね、秋葉様も。
秋葉:えーそーよ。貯まりっぱなしよ。いつでもMAXよ!!
月詠:超必殺技連発状態ですか。
秋葉:髪の毛真っ赤っ赤よ。
月詠:御願いですから暴走はよして下さいね。
秋葉:暴走は次回に持越しよ。
月詠:結局暴走するのね。
秋葉:あのスケコマシ。目にモノ見せてやるわ。
月詠:仮にも兄でしょ?スケコマシ発言は。
秋葉:構わないわ。
月詠:構わないのね。
秋葉:構いませんとも。
月詠:ならいいです。
秋葉:そろそろ行数も来たわね。
月詠:そうですね。
秋葉:では締めますね?
月詠:それではここまで読んで頂きまして誠に有難う御座います。
秋葉:暇でやる事も無い時にでもメイル送って上げると悦ぶわよ。
月詠:それでは皆様又次回のここお会いしましょう。
秋葉:それでは御機嫌よう。
月詠:本当に有難う御座いました。






































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後書きの後書き(舞台裏)
はい。
月詠です。

えー一応解説しますと。
こちらは「EIJI・S様」よりのキリリクでして。
カレの作品で志貴がアルクと一緒になって出て行ってしまった時の
秋葉様の心理描写、だそうです。
所々私の都合のいい様に解釈をしてますが。
概ね合ってると思います。

彼の作品を知らない人もいるでしょうから
それ単体でも読めるように仕上げていますから。
予備知識が無くともすんなりと読めると思います。
又コレを読んでから彼の作品を読まれても宜しいかと思います。

是非読んで下さい。
そして感想メールを送って上げて下さいね。


今回の秋葉様は随分と大人しいですが。
それはあの事件以降成長したのです。
色々と。
いつもカリカリしてるのではなくてどっかりと構える事も必要と
悟ったのですよ(多分)

そこまで余裕があるかは分かりませんが。

普段とは違う秋葉様を発見出来たのならば幸いです。
それでは。
又次回のここでお会いしましょう。

月詠でした。

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