戴冠式(CORONATION)
トーン。
グラスがテーブルにぶつかり、甲高い音を立てる。
本来礼儀作法に五月蝿い秋葉がこの様な無作法をすると言う事は無い。
無いと言うか、滅多にしない。
いつも完璧な、そう「レディ」として幼少の頃より育ったのだから。
だが。
それでも今日の秋葉はそんな事もお構い無しに、グラスをテーブルに打ち付ける。
そして忌々しげにグラスの中身を一気に飲み下す。
まるでその中身が親の仇かの様に、いつもの優雅さからはかけ離れた行為。
丸っきり酒と言う物を味わおうとしない。
只流し込み、只酔おうとする。
「その様な飲み方では酔おうにも酔えませんよ?」
見るに見兼ねた『バーテンダー』がカウンター越しに一言忠告する。
「そんな事、分かってますっ!」
何を言っても無駄な気がしないでもない。
完全に「出来上がってる」風さえする秋葉。
普段の彼女ならこの程度の量では酔う事も
ましてやこの様に他人に絡む様な真似は決してしないだろう。
「ええ!
今の私がみっとも無い酔っ払いの典型である事も!
誰彼構わずに管を巻いてる事も!全部分かっていますっ!」
分かっているのなら少しは抑えて欲しいものだが。
そう万人が思っていても酔客にはそんな気持ちは伝わらず。
先程から延々と同じ会話がなされている。
先程の『バーテンダー』の台詞でさえ
今日、いや今夜でもう何度目か分からない位だ。
それでも未だに自我を持って管を巻いている辺りは流石と褒めるべきなのだろうか?
何杯目かのカクテルを飲み干し、又もグラスを大きく振り被る。
又打ち付けるのか?
『バーテンダー』がそんな目で秋葉の一挙手を見守る。
しかし。
今回はグラスの悲鳴は聞こえず。
代わって。
「はぁぁぁぁぁぁぁ……」
盛大な溜息が一つ。
そのままペタンとカウンターに突っ伏す。
漸く気持ちが収まったのか。
ほんのりと顔色も朱に染まり始める。
吐き出される吐息も微かに酒の香りに彩られ。
カウンターに突っ伏したまま流れる己の黒髪を見やり。
「どーせ秋葉は可愛くないですよー。
スタイルだってアルクェイドさんやシエルさんには敵いませんし。
翡翠や琥珀みたいに可愛げがある訳でもなく。
兄さんにとっては
只の『口煩いイモウト』としか写っていないでしょうし」
誰に聞かせる訳でもなく一人ごちる。
指に髪を巻き付けたり、毛先を弄んだり。
そうかと思うと
テーブルに指で何かを落書きしたり。
「そう思っているのでしたら。
少しずつにでも変えて行けるのでは無いですか?」
今の愚痴を聞いていたらしく
グラスを拭いていた『バーテンダー』が秋葉に諭す様に呟く。
『バーテンダー』の言葉を聴いて。
ムクリと鎌首をもたげる。
目は据わっていて、その為自然と目付きは鋭くなり。
「そんな事、言われなくても分かりますっ。
私が知りたいのはどうやったらいいのかと言う方法なんですっ」
……なまじ自我を持った酔客は始末に困る。
しかもソレが普段は頭脳明晰な人物だったら尚更だ。
如何な酔っているとは言え、こちらの言葉に正確に反論してくる。
しかも理路整然とでは無く、自分の意見のみを怒涛の如くにぶつけて来る。
何を言っても無駄だと悟ったらしい『バーテンダー』は
又カウンターに残ったグラスを拭き始める。
そして
「はぁぁぁ……」
残るは秋葉の溜息のみ。
それでも又カクテルを注いでくれる『バーテンダー』
ツィ、と秋葉の方にカクテルを押し出し。
「如何にお強くてもこれ以上飲まれますと、明日に差し障りますよ?」
その忠告を聞いているのかいないのか。
差し出されたカクテルを一瞥すると。
「言われなくても分かっています。
私だって好き好んでこんな醜態晒してる訳でもないんですから」
さっきまでの覇気が全く感じられない口調で。
突っ伏したまま、カクテルグラスの縁を指でなぞる。
何度も何度も同じ円を描き続ける。
「……兄さんの、バカ」
ちぃぃぃん。
指でグラスを弾く。
澄み切った音が店内に木霊する。
その音はまるで今の彼女の心を代弁しているかの様で。
冷たく固く頼りなさげで。
儚さすら感じさせる、木霊。
「……バカ……」
もう一度同じ言葉を吐き出し。
同じくグラスを爪弾く。
「秋葉の気持ちも知らないで。
秋葉の事を見てくれないで、ソレでいてこんなに私の事をヤキモキさせて。
この甲斐性なし、女たらし、女の敵、変態、ロリコン」
酔いに任せて何やら物騒な単語も飛び出してくる。
だが。
それでも何故か頷いてしまえるのは彼の今まで所業の所為であろうか?
自業自得と言えばソレまでだが。
聊か酷い言われ様な気もしなくも無い。
彼女はそのまま思いつく限りに
罵詈雑言を今目の前にはいない兄に対して浴びせ続ける。
もし彼が実際にその場にいたら?
そしてその言葉の乱撃を受けていたら?
誰か彼に同情するであろうか?
酔客の愚痴を一身に受けている彼を助けようとするのか?
…………否。
恐らくは誰も助け舟は出さないのではなかろうか?
幾ら暴言を吐いていようが。
管を巻かれていようが。
ソレは傍から見れば。
他愛の無い「痴話喧嘩」にしか見えないのだから。
「夫婦喧嘩は犬も喰わぬ」と昔からの格言通り。
このテの喧嘩には囃し立てる者はいても、救いの手を差し伸べる者は皆無だろう。
お節介の集団である
ここ『MOONTIME』の面々であろうと。
結局。
彼女は愚痴を言っていても、管を巻いていても。
ソレは他人には「惚気」にしか聞こえないのだ。
他人の「惚気」程聞き難いものは無い。
他人が何を言おうとも当人がのめりこんでいる為に馬耳東風。
最後まで付き合わされるのだ、永遠と。
胸に支えていたものを全て吐き出せたのか。
一頻りの悪口を言い終えて。
はふぅ、と小さく息を付く。
「ゴメンなさいね、『バーテンダー』さん。
みっとも無い所をお見せしてしまって」
落ち着いた口調で先程の非礼を詫びる。
顔が赤いのはどうやら酔いだけでは無さそうで。
「いえいえ、構いませんよ?
ここは皆様が思い思いに寛がれる場所ですから。
お酒を飲まれて日頃の憂さを晴らす方も沢山居られますし。
まだ秋葉様の晴らし方なんて可愛いものです」
ニコリと微笑みながら『バーテンダー』が新しいカクテルを作り始める。
「そうなんですか?
あれでもかなり御迷惑だったと思いますが」
やや小声でごにょごにょ言う辺り、自分でも罪悪感はあるみたいだ。
「ええ、酷い方になりますと」
と
そこまで言いかけて辺りを見回す。
周囲のその人物がいないのを確認すると。
「酔った勢いで『破壊』しますから」
「破壊」?
暴れるのではなくて、破壊?
ソレは文字通り、この店の物を壊し捲くると言う事?
「そうです。
まぁ、その時は丁度彼自身もストレスが頂点だったのでしょうね。
来店時から顔つきが変わっていましたから。
そして一口カクテルを飲み始めて、いきなりですよ。
『うお〜〜ッ!!何だか分からんがとにかくゆるせ〜〜〜〜ん!!』
と叫んだかと思うと。
手当たり次第に備品を壊し始め。
止めに入った私達を巻き込んで散々暴れ回ったんですから。
何だか分からないのはこっちの方でしたよ」
その時を思い出したのか。
『バーテンダー』の表情に影が落ちる。
その口調からするとかなりの被害だったのだろう。
クルリと見回す。
ソレらしい箇所は無いが、キチンと修復されているのだろうか。
「ああ、当然すぐに修復しましたよ。
でないとお店を開けませんからね。
その後、暫くは彼は入店禁止となりましたが、今ではそれも解けて
落ち着いて飲みに来られていますよ」
「あんまり感心しないなぇ。
そう人の秘密を簡単に話すと言うのは頂けないね」
不意に背後から男性の声がする。
『バーテンダー』はそんな不意打ちだったと言うのに顔色一つ変えず。
「お帰りなさいませ、『レッド・アイ』様。
ようこそお出でになられました」
と普段のスタイルのまま彼にカクテルを作り始める。
『レッド・アイ』もそんな『バーテンダー』を見やり鼻を鳴らす。
「フン。表面を装ったって動揺が見て取れるぞ。
俺へのカクテルは落ち着いてからでいいさ。
カタカタ震えたまま作られたんじゃ美味しい物も不味くなる」
被っていた帽子をカウンターに置き、そのまま秋葉の横にスツールに腰を掛ける。
「こんばんわ、お嬢さん。今夜はお一人かい?」
懐から煙草を取り出しながら話し掛ける。
「ええ御機嫌よう、『レッド・アイ』さん。今夜は月を相手に」
そう言って吹き抜けになっている店の天窓を見上げる。
つられて『レッド・アイ』も見上げる。
天窓には真円を描く、白銀の天体。
穢れ無き純白をその身に纏う孤高の旅人が。
柔らかな光を分け隔て無く降り注いでいた。
「中々洒落た文句を返して来るじゃないか。
さっきまでの乱れ様とは大違いだな?」
ニヤリと底意地の悪い笑みを投げて寄越す。
「見ていらしたんですか?」
瞬間、顔が真っ赤に火照るのが分かる。
確かに酔っていたから誰かに見られるのは当然だが。
今は『バーテンダー』一人だったと言う事もあり。
自然、酒が進み
結果。
あの様な痴態を晒してしまった訳で。
『バーテンダー』ならいいのかと言う疑問もあるにはあるが。
「ああ。散々『惚気』ていたのをばっちりとな。
全く少しは大人しくなったかと思っていたが。前と変わっていないのか?」
煙草を一本咥えて呟く。
そう言われるとツライ。
以前彼には兄さんとの一夜を演出して貰った恩がある。
それに何かと私に気を掛けてくれていて。
こうやって一緒になった時などはアドヴァイスを貰ったり。
そんな彼の前で以前と変わらない幼稚な悋気を爆発させてしまって。
「まぁ人はそう簡単には変わらないしな。
一朝一夕でガラリと劇的に変化するとも思っていないさ」
咥えていた煙草に火を点け様として。
「おっと。レディの前での喫煙はNGだったな。
すまんな、いつもの癖で」
そんな事を言いながら煙草を仕舞う。
こう言うさり気無い所が彼が紳士なのだと実感する。
常に他人に気を配り、配慮を怠らない。
どっかの誰かさんにもこんな風な男性になって貰いたいから。
私も無理をして『口煩いイモウト』を演じていると言うのに。
「それはどうかな?」
『バーテンダー』から差し出されたカクテルを受け取り『レッド・アイ』が問う。
「果たしてソレだけが理由かな?
ソレは君の願望ではないのかな?君の願望を他人に、
そして愛している彼に押し付けているのではないのか?
『私の恋人ならコレ位のマナーは知って貰わないと』
『私の恋人(モノ)なんだから』と言うのが君の頭の片隅に無いと言い切れるか?」
チラリと私の顔を覗き込む。
思わず、うっと呻いてしまった。
図星だ。
確かにそんな思いが無かったとは言えない。
口では兄さんの為とか言いながら
心の何処かに「ワタシノモノ」と言う前提条件があったのかも。
だから兎角口喧しく彼是あれこれ言っていたのかしら?
「私の恋人として立派な紳士」になって欲しいが為に。
そこには兄さんの意思とか自由とかは全く無く。
私の押し付けがましい行為のみ。
「ソレに気付くだけ救いがあるな。
気付かない奴は相手の気持ちなんてお構い無しにズカズカ土足で上がり込んで行くからな。
そうなればもう相手は人間じゃない。
己の意志のままに動く『人形』と変わらんな」
絶句。
私はそんな風に兄さんを見ていたのかしら?
自分の思いのままに動いてくれる勝手のいい「恋人」と言う名の幻想。
そんな筈は無い。
だって
だってこの胸の想いは。
このずっと秘めていたこの想いは。
決して「幻想」なんかじゃない。
「これからは少しだけ攻撃の手を緩めてやるんだな。
それだけでも効果はあるぞ。
特に君の場合は自分で言う程の『口煩いイモウト』なんだろ?」
カクテルを掲げ、口の端を吊り上げる。
口惜しいけれど。
言い返せないわ。
彼の言う事は一々ご尤もだから。
私の痛い所を突いて来てくれる。
でも
だから彼の言う事は素直に聞いてしまうのかも。
こんなに私に親身になって「オセッカイ」を焼いてくれる人はそうそういない。
蒼香や羽居は同性だし。
異性のしかも年配の方でこう言う人を私は知らない。
ああ。
本当は私は恵まれているのかも。
こんなに私の周りには「大事」に思う人が沢山居るのだし。
「よし。
鬱憤晴らしは済んだみたいだな?憑き物が落ちた顔してるぜ。
その今のままの笑顔なら十人中九人はオトセるな」
なぁ、『バーテン』?
とカウンターの奥で作業をしてる『バーテンダー』を呼ぶ。
『バーテンダー』さんも奥から顔を出して私を見る。
「そうですね。
先程の顔とは雲泥の差ですよ」
こちらもにこやかに微笑んでくれる。
「有難う御座います」
素直に感謝の意を口にする。
「そう。
そうやって素直になれるってのは大事だぜ?
人間意固地になってたって疲れるだけだ。自分も、他人もな。
少しばかり自分が引いて見るってのも
又別の視点から物事が見られて広い目で見ればプラスになるからな、将来」
うんうん、と一人頷く『レッド・アイ』さん。
有難う御座います。
ホント、感謝し切れません。
「秋葉様。
コレは私からのささやかな贈り物です」
『バーテンダー』さんが私にカクテルを。
?アラ?
コレはいつも私が飲んでいるカクテルとは違う。
淡く琥珀色に輝くカクテル。
微かに果実が香る
普段見慣れないカクテルが今私の前に出された。
しかし
このカクテルを見て『レッド・アイ』さんはヒュウ、と口笛を吹き鳴らす。
「ほぅ。
よくも臆面も無くこんな洒落たカクテルを出せるもんだな?
『コロネーション』……戴冠式、か」
その単語は知っているけど。
何で今の私にコレが?
恐らく余りに不思議そうな顔をしていたのか。
「何も『戴冠式』とは文字通りの意味ではありませんよ」
と『バーテンダー』さんが教えてくれた。
「人生には何度も『戴冠式』を迎える事がある。
その日毎の人は生まれ変わる訳だ。
そして今日、秋葉君は又新しく生まれ変わった。
本来ならこのカクテルはもう少し早く出される筈だったのだがね」
えーと、それって。
もしかして、もしかして、ですか?
「そう。
君が何だってここでこんなに『オオトラ』になっていたかって原因と理由さ」
……全て御存知だったって訳ですか。
そもそもの始まりは。
兄さんが私の誕生日を覚えていなくて(忘れていたらしい)
次の日になって慌てて祝ってくれたのが癪に障って。
口惜しくて、悲しくて、情けなくって。
兄さんは何か言っていた気もするけど。
そのまま屋敷を飛び出してこの店に来たって訳。
只忘れていたのならまだ救いはあったのに。
よりによってあんな「人外」と一緒にデートしていたって言うのも私の逆鱗に触れた。
私の誕生日。
兄さんが屋敷に帰って来てから初めて祝って貰える筈だった日。
二人きりで過ごせる筈だった日。
だからってここでこんな風に「オオトラ」になっていい筈が無いんだけど。
余りに頭に来て。
ああそう言えば。
結局、兄さんからはまだお祝いの言葉すら貰ってないのね。
あの日も慌てているだけでキチンとした言葉は無かった気が。
「彼には困ったものだな」
やれやれだな、と『レッド・アイ』さんがぼやく。
それに『バーテンダー』さんも頷く。
「前以て教えて置かないと家族の誕生日も分からないのか。
それじゃ、意味が無いだろうに。
他人に誕生日を教わって準備しては仕方無かろう」
「彼の『悪意の無い好意』が今回は裏目に出たって感じですね」
同じく。
ホントに悪いと思ってるならあの後追い掛けて来てくれたっていいのに。
何もしないんだから。
私がすぐに戻るって思ってるのかしら。
★『CORONATION 』 〈コロネーション/戴冠式〉★
ドライ・シェリー 30ml
ドライ・ヴェルモット 30ml
オレンジ・ビターズ 2dash
マラスキーノ 1dash
材料をステアして、よく冷やしたカクテルグラスに注ぐ。
出されたカクテルを眺め。
「戴冠式、ね。
確かにそう言う事なら誕生日も『戴冠式』とも取れるでしょう」
そんな独り言。
「十七歳の『戴冠式』
それまでの誕生日での『戴冠式』
……こんな風に祝って貰った事、無かったな」
『バーテンダー』さんに頂いたカクテルを飲みながらそんな事を呟く。
父が存命中はそんな事は無かったし。
兄さんが帰って来て初めての日だったのに、な。
「ああ、それとな。秋葉君」
『レッド・アイ』さんが事のついでの様に私に話しかける。
「その君のお兄さんからの伝言だ。
『済まない。お詫びに取って置きのカクテルを贈らせて貰う。
出来るだけ早く帰って来なさい』
だそうだ」
?それってつまり?
「このカクテルは君の兄さんからの『誕生日プレゼント』だよ」
カウンターに置いてあった帽子を被りながら
ポケットから一つの封筒を差し出す。
「これは?」
と言う私の問いに、彼は屋敷に帰ってからみるんだな。
とだけ言うと残っていたカクテルを流し込み。
「私からのプレゼントだ」
じゃあな、いいオンナになるんだな
と手を振って店を後にしてしまった。
聊か呆然としながらその後姿を眺める。
後日。
この封筒の中身によって兄さんとの念願だった「二人っきりの誕生日やり直しデート」が出来。
一応の決着を見たのは別の話。
「フンだ。
こんなカクテル位では秋葉は機嫌なんか直してなんか上げませんからねっ」
プイと横を向いて拗ねたフリをする。
そんな私を見て『バーテンダー』さんは奥にいる『ソノラ』さんに何か伝える。
『ソノラ』さんもソレを見て頷き、朗々と歌い始める。
低いバラッド調の旋律が流れ始める。
それに合わせた『ソノラ』さんの声。
この曲は?
「いい曲でしょう?
今の貴女に少し落ち着いた女性の時間を提供致します」
グラスを拭き終えて、又先程のカクテルを作ってくれる。
「このカクテルはその名の通り各国の戴冠式がある度に新しいものが作られています。
ソレを覚えるのは並大抵の事では無かったかと思いますがね。
ああ、付け加えますと。
先程のはスタンダードな、最もポピュラーなものですよ」
ふぅん。
『バーテンダー』さんのカクテルの話を聞きながら『ソノラ』さんの美声に聞き惚れる。
何時聞いても彼女の声は淑やかで艶があって。
女性の私が聞いてもうっとりとしてしまう。
I am just about to forget you.
Once there was summer of color crimson lake.
all it took to confess was a word.
all it took to express was a kiss.
When love was young between us.
I was't too proud to wait for carrousels.
You whispered you would make me a day.
Like no day had been in my life.
You let me feel I was turned on.
You had me feel I was only one.
You made me feel I was loved by the whole world.
I never said that I was in love.
You never held me in your arms.
Never made love, we never dared to.
I am just about to forget you.
Once there was winter of color horizon blue.
All I knew, you were there beside me.
All I saw, our shadows on the path.
I love you so, still I know I do.
I trust you so, yet I know I do.
I want you so, true like ice,true like fire.
To keep my mind sharp and bright,
To keep my heart cold and tight.
To keep my love alone and free.
I shall leave.
ああ。
素晴らしい曲を有難う、『ソノラ』さん。
素晴らしいカクテルを有難う、『バーテンダー』さん。
そして
素晴らしい時間を有難う御座いました。「この店の全ての人」に。
私の感謝の拍手は何時までも何時までも店内に鳴り響いていた。
それと。
素晴らしい誕生日プレゼント、有難う御座いました『レッド・アイ』さんに『兄さん』?
〜FIN〜