「あの」

ふと。

道端で声をかけられた。

何だろうと、その声の主の方を見やる。


そこには。

まだ幼い感じのする少女。
黒髪の印象的な、それでいて、大人びた感じのする女の子。

年齢的にはレンよりも上かな。


そんな子が俺を呼び止めていた。


「何か用かい?」
つぶらな瞳が俺を見ている。

「あの、道を聞きたいのですが」


「何処だい?」
「ここです」


と言ってその場所の住所を書いた紙を渡される。



この場所って、確か。

俺の知ってる場所だな。


うん、なら教えられそうだ。

「いいよ。そこはね」

と言って教えようとしたが。
「お嬢ちゃん。ここの場所初めてかい」

それに「こくん」とうなずく。


だろうな。

さて。
「じゃあ。一緒に行こうな」

俺は手を差し伸べる。
女の子はぎゅっと握ってくる。

・・・・冷たい。
この子は一体どれ位の距離を歩いてきたのだろう。

こんなに冷たい手をしているなんて。

その子を連れて、歩き出す。

何だか。

昔に戻った様な。

遠い昔。


幼い秋葉を連れて歩いたあの日。

その記憶がふと脳裏を掠めた。


そう言えば、秋葉とこんな時が在ったよなあ。

今のこの子は多分十三、四歳位か。
もしかしたら、もう少し下か。


道のりの間、その子は一言も話さなかった。

自然、俺も無口になる。




程なくして目的地に着く。

何の変哲もない高級そうなマンション。

だけど人の気配のない、マンション。



言われた号数まで行く。




その前まで行って、ドアをノックする。


おや。
この子。

どうしたんだろう。
何となく、緊張している。

一体どういう関係なんだ、この子は。

只の親戚って訳でもなさそうだし。



それとも、久し振りに会うのかな。


中からパタパタと足音がして、漸くドアが開く。


ガチャと言う音で意識が現実に戻ってくる。


久し振り〜何て声がする。

最初に俺の顔を見て、にぱと笑う。


次に俺の連れてきた子を見て、硬直する。


わなわなと体が震えていて、声が出てこない。
何か言いたいらしいが、口はパクパクしているだけだった。
顔面蒼白で今にも倒れそうだ。


「久し振りじゃのう」
その子は話し出す。


何だか、口調でずいぶん変わるものだ。
「どうした、そんなに不思議か?」



「あ、当たり前よ。何で貴方がここに来るのよ」

何とかそれだけ言う。

何だ。
この2人、昔何かあったのか。


「アルク。この子は?」

それにアルクはクワッと睨みつける。

「志貴!」
「な、何だよ」

「何だよじゃないわ。どうしてこいつ連れてきたのよ」

こいつとはキツイ言い方だな。

「この子は一体誰なんだよ」
「知らないで連れてきたの」
「当たり前だろ。途中で声をかけられたんだし」


「この人間に罪はない。頼んだのは我だからな」
「嘘おっしゃい。どうせ用が済んだら血を吸って死徒にでもしようと思ってたんでしょ」
「死徒?この子、吸血鬼?」

アルクはうんと力強くうなずく。

「そうよ。二十七祖の九位。アルトルージュ・ブリュンスタッド」

ふーん。
この子とロア・ネロは同じ仲間なんだ。

「同じ、ブリュンスタッド。てことは姉妹?」
「違うようで、同じ様なモン」

訳判らんぞ。

「割り込んでいいか」
アルトがイライラしながら呟く。


「何の用よ。用が無いならさっさと帰りなさいよ」
アルクがアルトを追い出そうとする。

心なしか声が震えている。

真祖の姫が怯えている。
この死徒の吸血姫に。


お互いの実力は多分拮抗している。
アルクでも勝てるか判らないんだ。

何度も遠い昔から戦い続けていたんだろう。

だから、相手の実力が分かる。

判ってしまうから、怖い。


今のアルクは本気が出せない。
出せば吸血衝動が我慢できないから。

だから、今の状態ではこの子には勝てない。

それを見越してこの子は来たのかも知れない。




「志貴。お茶でも飲んで行きなさいよ」

「我は?」
「何?貴方も飲むの。お茶」
「客人に茶の一杯も出さないのか。貴様は」

アルクはムカとしたが、渋々俺達を部屋に入れる。


中は何時もの通り。
シンプル・イズ・ベスト。



俺とアルトはテーブルについてお茶が出てくるのを待つ。


チラリと横に座る女の子を見る。

長い黒髪と、白い肌。
病的なまでの白さ。

それが最初は判らなかったが、今なら判る。

この白は人成らざる者の色。

その白と黒。

見事なまでのコントラスト。
成る程ねえ。

流石、死徒の吸血姫と呼ばれるだけはある。
手が冷たいのもうなずけてしまう。

アルクとは正反対だ。

こちらの視線に気が付いたのか。
俺の方を向く。


真っ直ぐな瞳が俺を射抜く。

漆黒の闇の様な黒い瞳。

毒毒しいまでの深紅の口紅。

いや。

口紅、か。
どうも、これも別のものに感じてしまう。



黒髪の黒服の白い肌の女。

秋葉に似ていたのもこの儚げなところかな。

後。

何処か「魔」的な所か。
そう言う所は目聡いから。


「私の顔に何かついているか」

俺と、アルクでは口調が違う。
何でだろ。


「何で、俺の時とあいつの時とで口調が違うんだい」
聞きたい事は他にあるが、とりあえず、当たり障りの無い事を。


「あやつとは浅からぬ縁があるんでな」

因縁、ね。
何だか、な。

下らないね。

そんな事の為にこの子は生きているのかな。

アルクにも言ったけど。
この世の中にはもっと面白い事があるんだし。


「アルクはああ言ってたけど。とてもそうは見えないんでね」

「そうかしら。これでも、結構な力はあるんですよ」
そうそう口調を変えないで欲しい。

「貴方は人間ですよね。あの人とは?」
それから
今までの事をかいつまんで話す。




「はい。お待ちどう様」
漸くアルクがやってくる。

「ずいぶん遅かったな。お茶、無かったのか」

「そんな事無いよ。随分仲良かったから」
「ええ。私気に入っちゃった」

ばき。

アルク、止めろ。そう部屋のもの、壊すな。
持っていた盆が真っ二つに裂かれる。

「なななななな。何言ってるのよ」

「だって、人間にしては、かなりのポテンシャルを持っていそうだし」
凄い。

パッと見で見抜いたか。

「ねえ。貴方。名前は」
「ちょっと」

「お主は黙っておれ」

ギンと睨みつける。

「お、俺の名前は」
「名前は?」

何だ。口が勝手に。

「遠野、志貴」

「そう。遠野志貴って言うんだあ」

「アルト」
力を持った言葉が発せられる。

「黙っていろと言っている」
アルトも同じく発する。

「ねえ」
甘ったるい声で話しかける。

「貴方、私と一緒にいてくれる?」
「な、に」


一体どう言う事だ。

「アルト。どういう意味」


「そのままの意味だ。この人間には我の眷属になってもらう」
「冗談じゃ、」
そこまで言いかけて。

言葉が遮られる。

視線に込められた言葉に。
「何で駄目なの」

「何でって。当たり前だろ」



「ふ〜ん。どうしても嫌なんだ」
そう言いながら俺の方によってくる。

「じゃあ、キスしよう」

は?

「キ・ス。そうすれば、否応なしに、私の仲間よ」



くっ。
冗談じゃない。

「フフ、ねえ。しよ」

何だ。又体が言う事を聞かない。

アルトは俺にしなだれかかる様に。
抱き付いて来る。


「志貴。しっかりして。気を確かに持って」
「あ、あ」



姫君の顔がまじかに迫る。
逆らえない。か。

「フフ。これで、貴方も」




ああ。

意識が混濁する。


七夜が


目覚める。

「嫌だね」
ぐい。

アルトを引き剥がす。

「な、何で。どうして、きかないの」

「悪いな。俺は君の言うとおりにちょっと特殊なんだよ」

「志貴。大丈夫」
「ああ。問題ない。大丈夫さ」


「私の邪眼が効かないなんて。そんな事がある筈ないわ」
「俺はどちらかと言えば君らを狩る方なんだよ」

完全にアルトを離す。

「俺は魔を狩る者。悪いな、君の仲間にはなれないんだ」
「そう。私の敵になるんだ」


更に視線に力が込められる。

「なら、いらない。そこの女と一緒に滅べ」

「そうは行かないわ。志貴がまだこっちなら私の方が有利よ」




途端に、この部屋に殺気が渦巻く。
ここで戦うのはいただけないな。

相手はアルクと同等の実力の死徒。

キツイな



「そうだ」
ぽんとアルトが手を叩く。




「私が志貴の恋人になればいいんだ」

又突飛な。
一気に緊張が緩む。


「何を言ってるのよ」
「何って。別にいいでしょ。あんたには関係ないんだし」

「それとも。あんたは志貴の恋人なの」
「当然よ」
「じゃあ。略奪愛」

さらりと言うな。


「そんな事許さないわよ」
「いいもーん。志貴さえ了解してくれれば」

「志貴。どうなの」
「志ー貴。ねー。恋人になろ」




ああああああああ

またややこしい事を。


「何。志貴、やっぱりロリコンなの」
「断じて違う」

「ロリコンてなに?」
「アルトは知らなくていい」

「あのね。説明すると」
「しないでいいわ」

ぱこん。

「にゃー。殴った。ぶったー。暴力反対」
「あれ。アルクは何喋ってるの」

「いいの。知らなくて」

「酷い。何で教えてくれないの。やっぱり私が嫌いだから」
「違う。これに好き嫌いは関係ない」

「じゃあ。恋人ー」
「にゃー。やっぱり変態にゃー」

「ええい。うるさいわ」


何なんだ。この落差は。
あの途中のシリアスムードはなんだったんだ。



「しーきー。ネー、これから何処いくう?」
「私が先。何処いこっか」

「あああ、もう。何だっていいいよ」



わーい。
なんて、二人は喜んでるし。

ああ。
何だか、アルクがもう一人増えた気分だ。

非常に疲れる。










「志貴。これからもヨロシクね」
「志貴。これからもヨロシクね」


ああ、もうどうにでもなれ。(号泣)



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後書き
月詠:どうも。お久し振りです。ヘタレ物書きの月詠です。
アルト:どーもー。今回初めての登場のアルトです。
アルク:何でこの子が先なのよ。まあ、私は大人だから。
月詠:これを読んで下さいまして有難う御座います。
アルク:又、内容がバラバラなSSね。
アルト:どうでもいいよ。私が主役だし。
月詠:このアルトの性格等の設定は私のオリジンです。
アルト:それと、青本と色々な皆様のSSとか。
アルク:しかし。又オチが酷いわね。
アルト:別に。関係ないもん。主役、主役。
月詠:しかし、久方ぶりのSSがこんなボロイものになってしまって。
アルク:私もやっと登場したけど。けどねえ。何これ。
アルト:しゅーやーく。しゅーやーく。しゅーやーく。しゅーやーく。
月詠:ええい。ちったあ、話に加われい。
アルク:仕方ないよ。お子様だし。
アルト:ろりこーん。やーい。
月詠:最近、それに対し反論できないのよ。
2人:マジ?
月詠:うい。すぱろぼの影響でプルやらプルツーやらが萌えなんですよ。
アルク:ロリねえ。だから。この子の出番なのね。
アルト:なら、何で、レンちゃんは出ないの
月詠:黒髪。長髪。妹。ここらに惹かれるらしい。プルは別。
2人:やっぱロリじゃん。
月詠:さて。では、次のSSで会いましょう。
アルク:結局、私はツマかい。
アルト:ばいばーい。



























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後書きの後書き(舞台裏)


はい。どうもです。
ロリに目覚め始めているかも知れない月詠です。

でも。
変態でも、オタクでもないんですよ。(言い訳)

やっぱこう可愛いじゃないですか。
ああ。
欲しいなあ。(一遍死んで来い)


では。

次のSSで会いましょう。


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有難う御座いました。

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