ふう
今漸く志貴様が学校へ向かわれました。
何時も時間ギリです。
もう少し余裕を持って頂ければいいのですが。
ですが何時もの事です。
こんな日常も今ではいいものと思える様にもなりました。
志貴様が帰って来なければこんな思いもなかったでしょう。
本当、志貴様には感謝し切れません。
さて。
それでは午前の仕事を済ませてしまいましょう。
午前は志貴様の部屋の掃除と洗濯です。
志貴様の部屋は余り物がなく、掃除は簡単です。
ですが手は抜きません。
当然です。
何故なら私は志貴様付きのメイドなのですから。
・・・・はい
終了です。
次は洗濯です。
この家は四人ですから差ほど量はないのです。
パン。
シーツを伸ばして干します。
いい天気です。
シーツの白と空の青。
それに庭の緑がとても綺麗です。
あ、忘れてました。レン様の黒もです。
こんな日は日向ぼっこなんかいいかも知れません。
洗濯が終わったら、少し休憩しましょう。
「翡翠ちゃん」
?姉さん。
どうかしましたか。
ここは私のテリトリーです。
姉さんは今は昼食の準備ではないのですか。
「翡翠ちゃん、何気に酷い事考えてません?」
それは姉さんが勝手に人の心を読むからではないのですか。
人が心で何を考えていても、表に出さなければ問題無いではないですか。
「それはそうなんですけどね。でも翡翠ちゃんが腹芸出来る様になるなんて」
それも全部姉さんの所為だと思うのですが。
姉さんが要らぬ厄介事を増やすから。
「翡翠ちゃんヒド〜い」
姉さんがイヤイヤ、と体をくねらす。
止めて下さい。
そんなキャラに合わない行為は。
さぶいぼが出ます。
「それで、姉さん。一体何の用ですか?」
「ふふっ。ちょっとした事ですよ」
そんなこと言ってますが、何故か、姉さんから少しのプレッシャーを感じます。
?何でしょう。何時も裏のある人ですが、今回は又違っています。
「流石翡翠ちゃんですね。気付いちゃいましたか」
「一体何の事です」
「志貴さんのことですよ」
??益々分かりません。
「志貴様が、何か」
「簡単に言えば、「志貴さん争奪戦」です」
姉さん、本当に分かりません。
一体何を考えているんです。
「今日ここで決着を着けましょう」
「ハッキリ言って、暇なんですね」
「違います。今回はお姉ちゃん真剣ですよ」
そう言って姉さんが構える。
「勝負って何で勝負を?」
「決まっています。昔からこう言うことは「拳」で決める事になっているんです」
・・・・・まあいいでしょう。
姉さんが何を考えているのか知りませんが。
素手なら私の方が勝っています。
いいでしょう。
その勝負受けて立ちます。
私も構えます。
二人の間にピンと張り詰めた空気が流れます。
「行きます」
一言
そのまま姉さんに向かい走り出します。
身体的にはお互い同じ。
リーチも同じな為、自分の間合いは姉さんの間合いでもあります。
リーチギリで止り、そこから右ストレートを一発。
姉さんは体をそらしてかわし、そのまま私の懐へ入ります。
咄嗟に後ろへ下がります。
そして姉さんの手をとり一本背負い。
・・・・軽いです。
姉さん、自分で飛びましたか。
とん。
目の前に姉さんが下ります。
「翡翠ちゃん、やりますね」
「姉さんの方こそ」
「では」
私から又仕掛けます。
又もストレートからのコンビネーション。
姉さんも私の右に合わせて来ます。
何か、嫌な予感がします。
何とか右を途中で止めます。
その手に姉さんの左が掠めていきます。
「牙斬ですか」
私の右手に少し赤い線が出来ます。
「そう来ますか」
ならば私も行きますよ。
構えをピーカーブースタイルに。
そして体を左右に振り始めます。
それはやがて振り子の動きになります。
「ひ、翡翠ちゃん。デンプシーロールですか」
そうです。
伊達に志貴様の周りの方と張り合ってはいません。
デンプシーのまま、突進。
振り子から繰り出される連打。
右から左から、私のパンチが。
避け切れますか。
・・・・・避けています。
姉さん。
私のパンチをかわしています。
ならば
一気に懐まで潜り。
リバーブロウからのガゼルパンチ。
・・・・・・・・これも防御。
逃げながらフリッカーを連発。
「フリッカーなら負けませんよ」
姉さんからも反撃のバレットが飛んできます。
互いが中距離での攻防。
「ではこれです」
姉さんが距離を縮めます。
!上下からのパンチ。
なら
私もドラゴンフィッシュを撃ちつつ
ボディをガードします。
ホワイトファングとは。
私の反撃です。
又も右のストレート。
ですが
姉さんも気付いたらしく。
トーンと大きく間合いを離します。
勘がいいですね。
フォンといい音がして私の右が空振ります。
そう。
私が繰り出したパンチはコークスクリューブロウ。
「ハートブレイクショット」ですね。
「今度は私の番ですよ」
姉さんが素早く動き始めます。
?「竜破」ですか。
でしたら私にも考えが。
横から後ろから
姉さんの気配がします。
そろそろですか。
ババッ
そんな音がして姉さんの両足が見えます。
その足が閉じる前に。
肘をブチ込みます。
「蛇破山」です。
ばったりと姉さんが倒れます。
ふう
中々に手広いですね。
姉さんも同じ事を考えていたのでしょうか。
やや顔に疲労の色が見えます。
「行きますよお」
今度は何を?
懐という事は
1・リバーブロウ
2・ガゼルパンチ
3・菩薩掌
位ですか。
「甘いですね翡翠ちゃん」
?
まさか
「そのまさかです」
姉さんの両手が頭上で十字に組まれます。
「富嶽」
慌てて横に飛びます。
「ならこっちは」
飛んだ先で踏ん張り右のハイキック。
姉さんはそれをクロスガードでブロックします。
それが狙いですから。
すかさず左のハイキック。
「双竜脚」
これも完璧なブロック。
くっ。
それなら!
左の拳を姉さんのお腹に当てます。
「オオオオオオオオオオオオ!!」
無空波ならかわせないでしょう。
「甘いですよ。それを待ってたんです」
えっ?
がし
あ
頭を捕まれました。
ここで菩薩掌ですか。
ですが私も半端で止められません。
このまま押し通します。
姉さんが先か。
私が先か。
・・・・・結果はダブルKOでした。
バッタリと二人が倒れます。
やりますね。
流石は姉さんです。
「翡翠ちゃんも流石ですよ」
そう言って、姉さんは気絶しました。
ああ
私も段々
気が
遠く。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・
ハッ!!
ガバッと起き上がります。
ハアハアと息が上がっています。
何だったんでしょう
今の夢は。
私と姉さんが志貴様を賭けて戦うなんて。
そんな事、ある筈ありません。
兎に角落ち着きましょう。
ですが
何でそんな夢を?
私はそんなに好戦的な性格な筈が無いんですが。
ああ
やたらと疲れる夢でした。
もう一度寝る気にもなりません。
はああ。
とりあえず
枕を直しましょう。
余程動いたのか枕が明後日の方向に飛んでます。
??
おんや。
枕の合った場所に見慣れない四角い物体が。
手にとって確認してみます。
これは・・・漫画ですね。
よく姉さんの部屋で見かけます。
ですが何で私の部屋に?
何気なくその内の一つの漫画をパラパラとめくって見ます。
・・・・・・・
分かりました。
何でこの様な夢を見たのか。
絶対に姉さんの仕業ですね。
時間もソロソロ起きる時間です。
一言文句を言わないと気が済みません。
私の部屋を出て姉さんの部屋に向かいます。
本当にもう。
「あらら〜。翡翠ちゃん気が付いちゃいましたね」
さして慌てていない様子の琥珀が呟く。
「でもこれで、いいデータが取れました。
やはり本を枕の下に置いておくとその内容の夢を見るんですね」
クスクスと笑う。
「さて。翡翠ちゃんが来る前に、言い訳を考えないといけませんね」
んー、と大きく一つ伸びをする。
あふう
つられて欠伸も一つ。
翡翠ちゃん。
今回はこんな夢でしたが、次は志貴さんとのラブラブな夢を見せてあげますよー。
・・・・・・・多分。
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後書き
月詠:まず最初に。このSSの内容を信じないで下さいね。
翡翠:誰も信じないと思いますが。
琥珀:でも翡翠ちゃん。世の中はいろんな人がいますしね。
月詠:夢の話はまったくの私の妄想です。
琥珀:ちゃんとした心理学の人が見たら怒りますね。
翡翠:ぜひその様な人がいましたら訂正をお願いします。
月詠:しかし、自分で書いててなんだけど。この手の話よく聞きますよね。
琥珀:聞いただけでそれをネタにしてしまうんですから。
翡翠:人それをパクリと言う。
月詠:パクリちゃうわ。
琥珀:まあ何でもいいですが。
翡翠:よくはありません。何で私と姉さんがあんな事。
月詠:楽しかったろ?普段のストレス解消に。
琥珀:あの程度じゃ。まだまだですよ。
翡翠:それに何で私があんなに色々な技を?
月詠:いいやん。翡翠はアンオヒシャルではそうなってるんだし。(嘘)
琥珀:私もですか?
月詠:立場上そうなって頂きました。
翡翠:もういいです。疲れました。
琥珀:私もです。
月詠:そんな哀れんだ目で見ないで。
琥珀:それでは又次のSSで。
翡翠:読んで下さいまして真に有難う御座いました。
月詠:有難う御座いましたー
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後書きの後書き(舞台裏)
はい。
どうもです。
月詠です。
今回のSS。
翡翠VS琥珀
でもギャグ。
実際にありえないだろうけど見てみたいガチンコ。
絶対にないでしょうが。
何だかんだ言って仲良いですからね。
この姉妹は。
さ・て
それでは
次のSSでお会いしましょう。