さっきから腹の虫が鳴きまくる。

グーグーやかましい。

ついさっき、皆で晩飯食ったばかりだってのに。

最近、体調が良いらしく、食欲が旺盛で

琥珀さん曰く「それはいい事ですよ〜。じゃんじゃん食べて下さいね」
何て言われる。

その横で秋葉はジト目で俺を見ていたが。

今更成長期かなんて思う。
食欲の秋は聞いた事あるが、春もそんな季節なんだろうか。

ぐ〜

又鳴った。

これじゃ、寝るにもうるさくて、安眠出来やしない。

どうすっかな。

チラと時計を見る。

まだ、十一時。

起きて食うにはラストか。

これ以上遅いと明日にもたれそうだし。


よし

がばちょと起きる。

何食うかは下に下りてから考えよう。

トントンとリズミカルに降りていく。

因みにこの家の消灯時間だって事はこの際無視する。
んなモン、こっちは腹減ってるんだ。
腹ペコのまま朝なんか迎えられるか。

そのまま厨房まで進む。

流石に素晴らしい厨房。
綺麗なものだ。

きっと食後に琥珀さんが全部洗ってるんだろうな。
御免、琥珀さん。

そんな事思いながら、パチッと明かりを点ける。

うん、何もない。

取り合えず冷蔵庫でも漁って見よう。

四人しかいないってのに何でこんなデッカイのがあるんだ。
多分そのまま残してあるんだろうが。

業務用冷蔵庫を開ける。
内は予想に反して、ぎっしり詰まっていた。

本当にこれだけの材料必要なのか。


ま、いいや。


さーて、何作ろうかな。

うーん
悩む。


これだけあると、何でも作れてしまう。
俺的には残り物で、簡単な奴でも、と思っていたのに。

恐るべし遠野家。
いや、恐るべし、琥珀さん、か。




簡単に出来る奴。
炒飯でいいか。


では材料は、と。

野菜。
人参、葱、大根、朝鮮朝顔、色々あるな。




肉。
鳥、豚、牛。
選り取りみどり。
このまま探したら、滅多に食えない肉もありそうだ。
鹿とか馬とか。




最後に

飯もあるな。


味は何にしようかな。

スタンダードはケチャップか、醤油。
因みに俺は塩胡椒の方が好みだ。




ホイ、決まり。





さー。
料理、開始。
ファイトッ。

この程度の料理なら、有間の家でも作ってたし。

物の十分と掛からず。

遠野志貴謹製炒飯が出来上がった。

マジで十分で出来るとは。
火力から、小物からモノが有間の物から比べると、断然違う。



今更ながら
今住んでいる家がどの様な家なのかを身を持って実感した。



炒飯を皿に移し、テーブルに着く。

では

「頂きます」

ペコ、とお辞儀して。

いざ、一口頂こうかという時。


「志貴様、この様な時間に何をなさっているのですか」

夜の見回りの途中らしい翡翠に見付かった。

別に悪い事している訳じゃないけど
この時間に部屋から出ている事自体が違反だ。


「何って。腹へって眠れないから飯作って食べようかと」
「志貴様。この家の規則はご存知ですね」
「当然」

「では、それを破ってまでも空腹が抑えられなかった、と」
「ま、ね。俺はしょっちゅう破ってるし」
自慢にならないけど。

翡翠の顔が険しくなる。
険しいというか、困った顔になっている。

眉根を寄せて、八の字になってる。

そう言う顔されるとこっちも困る。
俺が物凄い悪事をしているようで。
・・・・・確かにしてるけど。






暫く、無言の時が過ぎる。


翡翠は俺の方をジーと見ている。

うう、そんなに見ないでくれ。
何か緊張して、食えない。






「あの」


やがて、翡翠が話し出す。

「あの、その料理は志貴様がお作りになったものでしょうか」
「うぃ。俺手料理、俺メイドの炒飯」


ああ。
あからさまに、翡翠の表情が強張る。

勘弁してくれ。
それじゃ、食べられないっス。


「あらあら、翡翠ちゃん。そんな顔していたら、志貴さん、困ってしまうじゃないですか」

天の助け。

ナイスだ、琥珀さん。

「姉さん。べ、別に私は「志貴様が料理が出来るなんて」とか「こんな簡単に出来る料理があるなんて」
とか「志貴様が出来るのに、志貴様付きの私が出来ないなんて」とか「少し食べてみたいな」とか
「志貴様の手料理、どんな味なんだろう」とか、そんな事色々考えていた訳じゃ無いんです」

翡翠、混乱してるんだな。

成程
翡翠はパニくるとこうなるのか。


でも
「翡翠、俺でも料理が出来るなんてってのは余りに酷いんじゃないか」

「も、申し訳御座いません!」
ばばっと頭を下げる。

見ると耳まで真っ赤だ。

余程、テンパッてるんだな。

「でも、志貴さん、結構お上手ですね。やはり、あちらでは結構お作りになってたんですか」
「うん。母さんがいない時なんかで都古がわめいた時とか」

あはは〜とか、琥珀さんは笑う。

後は、ひたすら金を使いたくない時なんかも。

「ですが、志貴様は一言もその様な事は仰いませんでした」
「ここには琥珀さんがいるし。聞かれもしなかったしね。と言うか、俺にしてみれば
秋葉の奴が全然出来ない方が驚きだ」

そう
秋葉の奴は全然出来ない。
その点では翡翠と五十歩百歩。

味は格段に秋葉だが。
秋葉は失敗しても何とか食えるような物だが。
翡翠は・・・・・・止めよう。思い出すのは。



「でも志貴さん、いけませんよ。もうお休みの時間なんですから」
「分っているんですけどね。とにかく腹へって」

琥珀さんは仕方ないですね〜とか言って。

「今回だけですよ」
流しの方へ向かう。

え?

「琥珀さん、いいいですよ。この炒飯で、十分です」
琥珀さんの意図が分ったので慌てて止める。


「姉さん。そんな」
「いいんですよ〜。一人分作るのも三人分作るのも同じですから〜」

そのまま鼻歌を歌いながら琥珀さんは料理を始めてしまった。

「琥珀。四人分よ」

おう。
まいしすたーよ。
お目覚めか。

「あらら〜。秋葉様もお目覚めですか」
「ええ。今日に限って眠りが浅くて。琥珀に睡眠剤を貰おうかと」

秋葉、余り薬に頼るな。
ヤク中になるぞ。

「で、兄さん。その料理は一体なんですか」
「俺特製炒飯」

「・・・・・それも質問の一つですが、何故、この時間にお起きになっているんですか」
「腹へって、仕方ないから」

ああああ

秋葉、あからさまに呆れた顔するな。

何でだよ。
腹が減って起きるのがそんなに変か。

「は〜い出来ましたよ〜」
ニコニコ顔の琥珀さんが料理を持ってきた。

これは又夜食にしては豪勢な。

「琥珀。何もこんな手の込んだもの用意しなくても」
「姉さん。今の時間で、この量は」
「流石に多いな」

三人が難色を示す。

「いけませんよ。好き嫌いは大きくなれませんよ」

例のポーズで琥珀さんが怒る。

いや、好き嫌いでなくて、量に問題があるんですが。

「さ〜。皆さんで、お夜食タイムです」
本当にこの人のこの明るさはどこから来るんだろう。





「兄さん、済みませんが少し食べて頂けますか」

秋葉が珍しくそんな事を言ってくる。
「?どした。急に」
「いえ。流石に多くて。ですが、残すのも」

はいはい。
基本的にこの家の食事は一回で完食できる量だから。
お嬢様の秋葉は残すという事に罪悪感があると。

「いいよ。貸しな」
「申し訳御座いません」

何時もの威勢なんて微塵にも感じず。
おどおどとした秋葉。

俺の記憶の中の秋葉とそっくりだ。

「謝るなら琥珀さんにな。俺じゃなくて」

そう言って、秋葉の分も食べ始める。

「済まないわね、琥珀。折角の料理を」
「いいんですよ、秋葉様」

にっこりと笑う。

「私も、少し浮かれたみたいで。ちょっと多くなっちゃいまして」

「姉さん、済みません。私も」
ありゃ。
翡翠もか。

ま、そりゃあの体で、この時間にこの量は。

「いいよ、翡翠も貸しな、俺が食うから」

「そんな。志貴様も食べ過ぎです」

「いいんだよ、ここ最近なんか腹へって仕方ないんだから」

翡翠は、申し訳御座いませんと何度も言いながら俺に渡す。

「でも、琥珀さん。これはちょっと夜食にしては多いんじゃないの」
「そうですね。でも驚きました。志貴さんがこんなにお食べになるなんて」

「自分でも驚いてる。このままだったら太りそうだ」

「大丈夫です。志貴さんはその分動いてますし」

そうかな

左程動いてないと思うが。

「毎日の学校までのダッシュは違いますか」
秋葉。

いい一撃だ。

だが

「聞かぬ。聞かぬのだよ」
「ふむ、このツボは違ったらしい」

「ハイ、そこの二人。マニアックな会話はしないで下さい」
琥珀さんがパンパンと手を打つ。

翡翠は分からないらしく、無表情だ。

「秋葉。お前、俺にマンガなんて読むな、とか言いながら、しっかり自分も読んでるじゃないか」
「いいえ。漫画でなく、瀬尾から借りた本です」

いや。
そっちの方が、何倍もやばいと思う。







「でも、何で、こんなに腹減るんだろうな」

「あら。志貴さん本当に知らないんですか」

琥珀さん、知ってるんですか。

「あらら。これじゃ、レンちゃん報われないですね」

?レン

レンが何?

「志貴さん。いい夢見てますか」

・・・・・・いい夢。



ボン。

途端に顔が真っ赤になる。

この場でその事を。

うう。三人の顔がまともに見られない。




「あはは。その顔ですと、身に覚えがありますね」
言い返せない。


だからですか。
だから、腹が減るんですか。

「仕方ないですよね。志貴さんはレンちゃんのマスターですから」

全て知ってますよ、てな顔で俺を追い詰めてくる。

「もう志貴さんの洗濯は大変だって翡翠ちゃんが何時もぼやいてますし」

はう。
勘弁して下さい。琥珀さん。

俺、何か悪い事しましたか。

「いいえ。志貴さんは何もしてませんよ」
「なら何で?」
「そんな事決まってるじゃないですか」




















「私を選んでくれなかった、罰です。毎日の志貴さんの食事に
ちょこっとお薬を」






マジ?
・・・・って言うかこれがオチ?









「はい。いい薬になりましたか?」










どっとわらい
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後書き
月詠:はい。訳分からん物書き、月詠です。
琥珀:はーい。今回の代表の琥珀でーす。
月詠:ちょっと今回は毛色の変わったSSです。
琥珀:いつも滅茶苦茶ですが、今回は更に酷いですね。
月詠:書いてる自分も分からなくなってるし。しかも夢オチチック。
琥珀:まあ、これを読んでる方に15歳や18歳以下の方はいないでしょうし。
月詠:いたら大変だよ。一応このゲームは18禁なんだし。
琥珀:でも読むのは年齢制限ありませんし。
月詠:まーね。けど、しかし毎回こんなSS書くよなあ。
琥珀:もっとしっかり構想を練ってから書かないといけませんよ。
月詠:精進します。これでも時間単位の時間が掛かってるんですよ。
翡翠:月詠様は「愚図」だと思います。
月詠:琥珀さん。翡翠の真似して、惨い事言わないで。
琥珀:いいじゃないですか。「事実」ですし。
月詠:いい加減凹みますよ。いくら俺でも。
琥珀:それでは、又来週〜。
月詠:ここまで読んで下さって有難う御座いました。

































ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後書きの後書き(舞台裏)
・・・・・・
はい。
月詠です。
今回も何でしょうかねえ。

何となく最近自分も腹が減るので
それをネタにして見ようかと。

何書いてんでしょうね。



次回はもう少しマシな物書きます。(多分)


では次のSSでお会いしましょう。




TOPへ