願掛け
一年の慶は元旦にあり、ということで俺たちは神社に来ていた。 「うーん、人だらけだな」 「だから言ったじゃありませんか、今からでも遅くありません。 いつも私がお世話になっている神社へ行きましょう」 隣には少し厚着をしているがいつもと替わらない秋葉がいる。 でも一緒に居るのは秋葉だけで翡翠と琥珀さんは留守番だ。 こんなところに翡翠を連れてきたら人の多さにあてられて倒れてしまうかもしれない。 実のところは来たがっていたのだがメイド服から着替えようとしないので、 琥珀さんに頼んで一緒に留守番をしてもらってる。 「まあいいじゃないか、年に一度のことなんだから」 「たとえ生涯に一度でもこんなところはごめんです」 相変わらずうちのオヒメサマは全開です。 せっかく誘ったのにそこまで言い切られると凹むよ。 だけど俺も負けて入られない、伊達に遠野家で暮らしてるわけではないのだよ。 「そうか、じゃあしょうがない。秋葉は先に帰っててくれ」 「え、兄さんはどうするんですか?」 「俺は毎年来てるからね、もちろんいってくるよ。もしかしたら都古ちゃんも来て――」 「わかりました、私も行きます」 どうも都古ちゃんという言葉に思うところがあるらしい。 ただ単に可能性を述べただけだったのだが… 秋葉は俺が都古ちゃんを過剰に可愛がっていると思っている節がある。 俺としてはただ単に年相応の扱いをしているだけなのだけれど…… 「まったく秋葉は意地っ張りだな」 「わ、わたしのどこが意地っ張りだと言うんですか!」 「(そういうところがなんだけど)ははは、ごめんごめん」 「もう!」 秋葉は微かに顔を紅潮させている。 こういう秋葉はめったに見られないな、うん。 でも少し意地悪しすぎたのか、秋葉はすっかり機嫌を損ねたようだ。 「じゃあ行こうか、はい」 「なんですか?」 俺は秋葉に向かって手を差し出した。 だが秋葉はこういう経験が無かったのだろう。わかっていないようだ。 「なにって手をつながないと離れ離れになっちゃうだろ?」 「あ…はい」 少し戸惑いがちに――でもこっちに手を伸ばして重ねてきた。 どうやら自分からは手を握りづらいのだろう。ごくわずかにだが手が震えている。 それならばと俺は自分から握ってあげた。 「あ……」 「ん、どうしたの?」 秋葉は顔を赤らめ俯いてしまった。恥ずかしいのだろうか? 「な、なんでもないです!」 「そっか、じゃあ行こうか」 「………はい」 それっきり秋葉は黙ってしまった。 でもこうしていると昔を思い出す。 小さい頃はよく秋葉の手を引いて庭を走っていたような気がする。 ……そうだよな、秋葉は当主になったけど今でもあのころと変わらず小さいままだ。 俺にどれだけのことができるかはわからないけど秋葉を支えていこう。 そして願わくばずっと俺の隣にいてくれますように……
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後書き
えー今回はBBCさん。掲載が遅れてしまいました事真に申し訳御座いませんでした。
ゴメンなさいです。
さて。
今回のSSは遅れましたが「初詣SS」です。
お忙しい中感謝します。
同じ同好の士として真に嬉しい限りです。
でも最近は何やら浮気しているみたいですが。
ともあれ
これからも私のHPを何卒御贔屓の程、宜しくお願い致します。
真に有難う御座いました。