こちらはかすがさんの所の「秋隆祭」に投稿したものです
ジジジジジジ
何やらＴＶがおかしな音を上げている。
とうとう壊れたか？
そりゃ、未だにスイッチ式のＴＶじゃ、仕方の無い事かも知れないけど。
パチン。
そんな音がして、いきなりＴＶに電源が入る。
はい？
そして、そこに写っていたのは。
「秋子の部屋｣と大きく掲げられた看板と、前回私が出演していた時と同じセットだった。
「えええ？何で？だって前回私が木っ端微塵にしたのに？｣
「やっぱりそうだったんだ｣
何て言う幹也のぼやきなんかは聞こえない。
ええ、聞こえませんとも。
「はい。皆様、お待ちかねの秋子の部屋で御座います。
今回は特別に両儀家第七スタジオから衛星生中継でお送りいたします｣
待て。
今何と言った、こ奴は。
「ねえ、式、君の家は海外にも別荘なんてあるのかい？｣
「いや。聴いた事は無い。だが、秋隆の事だ。海外に別荘に一つや二つ、
持っていてもおかしくは無い｣
うん。その意見には賛成だわ。
多分逃走用とか、非常用とかに。
「さて。今回のゲストですが。
今回は礼園からのゲストです｣
「「「まさか」」」
「浅上藤乃さんです。
ようこそ御出で下さいました｣
「初めまして、浅上と言います｣
「藤乃？｣
「あの女｣
「ああ、あの時の｣
ピクリと二人のこめかみに青筋が浮かぶ。
「へえ、兄さん。藤乃とはお知り合いですか｣
「何だ、コクトー。随分と嬉しそうじゃないか｣
「そ、そんなことはないよ、え、え、えと。
そうだ。この時間だと、確か笑ったらいいともがやってた筈｣
何とか話をそらそうと幹也が慌ててスイッチを押す。
「あれ？」
「兄さん、早く押したらどうです？｣
「いや、さっきから押しているんですよ、鮮花さん」
見れば確かにスイッチを必死に押している。
「おかしいな、チャンネルが変わらない｣
「いや、それは当然です。ここ一体の電波は全てジャックさせて頂きました。
今この時間は全てこの番組のみ放送されております｣
「マジか。秋隆の奴｣
「式、その前に何で、僕たちの声があっちに聞こえるかを考える方が｣
「止めとけ、黒桐。ありゃ、魔法だ」
「秋隆、何時の間にそんなものに｣
「魔法だか、魔術だか知りませんが、随分と派手にやっていますね｣
「いいんだよ。こう言うのは派手な方が面白い｣
そういう問題でもないかと。
そんなことはお構いなしに番組は進んでいく。
「それでは、浅上さん。
浅上さんは旧家のお生まれと言う事でしたが？｣
「いえ、そんなお恥ずかしい。
只、家が古いと言うだけです。
確かに、古い血筋ですから土地やら権力やらはありますが。
そんなもの全て後から付いてくるものですし。
まあ、私には不要なものですけど」
「何気に、毒吐いてるな、これ生だろ｣
「生ですね｣
「いい根性だな｣
画面の中の藤乃はホントイイトコのお嬢様みたく、上品な受け答えをしている。
何気に髪をかきあげる仕草なんか
私では到底真似なんか出来ない。
ああ、内容さえ聞かなきゃ、お嬢様なのに。
吐いてる言葉は、毒だ。
「浅上さんは前回出演なさった黒桐さんとはご学友でいらっしゃいますね」
「はい。鮮花さんとは公私共にお世話になっています。
ね、鮮花？｣
にこりと
こちらに向かって微笑む。
一瞬、どきりとした。
何で？
何でそんな笑みが出来るの？
その笑みは私に向けられたもの？
まさか？
「鮮花。大丈夫か、顔色悪いよ｣
幹也が心配して私の顔を覗き込む。
「凶れ」
私達の後ろのスタンドがぐにゃりと曲がる。
はい？
「こいつ。とうとう、開花しやがったか｣
「ほう。千里眼とは。まさかこの目でお目にかかるとは、な｣
橙子師。
そんな悠長なこと言ってられませんって。
でも。
「兄さん、私怖い｣
ちょっとだけ、甘えちゃお。
ぴと。
「凶れ(怒）」
今度は壁に飾ってあった絵画がぱっこし曲がる。
うう、やばい。ここらでやめないとこの事務所の物がなくなる。
「それが賢明な判断でしょうな｣
「何故、私の心の声にあんたが反応する｣
「では。恒例となりました、写真で浅上さんの事を振り返ってみましょう｣
私の叫びは放っとかれたらしい。
がさごそと何やらフリップを探している。
「ああ、ありました。
・・・・・・これは、ああ、はい。
中学の時の体育祭のものですね。
ぶるまあ姿が、なんとも･･｣
「凶れ（にこ）」
ぱき。
藤乃が言った途端。
秋隆さんの持っていたフリップが真っ二つになる。
「おい。そんなに能力発動させていいのか｣
「その前にこれじゃ、番組にならんだろう｣
「続きまして｣
「「「おお、司会の鏡」」」
「・・・・・はい、これですね。
これ、は。
ええ、礼園の写真です。
朝のミサの写真ですかね
瞑想なさってるお顔が麗しい・・・｣
「凶れ(はあと)｣
又も、手に持っていたフリップが割れる。
「司会者泣かせだな、こいつは｣
「いや、橙子さん、意味違うし｣
・・・・・・・・・・
重い空気がスタジオに流れている。
当人はニコニコ笑ってるけど。
「では、質問の趣旨を変えましょう。
浅上さんは以前黒桐様にお会いしまして、その際
一晩お泊りになったと伺いましたが｣
「本当ですか、兄さん。その話は｣
「コクトー、ドーユーことだ｣
「だああ。
あの時は終電もないし、真夜中に道端で蹲っていたから。
ずぶ濡れだったし。
風邪でも引いたら大変じゃないか｣
「夜に一人ぼっちで濡れてれば誰でもいいんですか｣
「鮮花と同じ服装だったし。
あのガッコの子ならそんなに悪い子はいないだろう｣
そうとも限りませんよ、兄さん。
その考えを裏付けるかの様な藤乃の言葉が聞こえた。
「ええ。事実です。
そうです、私は幹也様のお部屋で、一晩夜を共に致しました」
「うわああああ。
藤乃ちゃん、そんな誤解を招く言い方はいけない｣
「兄さん。外道ですね。
自分の妹の友人にまで手を出すんですか｣
「コクトー。
安心しろ。
痛いと思う間もなく、コロシテヤル」
「だから、誤解だって｣
「誤解ではありませんわ。先輩。
あの夜、私に言って下さったではありませんか。
僕の所においでって。
私、あの時とても嬉しかったです｣
「意味を湾曲してるし、捏造だし。はしょり過ぎだし。
それに何だって僕らの言葉が聞こえるんだよ｣
「この電波は双方向ですから｣
それも意味違うし。
「幹也、もう言い逃れは出来ないわよ。
大人しく、消し炭になりなさい｣
「ああ、待ちに待った人殺しが出来る｣
そこ、何をとんでもない事口走ってるんですか。
「まあ、でも。
先輩の周りにいらっしゃる方々は皆、慎ましやかな方が多いと伺っていますから
そう無闇やたらに野蛮な事はしないとは思いますけど｣
何て言って
藤乃は
後ろ髪を流すような仕草をする。
そう言うことをすると自然と背筋が伸びて。
・・・・・・・・・・・・
慎ましやかって、そっちの事か。
多分、今いる女３人はその動作の意味が判ったと思う。
トーヘンボクの幹也は判らないだろうし。
式の目にも幹也の時とは違う殺意が宿る。
「それに、お一人、年上の方がいらっしゃるらしいですから。
クス。
そんな行為はなさらないとお思いますわ｣
藤乃の言葉の外の意味が判った見たいで。
橙子師の口元がにやりと吊り上る。
「鮮花、式。
準備はいいな。
いつでも、行ける様にしておけ｣
「判ってる、トウコ。
お前こそ大丈夫か」
「誰に向かって物を言ってる。
私はその道のプロだぞ。
抜かりはしない｣
「行きましょう、橙子師」
「では、黒桐、私達は暫く留守にする。
後はてきとーにしていろ｣
「じゃ、コクトー行ってくる｣
「兄さん、行って来ます｣
３人とも、番組が終わるのも待たずに、いずこかに行ってしまった。
「何も問題は御座いませんよ。黒桐様。
ええ。この場所が発見される心配は････」
「あら、ＡＤさんが騒いでいますね。
何でしょう｣
何だか、画面外のほうで、
物騒な音が聞こえるんですが。
「さて、では、又次回お目にかかりましょう」
「次回があったらね｣
思わず、僕はそうつっ込まずにいられなかった。
「藤乃ちゃんも、気をつけるんだよ｣
「先輩が優柔不断だからいけないと思いますが｣
「手厳しいな｣
「いいです。
今から、先輩の下へ必ず行きますから｣
なるべく穏便にね。
結局、今回もバックで破壊音やら、燃え盛る炎やら、
きゅぴーんとか言って切れていくものやら、曲がるもの。
様々なＳＥを響かせて。
満面の秋隆さんの笑みで番組は終わっていった。
皆、少しは仲良くしようよ・・・・・・・・・・
「「「「最後に笑うのは私だ」」」」
いや、これ以上のドタバタは勘弁して下さい。
終わり。
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はーい。
またもや、月詠です。
ノリに任せて書いてしまいましたが。
藤乃ファンの方、済みません。
かなりキャラ、ぶっ壊してます。
でも、私も、藤乃好きです。
鮮花も好きです。
礼園カップル（？）萌えー。
です。
シキスキーな方や、幹也ＬＯＶＥ、橙子師や、秋隆さんスキーな方は
すみませんでした。
でも、止められなかったもので。
ああああああああああ。
藤乃、萌えー。
（かなり、壊れてます、暫くそっとしといて下さい)
えー。
これからも、ビシバシと頑張って下さい。
では。