こちらはすいすい水夢さんの所で開催されている「萌月夜」に投稿したものです。

「雨上がりに虹は出て」


朝から薄暗く曇っていたから
降って来るかな、と思ったら。

案の定

夕方、家に帰る時は完全に降り出していた。
生憎、僕の事務所には傘なんて気の効いた物はなくて。

仕方なく土砂降りの中家まで走るハメになってしまって。

ずぶ濡れになるのも構わず、ひたすらに家に向かい走る。

濡れた服装が体の動きを制限するけど。

だからって途中で止まるわけにも行かないし。

だったら途中のコンビにか何かで買えばいいいでしょ?
とか思うかも知れないけど。

残念ながら僕にはそこまでの金銭的余裕が無い訳で。

さっきも、事務所で橙子さんに傘を無心しようとしたけど。
それはそれはけんもほろろに断られた。

自分の所の社員が風邪引いても構わないのだろうか、あの人は。
まあ、素直に貸してくれるとも思わなかったけど。

肩で息をしながら、漸く、見慣れた自分のアパートが見え始めた時。

そこに何時もとは見慣れない風景が一つあった。


雨に濡れている一つの影。

あの時と同じ

雨の中
佇んでいる




一人の女の子。



「どうしたの?」

不思議に思い、声をかける。

けど。

僕の言葉が聞こえてないらしく。

いくら声をかけても反応はなかった。


仕方なく

肩に手を掛ける。


ようやく、それで僕の存在に気が付いたらしく。


ビクリ

と体を緊張させる。



ハッとして僕の顔を見る。

「先、輩?」

ああ、やっと気が付いたみたいだ。

「藤乃ちゃん。どうしたの、ボーとして」
にこりと笑いかける。

藤乃ちゃんは僕と同じく
随分雨に打たれていたみたいで。

体がかなり冷えてしまっている。

着ている服(多分礼園の制服だと思う)
なんて、体にぴったりと張り付いてるし。


一体どれ位こんな状態でいたんだろう。

唇なんか紫色だし。

さっきからカタカタと小刻みに震えてる。


人の事言えた義理じゃないけど。
このままじゃ、風邪引いてしまう。


「僕に用だったのかい」

それに藤乃ちゃんはふるふると横に首を振る。

う〜ん
それじゃ、何で、僕のアパートの前で?

あああ。
そんな事は後で聞こう。

このまま、風邪なんか引かせられない。


「兎に角、僕の部屋に来て。
そこで、服とか、乾かさないと」

それでも
藤乃ちゃんは動こうとはしない。


・・・埒が明かないな、これは。

「でも、このままじゃ、風邪引いてしまうよ」

「いいんです。このままでも」

結構、頑固だな。

雨の方も、全然降り止む気配すらない。

この調子だと、夜も降ってるかな。
傘も無いこの子をそのまま返すなんて事は出来なし。


このまま、強引に部屋にまで連れて行く。

その間も、藤乃ちゃんは何も言わず、僕の後を付いてくる。



部屋に入って何か、感じたのか。
藤乃ちゃんの顔色が一瞬変わった。

「誰か、いますか?この部屋。」

「うん?僕の他にはいないよ。
まだ、式も帰って来てないみたいだし」


ピクリ
式と言う単語に反応する。


「あの人、ここに住んでるんですか」

「う〜ん。
住んでると言うか、たまに泊まりに来る。
同棲て訳でもないし」


何だか、僕の話を聞いてる内に
表情が険しくなってくる。


「まあまあ。
式の事はいいとして。
今、お風呂沸かすから、体、温めてきなよ」

「いいんです。
私の事、放っておいて下さい」

すっと立ち上がり、出て行こうとする。
そんな藤乃ちゃんを引き止める。

「良い訳ないでしょうが。
とにかく、お風呂にでもゆっくり浸かって
少し落ち着きなさい。
年上の言う事は聞くもんです」

未だに何か言いたそうな藤乃ちゃんを、脱衣所に押し込む。

さて、じゃ、僕はその間にご飯でも作ろうかな。

冷蔵庫を漁って見るけど。
ろくなモンがないな。


又、パスタかな、これは。

今度、給料出たら食材買ってこよう。

僕が、料理を作り終わったのと
藤乃ちゃんが出て来たのは殆ど同時だった。

うん。
顔色も少し戻ったかな。



「ゴメンネ。
又、パスタなんだけど。
いいかな」


いいも何も。
それ以外何も無いんだけど。


「・・・・私、何か作りましょうか」

目の前に出てきた料理を見て、そう呟く。

そんなに、不味そうなのかな。
少し心配になった。


「けど、何も無いし。
それに、いいよ、藤乃ちゃんは座ってて」


けど。
藤乃ちゃんは台所に向かって歩いていってしまった。

本当、何も無いよ。


なのに

何か見つけたらしく
料理を始めてしまった。

・・・・一体何があったのかな。

僕も知らないんだけど。




その間、僕もお風呂に入って。


出てきたら


そこには
驚くほど豪華な食事が出ていた。


こんなにあったんだ、ここ。


自分でもビックリだ。


「これ位しか出来ませんでしたが」

「いや、これだけ出来れば、上等だと思うよ」

そして
二人で、食事が始まる。


んだけど。


これと言ってお互い共通の話題なんて、そうそう無いので。

すぐに会話が途切れてしまう。

何とも、気まずい空気の中。

食事が終わり。



片付けも終わってしまい。


完全に何もする事がなくなってしまった。


「あのさ。藤乃ちゃん
何で僕のアパートの前にいたの?」



・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・


無言だけど。
視線が痛い。


この事はタブーだったかな。

「ああ、言いたくなかったらいいよ。
こっちも無理に聞きたい訳でもなくて。
話の話題にね」


「・・・・・何となく、ぶらぶら歩いていたら。
たまたま、先輩の家の前に・・・」

ぽつぽつと話し始める。


僕も、そうか、としか言わない。

「鮮花から聞いてるよ。
最近、何か悩んでるみたいだって」



それにも無言。

しかも、更に視線が痛い。

そう言えば
昔式が言ってたけど。

藤乃ちゃんは、視線でモノを曲げる事が出来るって。

このまま、僕は睨まれ続けると。

曲がってしまうんでしょうか。



「鮮花は、詳しく言ってなかったけど。
何か、悩みがあるのなら
僕でよければ、聞くよ」


「いいんです。
先輩に言っても駄目なんです。
これは私の問題ですから」




そう言うものでも無いだろうに。
何をそう頑なになるかな。


「それでも、人に話すだけでも違うよ」


「話しても、仕方ない事です。
自分で決めないといけない事ですから」

言葉の中に、固い決意が見え隠れする。

これは、翻意させるのは厳しいか。
だけど。

はいそうですか
なんて投げる事は出来ないし。


それから二人とも、何も話す事が出来なくなり

重苦しい空気のみがその場を流れていく。


藤乃ちゃんは何か言いたそうに
話そうとするけど。
結局その言葉を飲み込んでしまい

僕は僕で

その藤乃ちゃんを見ていて何も言えなくて。

ただ時間だけが無常に過ぎて行った。



「・・・・・・・私、大変な罪を犯しました。
それは法では裁かれなかったですが。
それでも、何時も自責の念が付き纏って」


漸く藤乃ちゃんが重い口を開く。


「うん。僕も多少関わってたから。
そこら辺の事は知ってる。
でも、その事で罪の意識を持つのは違うんじゃないのかな」

その事は知ってはいたけど。
敢えて何も言わず。



心を開き始めたらしく。
藤乃ちゃんの表情が変わっていく。

やがて、言葉の端々に溢れ出る感情が見え隠れしていく。

それに伴い
段々、藤乃ちゃんの目に涙が浮かんで来る。



「私、私・・・」
「いいんだよ、辛い時は泣いたって。
何も我慢する事だけが、罪じゃないんだ」


涙は止め処なく溢れ、流れ
頬を伝う。

藤乃ちゃんは涙を拭う事もせずに。

嗚咽を漏らしている。


「泣きたい時は泣いていいんだよ。
君は十分苦しんだんだ。
その償いは一生かも知れないけど。
罪の意識に押し潰されちゃ、いけないよ」



そして

藤乃ちゃんを抱きよせる。

顔が胸に当たる。

暫くは嗚咽だけだったが。

やがて、大声で泣き始めた。

今までの苦しかった事、辛かった事。
その全てを吐き出すように。
ひたすら、彼女は泣き続けた。

僕には、正直彼女の気持ちなんか判らない。
当事者で無い僕があれこれ言える訳もない。

だから、これ位の事しか出来ない僕が恨めしくさえ思う。

泣き続ける彼女の頭を優しくなでる。

一体この子はどれ位の日々をこの孤独の中で生きていたんだろう。
誰にも何も言えず
ずっと自分を責め続け。
多分、この子にとっては寝ている間だって
心は休まらなかったのではないか。
人に打ち明ける事すら出来ないで
心の奥底に隠して。

彼女の苦しみを思いやって
ぎゅっと、抱きしめる。




泣き疲れたのか。
いつの間にかに

藤乃ちゃんは僕の胸の中で寝てしまっていた。


寝顔を見れば、年相応の普通の女の子。

とても、あんな事をしたとは思えない。

僕は起こさない様に
そうっと
彼女をベッドに運ぶ。

ゆっくりと。

今度目が醒めたら。
綺麗な笑顔になってくれる事を期待して。

僕も少し眠らせて貰おう。



それじゃ、お休み。


いい夢をね。



明日は晴れるといいね。
藤乃ちゃん。







FIN
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後書き
月詠:はい、どもです。SS書きの月詠です。
藤乃:今回のSSの主役の浅上藤乃です。
月詠:う〜ん。救われたんですかねえ、ふじのん?
藤乃:私は、あの後どうなるの?
月詠:それはその人の考え次第。十人十色。どうにでも。
藤乃:何か無理矢理終わらせましたよね。今回のSS?
月詠:実は、エンドは違ってたんだけど。止めました。
藤乃:どんなものだったんです?
月詠:では、以下カットされた部分です。

ベッドの中で目が覚めた。
横には先輩の顔。
「先輩、実は私、自・・・・・
「そんな事聞きたくない。君は君のままでいいんだよ」
「でも、私。どうしたらいいのか」
「いいかい。確かに君は罪を犯した。
けど、それに負けちゃ、駄目なんだ。
実際に知らない僕が言うのも何だけど」
「でも、この力がある限り私はこれからも傷つけてしまいます」
「我慢して何て言わない。けど。
冷たいようだけど。死は結局、逃げだよ」
「・・・・・・・」
「逃げちゃ駄目なんだ。逃げないでしっかりと歩いていかないと」

藤乃:これがカットされた部分?
月詠:そう。だから、ふじのんは雨の中立ってたんです。
藤乃:ふ〜ん。成る程ね。確かにこれが無いと辻褄合わないわね。
月詠:ま、そう言う事です。
藤乃:で?これの何処が、萌えなんです?
月詠:雨でぴったりしてる服。
藤乃:変態(ぼそっ)
月詠;変態言うなぁ!
藤乃:だって変態でしょ。それが萌えなんだし。
月詠:まあ、礼園カップルはそれだけで萌えだけど。
藤乃:あら、うれしい(にこ)
月詠:ああ、綺麗な子に微笑まれると、癒される。
藤乃:さて。それでは、又次のSSでお会いしましょう。
月詠:ここまで読んで頂きまして有難う御座いました。





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後書きの後書き(舞台裏)
どーもです。
SS書きの月詠です。
今回はふじのんSSです

今回の萌えは濡れているふじのん。

萌えますか?
と言うか、私こんなに萌えてていいのでしょうか。

もう萌えまくりです。
駄目人間決定ですな。

でもって。

又判り図らい内容です。

皆様のご理解とご協力をお願い致します(なんのだ?)

それでは
これからも頑張って下さい。

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