こちらは須啓さんの所の「式乳祭」に参加した際のSSです。

「コクトー君の観察日記」








「式の事に興味はないかい?」

いきなりそんな言葉が橙子さんの口から出る。



午後の長閑な昼下がり。
ここは事務所の中。



そこには

まず
べらぼうな量の書類と格闘している僕。

それと
同じくべらぼうな量の魔術の本から書き写している
妹の鮮花。




窓際で煙草をくゆらせている橙子さん。



「は?」
自分でも呆れてしまう様な声が出た。


「一体なんです」

「言葉の通りだ。
私は式の事に興味があるのだよ」

この人は本気でイってしまったのだろうか。

ああ
だからこの人は結婚出来ないのか。

「たわけ」

「私の言っているのは知的興味からだけだ。
決して他意はない」

「判りましたから、ヒールどけて下さい」
「ああ。すまんな。ついうっかり」

そう言ってやっと足をどけてくれる。

ああ、痛い。


「でも、本当に一体どうしたんです。
いつもの師の言葉とも思えませんが」

がばと
顔を上げた鮮花も聞く。


「ふう。いいかね、二人とも。
物語の登場人物は、その物語には何も疑いはしないのだよ。
何故か。
それを始めたら、その物語は破綻してしまう。
当然だな。
主役がストーリーを投げているんだからな。

だから」

「私達は大人しく師の話を聞け、と」

橙子さんはうむと重々しく頷く。



ま、もうどうでもいいや。


「でだ。大体のデータは揃った。
後は細部のデータなのだが」


「?具体的には?」

「胸だ」



「二つじゃないですか?」
そう言った途端。


一気に空気が軋み、殺気が渦巻く。




「出ろ」

いつの間にか置いてあったトランクから、何か黒い影が滑り出す。


「わあああああああ」

「兄さんの馬鹿あ」

こっちも何故かヒートアップしてる鮮花が襲い掛かってくる。


何とか鮮花の炎はその影が飲み込んだけど。


何なんだ一体。


「誰が、個数を知りたいなんて言った。そんなもの見れば判ろう」
「兄さんの不潔。変態」

お前、あれ位のことで、そこまで言うか。


「そうじゃなくて。サイズだ、サイズ。知っての通り式は着物だ。
おそらくはさらしは巻いていると思われる。
よって、外見上からの測定は不可能だ」




「それで、君に聞きたい」

「その前に」
「何だね」


「この黒い猫みたいなの、何とかして下さい」

今、その猫は僕をがしがし甘噛みしている。
完全におもちゃ扱いだ。




「このままでも構わんだろう」
「構います」

ふう。
と大きく溜息をし
指を鳴らす。


それで
その猫は元のトランクに戻った。



橙子さん。
そんなにあからさまに悔しそうな顔をしないで下さい。



「で、君なら知っていると思うのだが」

「アバウトでいいのなら」
「構わない」






「ええと
大きさで言うなら
橙子さん>式>鮮花
ですかね」


それに橙子さんは満足気な笑みを。
一方鮮花は、顔面蒼白だ。



何がそんなに?
このリアクションの違いは。



「ふむ。成る程な。
いつもさらしなので、コンプレックスを隠しているのかと思ったが」

「ええ。
最初は僕も驚きました。
でも、さらしで巻いてないと
剣の型なんかをやるときに邪魔なんだそうです」

「だろうさ。
余りに大きすぎるのは揺れて痛いしな。
式の様な達人ではその胸は邪魔者でしか無いと言う訳か」

「お、大きければいいって訳じゃありません!
小さくたって形がよければそれでもいいんです!」

何故か、鮮花がムキになって反論する。
何でそんなに怒ってるのかな。
僕は何か言いましたか?


「それも、聞きたいな。
どうなのだ。
形や色は」


「いいんじゃないでしょうか?
って、僕は見てませんよ。
式が
「コクトー。俺の胸っておかしくなのか?
自分では良く分からないんだ」
って言ってたので」

「確かにな。
式には周りにそういう話が出来る奴はいないしな。
聞くには黒桐しかいない」


「橙子さんの方が見ているんじゃないんですか。
ほら。
前に式の腕を作ったじゃないですか。
その時に」

「阿呆。
そんな事する訳が無かろう。
医者が患者をその様な目で見るのか。
そんな訳が無いだろう」

ふうーん
とうなずく。

「何だその目は。
疑っているのか」

「いいえ。別に」

「・・・・・で。サイズはどうなのだ。
大きさは判ったがもう少し具体的なデータは無いのか」

「これも、アバウトなら」

橙子さんは無言で頷く。



「さっきの並びで行くと。

E>D>A

ですね」

又2人とも、満面の笑みと
蒼白な顔色。


「ほう。
Dか、中々に大きいなそれは・・・・



待て、黒桐。
何故、お前は私や、鮮花のサイズまで、知っている?」

「はい。
私も聞きたいです。
兄さん。
ストーカーですか。
こっそり私の事を」


「鮮花。
実の兄に向かってそれは無いだろ。

橙子さんも。
2人とも。
僕の実力を過小評価してませんか。

まず、橙子さんですが。
僕がこの場所を探す時に住所だけを探すと思いますか。
最初はその人物から。
その際に個人情報は入ってきます。
その時のデータです。
あれから、もう、随分たちましたが
そんなにはサイズは変わらないと思いましたので」

橙子さんはそれを苦々しく聞いている。

なんで?
そんなに僕は変な事を言っているのか?

「で、
鮮花。
流石に礼園までは探しにいけないから。
しかも丁度成長期にこの家から出てってしまった。
でも、家に帰ってきても左程変わっていないし。
だから
橙子さんはE
鮮花はA
なんです」


「それで?
式のDてのはどういう理由だ?」

「二人の間を取ってみて。
更に橙子さんには敵わないですがそれ位はあるかな、と」

橙子さんは
はん
と、鼻で笑ってくれる。

「たいした観察眼だよ。黒桐。
よくそれだけの情報でここまで推理できるものだ」

それは褒めているんでしょうか。
それとも貶されているんだろうか。

多分
両方なんだろうな。

「しかし。
さらしで巻いているのにそんなに成長するのか?」

「それも聞いてみたら、
小さい頃は痛かったが、大体高校位から左程でも無かったそうで」

「ああ。
良く聞く話だ。
思春期の時。
胸が膨らむのが恥ずかしくて無理矢理戻そうと押し付けると聞く。
だが結果的にはそれは更なる成長を促すという。

式のは正にそれの典型的な例だな。
しかもご丁寧に幼少の頃から今までずっとだ。
さぞかし効果があったろうよ」



「ああ。因みに聞くが、黒桐。
君は大きい方がいいかね?
それとも、小さい方が?」


「別にこだわりませんが、
大きいに越した事はないんじゃないでしょうか。
その方がいいお乳も出るでしょうし」

その答えに
橙子さんは底意地の悪い笑みを見せただけだった。


何となく地雷を踏んだ気がするのは気のせいなんだろうか?
この後僕は無事に家まで帰れるのか。

ふと
そんな考えが一瞬よぎった。




「これで、揃いましたか?」
「ああ。お蔭さんでな」


「そう言う訳で、鮮花。
もういいぞ。
思いっ切りやってしまえ」

?はい?
一体何のことで?


「兄さん。
兄さんは私の胸が小さい事を笑うんですね。
ええ、そうです。
どうせ私の胸なんかAですよ。

でも、いいじゃないですか。
世の中にはナイチチマンセーとか言う人だっているんです。
ナイチチのどこがいけないんです」


「別に笑ったりなんかしてないぞ。
それにいけないとも言ってない」

「いいえ。
ハッキリと巨乳万歳と言ったじゃないですか。
それこそ、宣戦布告です。
いいでしょう。
兄さんがそういうつもりなら私も最後まで戦い抜きます」

なんか、勝手に気合とか上げてるし。
勘弁して下さい。

「今まで我慢してきましたが、もう止めます。
兄さんが敵とわかった以上、手加減しません」

敵とかいう問題じゃなく。
その理不尽な怒り方を、いや性格を直しなさい。

お兄ちゃんマジで心配だよ。

「覚悟して下さい。
兄さんは不潔です。
兄さんは変態です。
兄さんは外道です。
兄さんは邪道です。
兄さんは鬼です、悪魔です。

どうしてこんなに可愛い妹がいるのにあんなバカ式
なんか選ぶんですか。ああもう、本当に頭にくる」

自分の言葉で、いい感じにヒートアップしていく妹。
多分、魂とか熱血とか掛けているんだろうなあ。

一体何の話だか。



「とにかく」
びしっ

何やらごついグローブを嵌めている手で僕を指差す。
止めなさい。はしたない。


「兄さんを殺して私も死ぬうー」


一寸待てー。




言おうとした僕の言葉は突進して来た鮮花の肘でかき消された。

そのまま空いた手で僕を
ワンハンドネックハンギングツリーに持って行き

「落ちろオ!」


爆発


更に
今度は反対の手で事務所の床に叩き伏せ



「死ねい!」


又爆発

今度は紫色の爆発。



一瞬日輪と月が見えたのは爆炎の幻覚なんだろうな。



「どうですか兄さん、少しは懲りましたか?」

「懲りる云々の前にお兄ちゃんをもう少しいたわりなさい」

「む。
まだ減らず口が叩けるんですね」

「お仕置きです」

そんな事を言って鮮花は僕を引きずったまま事務所を出て行く。


「橙子さーん。
助けてくださいよー」


「あばよ。
黒桐。
生きていたら又会おう」

オレンジ色の魔術師は本当に嬉しそうに笑いながらそうのたまった。




「ほーほっほっほっほっほっほっほっほ。
ああ、何て楽しんでしょう。
兄さんにあーんなことや、こーんな事や
あまつさえそーんな事が出来るなんて」



又一瞬鮮花の髪が長くて赤く見えたのは多分夕焼けのせいなんだろうな。

きっとそうだ。
ぜったいそうだ。
そうだったらそうなんだ。

「さあ、兄さん、一緒に官能の世界へ!」















これがオチ?











この一部始終を隣の給湯室で眺めていた式が一人
ガッツポーズをしていたのは又別のお話。













ホントの終わり











はい。
どーもです。

ここまで読んで下さって、有難う御座います。

えーと。
物とか投げないで下さい。
それからかみそりレターとか。

「式の話なのに何故出ない」
とか
シキスキーな人
真に申し訳在りません。


何となく他のSSと差をつけたかったもので。
で、何で差をつけるか。
実力なんてとても。

となればあえて主役をはずす。

かなりな奇策です。
墓穴を掘るとも言いますが。



兎に角面白いと言ってくれた方が一人でもいれば
成功です。(いればですが)




では

須啓さん。
これからも、頑張って下さい。


月詠でした。







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