You'll Never Walk Alone
この歌のオリジナルはミュージカル「回転木馬」の挿入歌。
これを当時リバプールでビートルズと人気を二分していた
Gerry&ThePacemakersがカバーして
全英No.1ヒットを記録した。

やがてリバプールFCのサポーターズ・ソングとなり
ハーフ・タイムに大合唱が起こるようになる。
そうするうちに、イングランド代表チームの応援歌になり
やがて、世界中のサッカー・ファンの愛唱歌となった。



FC東京も前身の東京ガス時代からこの歌を歌い続けている。
自分がこのクラブを応援しはじめた1998年の春
まだひとつしかなかった東京ガス応援ページのトップには
以下の文章が踊っていた。

「祝!J2参入!」

意味がわからなかった。
なぜ祝なのか? J1でないのに?
シーズンも終わる頃になって
その意味を理解した。

かつて柏レイソルがJへの昇格を決めた日に
カレッカは「Jリーグ!」と吠えた。
でも、アマラオがその言葉を口にすることは許されなかった。
JFLの2位になった年も、優勝した年でさえも。



J2元年の秋。場所は等々力。
アマラオを怪我で欠く東京は首位をひた走る川崎フロンターレとの
天王山で負け悪夢の4連敗。

試合終了からクールダウンを終えた選手達が立ち去るまでの約30分間
サポーターはこの歌を繰り返し繰り返し歌い続けた。
歌に託した思いは人それぞれだったと思う。

選手の姿がほとんど見えなくなった頃
清水からレンタルで来ていたユキヒコがピッチの脇に立った。
彼は歌声の止まないアウェイゴール裏2階に向き直り
深々と一礼した。



J1にタナボタ昇格した翌年の春
まだホームスタジアムのない東京は
分不相応にも国立を中心に試合を行っていた。
ある日、ホームゲーム演出担当と名乗る人物から
一通のメールが届いた。

「今、スタジアムで流しているYou’llの歌詞に日本語訳を添えたい。」
「ホームページの訳詞はあなた自身が訳されたものか?」
「もしそうであればあれを使わせてもらえないか?」
みたいな内容だった。

特に断る理由もないので承諾する旨を伝えると
数日して「ご協力感謝します」「次節磐田戦から流します」
との返事が届いた。

でも信じなかった。
どうぜ知合いの誰かが仕組んだイタズラだと思った。

水曜日の夜

試合開始直前までの雨でお客さんは1万2千ちょい。
東京にとって物凄く大事な試合の試合開始5分前
いつもと同じようにイントロが流れしばらくすると



"You'll never walk alone"

When you walk through a storm
嵐に出会った時は
Hold your head up high
しっかり前を向いて行こう
And don't be afraid of the dark
暗闇を恐れてはいけない

At the end of the storm
嵐の向こうには
There's a golden sky
青空が待っている
And the sweet silver song of a lark
雲雀が優しく歌ってる

Walk on through the wind
風の中を行こう
Walk on through the rain
雨の中を行こう
Though your dreams be tossed and blown
たとえ夢破れようとも

Walk on, walk on
歩こう 歩き続けよう 
with hope in your heart
希望を胸に
And you'll never walk alone
そうさ 俺達は一人じゃない
you'll never walk alone
俺達は一人じゃない

Walk on, walk on
歩こう 歩き続けよう
with hope in your heart
希望を胸に
And you'll never walk alone
そうさ 俺達は一人じゃない
you'll never walk alone
俺達は一人じゃない



足りないオツムで辞書を引き
あれこれ思いを巡らせながら
なんとかとこさえた拙い訳詞が
よりによって「聖地」の電光掲示板に流れた。

この時の気持ちは言葉には出来ない。
呆然と眺めていると「異変」に気付いた
観戦仲間達が手荒く祝福してくれた。

この日、東京は王者磐田に2度先攻されながら追いつき
まさかの大逆転勝ちでJ1首位に躍り出た。

同点ゴールから試合終了までの15分間
東京サイドはゴール裏はもとより
バックやメインまでもが総立ちになった。



そして僕等のホームスタジアムが出来た年の春
サポーター有志が柿落としの開幕戦のバックスタンドを
青と赤で染ようというイベントを企画した。

当日、バックスタンドで配られた青と赤の画用紙には
この歌の歌詞と訳と共に
以下の文章が添えられていた。



「はじめてFC東京の試合をご覧になる方へ」
FC東京がプロのフットボールチームになる前、
東京ガスフットボールクラブと呼ばれていた頃から
サポーターたちは、選手の入場にあわせてマフラーをかざし、
You'll never walk alone を歌い選手と共に戦ってきました。
(そしていつかは世界一のクラブになることを夢見ています。)

今日はFC東京にはじめてマイホームグラウンドが誕生したすばらしい日です。
入場時にかざすマフラーを皆さんに渡すことは出来ませんが、
その代りがこの紙です。

もしもこの紙に思いが吹き込まれ、スタジアムが青と赤に染まったなら、
その光景以上に選手たちを奮い立たせるものはないでしょう。



ようこそ、東京スタジアムへ。

ようこそ、僕たちのホームグラウンドへ。
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