第133夜 こんな名門病院はイヤだ!「研修医・天堂独太」
ニンテンドーDSではじめてのアドベンチャーゲームということで、アドベンチャーゲーム好きの僕としては、それなりに期待して買ってみました。他はミニゲーム集とかパズルゲームばっかりでもありましたし。
主人公「天堂独太」は、三流大学「藪医大」(スゴイ名前だ…)を卒業したばかりの研修医なのですが、そんな独太がひょんなことから超一流大学であり、憧れの免疫学の権威・沢井教授がいる「聖命医大付属病院」で働くことになります。そして、独太は、さまざまな急患や重症患者さんと向きあっていく…まあ、そんな感じです。
このゲーム、ひらたく言えば「ブラックジャックによろしく」のストーリー+「病院を舞台にした、面白くない逆転裁判」みたいな感じ。カルテ作成=証拠品や証言集め、手術シーン=裁判シーン、という構成なのです。でも、ゲームだからといって、いくらなんでも今日病院に来たばかりの研修医がひとりで手術したりするわけねえだろ!というシーン満載ですし、他の医者たちも危険極まりない人々です。指導医アル中だし、研修医が心臓バイパス術を敢行します!聖命医大付属病院は、特定機能病院の取り消し間違いなし!こんな病院には絶対にかかりたくありません。
最初に「フィクションです」って出るので、まさか実際の大学病院もこんなものだとか、思う人はいないでしょうけど(と信じたい)、「白い巨塔」でも、「大学病院の回診って、あんな感じなの?」ってよく聞かれたしなあ(原作は何十年も前に書かれてるんですよ…)
でも、こういうゲームにも「研修医の給料は3万円!」なんていうのが出るというのは、あの「BJによろしく」というマンガが、いかに影響力があったか、ということを表しているような気もします。「研修医の給料は安い」というのを社会常識にしたことに関しては、あのマンガは高く評価されるべきかもしれません。それまでは、ほとんどみんな信じてくれなかったことだし。でもなあ、とりあえず他の医者呼べよ、って言うシーンだらけ。
そして、このゲームの手術シーンはけっこう難しいです。もちろん何度もやり直せますから、繰り返しているうちになんとななりそうなものですが、一応医者である僕がやっても、手術失敗しまくり。外科じゃなくてよかった…と思わず呟いてしまいます。でも、リアルというよりは、「何それ?」という感じなんですよね。この血管だろう、とタッチペンで囲むと、なんだか理不尽な理由で失敗してしまいます。そもそも「胃十二指腸動脈」なんて、いきなり聞かれてもみんな困るんじゃないだろうか…なんだか、簡単なシーンと難しいシーンの違いがありすぎ。
まあそれでも、タッチペンを使った手術のシーンはけっこう面白いです。こういうのは、やっぱりタッチペンのほうが臨場感出るし。とはいえ、「どうせなら、もっといろんな手術ができればいいのに」とも思うんですけどね。売りのはずの手術シーンが、ちょっと少ないかも。
あと、全体的としてはストーリーがちょっと短くて、早く終わりすぎ。一生懸命やると、5時間くらいで終わってしまいます。なんだか、「ロード・オブ・ザ・リング」の仲間が集まるところまでを見せられて、「はいおしまい」と言われてしまったような。ひょっとしたらシリーズ化を狙っているのかもしれませんが、そこまで先が気になる、というほどのものでもないし、ちょっと微妙な評価。最初から「2」を作るつもりの映画やゲームって、いまひとつのことが多いですよね。
うーん、医者っぽい雰囲気を味わってみたい人は絶対に買うなとはいいませんが、全体的にはちょっと期待はずれ、という感じです。いやまあ、本職のはずなのに何度もゲームオーバーになって悔しかった、っていうのもあるんだけど。