病院から、電気が無くなった日。
先日、バイト先の病院がいきなり停電になってしまったのだが、病院というところは、電気がないと本当に何もできない。いやまいった…
その日は普通に外来をやっていて、何人かの患者さんの検査結果を待っていたのだが、突然、「バチン!」という音がして、検査結果を見たり、薬の処方に使ったりするパソコンの電源が切れ、部屋の電灯も消えてしまった。
まあ、雷か、ブレーカーが落ちたことによる一時的な停電だろうと思っていたのだが、なかなか電気が点かず、どうしようもないので診察室で本を読んでいた。
しばらくして、看護師さんがやってきて、「この病院だけの停電みたいで、原因がわからないんです。いつ復旧するかも未定です」と言って去っていった。
この病院のバックアップの自家発電の電力は、古い病院なので最低限の病棟の生命維持装置と薄暗い電気の分くらいしかないそうで、検査の結果も出ない、ということだった。
よく考えてみれば当たり前のことなのだが、血液検査の機械にも電気が必要だし、この病院は、検査結果をオンラインで送ってくれるようになっている。
しかし、古い電力供給システムに、新しい電子カルテや検査データのオーダーシステムを導入してしまったため、ちょっとしたトラブルにもバックアップが無い状態になっていたのだ。
検査の結果待ちの患者さんのうち1人は、「復旧未定」という話を聞いて帰ってしまい、中には「どういうことだ!」と看護師長に詰め寄っている人まで出るしまつ。
だいたい、この手の「末端の職員に、企業や経営陣のミスを責める人(たとえば、牛乳配達をしている人に、雪印の事件に対して謝罪を求めるような人だ)」というのは、どんな世界にもときどき存在していて、そのわりには自分の受診時間がいつも「昼間は混むから」といって時間外だったり、血糖のコントロールがつかないのは全部医者のせいだ、とか言い出したりするのだ。
まあ、大きなトラブルにはならなかったみたいだけれど、少なくとも停電は僕のせいでも、もちろん師長さんのせいでもない。
そのほかにも、エレベーターの中に何人か閉じ込められたりして、大変だったみたいだ。
エレベーターの中に閉じ込められたら、映画なんかではロープを伝って脱出したりするけれど、少なくとも僕はマクレーン刑事じゃないので、そんな目には遭いたくない。
電子カルテが導入されて、検査も処方もパソコン経由のこの病院では、コンピューターが動かないと、どうしようもないのだ。
血液検査もできなければ、レントゲンも撮れないという状況では、診療をやるのはけっこう厳しい。日頃、いかに自分の耳や手以外のものに頼ってきたか、あらためて思い知らされた。薬の処方は、手書きでなんとか対応していったのだけれど、相変わらず字汚いし。
それにしても、電子カルテを導入する病院はどんどん増えているんだけど、こういう不慮のトラブルのときに、バックアップ体制ができているところがどのくらいあるかは、ものすごく疑問になった。
このバイト先の病院も、古いけど、けっこう大きな病院だったのに。
個人的には、ラクなバイトになったので、ちょっとだけ有難かったけど。