第115夜 史上最弱の冒険者、その名は「スペランカー」!


 「世界で一番有名な冒険家」が、あのインディ・ジョーンズとするならば、ゲームの中で一番有名な冒険家は、このスペランカーさんではないでしょうか?

 ゲーム自体が大ヒットしたというわけではないんですが、「スペランカー」って、本当に記録より記憶に残るゲームなんですよね。良くも悪くも…
 このゲームは、洞窟探検家のスペランカーさんが、幽霊とか湯気(!)とか、コウモリのふん(!)とか、さまざまな難敵(なのか?)に負けずに洞窟に隠された宝を見つける、という内容なのですが、最初にこのゲームをやったときの印象は、「なんだかキャラがちまちましたゲームだなあ…」という感じ。まあ、正直あまり面白そうではなかったんですよね。
 そして、実際にプレイを進めていくと(って、実際はスタートしてすぐに)、このゲームの他のゲームとの「違い」がわかってきます。
 それは、「このゲームの最大の『障害物』は、段差だ…」ということ。
 この冒険家は、今までのゲームキャラの中で最弱キャラだったのです。
 スペランカーさんは、冒険家のくせに、腰くらいの段差から落ちる(というか、見た目には、よっこらしょ、と「降りる」というくらいの印象なのに)と即死します。

 中でも僕を愕然とさせたのが、ごく普通の下り坂の上から下に向かって跳ぶと即死してしまうこと。こんなの道路脇の溝にはまると即死してしまうようなもの。
 そこらへんの小学生のほうが、はるかに体力がありそう。
 どうしてこんな虚弱体質なのに彼は「冒険家」なんて職業を選択してしまったのか、まったくもって理解に苦しみます。
 唯一の武器であるマシンガンも、撃ち続けると酸素不足で死んでしまいますし(でも、幽霊はこれを使わないと倒せない…)。

 これほどプレイヤーに「理不尽」を感じさせたゲームというのは、本当に少ないのではないでしょうか?とくに当時は「スーパーマリオブラザース」というのが多くのプレイヤーにとっての常識でしたから、自分の身長の3倍くらいの高さのジャンプを華麗に決めるマリオと腰の高さから「転落」して即死する「スペランカー」のギャップというのは、ものすごいものだったのです。
 「なんでそこから落ちたくらいで死ぬんだよ!」「こんな冒険家、ぜったいにありえん!」これほどプレイ中に罵声を浴びせられた主人公というのは、おそらく唯一無二…

 しかしながら、この「スペランカー」って、実際にプレイして、慣れてみると、この虚弱キャラをいかに微妙にコントロールしていくか?というのが少しずつ楽しくなってくるんですよね。1面をクリアしたときは、本当に嬉しかったなあ。

 さすがに、2面目になると、「スペランカー、もうこんな無茶は止めろよ…」と心の底から説得したくなりましたけど。