病院・役所・デパートの「接客マナー」比較
河北新報の記事より。
【岩手県内の小売業・サービス業の接客マナーに不満を持っている人は80%以上―。岩手経済研究所(盛岡市)が行ったアンケートでこんな結果が出た。理由は「笑顔がない」「態度が乱暴・不誠実」などで、同研究所は「接客マナーを高め、客に選んでもらえる店に」と呼び掛けている。
調査は今年7月、岩手銀行の窓口を訪れた市民ら計550人から聞いた。小売業・サービス業について「接客マナーに不満を感じる」との回答は17.4%。「時々感じる」の66.4%と合わせると83.8%が「不満あり」と指摘した。
マナーが悪いと感じるケースを聞いた質問(複数回答)では「笑顔がない」が40.3%でトップ。次いで「態度が乱暴・不誠実」「長時間待たされる」「あいさつが悪い」などが続いた。
客側の対応としては「不快感は伝えず店の利用をやめる」が64.1%と圧倒的に多い。「不快感を伝えず店の利用も続ける」という“忍耐派”も16.0%あった。
アンケートでは、小売業・サービス業以外の接客マナー(複数回答)も聞いた。悪い業種のトップは「市町村役場など公的機関」の52.1%。医院・病院が40.1%で続き、一般商店・各種専門店は3番目の22.8%。「役所の窓口よりは上」との評価だった。
マナーが良い業種は、デパート47.3%、ホテル・旅館46.2%、コンビニエンスストア22.2%となった。
同研究所は「店自身が、まず客の苦情を集める工夫を」と指摘している。】
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「サービス」というものは、どこまでいっても「100%満足」とお客さんに言ってもらうのは難しい面はあるとは思います。それにしても、この記事を読んでいて感じるのは、「お役所仕事」というイメージは、いつまで経っても変わらないのだなあ、ということなのです。
「病院」の話はとりあえず置いておくことにして、僕は今まで、「役所の対応」というのに、そんなに不満を感じたことはありません。田舎暮らしでそんなに混んでいないこともあるのかもしれませんが、休日に開いていないとか、締まる時間が早いというのは困ったものなのですが、実際に対応してくれる職員の人たちは、それなりに親切でテキパキとした対応のような気がしますし。もっとも、こういうふうになったのは、コンピューターによる効率化が進み、「お役所仕事」への風当たりが強くなってきた最近のことだけで、ちょっと前は利用者をバカにしたような職員が多かったのかもしれませんが。
とはいえ、このアンケートを見ていくと、「マナーが良い業種」の3位は「コンビニ」だったりするわけです。「デパート」とか「ホテル・旅館」というのは、サービスそのものが仕事という面もありますから上位にこないとおかしいのかもしれませんが、「コンビニ」って、バイトの人たちがレジで友達とずっと喋ってたり、買ったものをけっこう乱雑に扱ったりすることが多いような気もするんですけど…それでも、若い女の子の「笑顔」さえあればいいのか?とか僕はつい考えてしまいます。いや、店の方針なんでしょうが、手をギュッと握っておつりを返してくれるバイトの子に遭遇するたびに、なんだかカワイソウだなあ、と思うのは僕だけなのでしょうか?
ところで、これらのアンケート結果には、重要な分析が抜けているような気がするのです。
それは、お客の「期待度」というか、その施設を利用するときの「精神状態」というもの。だって、考えてみてください。役所に行くときって、めんどくさい手続きとかばかりで、そもそも「サービス云々」以前に、「あまり気乗りがしない用事」で行くことが多いはずです。
それに比べて、デパートに「まったくなんでデパートなんかに行かなきゃいけないんだ、めんどくさいなあ…」とイライラしながら行ったり、旅館に「くそっ、温泉なんて糞食らえだ!」と怒りながら来る人は、ほとんどいないのではないでしょうか?
そう考えると、そこに来た時点でのお客さんの精神状態が違うわけですから、「坊主憎けりゃ、袈裟まで憎い」じゃありませんが、役所に来る人のサービスに対する印象が平均的に悪いのは、当然のことです。僕だって駐車違反で警察署に出頭するときは、たとえカツ丼が出てきても不愉快極まりないと思いますから。
そういう意味では、コンビニの「満足度」がけっこう高いのは、お客も基本的にあまり「期待」していないから、という面もあるでしょう。コンビニというのは、ある意味「ディスコミュニケーションでものが買える」というサービスを提供してもいるのですけど。
実際に病院で働いている人間からすれば「どうしてこんなに待たされるんだ!」と言われても、「そう言われても、こっちも昼ごはんも食べないでずっと頑張っているのだし、患者さんと患者さんの合間には休憩をとっているわけではなくて、他の医療機関への手紙を書いたり、次回の検査のオーダーをしたり、ほんとうに休みなしで働いているんだから、できることなら診察室を透明な壁で覆って実際の仕事ぶりを見てもらいたい」とか、「それでも『遅い!』って言われるなら同じ治療が受けられて、もっとすぐ診てもらえる病院もあるのになあ」と考えたりもするのです。
どこの病院も「2時間待ちの3分診療」なわけではなくて、街の開業医の先生で診てもらえば、すぐ診察を受けられて同じような薬を出してくれるのに、と軽症の患者さんに対して感じるときもあります。救急車で搬送されてきた場合などを除いて「混んでいる病院を評判が良いとか、設備が整っているという理由で、自分で選んでいる」というのも事実なわけで。
「笑顔がない」というのは、病院を対象にした批判ではないのだとは思うのですが、仕事の性質上、やたらめったら「いらっしゃいませ!」とか言うのもおかしな話です。「スマイル」とか売り物にしていたら「そんなにオレが病気になって嬉しいのか!」と怒られかねません。
そもそも、具合が悪くて病院に来ること自体がすでに「不快な状態」なわけですし、その「不快度数」は役所のめんどくささの比ではないわけですから、逆に、「役所に勝った(?)」ということ自体が賞賛されるべきことなのかも…
「態度が乱暴・不誠実」「あいさつが悪い」に関しては、改善の余地が大きいとは思うのですけど。
まあ、大概の人は、銀行の窓口では10分待たされるとイライラしてくるのに、ディズニーランドのアトラクションに乗るためには2時間の行列にだって耐えられるのですから、こういうのは同じ「サービス業」で一括りにしないほうがいいような気がします。