「体にいい生活習慣」って、本当は体に悪いの?



10月19日の毎日新聞の記事より。

【「適正体重を維持する」「7〜8時間の睡眠時間」「朝食を毎日食べる」「間食をしない」など、一見健康によさそうな生活習慣を数多く実践すればするほど血圧が高くなるという結果が、東京慈恵会医科大健康医学センター(和田高士センター長)による7000人規模の調査で明らかになった。和田センター長(内科学)は「きちんと生活習慣を守ろうという意識が強すぎ、緊張状態で血圧が上がったのではないか」と話している。

 この生活習慣は、米カリフォルニア大のブレスロー博士が72年に提唱した「七つの健康習慣」。他に「喫煙をしない」「過度の飲酒をしない」「定期的にかなり激しい運動をする」の3項目がある。実施するほど病気にかかりにくいとして、日本でも、生活習慣病に関する本やホームページで多く引用されている。

 和田センター長は01年、同センターで人間ドックを受けた人のうち、高血圧の治療中の人を除いた計6975人の生活習慣と血圧を調べた。

 その結果、実行数が七つの人の平均血圧は、最高121.9mmHg、最低76.6mmHgだったが、▽四つ=118.0と74.0▽一つ=114.9と72.5となり、実行数が少ないほど血圧は下がり、理想的な血圧値(120未満と80未満)に入った。

 一方、同センターなどが提唱する「喫煙しない」「1日の飲酒が2合未満」「定期的に運動」「小食」「月6日以上の休日をとる」「仕事を離れた趣味がある」という6項目の生活習慣について分析すると、こちらは実行数が多いほど血圧が低かった。たばこと酒、運動の3項目はブレスロー博士の七つの健康習慣と重なっているが、同センターの実施条件の方が、より緩やかな設定になっている。

 同センター長は「数の多い健康習慣を必死に守ろうという意識が交感神経を刺激し、逆に血圧を上げている可能性がある。これに対し、センターが提唱する生活習慣は、休日の消化などストレス発散の要素があり、それが血圧の低下に効果があるようだ」と話している。

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 なるほど、という結果です。要するに、あまりに正しい生活習慣を守ろうとすると、かえって体によくないということですね。ほどほどがいちばん!

 といいたいところなのですが、はたしてこの結果、どこまで有意なものなんでしょうか?

 外来で患者さんを診るときに、高血圧の人がいたとします。でも、この高血圧の人の中には、「白衣高血圧」といって、病院に来ると緊張で血圧が上がってしまうという方がけっこういらっしゃるんですよね。これはけっこう対応に苦慮してしまうことが多いです。家で(というか、日常生活の大部分では、と考えるべきでしょう)測ると、上は120くらいなんですけどねえ、と言われても、医者が家まで付いて行って測るというわけにもいかず、結局、患者さんの言葉を信じるしかないわけです。

 病院で緊張して上がる血圧を下げるためだけに、降圧薬を使うのは、ほとんど意味がないことですし。

 結局、病院の血圧計で測れるのは、実際の血圧のごく一部であって、うのみにできないことも多いのです。あくまでも、ひとつの指標にしかならない。
 でも、それをアテにしなければ、血圧を評価する手段がないのです。

 いや、実際医者には「どうして病院くらいで緊張するんだろう?」と思う人もいるみたいですし、リラックスすればいいのに、と仰る方もいらっしゃるのですが、じゃあ、警察に行って、警察官に「警察くらいで、そんなに緊張しなくていいよ」と言われたらどうか?と考えると、やっぱりそこを職場にしている人と特別な事情で来られている方とは全然違うでしょう。

 この研究「あまりにきちんとした生活は、かえって体に悪い」というような論調で取り扱われているところが多いようですが、単に、きちんとした生活習慣を守ろうとしている人は、より真面目で、血圧測定の場で緊張しやすいだけなんじゃないかなあ、という気もするのです。日常生活では、やっぱりきちんとした生活をしている人のほうが、血圧は低いんじゃないでしょうか?まあ、逆にそれを証明する証拠もないわけで、なんともいえないところではあるんですけどね。

ただ、これを読んで「健康習慣なんて、アテにならない」と決め付けるのは、ちょっとどうなのかなあ、と。たとえばコレステロールとか血糖値とか肥満度などの要素も考え合わせれば(これは測定の場の緊張は関係ないですし)、やっぱり健康に留意している人のほうが、結果は良くなると思うんですけどね。

 それはさておき、、世界の長寿地域の人たちの生活をみてみると、実際は彼らはタバコをふかしていたり、大酒を飲んだりしているわけです
 
それを考えると本当に長生きのために必要なのは、「健康習慣」を意識することよりも、むしろストレスが少ない生活と、清浄な環境なのではないかなあ、とも思えるのですが。

ただ、そのような、のどかで平和なだけの長生きを望む人が少ないというのも、また一面の真実ではありますけれども。