第192夜 悲願の西軍勝利の果てに……『采配のゆくえ』
『采配のゆくえ』公式サイト(体験版もあり)
KOEIの「無双シリーズ」のスタッフが開発した「ニンテンドーDS用合戦アドベンチャー」。
プレイヤーは、関が原の合戦で西軍の総大将「石田三成」(名目上は毛利輝元が総大将だったそうですが)として、徳川家康が率いる東軍と戦うのです。
僕が歴史に興味を持ったのは、小学生のときに学校の図書館で「マンガ日本の歴史」の「関が原の合戦」の項を読んだのがきっかけだったので、このテーマにはものすごく思い入れがあるんですよね。そのマンガでは、「秀吉の死を待って天下取りに動いた『狸オヤジ』家康」と、「秀吉の恩に報いるためにあえて不利な戦いに身を投じた義の人、三成」という描かれ方をしており、当時の僕は、正しいはずの三成が敗れたことに、歴史の不条理を感じずにはいられなかったのです。
せめて、想像の世界だけでも、三成を勝たせてやりたい……
そう思って、「関が原」のゲームでは、いつも西軍。
しかしながら、リアルにつくってあるゲームほど、西軍の勝利は難しい。
名目上の「東軍」と「西軍」の兵力はほぼ互角ながら、「西軍」には戦闘に参加しなかった勢力が多く、小早川秀秋をはじめとする「寝返った武将」もたくさんいます。士気が高かったのは、三成本体と大谷吉継・宇喜田秀家・小西行長くらいでしたし。
僕がこの『采配のゆくえ』で楽しみだったのは、「このゲームでは、勝てるはずのない西軍を、どうやって勝たせるのだろうか?」ということと、「三成が勝ったとして、その後の歴史はどう描かれるのだろうか?」ということだったんですよね。
「三成が勝ったおかげで、天下は治まり、豊臣の世でみんな幸せに暮らしました」
というような安易なオチになってしまうのだろうか?
ゲームそのものは、『逆転裁判』をものすごく参考にしたと思われるアドベンチャーバートと、ちょっと懐かしい感じの升目にコマが配置された形の合戦パートと2つから成り立っています。
全体的に難易度は低く、合戦パートも「本格シミュレーション」というほどシビアなものではなく、「ちょっとしたパズルゲーム」くらいの感覚。
こういうアドベンチャーゲームに慣れた人なら、おそらく「朝はじめて、夕ごはんの前には終わる」くらいでしょう。
けっして「長く楽しめるゲーム」ではないし、「何度も遊べるゲーム」でもないんですが、僕はけっこうこのゲーム面白かったです。
なんといっても、ストーリーが熱い!
史実でもそうだったのですが、西軍には次から次へと、これでもかと苦難が降りかかります。次々と傷つき倒れていく仲間たち。
「こんなの絶対勝てるわけねえだろ!」としか言いようがないのですが、そこから、三成の「大逆転」がはじまります。
まあ、「冷静に考えれば、そんなことあるわけない」展開の連続なのですが、「なんとか受け入れられなくもない」というギリギリのラインはなんとかキープしているのではないかと。
ラストは、「じゃあ、結局今まで何やってたんだよ、そのために左近、吉継は……」という憤りすら感じてしまうのですが、「三成が勝って天下泰平になりました」というエンディングよりはずっと良いのかも。
早く終わるゲームでも良くて、歴史好きの人、「逆転裁判」好きな人は、ぜひ一度やってみてください。まあ、二度やるゲームでもないんですが。