第148夜 モモの墓場と「ポストペット」の幻想


 そういえば、いつごろから、「ポストペット」を使わなくなってしまっただろう。
 この「ポストペット」はゲームではなくて、「メールソフト」なのですけど、ピンクの熊の「モモ」をはじめとする可愛いキャラクターたちが、メールを運んできてくれるという斬新かつキュート(とか書くのも自分で恥ずかしい)なアイディアは、とくに女性パソコンユーザーの心をわしづかみにしたものでした。当時は「たくさんのペットに来てもらいたいために、メールフレンドを作る」なんていうくらい、盛り上がっていましたし。
 中には、早くペットのレベルを上げるべく、1日にペットを何度もやりとりするために、「早くメールチェックして!」と電話で連絡する、というようなかなり本末転倒な事態も起こっていたようなんですけどね。
 また、「ポストペット」では、ときどき、ペット自身が飼い主(=ユーザー)に手紙を書いてきてくれたりして、それがまた嬉しかったのをよく覚えています。内容は「なんかうきうききぶん!」とかいうような、他愛のないものだったんだけれども。
 少なくとも「メール」というコミュニケーションツールの普及において、この「ポストペット」が与えたインパクトは、けっして少なくなかったような気がします。
 ちなみに僕は、イヌを飼っていたんですけど、あまりポストペット友達もいなかったため、よく普通のメーラーで開かれて「吸い込まれて」いたものです。あと、ポスペでは「メール中のリンク」が使えないため、けっこう不便だったよなあ、とか。
 この「ポストペット」の世界、パソコンの機能的な進化に伴って、どんどん広がっていくのかな、と当時の僕は思っていました。
 でも、実際のところは、僕もいつのまにかこのメールソフトを起動することは無くなってしまいましたし、最近では使っているという人も話もほとんど耳にしません。「ポストペットV3」とかいう新しいバージョンが出たものの、ほとんど話題になりませんでした。
 たぶん、「そんな時代」では、なくなってしまったのでしょう。
 あの「ポストペットの時代」というのは、僕自身もメールチェックをすること自体が楽しみでしたし、ペットがメールを運んでくると、それだけでワクワクしたものでした。
 しかしながら、今ではメールチェックをするたびに、とにかくスパム、スパム、スパム!スパムの大洪水です。いかにも意味ありげな件名でも、開いてみれば(もう最近は開くこともないですが)、いきなり「出会い系サークルの○○です」とかいう内容。まだ、ダイレクトメールほどの物理的なめんどくささはないにせよ、正直みんな、メールにうんざりしているのではないでしょうか。
 今は「メールで素敵な出会い」よりも「メールで出会って犯罪に巻き込まれた」なんて話のほうが、はるかにリアリティがある時代ですし。
 結局、どんなに可愛いキャラクターがメールを運んでくれても、肝心のメールの中身そのものにロマンが無くなってしまえば、「かわいいメーラー」なんていうのは、あんまり意味がなくなってしまうんですよね。

メールにロマンがあった時代というのは、本当に短かったなあ……


P.S. ポストペットは、まだ普通に活動しているみたいです。こちらがそのサイト。