第172夜 ズームX68000の栄光「オーバーテイク」
参考リンク:オーバーテイク
あの「ジェノサイド」を開発した「ZOOM」というゲームメーカーは、当時のX68000ユーザーにとっては、「電波様」(注:電波新聞社のこと。スペースハリアーやアフターバーナーなど、X68Kの機能をフルに生かしたアーケードゲームの移植を多数世に送り出した)と並んで、カリスマ的な存在のメーカーだったのです。「ジェノサイド」のカッコいい動きなどは、「どうだ、これが高級パソコン(という名目の高額ゲーム機)の実力だ!」なんて、ユーザーたちをちょっといい気分にさせてくれたものでした。
そして、X68Kの灯がいままさに消えようとしつつあり、「Oh!X」が毎月どんどん薄くなっていく1992年にZOOMから発売されたのが、この「オーバーテイク」。当時のレースゲームといえば、家庭用ゲーム機では、「とりあえず3Dレースゲームが一般的になってきた」というくらいの時代だったのですが、そんな中、FOCA、フジテレビ公認の実名ドライバーやチームが登場するレースゲームが(しかもX68000版のみで!)登場するなんて、本当に驚きました。そういえば、このゲーム、発売直後の「ログイン」のゲームソフト販売ランキングで、1位になっていたのを今でも思い出します。X68000版しかなかったソフトのトップは、たぶん、このゲームが最後だったのではないでしょうか。
参考リンクの写真にもあるように、当時としては驚きのグラフィックは僕たちを狂喜乱舞させたのですが、実際のゲームでは、コースがラスタースクロール(線を層状にして表現する形式)だったため、いまひとつ動きがぎこちなかったし、僕が使っていた初代X68000、メモリ1Mバイトでは、処理速度が間に合わずに敵の車が一度に表示される台数が少なくなる、という苦しいところもありました。いやしかし、X68000の末期のソフトは、「美少女ゲーム」か、「メモリ2M以上、ハードディスク必須」というようなものばかりで、なんだかとても淋しかったのを覚えています。そりゃあ、PC98版なら諦めもつくけれど、同じX68000なのに……って。それを考えれば、処理速度が遅くても、敵の車の台数が少なくても「遊べる」というだけで幸せだったのですけどね。
そういえば、このゲームはデータがやたらと細かくてセッティングにもけっこうこだわっていたんですよね。ほんと、「こんな凄いの、X68000版だけで元が取れるのかな…」と心配だったのですが、案の定というかなんというか、このゲームで、ZOOMはX68000から撤退してしまいました。
ちなみに、このゲームを作った人は、のちにセガに移籍したらしいのですが、この画面、本当に「スーパーモナコGP」に似てますよねえ