お正月当直の憂鬱
去年に続き元日の当直だったのですが、本当に疲れ果てました。
それにしても、「元日にもかかわらず、あまりたいした症状ではなくても、普通に受診する人」がこんなに多いのだ、ということをあらためて思い知らされた1日。
小児科では、「どうしてこんなに患者が多いのに、普通に外来を開けないんだ!」と職員に詰め寄っていた父親もいたそうで、それを「元旦でも小児科医が常駐してがんばっている病院」で叫ばれてもねえ……そんなのコンビニの店員に、「なんでジャスコは客がいるのに24時間営業にしないんだ!」って怒っているのと同じじゃないか……今はデパートの「初売り」も軒並み元旦からだし、「サービス業なんだから、客がいるときは(というか、自分が行くときじゃ)休むな」というのが「大事なお客様のご意見」なのだろけど。
入院患者さんがいる病院では、時間になったらキッチリ交替して休む、完全シフト制ってわけにもいかないし、要するに「お前らは24時間死ぬまで働き続けろ」ってことなのかなあ。いやほんと、こんなに一生懸命お正月から働いているにも関わらず罵倒されまくっているんだから、そりゃ救急をやる小児科医がいなくなっていくのは当然だよ。罵倒している人たちは、当直の小児科医が診察室の中でお茶でも飲みながら正月番組を眺めているとでも思ってるのか?自分の子供が心配なのはわかるけど、結局、より重症(だと思われる)者、あるいは、より順番の早い人から診ていくしかないのだ。逆に、自分の子供の症状がそんなに酷くなくても、荒い呼吸でぐったりしている子供より早く診てもらえたら嬉しい?
でもほんと、お正月の日直・当直をやっていると、本当に日本の正月意識は変わってきているというか、「正月という理由で休みなのは許せない!」という人がけっこう多いのだなあ、と感じます。僕たちの実感からすれば、「普段は土日ですら休みなしなのだから、正月くらいは休ませてくれても……」という気持ちでいっぱいなんですが、実際は、休みの日になればなるほど田舎では「診てくれる病院」は少なくなり、そこに患者さんが押し寄せるという状況になっています。その一方で、「救急指定」を掲げているはずの中小病院の大部分は、救急要請に対して「ウチでは診きれないから」ということでほとんど機能していません。たしかに、設備も救急に対応できるスタッフも揃っていない病院、しかも当直医はアルバイトという状況では、「ヘタに手を出さないほうが、患者さんにとっても病院にとっても無難」であることはまちがいないのでしょうが。
「大きな病院」とか言われても「他に比べたら」というレベルで、当直医は内科外科各1名ずつというのが実情。
どんなに設備が揃っていても、それを運用する人が少ない状況では、どうしようもないわけで。
戦車100台とF14が10機あったとしても、兵士が自分1人では、まさに「手も足も出ない」。
考えようによっては、「年末年始はこの病院はフル稼働にして、時期をずらしてまとめて休んだりしたほうがいいんじゃないか?」という気もするんですけどね。
結局、元日の夕方から翌朝まで一睡もできなかったのですが、朝方はもう頭がボーっとしていて、これで仕事をするのは怖いよなあ、と思わずにはいられませんでした。それでも、「ベッドが満床」「急患対応中」で救急車を断ることは許されても、「当直医疲労困憊」で断ることは許されないこの業界。
患者さんや社会の側からの「期待値」「要求水準」はどんどん上がってきているのだけれど、現場は10年前とほとんど変わっていないのです。ほんと、こんな状況で、10年後が果たして存在するのだろうか……