第188夜 ストーリーは短いのにタイトル長すぎ……『DS西村京太郎サスペンス 新探偵シリーズ「京都・熱海・絶海の孤島 殺意の罠」』
公式サイト「WestVillage」の体験版もあり)
僕はもともとアドベンチャーゲーム、とくに推理モノが大好きなので、この『DS西村京太郎サスペンス』には、けっこう期待していたのです。西村京太郎さんの名を冠した推理ゲームって、ファミコン時代から何作か出ていて、どれも「ものすごく面白いとか歴史的傑作ってわけじゃないけど、僕のような趣味の人間にとっては十分楽しめる」というくらいのデキではありましたし。
それで、この『DS西村京太郎サスペンス』の本編をクリアしてみての感想なのですが、正直「これ、あまりにも親切すぎないか?」と、ちょっと拍子抜けしてしまったんですよね。
20年前の、「ミナミ ニ イク」とコマンド入力しただけで「カミナリ ニ ウタレテ アナタハ シニマシタ」とゲームオーバーになってしまうようなアドベンチャーゲーム、あるいは、牢屋から1年間1歩も出られなかったアドベンチャーゲーム(だってさ、格子を何度か叩いて外して、その格子で壁を崩すなんていうことを思いつく人間が、どのくらいいると思う?)を知っている僕とすれば、確かに「ゲームが親切になった」のは歓迎すべきことなんだろうけれど、このゲームは、あまりに「親切すぎる」のですよね。
推理ポイントで、間違った答えを入力しても何のペナルティもなく、それぞれの場面でひととおり調べ終わったら、「もう、ここにはやることはなさそうです」とまでアドバイスしてくれる親切設計。あまりに親切なので、僕はずっと、「1シーンくらいは、『もうやることがない』と表示しておいて何か重大な証拠が隠されているシーンがあるのではないか?」と勘繰って、何度も同じところを調べたりもしたのですが、このゲームにはそんなトリックもなく、本当にフェアなんですよね。「一度セーブしてやりなおさないと次の場面に進めない」なんていうシーンもありませんし。
サクサクとストーリーが進んでいくことに爽快感を覚える一方で、僕は「このゲームを作った人たちは、プレーヤーをバカにしているのでは……」というような気分にも少しだけなったんですよね。これは「親切」っていうより、「過保護」の部類なんじゃないのか?と。
このゲームを手に取り、そして遊んでみようというユーザーの層を考えたら、この「親切設計」は、たぶん正解だったんでしょうけど、なんだか、「遊んでいる」というよりは、「あらかじめ用意された筋道を辿らされている」という感じのほうが強かったです。
いや、ストーリーは、ある種「お約束」ではあるのですが、西村京太郎監修ということもあり、「心地よいお約束」と言えるレベルなので、エンディングまで僕はけっこう楽しめたんですけどね。
たぶん、このゲームの真の「売り」は、5分程度の短時間で楽しめる短編推理問題を多数収録した「WestVillage」のほうなのだと思います。こちらは短時間で遊べて、ちょっと自分が賢くなったような気分になります。「推理クイズの本」に夢中になった経験がある人には、とくにオススメです。なかには、「これは『推理』というより、単なるパズルなのでは……」というような問題もあるのは玉に瑕ですが、本編よりこっちのほうが、僕にとっては面白かったような気がします。公式サイトには「体験版」もありますので、これで遊んでみて気に入った人は、このゲームそのものも楽しめるのではないでしょうか。
4000円弱という値段の安さもあり、何十時間もかけてレベル上げをしなくてはならないようなゲームにはついていけなくなった僕にとっては、いい気分転換になるゲームではありました。