医者のお正月
新年あけましておめでとうございます。
この仕事を始めて、お正月というのをまともに迎えられたことはほとんどなかった。
就業してから、今年で7回目のお正月になるわけなのだが、そのうち2回は身内の不幸。
あとは当直だったり、重症の患者さんがいたりで、せいぜい家で年賀状を書きながら紅白歌合戦を観たりという程度だった。
「お正月は、病院休みじゃないの?」という声が聞こえてきそうなのだが、実際はなかなかそうもいかないのだ。
まず、入院施設のある病院では、入院患者さんの主治医としては、あまり現場を離れるわけにはいかない。とくに重症の人がいればなおさらだ。
運良く全員軽症で、外泊でもしていてくれればいいのだが、そんな可能性は稀有というものだろう。
休みとはいえ1日1回は回診。大晦日に「よいお年を!」と言って別れ、元旦に「あけましておめでとうございます」と言って会うのが普通だ。もちろん、喋れない状況の患者さんの担当の場合は、泊まりで仕事ということもある。
それに、他の先生から仕事を頼まれることもある。実家が遠くて、正月しか帰省できないような研修医に、その担当患者さんの代理の主治医を頼まれることもある。これはもうお互い様で、そうでもしないと実家に全然帰れないのだ。
また、大学病院では、傷口のチェックや消毒も医者の仕事になるので、これも基本的には毎日自分で出てきてやらないといけない(場合によっては、代理の人に頼んだりもできる)。
さらに、外の病院の当直を頼まれることも若手の場合はとくに多くなる。
どうしても家庭持ちの場合は家で過ごしたいと思う人が多いし、こういう正月の当直などは、薄給の研修医にとっては、当直代が普段の2倍くらいになることが多く、貴重な収入源になるのだ。
それでも、当直している最中は嬉しくもなんともなく、当直室の小さなテレビで紅白を観たりしていると、心底寂しい気持ちになる。運が悪ければ、心臓マッサージをやりながらの年越しなんてのも、そんなに珍しいことではない。恐怖の急性アル中の人々なども、救急車で運ばれてきたりしがちだし。
あと、大きな病院では、急患がヒットする場合もある。とくに若手の場合は、お正月休みの期間にに入院した重症の人の主治医をを上に押し付けられることも多い。まあ、これも勉強だということなのだろうけれど、結局、ひとり重症患者さんがいると、正月どころじゃないし、病院自体は休日体制だから、薬のオーダーも面倒だったり、看護師さんの数も少なかったりして、かえって大変なことも多いのだ。
ということで、正月だからのんびりしているというのは、必ずしも当たってなくて、運がよければ寝坊できるくらいのもの。
そして、正月明けは、例年地獄のように忙しい。想像するだけで厭になるなあ、もう。
でも、今年は基礎の研究室所属のため、9連休をゲットしました。
正確には、2回バイトには行ったけど。
そうか、お正月ってこんなものだったのか…と感慨深い。
もっとも、サービス業にとっては、お正月がカキイレドキだったりするんだろうけれどもね。
ディズニーランドだって、働いている人がいるから遊べるわけだし。