あらためて「Doctor’s Ink」について
実は、「Doctor’s Ink」、これで100本目になります。そんなに書いてきたのか、と自分でも驚くばかりです。僕が100本目なので、素晴らしいものにしよう、なんて野心も多少はあったのですが、あらためて書くネタも思い浮かばず、「白い巨塔」感想スペシャル、なんてのも完結してからでいいでしょうし(ああ、でも終わったらDVDで揃えて、1話ごとに詳細なツッコミを入れるなんて企画もやってみたいなあ)。
それで、ちょっと初心に帰るというか、「Doctor’s
Ink」というコンテンツそのものについて考えてみようかな、なんて思うのです。
このコンテンツの第1話を書いたのは、2002年の4月26日です。今から2年近く前、というのは、ネット上に流れる時間としてはけっして「最近」ではありません。
ただ、僕は「医者であることに頼ったサイト」というのにどうも最初のころは抵抗があって、こういうコンテンツを作るべきか?ということには非常に悩みました。
僕はそんなに立派な医者でもないですから(むしろ、ダークサイドだと思う)、そんな人間が偉そうに医者というものについて語って良いのだろうか?なんて。
僕がこんなことを書き始めた理由というのは、ひとつは「医者」という職業への世間の誤解に対して、一石を投じてみたかったからです。「お医者さま」と言われながら、世間からは「悪いことをやって金儲けをしている人たち」と「患者さんのためなら、どんな自己犠牲も当たり前な人たち」という両極端な認識をされているこの仕事が、僕自身には、どうも居心地が悪くって。
「本当は普通の仕事なんだ」ということを呟いてみたかったのです。
そして、「あまりに素晴らしいお医者さん」たちのサイトに対してのコンプレックスもひとつの要因だったような気がします。「ああ、オレはこんなに立派な医者にはなれねえ」みたいな。
あとは、「他に書けることが無かった」というものあるんですよね。
どうしても仕事以外に使える時間が少ないので、他に「書けること」が少なくなるし。
最初は、けっこう私的な話や医者の生活の話などを書いてきたのですが、どうも、この2年間の間に「医療バッシング」「医者バッシング」は、次第に強くなってきました。
あの「ブラックジャックによろしく」が引き金だったかどうかはなんとも言えませんが(しかし、最近「研修医の待遇」にばかり改善が求められているのは、やはりあのマンガには社会的影響がかなりあったのではないか、という気がします)。
「Doctor’s Ink」の中盤(20〜60くらい)は、医療ミス報道についての感想が多くなっています。「身内を庇っている」ように思われたこともあったのかもしれませんが、僕の「医者としての公正な観点」で書いてきたつもりです。
とりあえず「激闘編」という感じでしょうか。
後半は、「医者がらみのテレビ番組への感想」が多くなってきました。
たぶんこれからも書くとは思うのですが、まあ、こういうのは本来書こうと思っていたこととは、ちょっと違うのかもしれません。
ああ、アクセス稼ぎっぽいなあ、なんて自嘲してみたり。
しかし、こういう内容の変化にも要因があって、ひとつはサイト自体が多くの人の眼にふれるようになるにつれ、個人情報を守るというのを強く意識するようになったこと、そして、僕自身が臨床を離れている、ということもあるのです。
前者は、それこそまた閉鎖して引越しでもしないと前のようには書けないかもしれませんが、後者については、今後の僕の人生に従って、また見方も変わってくるでしょうし、それはそれでいいのかな、なんて思っています。
この2年間で、同じように医療に従事しながら普通の医者として(あるいは医者の卵として)サイトをやっている人たちとも交流することができましたし、僕自身にとっても良いアルバムになったと思います(まあ、このサイト自体がそうなんですけどね)。心なしか、僕のコンプレックスも緩和されたような気もしますし。
そろそろ、「Doctor’s Ink」で、世間の医者に対する偏見に反論しなくても、みんなが書いたものを密かに応援していこうかな、などとも考えてもいるのです。
「医療について語る」というのには、「人間を語る」ことが必要です。
でも、僕たちには守秘義務があり、人間としての良心もあります。
ここに何かを書くことで、誰かを傷つけたいと思っているわけではありません。
それだけは、伝えておきたいこと。
まずは、僕自身がもっと「いい医者」にならなくてはなあ、なんて最近よく考えます。
そうだなあ、「サイト更新する時間があったら、勉強するような医者」にね。
とりあえず、今後ともよろしくお願いいたします。