医者好みのマンガ?
医者という仕事(とくに臨床医)をやっていると、当然、当直という仕事がある。当直というのは、他の医者が留守の間病院に寝泊りして、時間外の患者さんを診たり、入院中の患者さんの急変時に対応する仕事。
「救命病棟24時」とかだと、当直医は寝る間もなく命を削って働いているのだが、まあ、僕らがアルバイトで行くような普通の病院の当直だと、そこまで忙しい時間帯ばっかりじゃないこともある。要するに、とくにすることもないけれども、院内にいなければならず、いつ呼び出されるかわからないような状況。
で、そんな場合にどうするかというと、まず選択肢としては、テレビを観る、本を読む、そして寝るという3つくらいのものだ。もちろん、たまっている論文とかを持ち込んで仕事しようと思うこともあるのだが、まず実行されることは無い。
たいがいの病院の当直室には、本や漫画や雑誌が置いてある。でも、当直で神経がささくれ立っている時に、「存在と時間」とか読む人はまずいないだろうし、「模倣犯」でも、ちょっと読みたい気分にはならない。もっとリラックスできる種類のもののほうが望ましいのだ。
そうなると、マンガということになる。たいがいの医局には、まず週刊少年マガジンがあり(ほぼ8割くらい)、あと一誌とっているところは、ジャンプかサンデー。チャンピオンが置いてある病院というのは、行ったことないなあ。
そのほか、単行本もたいがい常備されている。「美味しんぼ」「ドラゴンボール」「北斗の拳」などのメジャーどころ。女医さんが多いところでは「ガラスの仮面」「王家の紋章」など。なかには、マンガ喫茶とみまごうばかりの病院だって、たまにあったりするのだ。
でも、そういうところだと逆にマンガの読みすぎで寝不足になったりするものですが。
そして、これらの「病院文庫」には、隠れたメジャーマンガがある。それは何かというとかの「ゴルゴ13」(さいとう・たかを)なのだ。なぜか、「ゴルゴ13」は、どこの病院の当直室にもある。もちろん、こういう「年長者向け」のマンガが少ないという事情があるとはいえ、あまりにその配備率が高いのだ(約7〜8割くらい)。
でも、よく考えていただきたい。「ゴルゴ」って、狙撃手(いわゆる殺し屋)の話ですよ。
それが「命を助けること」が仕事のはずの医者の控えている部屋に、山積みされていたりするわけですね。
まあ、別にだからどうってこともないのですが、みんなそうやって心のバランスをとっているのかなあ、なんて思ったりするもので。「プロ意識」という意味では、医者もスナイパーも一緒(?)なのかもしれません。
それと、あと一種類、当直室に常備されているジャンルの本があるのですが、それは、僕を含めた医療業界人の名誉のために伏せておきましょう。
えっ?気になるって?あの〜いわゆる「男の子の部屋にはほぼ100%隠されている本」ですよ。なんのかんの言っても、当直って神経磨り減るからなあ。
全然呼ばれなくても疲れちゃうんですよね〜。
まあ、そういった息抜きも必要かと(いいわけ)。