第128夜 本当に面白いんだってば、このバカチンが!「3年B組金八先生〜伝説の教壇に立て!」


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 正直、僕は全然このゲームに期待していませんでした。
 いまさら、「金八先生」?チュンソフトもこんな中途半端なキャラものを作るくらいだったら、「街2」か「かまいたちの夜3」でも作ったほうが気がきいているのになあ…という感じで。もし、「ファミ通」でプラチナを取っていなければ、スルーしてしまった可能性が高いと思います。
 発売されてすぐの時期は軒並み売り切れていて、僕が入手したのはしばらく経ったのちだったのですが、実際に遊んだのは数日しかない夏休み。しかも、事故で車が大破し、ひたすら憂鬱な数日間に、家に篭ってこのゲームをやっていたのです。
 でも、これを夢中でやっていたおかげで、かなり気分的には救われました。ほんと、このゲームはなんだか「救われるゲーム」なんですよ。

ストーリーは、病気で1年間休職することになった金八先生の代わりに桜中学校に赴任してくることになったのがプレイヤーで、さまざまな問題を抱えた生徒たちと接しながらストーリーを進めていくのですが、実際にプレイヤーができることといったら、基本的には1日に4回の行動で、それぞれの生徒がいそうな場所に行って「会う」ことと、会話によって入手した「カード」を登場人物にぶつけてリアクションを引き出すことだけです。

このゲームのすごいところは、あまりにスムースすぎてかえって目立たないアニメーションやフルボイスで喋るキャラクター、ほとんどゲームオーバーにならないくらいものすごく親切で、次に行くべきところを示してくれるシステム(でも、ところどころシビアなところはありますが)、そして、快適な操作性などたくさんあるのですが、いちばんの魅力は、ほんとにもうベタベタなんだけど思わず感動してしまうようなストーリーだと思います。「そんなにうまくいくわけないよ」と内心ツッコミつつも、ゲームというのは不思議なもので、小説だったら「ありえねー」と叫んでしまうような展開も、けっこう素直に受け入れられてしまうものですし。SF調の話もあれば、コメディタッチの話、シリアスな話とバリエーションもありますし、理想があれば現実もあって、挫折があれば希望もある、そんなショートストーリーたち。

そして、たぶんこのゲームは、中学生や高校生がやるよりも、社会人がやったほうが面白いという気がします。主人公と、副担任・広沢りん子先生の微妙な関係には「そうそう、『先生』って、子供の立場からみるとすごいオトナみたいだけど、実際に自分がその年齢になってみると、先生だって、いい意味でも悪い意味でも「人間」なんだよなあ」とか考えこんでしまいますし。ごく当たり前のことなんですが、先生たち同士にも「人間関係」があるんですよね。
 みんな自分の事情や感情があるし、いくつになっても悩んだり迷ったりしながら生きているんだよなあ、ってつくづく思いました。

期待した「ザッピングシステム」があんまり意味がなかったり、全員分のストーリーが揃っていなかったりするのはやや残念ではあるのですが、本当にストレスなく遊べますし、懸念された武田鉄矢さんの説教もあんまりイヤミじゃないですし(「バカチン!」とかいうのも、ゲームで聞くと、なんだかいい感じなんですよ)、ストーリーのバリエーションも豊かだし、「金八先生なんて…」という大人の諸兄にこそ、ぜひぜひ遊んでいただきたいゲームなのです。
 「才能開花システム」とかけっこうめんどくさいし、生徒全員に「仰げば尊し」を歌ってもらうのは至難の業ではありますが、極めようとしなくても楽しめるゲームなんですよこれ。
 なんだか、「明日もがんばってみようかな」という気分になるし。
 まあ、このゲームに対する好感度というのは、結局、りん子先生が好きになれるか、にかかっているのではないか、とも思うんですけどね。

ちなみに、このゲーム、現時点(‘04年11月)では、まだ7万本くらいしか売れていないそうです。「ファミ通」の浜村編集長も嘆いておられましたが、なんだかとってももどかしい話。
 それとも、オッサンにしかウケないゲームなのかな…