禁煙できない医者は、専門医失格?



毎日新聞の記事より。

【日本呼吸器学会(理事長、福地義之助・順天堂大教授)は、同学会認定の専門医に「禁煙」を義務づけ、
喫煙者は専門医認定や更新を拒否する方針を固めた。3月13日から福岡市で開く総会で「禁煙宣言」し、学会則にも盛り込む。
医学関係の学会が専門医のし好品を制限するのは初めてといい、論議を呼びそうだ。

 日本呼吸器学会の会員は約1万人(専門医は約3000人)。97年に医療従事者や患者、国民に禁煙を訴える「禁煙勧告」を出した。
ところが、学会員の喫煙率は96年が21%で、徐々に低下したものの01年でも約15%に上る。

 個人のし好まで規制されることに抵抗は強く、「義務化ではなく、個人の良心に任せるべきだ」などと、
激論が交わされた場面もあったというが、同9月の理事会で大筋合意にこぎつけた。
理事20人のうち数人は喫煙者だったが、禁煙方針に反対者はおらず、現在はいずれもたばこをやめているという。

 同学会の認定専門医は、5年ごとに更新手続きがある。今後、喫煙者は更新を拒否され、
「専門医」の看板をはく奪される。禁煙したかどうかは自己申告に基づくが、
「うそを言っても、喫煙者の呼気は禁煙者に比べて一酸化炭素の濃度が高く、機器を使えば一発で見分けられる」と関係者は言う。

 同学会幹部は「医者自らやめることで、患者の苦労を理解し、患者を禁煙に導いてほしい」と話している。】

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 率先垂範、ということなんですね。
 でも、僕の知り合いの呼吸器の先生には、けっこう喫煙者がいたような気がします。
こういう発想が進んでくると、肝臓やっている人は酒を飲んじゃいけない、とか
糖尿病を診る医者は、体脂肪率何%以下じゃないといけない、なんて話になってきそうです。
 実際、外来で「先生はどうなんですか?」なんていう患者さんもけっこういらっしゃいますし。
 
 しかし、この決議そのものは、僕はちょっとどうなのかなあ、とも思うのです。
 もちろん、呼吸器の先生たちは「タバコが身体に悪い」ということを知っていますし、
健康のためには禁煙することが望ましいでしょう。
 ただ、だからといって、「禁煙していない人の言うことはきけない!」なんていう発想は、
短絡的なんじゃないかなあ、と思います。
 
 こういうのって、野球解説者に「お前は、じゃあ打てるのか!」とかいうのと一緒ですよね。
 基本的に、その専門家としての知識の正しさや有用性は、それを誰が言ったか、
ということに左右されてはいけないような気がします。
 「先生も、タバコ吸ってるじゃないか」と言い返すことは、その患者さんにとっては、一時の快にこそなれ、
問題の解決には全くならないと思うのですが。

 でも意外と、「俺も止められないんだけど…」という医者のほうが、「先生は気持ちをわかってくれる」ということで、
患者さんに人気があったりするのです。人間性の問題、なのでしょうか。
 
 う〜ん、それでもやっぱり人間というやつは、僕も含めて、
誰かが言ったことの内容を信じる、というよりは、言った人を信じるという生き物なのかもしれませんね。

 だいたい、風邪の人に「休養がいちばんですよ、温かくしてゆっくりしてくださいね」
とか言いつつ、病院のスタッフは解熱剤の坐薬を入れて働いたりしているわけで。