本当に「健康食品」なの?



個人輸入したダイエット用の中国製医薬品を服用した60代女性が約2カ月後、急性の重症肝不全で死亡、同様に服用した男女11人が肝機能障害を発症していたことが、厚生労働省の12日までの調べで分かった。これらの詳しい症例は、患者の治療に当たった慶応大病院の教授らが13日、日本肝臓学会で発表する。 (時事通信)

 新聞、雑誌、テレビなどの広告に対する苦情や相談を受け付けている社団法人・日本広告審査機構(JARO)が、薬事法や景品表示法に違反する疑いがあるとして昨年度1年間に警告した6件の広告のうち、5件が健康食品の広告だったことが13日、分かった。

 ダイエット効果を誇大に宣伝したり、体験談をねつ造するなど、他業種に比べ、悪質さが際立っているといい、消費者に注意を呼び掛けている。

 警告を受けたのは、「4週間飲むと、体内の脂肪分が25%も減少」と医薬品にしか表示が認められていない効能・効果を掲げた中国製ダイエット茶のダイレクトメール広告や、服用前と服用後の女性の水着姿の写真を並べ、「1週間で7キロ・グラム減」などと宣伝したダイエット食品の新聞折り込みチラシ広告など。また、豊胸効果があるとした錠剤のチラシ広告の場合、体験談を語った3人の女性が、同じ商品を宣伝した他のチラシに別名で登場していた。

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「活字中毒。」風にはじめてみました。
以前、漫画家の西原理恵子さんが駆け出しの頃、エロ雑誌の体験談コーナーを捏造する仕事で口に糊していたという話を聞いたことがあります。
ああいう体験談って、よく考えてみたら当然のことなんですが、捏造ものが多いようです。
だって、いくら効いたからって、わざわざお礼の手紙を書く人なんて、そんなにいないと思いますし。ああいう「感謝の声」って、主語と数字さえ入れ替えれば、基本パターンは10パターンもないんじゃなかろうか。

さて、僕たちも患者さんから、いろんな健康食品についての相談を受けることがあります。
隣の〜さんに薦められたとか、テレビで取り上げられていたとか、自然の成分で安全、とか。
でも、基本的に僕は、そういう健康食品については

(1)   できればやめてもらいたい(こちらでやっている治療の効果がわからなくなるので)

(2)   どうしてものときは、せめてどんなものを飲んでいるかは教えて欲しい。

(3)   効能については、こちらで責任はもてない。

以上のことをお話するようにしています。

どう考えても、その辺の健康食品より、医薬品のほうが安全性は高いのです。
もちろん、どんな薬にも副作用の可能性はあるんですけど。
だって、健康食品は「効いた!」という例をアピールしまくっていますが、一般的な医薬品は「安全性、すなわち効いて当然で、ちょっとでも副作用が起これば大騒ぎ」という世界ですから。とにかく、安全性については何重にもチェックされたもので、効果も治験が行われています。値段も健康食品に比べたらリーズナブルですし。

 だいたい、今回のダイエット食品の例でもわかるように、実は「自然の成分」のなかに、
医薬品に応用されているような化学成分が含まれている場合も多いのです。
逆に、薬というのは、自然の成分を参考にして開発されることもありますし。

「糖尿病に効く!」という健康食品に、抗糖尿病薬の成分と同じものが含まれていたり、
今回のように「やせる薬」に甲状腺ホルモンに類似の化学物質が含まれている場合もあるわけです。そりゃ、副作用も起こって当然。

 ただ、僕は、そういったものを全面的に否定しきれない気もするのです。
僕の母親が癌の手術をしたあと、父親(医者)はどこから買ってきたのか「アガリクス」というのを買ってきて、母親に飲ませていました。

 結局、母親は亡くなりましたが、その病気の一般的な予後よりは、長生きしてくれたと思います。いや、担当の先生もがんばってくれたし、アガリクスのおかげじゃないような気もしますけど。少なくとも、可能性のあることは何でもしてあげたいという気持ちはあるますし。そういうところにつけこむのって、すごくタチが悪い商売ですよね。
でも、「不治の病」に対して、そういう未知の薬に頼りたくなる気持ちは、わかります。

 僕も、そういう患者さんの場合、明らかに悪いものでなければ、「責任はもてないけれど、ご本人とご家族の判断に任せます」というようにしていますし。
まあ、普通の病院の薬が効くような病気は、あんまり健康食品に頼らないほうが無難だと思います。だって、ほんとに良く効くいい薬なら、「体験談の捏造」なんて、するわけがないじゃありませんか。