「カリスマ女医」を責めないで


参考リンク:PJオピニオン「倫理欠くカリスマ美容医・美人女医を放置していいのか」


 いちおう「この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJニュースはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です」と断り書きが添えてはあるのですが、率直に言って、「ライブドアって、こんなバカな記事を書くような人を『PJ』とかに合格させているのか……と呆れ果ててしまいます。ちなみに、【応募される方はまず、当社のジャーナリスト講座を受講し、簡単な修了試験に合格するとパブリック・ジャーナリストに登録される運びとなります】とlivedoorニュースには書かれているのですが、それって、どんな講座なの?

 というか、この人は「女性」とか「美人」とかがものすごく嫌いで、しかも「私立大学医学部」にものすごく偏見を抱いていて(だって、○○大学卒なんて、この記事の本質にはなにひとつ関係ないはずだし)、【犯人は雑誌から切り抜いたこの娘の顔写真を持っていたという。たぶん、犯人には「金持ちの道楽娘」という印象があったのだろう。犯人をかばう気はさらさら無い。だが、池田医師とその娘の生活を見れば、誘拐してくださいと言っているのと同然。この娘の捜索にかかった費用は国民の税金によってまかなわれていたことも知って欲しい。】という部分に至っては、「贅沢な暮らしをしている人間は、みんな『誘拐してください』と言っている」ということなのかと問いただしたくもなります。といううか、僕だって正直この手の「カリスマ医師」たちに対して好感を抱いているわけではありませんが(むしろ、ヘンな医療情報を垂れ流すのはやめてほしいと願っています)、だからといって、法を犯しているわけでもない、「やり手」の実業家一族が「誘拐されてあたりまえ」なんてことはありえません。このPJの理論でいえば、この人たちは僕らよりはるかに多額の税金を払って「社会に貢献」しているはずなのですが……
 犯罪者に誘拐された一般市民の捜索を税金でするのって、当たり前なんじゃないの?
 「カリスマ女医は、私設軍隊でも創って身を守れ!」ってことなんでしょうかねえ。そもそも「贅沢な暮らしをしている」というのが、イコール「倫理を欠いている」というのは、あまりにも短絡的なのではないかと。確かにそういうのって、「日本的」ではありますが。
 今回の事件に関して、僕が困惑していることは、「誘拐」という重大な犯罪行為に対する報道であるにもかかわらず「被害者であるカリスマ女医」の話ばかりをマスコミがしているということなんですよね。この人は有名で、お金持ちで、美人なのかもしれませんが、だからといって、被害者にもかかわらず、さまざまなプライバシーをばら撒かれて、マスコミに面白半分でネタにされているのです。
 彼女の病院に来る患者さんは誰かに騙されたり洗脳されて来院しているわけではなくて、自分の意思で、自分のお金を払って「治療」を受けにきているわけですから、いくらそれが「メディアを利用した宣伝行為」にのせられてのものだったとしても、このカリスマ医師ばかりを責めるのは筋違いというものです。今は病院だって潰れる時代なのですから、そういう「メディア戦略」が結果的に経営の改善につながるのなら、立派な営業活動だとも言えるわけですし。そもそも、大手の美容形成クリニックなどでは、「メディアに露出しているタレント医師」が直接診療するというのは、かなり稀なケースみたいです。ようするに、最初から「広告塔」だと割り切ってやっている面もあるのですよね。そして、「そういう露出の高い病院・クリニック」を選んでいるのは、患者さん自身であるというのも、厳然たる事実。

 僕は個人的には美容形成に対してあまり好感を抱いていないのですが、それでも、「ビューティーコロシアム」で、「うーん、ちょっとこれは確かに生きづらいかも……」という人が、「変身」して満面の笑顔を見せているのを観ると、「まあ、それで幸せになれる人もいるんだから、一概に善悪を決められるものではないよなあ」と考えてしまうのです。僕たちがそれを必要としていないのは、むしろ、幸運なことなのかもしれない。人間の「倫理観」なんて、けっこう曖昧で揺れやすいものなのです。

 話がかなり脱線してしまいましたが、【PJの知人の医師らには、こんな医師は一人としていない。みな日夜患者を思い、裕福でないとは言わぬが、質素で謙虚な生活をしている。額に汗して患者の治療に当たる医師は、医師免許を売り物にしている芸能人をどう思っているのだろうか。】という質問に対しては、僕は「あの人たちは、『芸能人が医師免許を持っているだけ』だから、自分とは関係ない」と考えています。

「美容形成」というのは、一般的な「病気の人に対する医療」とは、ちょっと性格が異なっている「医療」ですしね。
 ですから、あの人たちが、自分の「セレブ生活」について語る事に対しては、「まあ、別の世界の人だし、バリバリバリューにでも出てればいいよ」としか思いませんが、逆に、彼らが「現代の医療制度」とか「病院や医者の悪口」などを語っているときには、かなり腹が立ちます。ビル・ゲイツが「現在のプログラマーという仕事は……」なんて、「現場語り」をしても、「そんなの知らんに決まってるだろ!」とツッコミたくなるのと同じです。
 本当は、「あんなふうにテレビに出ている医者なんて信用しない」という感覚の患者さんばかりになれば、ああいう「カリスマ医師」は絶滅してしまうはずです。そうやって露出することによって、自分で仕事をする時間が減ってしまう以上のメリットがあればこそ、ああいう「カリスマ医師」が生まれて、面白おかしく医療者のパブリック・イメージを低下させていくのですから。しかし、西川さんの「年収四千万以上の男じゃないと…」なんていうのは、僕にとっては「医者云々じゃなくて、こんな女性はイヤだ!」って感じなんですけど……
 まあ、人間っていうのはよくわからないもので、開業医だと「あの先生は外車に乗ってないから流行っていない(=藪医者だ)」なんていうふうに噂されたりもするようなので、贅沢すると叩かれて、質素にしていると怪しまれるのなら、一体、どうすればいいのか……

 それにしても、娘が誘拐された「カリスマ女医」がいたという事件が、なぜか「医師免許は更新制」とか「医者の倫理を問う」ということにつながってしまうのって、あまりにトンデモすぎないか?


追記:基本的に、本当に真面目な医者は、自己主張のために、ブログ書いたり、サイトを更新したりはしないものです。黙々と目の前の患者さんのために働いている立派な医療者が、この国には、たくさんいます。ですから、「声の大きさ」「見た目の派手さ」に、どうか、騙されないでください。僕が書いたものも、あまり過信されないほうが良いと思います。正直、どうしても書きたくてしょうがないので、書いているだけですから。