結核に罹患してしまった医師について、感じたこと。
読売新聞の記事より。
【神奈川県綾瀬市の綾瀬厚生病院で、内科医の男性(48)が肺結核で今月19日、死亡していたことが分かり、同病院は26日までに、過去2年間に内科医の診察を受けた入院・通院患者約2600人の無料検診を決めた。
病院によると、内科医は今月5日、せきとたんが止まらないことから呼吸器疾患で県内の別の病院に入院し、13日に肺結核と診断された。綾瀬厚生病院では、内科医が使用した診察室などを消毒。医師と職員計約200人の検診を行ったが、感染者はいなかった。】
〜〜〜〜〜〜〜
医者っていうのは、基本的に「病気を治す」ことが仕事です。でも、その一方、病気というものに接する機会がもっとも多い職業のひとつでもあるんですよね。
この記事をみて、大部分のひとは、「医者が結核なんて、信じられない!」と思われたことでしょう。確かに、ただでさえ抵抗力の落ちた患者さんが集まる病院という空間で、結核患者が診察をしていたなんて、とんでもないことです。でも、同業者としては、いろいろと考えさせられる話ではありますね。
だいたい、このお医者さん、他の新聞の記事によると「交通事故の後遺症で、もともと呼吸器疾患を患っていた」そうなのですが、交通事故と呼吸器疾患の関連性っていったい…肺がつぶれたりとかされたんでしょうか?
5日に入院して、13日に診断されたそうなのですが、たぶん痰で結核菌が出たのだと思われますが、異常な痰に内科医として気がつかなかったんでしょうか?
それにしても、そんな入院して2週間で命取りになるような状態の結核で働き続けていたとしたら、それはもう、狂気の沙汰だと思うのです。でも、医療という仕事は、「医者は患者のために自分を犠牲にするべき」という発想がまかり通っているために、なかなか具合が悪くても休むことができないのです。病気で休んでも、患者さんからクレームがつくこともあるみたいですし。
この医師は、きついなか手遅れになるまで仕事をされていたのかなあ、と思うといたたまれません。たぶん「何かおかしい」という感覚はあったのでしょうから。48歳…かなりの高齢者ならともかく、現在結核に感染するには、若い方だと思います。
働きすぎで体が弱っていたんだろうか…
医者は金儲けばっかりして、なんていう古代文書を今でも信じられている方はいらっしゃると思うのですが、実際の医療という仕事は、地味で、汚くて、今回の結核のように危険だらけです。
野口英世が亡くなったのも、彼自身が研究していた黄熱病によってでしたし。医者は、その人の専門の病気で死ぬという「業界伝説」があるのです。根拠はないですが。
高給とはいわれますが、一部の例外を除くと時給にすると泣きたくなるような額ですし、儲けているというより、危険の代償のような気がするのですが。
それにしても、医者自身ももっと、自己管理をきちんとしないといけないですね。きちんと検査を受けたり、休養する勇気も必要。結果として、そのほうが患者さんのためにもなるわけで。
某新聞には「結核医師」というタイトルがついていました。どうして新聞記者って、こんなに悪趣味なんでしょうかねえ、菊池秀行の小説のタイトルじゃあるまいし。